日立建機ビジネスフロンティア株式会社の新入社員研修の実施事例日本オラクル株式会社オラクルユニバーシティ(以下OU)では、日立建機ビジネスフロンティア株式会社(以下HBF)の2007年4月入社の14名を対象とした新入社員研修における、Webアプリケーションの「擬似開発プロジェクト」を中心とした技術者教育を実施いたしました。
HBFにおける新入社員研修では、例年HBFの自社技術者が教育指導者となり研修を実施されています。研修では業務に直結することもあり、プログラミング能力の向上に重点が置かれていました。
しかしながら、近年のIT業界を取り巻く環境の変化により、ベンダーの提案力、創造性、プロジェクト推進力が求められるようになっている背景や、配属部門からの「システム開発業務において日常的に使用されている用語、状況が正確に理解できないため、顧客やメンバーとのスムーズなコミュニケーションが取れない」という要望があり、新入社員研修の内容の改善を検討されていました。
そのような中で、新入社員研修における技術者教育はどうあるべきかを、HBF、OUが共に検討し、今回OUの新入社員技術者育成提案を採用頂きました。
新たな取り組みとしては、単なる「プログラミング能力」に終わらない、幅広い基礎的な技術力をもった人材を育成することを目標に、Webアプリケーションの「擬似開発プロジェクト」を主軸においた研修を実施いたしました。
具体的な内容としては、擬似的な顧客を設定し、新卒自らを自社の開発エンジニアとして位置づけ、「顧客ヒアリング~システム分析・設計~実装~テスト~カットオーバー~納品、プレゼンテーション」までを一貫して実施します。
そこで、この新入社員研修では、まず「擬似開発プロジェクト」で必要とされる個々の技術要素を学習、習得し、次にこのプロジェクトを実際に体験して頂くといった全43日間に及ぶ体系的な技術者育成カリキュラムとなっています。
新入社員研修における技術研修は個別の技術、例えば、データベースの基礎知識、SQL、プログラミングなどを単品で学習することが多く、実際にそれらの有機的なつながり、位置づけを学習する機会が少なくなりがちです。
そのため、新入社員研修を終えた新卒の方々は、現場に出て、初めて学習した内容がどのように活用されていくか、目にすることになります。また、一般に新入社員研修の中では、個人作業、多くても2~3名がほとんどで、「大勢で仕事をすることの難しさ」「チームとしてどう行動するのがベストであるか」といった、仕事を進めていく上で重要な要素が伝わらないという課題もあります。
今回のHBF向けの研修では、日本オラクルの新入社員研修で実施している内容も取り入れ、基本的な技術だけではなく、「擬似開発プロジェクト」を通して、「コミュニケーション力」「チームワーク」「プレゼンテーション力」などを駆使し、経験、習得して頂きました。
全43日間を大きく2つに分割し、前半で基礎的な技術力の習得のために「基礎技術研修」を、後半で「擬似開発プロジェクト」を実施しました。大まかな研修の構成は以下の図のようになります。

(*1)本研修は弊社標準コースではございません。(*2)本研修は、弊社既存コースを組み合わせて構成しております。
研修の実施に際しては、文系出身の方がいることを考慮し、ごく基本的なIT用語やコンピュータの仕組み、ネットワークの仕組みなどから学習を開始しました。「IT基礎」研修およびWebシステムの全体像を習得する研修「Webシステム構築クイックスタート」を通じ、インターネットを介したシステムがどういう構成で動いているのかの概要を理解した上で、しばらく続く基礎技術研修の各技術がどういう位置付け、意味を持っているのかをイメージできるようにします。
IT基礎については、「基本情報処理技術者」レベルの内容から、特に重要な項目を拾い出して実施しました。理解度をチェックするため、講義後約1週間で「確認テスト」も実施し、正答率80%の合格ラインに達しない場合、何度も受験して頂きました。
さらにデータベースの基礎としての「SQL」や、「擬似開発プロジェクト」に向けたアルゴリズムの理解、「Java」と「J2EE(Servlet/JSP)」、データベースの表などを設計する「データベース設計」技術を習得して頂きました。
また、システム設計手法やプロジェクト管理の基本的な考え方を習得して頂きました。
一つ一つは基本的なことばかりですが、ポイントを絞って、それの重要性、どう組み合わさって活用されていくのかなどを説明し、モチベーションを維持しつつ、機械的な暗記にならないよう研修を実施しました。
「基礎技術研修」の一方で、お客様のシステム開発エンジニアとしてどうしても欠くことのできない「プレゼンテーション力」を強化するため、HBFの研修担当者と密にコミュニケーションを取り、朝礼、終礼の時間を活用した「プレゼンテーション練習」も繰り返し行いました。
最初は人前で話す事に慣れることからはじめ、実際にパワーポイントを使ったプレゼンテーションまで何度も繰り返し行う事で、プレゼンテーションに「慣れて」もらうことと、ある程度の「型」を理解して頂きました。
後半の20日間は、想定顧客からの「提案依頼書」(いわゆるRFP)を元に、7名1グループの体制で、顧客ヒアリング、要求分析(要件定義)、システム設計、開発/テストを、こちらから提示している大枠のスケジュール(レビューなどのマイルストーンのみの提示)にもとづいてグループごとに計画を行い、自主的な活動により、「擬似開発プロジェクト」を実施しました。「擬似的な」シチュエーションですが、内容は普通の開発プロジェクトと変わらず、様々な問題に直面します。その都度自分たちで考え、どうしたら発生してしまった問題をクリアするか、あるいは、発生しそうな問題を事前に回避するかに工夫を重ね、プロジェクトを進行していきました。
この間、講師は、全体の状況を把握しますが、助言などは最低限に抑えます。これにより、「自分たちで考える」ことに重きをおいています。
実際にプロジェクト中には様々な苦労をした新卒の方々ですが、終わってみると、「グループ内で、思っている事を共有することの難しさ」「自分の考えていることを相手に理解させるための工夫」「時間を上手に使ってプロジェクトを進めることの難しさ」など、今回のグループワークを通じて一様に実感して頂けたようです。
今回、共有掲示板を作成したグループがありました。
また、全員が掲示板を閲覧したかを確認するために、閲覧チェックの運用を追加することで、グループ内の情報共有をさらに円滑に進めることができるような工夫をしているグループもありました。
このように、自らが考え行動し、新たな仕組みや工夫を作り出していくという意欲的な取り組みも随所に見られました。
20日間という限られた期間でしたが、プロジェクト経験を通じ、新卒の方々には、その仕事の難しさと同時に完成に向けて全員で一丸となって取り組む楽しさ、完成したときの嬉しさを実感してもらえたのではと感じております。
最終日には、完成したシステムの顧客向けプレゼンテーションを想定した「発表会」を開催し、自分たちの成果を、「プレゼンテーションスキル」を活用して発表しました。
発表会には、HBFの青柳社長自らご出席いただき、新卒の方々への激励も行って頂きました。
HBFの新卒研修では、技術者教育全体を担当させて頂きました。最初にも述べましたように従来の新入社員研修における課題をお聞きし、弊社の新卒研修で実施している内容も取り入れ提案させて頂きました。
今回は、研修カリキュラムは、OUより提供させて頂きましたが、なにより、HBF側の新卒研修担当の方々とうまく協業させて頂けたこと、新卒一人一人とのコミュニケーションなどで、きちんとHBFの担当の方々がOU講師と一緒に取り組んで頂けた事が成功のポイントだと思います。
今回の新入社員研修を通じ、社会人としての一歩を踏み出したばかりの新卒の方々が、今後ますますスキル向上を図り、会社の発展に寄与されることを期待しています。
また、その入り口のお手伝いをさせて頂けたことをとても嬉しく思います。