全日空、Oracle® Service Busでミッション・クリティカルな基幹業務システムを連携する全社共通基盤を構築。標準化によりインタフェース実装工程が最大12分の1に短縮
業界で他に先駆けて基幹業務システムのオープン化を推進している全日本空輸株式会社は、ミッション・クリティカルな基幹業務システムを連携する全社共通の基盤を構築。2010年10月の稼動開始以来、すでに約70のシステムが接続されている。社会インフラと同等の高可用性、高信頼性、高性能が求められるなか、同社はこの共通連携基盤の中核ソフトウェアとしてOracle Service Busを導入。厳しい要件をクリアしつつ、インタフェース実装工程の短縮(1~2カ月→約5日)や可視化環境の整備、運用プロセスの整備も行い、共通連携基盤のプロアクティブな運用も実現し、システム間インタフェースに係わる開発コストの3割削減を見込んでいる。
A word from All Nippon Airways Co., Ltd./ 全日本空輸株式会社
旅客数日本一の航空会社である全日本空輸株式会社(以下、全日空)は、現在、グループのさらなる成長を目指して国際線事業の強化を進めている。その背景の1つに、これまで同社の成長を支えてきた国内線事業において、同業他社だけでなく他業種陸上交通機関も加わり、競争がますます激化していることがある。
全日本空輸株式会社 IT推進室 企画推進部 企画・業務チーム 主席部員の山口 明宏氏は,「国際線事業を強化していくには、為替や海外の政治情勢、気象や自然災害など、コントロールしきれないリスクも増え、いっそう激しくなる事業環境の変化に即応できる強固な基盤が不可欠です」と話す。
海外の航空会社とのシステム連携の必要性も高まっている。27社が加盟する世界最大の航空会社ネットワーク「スターアライアンス」のなかで、全日空は米国のユナイテッド航空、コンチネンタル航空、ドイツのルフトハンザドイツ航空と戦略的提携を行い運賃の共通化や運航ダイヤ調整による接続利便性の向上を進めようとしている。
顧客サービスニーズの変化も大きい。おもな販売ルートが旅行代理店や全日空の支店窓口だったころに比べ、インターネットでのチケット予約・購入が一般化した昨今、システムに対する要求は複雑化している。山口氏は、「これからの顧客サービス向上のカギは、『連携』にあります」と指摘する。たとえば、座席管理システムとマイレージ管理システムは、それぞれ個別のシステムとして稼働している。窓口であれば、係員が2つのシステムを意識しながら操作して対応できる。しかし、インターネットで座席の予約とマイレージの照会をシームレスにサービス提供するには、2つのシステムの連携が重要になるのだ。「システムのインタフェースを標準化し、連携を促進しなければ立ちゆかなくなることは目に見えていました」と、山口氏は説明する。
そこで、社内のさまざまな業務システムや、金融機関、旅行代理店、海外の航空会社などの外部システムを連携させる共通基盤の構築について検討が開始された。
「まず、何を実現したいのかを明確にする作業からスタートしました」と山口氏。さまざまなシステムのインタフェースを統合、連携させるSOA(サービス指向アーキテクチャ)を軸とした次世代共通基盤のグランドデザインを描いたのもこのころだ。
システム構築にあたるベンダーとして日本電気株式会社(以下、NEC)を選定したのが2008年。そして、この共通連携基盤の中核ソフトウェアとしてOracle® Service Busが採用される。多種多様なプロトコルやデータ型が混在するシステムの「違い」を吸収し、SOAに不可欠なサービス間の疎結合を実現できるOracle Service Busは、サービス間の「連携」を重視する全日空にとって最適なプロダクトといえる。また、以前からOracleデータベースとOracle WebLogic Serverが社内に多数使われていたことも、採用を後押しした。
山口氏は社内において、「喩えるならば、従来のシステム間インタフェースの仕組みは1対多の『糸電話』のようであったが、Oracle Service Busを活用することで1対1の『ビジネスフォン』のようになる」と説明したという。糸電話の場合、各システムをつなぐには1対多で糸を張る必要がある。つなぐポイントが増えるたびにインタフェースを作らねばならず、糸の数が増えて管理も複雑になる。一方、1対1で中心となる共通基盤に接続するだけでよいビジネスフォンは、つなぐ相手を意識する必要がなく、管理も容易だ。
山口氏は、Oracle Service Bus採用の決め手として、「グローバル規模での豊富な導入実績と、厳しい要件を実機検証(PoC)でクリアしたこと」を挙げる。
具体的には、500TPS(Transaction Per Second)を安定して処理できる高性能、そして内部滞留時間が平均40ms以下での処理が求められた。基幹業務システムの1つである国内線の座席予約システムは、繁忙期やキャンペーン開始時にアクセスが集中するからだ。
この要件をクリアするため、設計に1年以上費やしたという。システム開発・保守運用を担うグループ企業の全日空システム企画株式会社(以下、ASP)も、企画・設計段階からプロジェクトに参画。ASPの技術部 マネージャーの高橋 理恵氏は、滞留時間を圧縮するために「初期プロトタイプ作成時に大幅な設計変更を行ったほか、基本設計時もインスタンス数の見直しやCPU割り当て変更などを行った」と振り返る。
もう1つの大きな要件が高可用性である。すべてのインタフェースを統合する重要な基盤なので、停止は許されない。そこで、航空サービスの安全確保の考え方を応用することで、サービス提供率100%の高可用性を確保している。「パイロットや客室乗務員は日頃より、非常事態をも想定した訓練を実施しています。ITも同じ思想で備えるべきだと考えました」と山口氏。また、トラブルに対処する仕組みや手順が用意されていても、ヒューマンエラーを招いてしまうこともありうる。そこで、常時2系統を稼動し、1系統を待機させ、これを定期的に切り替える「ローリング運用」方式を採用。日常の運用に切替えの訓練を組み込むことで万が一の際のヒューマンエラーを防止し、安全性、信頼性を高めているのだ。
Oracle Service Busで構築したシステム共通連携基盤は、2010年10月に稼動を開始。順次システムの移行を進め、2011年2月までに今回の対象である約70システムの移行を完了した。「設計段階から運用チームのメンバーもプロジェクトに参加していたので、万全の移行計画策定とその実施が実現できました。」と山口氏が語るように、タイトな日程にもかかわらずスケジュールどおりに稼動を迎えている。加えて高橋氏は、「プロトタイプでの検証を重視し、設計に時間をかけるなど、早めにリスクを洗い出して対応したこと」を挙げる。
このシステム共通連携基盤への移行でさっそく得られた効果は、インタフェース実装工程の大幅な短縮だ。高橋氏は、「新しいインタフェースを作る場合、従来であればその実装に1~2カ月かかっていましたが、現在はインタフェースの標準化、自動テストツールの充実などもあり、現在は5日程度でできてしまいます」と笑顔を見せる。ASPの技術部 シニアエキスパートの善積 良至氏も、「Oracle Service Busで違いを吸収するため、コンシューマ側システムとプロバイダ側システムにおいて、お互いのノードを意識する必要がなくなり、仕様や実装に係わる調整作業もシンプルになりました」と評価する。山口氏は、「これらの効果により、システム間インタフェースに係わる開発コストの3割は削減できるのではないでしょうか」と期待を語る。
2012年中には、次期国内線旅客システムの移行を予定している。山口氏は、「Oracle Service Busがなければ、次期国内線旅客システムの移行時に、すでに移行済みの70システムのそれぞれに対してインタフェースを開発、移行しなくてはなりません。共通連携基盤がなければ、そのシステム移行は非常に煩雑で時間もかかるうえ、リスクも大きかったでしょう」と話す。
山口氏は、Oracle Service Busによる共通連携基盤でビジネスが大きく変わると期待している。
まずは品質の向上だ。「航空会社の基本は、安全、安心、信頼ですが、ITにも同じことが求められています。標準化の仕組みがない中でシステムを個別に作るとコストがかかるだけでなく、運用にもしわ寄せがくるため、ITサービスの品質低下につながります。標準化、共通化は避けて通れません」
2つ目は迅速性である。「今後も競争は激化し、開発期間の短縮、すなわちTime to Marketが重要になります。開発にコストや時間がかかると、それが難しくなります。アプリケーションと基盤を分離してアプリケーションをシンプル、かつコンパクトにしないと、競争には勝ち残れないでしょう」
3つ目はコスト効率だ。ITなくして経営は成り立たないほどIT化を進めてきたが、だからこそ、ITにコストがかかり過ぎると経営の足を引っ張りかねないと山口氏は説く。
「SOAは、これら3つを連携させながら高めていくのにぴったりの手法です。Oracle Service Busが、その牽引役となってくれるでしょう」
(本事例の内容は2011年9月のものです)