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Oracle Customer: セイコーエプソン株式会社
Location: Nagano, Japan
Industry: High Technology
Employees: 74,551
Annual Revenue: Over $5 Billion
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Oracle Customer: セイコーエプソン株式会社
Location: Nagano, Japan
Industry: High Technology
Employees: 74,551
Annual Revenue: Over $5 Billion
エプソンブランドで知られるセイコーエプソン株式会社(以下、エプソン)は、情報関連機器事業、電子デバイス事業、精密機器事業という3つの柱を軸とするグローバル企業だ。同社の広丘事業所(長野県塩尻市)にある機器生産・調達統括センターは、プリンタやプロジェクターなどの情報関連機器事業に関する生産や調達を統括する部門である。同センターでは「Oracle Advanced Procurement」を利用した電子見積りシステムの構築によりソーシング機能を統合し、情報関連機器事業全体での調達プロセスの標準化と迅速化を目指しているが、そこにはコスト削減以外にもさまざまな効果が期待されている。
“原価構成の見直しやコストダウンが重要になるなか、サプライチェーンの価値を提供するプロセス(オペレーショナル・エクセレンス)推進に調達部門が大きく貢献する為、業務プロセスを見直し調達改革を推進しています。そのためにOracle Advanced Procurementが大いに役立っています” セイコーエプソン株式会社 情報機器事業本部 機器生産・調達統括センター 統括センター長 金井 隆夫氏
今回の電子見積りシステム導入プロジェクト「GAEA(Global Advanced Estimation & Analysis)」の背景を、機器生産・調達統括センター統括センター長の金井隆夫氏は次のように
話す。「エプソンブランドの商品競争力を維持していくには、常に新しい機能を加えながら商品価格を下げていかなければなりません。そのためには、原価構成の見直しやコストダウンがきわめて重要となります。優れた商品を生み出すために技術力を高めることは、どのメーカーでもおこなわれています。しかしそれだけではなく、サプライチェーンのオペレーション効率を向上させることで競争力を高めていく必要もあると考え、商品競争力の強化とオペレーショナル・エクセレンス(オペレーションや業務の最適化)の2つの柱に注力していくことを戦略として掲げました」
調達部門が、量産段階からではなく、より上流の商品企画、開発、設計の段階から関わり、サプライヤー・部品をソーシングする“開発購買”という考え方でコストメリットや部品のクオリティを上げ、商品力の強化を目指したエプソンは、これまでの開発・設計及び調達部門の担当者による属人的な見積り作業を標準化するためにシステムで処理することを決断。そして、Oracle E-Business Suiteの「Oracle Advanced Procurement」のOracle Sourcing、iProcurement、iSupplier Portalモジュールを採用した。2007年7月にキックオフ、2007年10月に運用を開始した電子見積りシステムは、2008年度中に適用範囲を広げ、2009年度までに事業本部全体への拡大を計画している。
金井氏によれば、調達の機能は機器生産・調達統括センターに統合されつつあったが、依然として各部門や各担当がサプライヤーにバラバラに見積りを依頼することが絶えなかったという。「商品が違えば部材も異なるという考え方で、設計段階ではどうしても設計者が自らサプライヤーさんに見積りを依頼してしまいがちです。使用する部材やメーカーに詳しいのは、やはり設計者ですから。しかし、オペレーションに関しては共通の部分があるはずです。オペレーションを標準・共通化していくことで、サプライヤーの数や部品点数を整理し、効率を高めることを考えました」
さらに、生産の現場でもバラバラな見積りがおこなわれていたと機器生産・調達統括センター 機器調達部 課長の中山 千利氏は話す。「当社では十数年前から海外生産を積極的に進めており、サプライヤーが海外にも広がっています。日本ではまったく知らないサプライヤーからも部材を購入していました。そうしたなか、日本で集中してソーシングすることを考えてきましたが、これまで実現には至りませんでした」
このように各部門で見積りがおこなわれると、サプライヤーの数や部品点数が無尽蔵に増え てしまい、コスト面だけでなくさまざまな問題も生じる。しかし、機器生産・調達統括センター 機器調達部 課長でプロジェクトリーダーである上條 弘人氏は、アクションを起こすまでには時間がかかったと語る。
「部材の安定調達だけでなく、CSR(企業の社会的責任)やグリーン調達といったことを考えると、一定の評価のあるサプライヤーさんと適正に取引していく必要があります。また、各事業のセグメントが広がっていけば、ボリューム・ディスカウントによるコストダウンなども考慮しなければなりません。いずれも数年前からいわれてきたことですが、設計部門や海外生産拠点とともにそれを実現させる具体的な動きにはなかなかなりませんでした」
開発購買プロセスの構築という目的に向けて、調達部門主導によるシステム導入を決断し、検討を始めたのは2007年3月である。プロジェクトリーダーで経営戦略室情報化推進サポート部グループリーダーの中島鉄也氏は、これを絶好の時機と捉えていたようだ。エプソンでは2005年から、設計のできるだけ早い段階から調達、設計、技術、海外の製造部門などとコスト情報を共有して設計をおこなう、コストの“見える化”を推進するプロジェクトを進めていた。ちょうど、そのプロジェクトが社内に浸透していった頃だったのだ。「コスト設計のなかで、設計者が自分でサプライヤーさんから聞いてきた不確定な見積り額をコストに含めてよいのか、という問題もあったので、今回のシステムはコストの“見える化”にも役立つと感じました」(中島氏)
システムの選定にあたっては、自社開発も含めて6つの候補が比較・検討された。その結果、全体を通してもっともまとまっていると評価されたオラクルの提案が採用された。上條氏は、オラクルの選定理由を次のように語る。「我々としては見積りだけでなく、データを蓄積・分析して設計部門へ要求を上回る提案をフィードバックしていくことが重要でした。そのため、規定のレポートが出てくるだけでなく、必要な情報を取り出せるユーザビリティの高いソリューションであったことがオラクルを選定した理由の1つです」
Oracle Advanced Procurementによる電子見積りシステムは、タイトな導入スケジュールにもかかわらず、当初の目標どおり2007年10月に運用が開始された。情報化を推進する立場で実務にあたった経営戦略室 情報化推進サポート部主任の小口 俊樹氏は、次のように当時を振り返る。「開発期間が限られているなかでカスタマイズなどをおこなうと、リスクが高くなってしまいます。そこで、機能を絞り込み、カスタマイズせずに標準機能だけを使うというポリシーで進めました。業務側が主体となって真剣に取り組まないと、システムが稼動しても活用してもらえません。その点、今回は業務メンバーが仕様を理解し、自分達の業務をパッケージにどう合わせていくかをよく考えてくれたおかげで、期限内にシステムを構築できました」
また、ハードウェア構成などを決める際にオラクルのアドバイスを受けたことも、開発工程の短縮に役立ったという。「システムの開発では環境の準備やハードウェア構成の選定にかなりの時間がかかります。これについては、必要最小限の構成を組み、当社で標準的なハードウェアを利用することで時間を短縮しました。これまでの経験から環境を絞り込んでいったのですが、オラクルさんのアドバイスもたいへん役に立ちました」(小口氏)
従来、設計者が自ら見積り作業をおこなっていたのは、設計者にとって希望の部品を入手しやすいなどのメリットがあるからだ。海外生産拠点において、現地で見積り・部品選定してきたのは、現地での調達入手性などを配慮し、拠点最適を優先してきたからである。新たな電子見積りシステムに移行するために、設計者や海外拠点との調整をおこなってきた中山氏は、開発・設計部門から調達部門へのソーシング機能移管をどのように説得したかについて、次のように語る。
「設計部門や海外拠点の意見を取り入れるために打合せをおこなったのですが、それぞれ意見が異なるので調整に苦労しました。システム導入後に設計から生産までがスムーズに流れるには、設計側と生産拠点の賛同を得ることが不可欠です。プロジェクトの初期段階から設計部門(設計者)にも参画してもらい、打合せを繰り返して解決していきました。これまで使っている部品の一覧を各設計部門に見せ、使用部品の共通度(バラツキ度)や同一仕様の部品でもメーカー、発注量によって価格が異なることを理解してもらい、ある商品セグメントの設計部門ではそうしたことを配慮して設計コストを抑えていることを示して、標準化の重要性も説いていきました」
上條氏は、「各部門長や事業部長にも早い段階から説明して理解が得られたので、事務局としては調整しやすかった」と述べたうえで、やはりこれをきっかけにプロセス改革を推進することを強調したという。「コストダウン、サプライヤーの集約、CSRなどに取り組まなければならないという意識は全部門にあります。そのなかで、単に見積り業務をシステム化するのではなく、設計から生産までの商品・コストの作り込みを今後どのようにおこなっていくのかというプロセスを決めるきっかけとなるシステムであることも理解してもらいました」
また、前述のコストの“見える化”プロジェクトを進めるなかで、商品企画を立てる設計者が部品の見積り額を正確に把握することが大きなメリットを生むことも、このシステムの目的であったと中山氏は言う。「量産前、海外生産拠点は調達入手性を鑑み、現地メーカー(代替使用可能)に見積りを依頼することが多いのですが、設計者は自分が知っている国内のメーカーに見積り依頼を出していたので、設計段階と量産段階での製品コスト差が大きくなっていました。調達部門が早い段階から見積りにかかわることで、輸送費や数量設定が明確になり、設計段階から量産時のコスト計算ができるようになります」。量産時のコストを見越して商品企画をおこなうなかで、設計時のコスト予想と実際のコストに開きがあると商品化にも影響を与えてしまう。設計段階から量産時のコスト計算がおこなえれば、商品化が可能かどうかを設計段階で決めたり、コストを見直したりできるようになるわけだ。
「我々の事業は自社だけでおこなえるものではなく、サプライヤーさんなくして成り立ちません。サプライヤーさんとより良好な関係を築くためにも、今回のシステムを活用したいと考えています」と金井氏が話すように、サプライヤーとの関係を強化することも今回のシステム化の目的の1つである。「我々にとっては、コストの部分だけでなくMEQCD(Management, Environment, Quality, Cost, Delivery)を含めたパートナーとしてサプライヤーさんの力が必要です。これらのサプライヤーさんとともに“成長していく”ことも我々の大きな使命の1つであり、そのためのデータとして活用できると考えています。サプライヤーを集約することも1つの目的ですが、共同で改善・改革すれば、互いに大きな効果が得られると思うので、きちんとコミュニケーションをとり、協力していけるサプライヤーさんと一緒にやっていきたいですね」(金井氏)
そのために、今回のシステムで重視され、オラクルの選定理由の1つとなったのがデータの蓄積と分析を柔軟におこなえることだ。この点について、上條氏は次のように説明する。「通常の見積り作業は、設計の仕様に合わせてサプライヤーさんから見積りをとって比較するという流れです。しかし、設計要求よりも幅をもたせてさまざまな仕様の見積りをとり、そのなかから価格と品質が適正なものを選定することが調達の付加価値だと思います。これらの見積りを調達部門が分析・解析し、サプライヤーさんの評価も加えながら設計にフィードバックして、指標を定めていくことを考えています」
システムを利用して素早くコミュニケーションをとれることによって、サプライヤー側に仕様要件や納期などが明確に伝わることもサプライヤーのメリットとなる。これまでは、仕様要件や納期を各設計者が伝えていたため、正確に伝わらなかったり、対象となるはずのサプライヤーに見積り依頼が出ていないこともあったというが、システム化によって公正で密なやりとりのなかで双方にメリットが生まれることを期待したいと中山氏もいう。「どこに見積りを出すかを設計部門と海外生産拠点で共有できるので、見積り依頼を出すサプライヤーさんが明確になることもメリットだと思います。共有のサプライヤーリストに入るための条件もきちんとお話ししているので、そのリストに入ったサプライヤーさんには、かならず見積り依頼が出されます。サプライヤーさんにとっても、あらかじめ見積りを依頼されることがわかっているので、戦略を立てながら値付けしていくことができるはずです」
その結果、選定されたサプライヤーは数量ボリュームを得られるというメリットもあるが、一方で、従来設計、調達部門の担当者(個々)から見積り依頼を受けていたサプライヤーとしてはドライなやり方と捉えられることもあるだろう、と上條氏は予測する。
「そのネガティブな印象を払拭するためにも、コミュニケーション・ツールとしてのシステム活用に期待しています。なぜ受注に至らなかったかをサプライヤーさんに対して説明、フォローアップし、ケアしていくことが非常に重要で、これらをどのようにおこなってサプライヤーさんと協業していけるかはこれからの検討課題です」
第一ステップで数十社のサプライヤーとのコラボレーションによって期待どおりの効果が得られ、第二ステップとして適応領域のさらなる拡張に着手しているエプソンは、Oracle Advanced Procurementに大きな期待を抱いている。
第二ステップでは、「操作性をどれだけ高めるか」が課題だという。とくにサプライヤー用のポータルサイト「Oracle iSupplier Portal」をより使いやすくすることを急務としているのは、システムの使い方などがわからず受注のチャンスを失うような事態を避けなければならないからだ。エプソンもサプライヤーも初めてシステムを利用するなかで、操作に対する戸惑いやトラブルは、さまざまな場面で発生する。システムを十分に活用し、見積りという面からコストダウンを実現するには、マニュアルや問合せ窓口を通じてサプライヤーをサポートし、それらのケースをもとにオラクルに機能改善要求をしていくことが重要とエプソンは考えている。
また、調達としてシステムの機能をどのように拡張して活用していくかも第二ステップ以降の課題だ。将来的な拡張について上條氏は、「たとえば、アジア圏に向けたソーシングブランチを海外に作ることも考えられます。そのような場合にこのシステムを使って、日本と海外ソーシングブランチ間のコミュニケーションがスムーズにいくといいですよね。もちろん、そのためにはシステムだけでなく、プロセスや組織も改革していかなければならないでしょう」とコミュニケーション・ツールとしてのOracle Advanced Procurementのさらなる可能性への期待を語ってくれた。
(本事例の内容は2008年3月のものです)