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大韓航空は、韓国のナショナル・フラッグ・キャリアであり、同国最大の航空会社である。140機の航空機を所有し、国内13都市と海外40ヶ国105都市を結ぶ。2010年の輸送実績は乗客数2,274万人、貨物量180万トン。乗客と貨物の輸送に加え、航空宇宙サービス、宿泊、ケータリング、機内販売、リムジン・サービスなどの事業も手がけている。
大韓航空は、国内はもちろん国際的にも世界有数の航空会社として認められている。2011年、大韓航空はTravel + Leisure誌で世界第8位に、韓国能率協会コンサルタントが選定する韓国ブランド・パワー・インデックス(航空会社のブランド・イメージを評価する指標)では12年連続で1位となった。また、日本能率協会コンサルティングのグローバル顧客満足度調査でも6年連続で1位を獲得している。さらに、同社は有数の航空貨物輸送業者としても認知されており、国際航空運送協会の評価では6年連続で世界最大手の民間航空貨物業者となっている。
“グローバルERPの導入は、4年にわたる大事業でしたが、オラクルはこのプロジェクトのあらゆる面で期待に応えてくれました。当社は、財務から調達、機体のメンテナンスや修理に至るまで、事業全体を改善し、業界の先駆けとなるイノベーションを達成することができました。Oracle E-Business Suite 12.1.2によって事業の機敏性が向上したことにたいへん満足しています”– 大韓航空 CIO リ・サンマン氏
2004年、大韓航空はエンタープライズ・アーキテクチャ・プランニング(EAP)に関する調査を実施した。自社のシステムを見直し、ビジネス・プロセスの最適化とデータ標準化のためのマスター・プランを作成することが目的だ。その結果、会計や収益管理のマスター・データに一貫性に問題があり、また決算、搭乗者や積荷の予約、機体のメンテナンスといった業務分野間の統合もできていないことなどが明らかになった。そのため、マネジャーは航空路線の収支など重要な情報をタイムリーに把握できず、財務処理を迅速かつ効率的に完了することが困難だった。
これらの問題に対処するため、大韓航空は2007年10月、Oracle Consultingと契約を結び、Oracle E-Business Suite Release 12.1.2をベースとしたグローバルなエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムのプロジェクト管理および導入を委託した。このERPプロジェクトの対象範囲は、航空業界では前例がないほど広範囲に及んだ。大韓航空が目指したのは、財務会計、調達、資材や設備の管理、予備部品の製造、民間機や軍用機のメンテナンスなど、自社のバックエンド業務のあらゆる面を統合することだった。このプロジェクトの対象とならなかった領域は、予約、発券、輸送業務だけである。
大韓航空は財務部門の多くの会計処理を自動化し、毎月の決算に要する日数を15日から5日に短縮した。さらに、財務システムと銀行取引明細書との連携など、資金管理プロセスが改善された。この結果スタッフが現金の利用可能額を即座に判断できるようになり、より短期間で決算を出せるようになった。
大韓航空は、Oracle Business Intelligence Enterprise EditionとOracle E-Business Suite Release 12.1.2による収益会計および管理会計を導入した業界初の航空会社である。航空業界の収益会計には、発券および予約情報の分析、季節によって変動する複雑な価格体系の監視、提携航空会社間での勘定清算、社内外の運送情報の見直しなど、幅広い活動が含まれる。大韓航空の毎月の平均トランザクション数は500万件に及び、そのうち99%以上を電子チケットが占めている。電子チケット・システムをOracle ERPプラットフォームに関連づけることで、チケット販売とその収益をリアルタイムで確認、分析することが可能になる。これを航空業界で初めて実現したのが大韓航空だ。
航空業界のもう1つ複雑な課題が正確な管理会計である。地域、国、航空会社、支店間のコラボレーションが必要になるからだ。大韓航空の管理会計システムは、乗務員数、飛行距離、到着空港、運用コストなどの情報を格納する単一のOracleデータベースで構成されている。財務会計、収益会計、およびその他の関連システムとリンクしており、各フライトから得られる収益を出発時にすぐに計算して分析することが可能になる。また、決算期内に請求書を発行できないセクションにも見積もりを提供できるため、財務情報の信頼性が大きく向上する。
さらに、標準化された統合データベースを導入したことで、大韓航空は自社の重要な輸送情報を最大限に活用できるようになった。まず収益管理システムにより、フライト出発後2時間以内に収入と費用を計算することが可能になった。また管理会計システムにより、収益管理システムやその他のシステムからデータを収集し、各フライトの収益性を3時間以内に分析して、経営陣の意思決定に役立てることが可能になった。このように短時間で各路線の収益性を分析できるため、特定路線の増便または減便を迅速に決定できるようになった。
オラクルERPの導入効果としては、この他にも調達効率の向上や購買コストの削減が挙げられる。これは、ケータリング、機体メンテナンス、予備部品製造に必要な資材調達に関するもので、それまでは個別に実行されていた機能だ。また、サプライヤ評価フォームを作って、全体的な品質の底上げをはかったほか、発注業務や購買分析を自動化して、効率の向上と部門間コミュニケーションの改善をはかった。
さらに、製造ワークフローや設備管理も改善した。生産スケジューリングや設備稼動も効率化され、引き続き採算性の高い効率的な方法で航空宇宙業界向け予備部品が製造できるようになった。また、製造期限までに必要な資材を確保できるよう生産スケジュールのシミュレーションを実行したり、国内外の資産情報を監視することもできるようになった。
大韓航空は、ケータリング・コストを管理するために、E-Business Suite Release 12.1の追加モジュールを導入した。航空業界では世界初の取組みである。このケータリング・ソリューションには、Oracle Bills of Material、Oracle Work in Process、Oracle Inventory Management、Oracle Order Management、Oracle iSupplier Portal、Oracle Cost Management、Oracle Engineering、およびOracle Advanced Supply Chain Planningが含まれている。これらは座席予約システムとも統合され、機内食の生産計画改善につながっている。
作業指示は離陸の前日に確定され、この作業指示に基づいて適切な機内食の準備と機体への積み込みがおこなわれる。たとえば、ケータリング部門は、路線や地域の需要に基づいて路線特有のメニューを作成できる。メニューと材料表は、3か月ごとに自動的に見直される。また、コストは従来確定までに15日かかっていたが、今では機内食が航空機に積み込まれた時点で確定される。こうして、大韓航空はケータリングや在庫にかかるコストを削減し、廃棄ロスを最小限に抑えられるようになった。
大韓航空は1976年に航空宇宙市場に参入した。韓国が独立国家として防衛力を備え、高度な航空宇宙産業の育成を支援するのが狙いだ。同社の航空宇宙防衛(ASD)部門は、その設立以来、民間機の製造、民間機および軍用機のメンテナンスと改良、有人および無人の航空機や衛星の開発を進めてきた。
航空宇宙分野のリソースをどのように管理し割り振るかは、ASDを効率的に運営する上で非常に重要である。こうした業務はこれまで別々のデータ管理システムを使用して手作業で遂行されていた。オラクルのERPシステムとメンテナンス・システムの導入後、リソースの管理と配分がリアルタイムでできるようになったため、ASDはより効率的に、リソースを利用したりメンテナンスやその他の関連タスクを割り当てられるようになった。
効率的なERPシステムを導入した大韓航空が旅客や貨物の管理業務の次に目を向けたのが、航空機のメンテナンスだ。同社のねらいは、フライト計画とメンテナンス計画を関連づけて精度の高いメンテナンス・スケジュールを作成することにあった。
1969年の民営化以降、大韓航空は自社の航空機の定時運行率の向上に努めてきた。同社のメンテナンスおよびエンジニアリングの拠点は、キメ(金海)、プチョン(富川)、キンポ(金浦)、インチョン(仁川)の4カ所に置かれている。B747-400、A330、およびA300-600の各機体のメンテナンスをおこなう同社の技術力は、エアバスとボーイングの両社によって認められている。また大韓航空は、米国の連邦航空局、欧州航空安全局、中国民用航空局、韓国政府の国土海洋部など、各国航空機関のメンテナンス認定要件に準拠している。
大韓航空では、1980年以降、KALMESと呼ばれる旧来のメンテナンス・システムを使用して、航空機メンテナンスの計画や管理をおこなってきた。このシステムは、新たなソリューションとの統合が容易ではなく、運用コストも次第に高くなっていた。同社がB777やA330といった航空機を導入した際も、KALMESシステムは、これらの機体に関するグラフィックス、デジタル情報、XMLデータをサポートできなかった。また、メンテナンス・コストの計算に時間がかかるため、月末の決算など他の財務処理の完了にも遅れをきたすようになっていた。
さらに、このシステムでは、メンテナンスに必要な資材の詳細情報を、その資材の要求時点で得ることができなかった。購買依頼に使用するシステムがメンテナンス計画と関連づけられていなかったからだ。その結果、不正確な購買依頼が大量に発生していた。
自社の航空機メンテナンスを確実に効率化するため、大韓航空は旧来のメンテナンス・システムを、Oracle E-Business Suite ERPシステムと統合されたOracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaul Release 12.1.2に置き換えることを決定した。
航空宇宙部門と航空機メンテナンス部門は、合同ワークショップを開催して業務上の問題を分析した。航空機のメンテナンスと修理に必要な研究開発、生産、リソース管理、予備部品の調達は、この2つの部門が担当しているのだ。大韓航空とOracle Consultingは4か月にわたる共同作業を行い、新しいシステムの目標を定義した。
大韓航空は、航空宇宙部門と航空機メンテナンス部門に27のOracleモジュールを導入し、その活動をサポートした。Oracle E-Business Suite Release 12.1.2を使用し、基本的な生産およびメンテナンス業務の管理にはOracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaulが展開された。また、生産スケジュールや資材利用計画を最適化するためOracle Advanced Supply Chain Planningを導入し、効率的なリソース活用を確実なものにした。航空機の部品や資材の管理にはOracle PurchasingとOracle Inventory Managementを導入した。また、Matrix 2Bというサードパーティ製の通関支援システムを使用して、Oracleのシステムを韓国関税庁と接続し、必須の通関報告書を同社で保管できるようにした。メンテナンス・プランニングを含む8つの領域のソリューションが、オラクルの本社で設計され、Oracle Solution Support Centerで開発および導入された。
Oracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaulシステムにより、大韓航空では、年度、四半期、毎月、毎週、毎日の機体とエンジンのメンテナンス計画を、フライト・スケジュールと照らし合わせて作成できる。適切なタイミングでメンテナンスをおこなうことで、機体の安全性が強化され、乗客の快適性と安全性が保証される。
また、フライト・スケジュールとメンテナンス計画データの統合により、フライトごとのメンテナンス・コストがリアルタイムで提示され、到着便と出発便のメンテナンス・コストを3時間以内に分析できる。
Oracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaul Release 12.1.2は、技術文書システムEnigmaと統合されている。このためエンジニアリング部門では、非定型メンテナンス依頼書を作成したり、機体メンテナンス技術者にメンテナンス作業指示伝票を発行したりすることも可能になっている。メンテナンス・タスクが時間どおりに完了するようになり、欠航便が減ると共に、定時出発率も向上している。2011年、大韓航空は、定時出発率がもっとも高い航空会社として、ヨーロッパの航空機メーカーであるエアバス社から最優秀運航賞を授けられた。1984年以降、大韓航空はその運航の効率性で同様の賞を毎年受賞している。
また、オラクルのシステムでは、計画メンテナンス・チェックなどの作業をより効率的に遂行できる。これは、メンテナンス計画、リソース供給、実際のコスト、収益などの情報が機体メンテナンスのスタッフにほぼリアルタイムで提供できるようになったためだ。
大韓航空のメンテナンス・システムには、航空機のエンジンおよびコンポーネントの分解に必要な時間やリソースの量を見積もることができる特別な機能がある。また、このメンテナンス・システムは、個々の航空機部品の耐用寿命を計算できる。こうした機能により、同社は、メンテナンス計画の精度を向上させることに加え、航空機のメンテナンスと修理にかかる時間とコストを正確に見積もることもできるようになった。この見積り機能は、Oracle Consultingが委託した第三者機関、Reliability Laboratoryの研究者と協同開発されたものだ。
リソースの供給予測精度を高めるために、大韓航空はオラクルのDemantra Demand Managementを導入した。このソリューションにはリソース消費データを有用な統計情報に変換する多次元需要予測モデルが組み込まれており、メンテナンス計画まで考慮した資材消費計画の策定がおこなえる。
その結果、大韓航空では自社の機体のメンテナンスに必要なリソースの種類と量を前もって把握できるようになった。また、スタッフもアプリケーションにアクセスし、メンテナンス作業指示を見て必要資材を前もって知ることができるので、必須のコンポーネントや部品を前もって確保し、常に万全の態勢で修理作業に取り掛かれるようになった。こうして、リソースの稼働が最適化され、メンテナンス用の在庫が削減された。
航空機の飛行中に起こり得る故障の詳細情報は、航空機の無線通信システムを経由し、オラクルのメンテナンス・システムから報告することが可能である。そのメッセージはオラクルのERPシステムに登録される。機体整備員は、メッセージを確認し、非定型メンテナンスの作業指示を作成する。大韓航空では、場合によっては機体の着陸前にサービス・チームへの修理手順を発行することで、故障原因を特定して修理作業を実行するリード・タイムを短縮している。
「故障の確認および修理にかかる時間の短縮は、効率の向上につながり、大韓航空機の安定性と安全性に寄与しています」と大韓航空のCIO、リ・サンマン氏は述べる。
航空機やエンジンのメンテナンス・マニュアルなどの技術文書を保管するデジタル・ライブラリの設立により、ペーパーレスに近い作業環境が生まれた。これらのマニュアルは、大韓航空のイントラネット上で参照できるので、コストのかかるハードコピーを印刷する必要性が低下し、エンジニアリング・スタッフは自社の機体に関する情報にいつでもアクセスすることができる。
大韓航空では、メンテナンスおよび修理作業用の航空機予備部品に関する作業指示の発行や承認を自動化するために、作業指示電子記録・電子署名(ERES)システムの導入を検討している。このシステムでは、部門間でやり取りされる書類の処理量が大幅に削減され、ハードコピーの作成や印刷の必要性も低下するためコスト削減につながる。
メンテナンスの生産性および効率向上のためのメンテナンス計画の最適化
大韓航空では、オラクルのERPシステムとメンテナンス・システムの価値を倍増する方法に注力し、迅速な意思決定、生産性の向上、コストの削減、オペレーション効率化への寄与、収益の拡大に役立てようとしている。とくにメンテナンス部門では、メンテナンス作業要員の計画や予測ができるようになるため、在庫保有量の削減、予備部品のリード・タイム短縮、修理時間の短縮による現場業務の効率化、能率の向上といったメリットが享受できるようになると期待している。
できるようになるため、在庫保有量の削減、予備部品のリード・タイム短縮、修理時間の短縮による現場業務の効率化、能率の向上といったメリットが享受できるようになると期待している。
一般的にERPソリューションは、財務、資材、製造などの業務処理に特化したものが多く、フライト・スケジュールの策定や機体の修理、メンテナンス・プログラムの開発など、航空業界に特有のニーズをサポートするのに必要な機能を備えたものはほとんどない。
「たいていのERPソリューションは、航空会社のメンテナンス要件を7割位までしかカバーしていません」とリ・サンマン氏は語る。「そのため旧来のシステムを新しいERPシステムに切り換えることは困難でリスクを伴うものでした」
大韓航空は、他の航空会社がシステム導入にあたって直面している問題を回避するには、柔軟性と拡張性の高いERPソリューションが必要であると判断した。コスト、スケジュール、およびベンダーとの共同開発など、導入に共通する問題に対するいくつかの提案を検討した結果、大韓航空は自社のビジネス要件と技術要件にもっとも適合するソリューションとしてOracle E-Business Suite Release 12.1.2 を選定した。
大韓航空は、2007年以来、導入プランニング調査から、Oracle E-Business Suite Release 12.1.2をベースとしたERPシステムの開発と導入に至るまで、EAIプロジェクトをあらゆる面でOracle Consultingと協力して進めてきた。Oracle Consultingのスタッフは、航空業界のニーズやプロセスに習熟したうえで、詳細なプロジェクト計画を定め、体系的な方法論に従って4年にわたるプロジェクトをスケジュールどおり、かつ予算内で完了した。
プロジェクトにはいくつか課題もあった。国を超えた最大12の事業部にまたがる複数の利害関係者が関与していたこと、財務、調達、および異なる販売チャネルをまたがってデータを管理する必要性があったこと、航空分野の機械工学や電気工学のようなニッチ領域に習熟した人材が不足していたこと、言語や文化面での障壁があったこと、などが主なものだ。
これらの課題を克服するために、オラクルと大韓航空の経営幹部で構成される、役員レベルの運営委員会が組織された。この委員会のねらいは、プロジェクトを管理下に置き、その舵取りをおこなうこと、また現場の運営委員会のレベルでは対処できなかった問題を解決することだった。現場の運営委員会は、オラクルと大韓航空の上級役員で構成されていた。また、オラクル内では、ベンダーとしてのグローバル・サポート・チームを管理するため、別のプロジェクト・チームが組織された。
オラクルは、全世界にいる社内の要員に声をかけた。まず、航空宇宙および輸送分野の知識をもつ、Oracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaulの4人の専門家だ。また、パートナーであるGlobal Sourcingからも、同じくOracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaulの10人の専門家を得た。これらの専門家たちは、航空会社に特有の事情や専門用語に通じており、機械工学や電気工学の経験も豊富だった。
大韓航空とOracle Consultingは、Oracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaulのシステム拡張に向けて連携を続けている。そこでは大韓航空側がアイデアや要件を提示し、Oracle Consulting側はそうした意見をシステムに反映する。このプロセスを合理化するために、オラクルはAISC(Aviation Industry Strategic Council)という新しい団体を米国空軍と共に設立した。AISCでは、役員レベルの経営幹部による会議を年二回開催し、クライアントの要件を分析してOracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaulシステムの戦略的方向性を定めている。
また、Oracle Solution Support Centerは引き続きOracle ERPシステムのサポートをおこなっており、導入後の機能強化およびサポートの要求に対処することでOracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaulシステムの安定化に貢献している。