日本オラクル特集記事

Oracle Process Cloud Service

オラクルのラリー・エリソン:
クラウドは「絶好のビジネス」と語る理由

Chris Murphy

 

IT業界が転換期を迎え、クラウド・コンピューティングが現代のテクノロジー・ビジネスの主流となる中で、オラクルのような大手IT企業は、事業のフォーカスが複数に分断され、旧態依然のやり方に固執していると誤解されがちだ。

事実は異なり、米国時間6月17日に実施されたオラクルの2015年度第4四半期の決算発表で、同社の経営トップ3名がクラウド・コンピューティングへのシフトを鮮明にし、多くの顧客がオラクルの広範なクラウド・サービスを積極的に導入していることをアピールした。

オラクルのCEOであるサフラ・キャッツは、「クラウドの売上とライセンスの売上を入れ替えているわけではない。クラウドの売上や契約が徐々に収益にインパクトもたらしている」と説明した。

オラクルの取締役会経営執行役会長 兼 CTOであるラリー・エリソンは、クラウドを「我々にとって絶好のビジネス」と表現した。

オラクルの2015年度第4四半期の決算では、Softwre as a Service (SaaS)とPlatform as a Service (PaaS)の売上は35パーセント伸長し(管理会計上の為替レート)、2015年6月からはじまった2016年度には、SaaSとPaaSの売上は60パーセント伸びると予測している。

Infrastructure as a Service (IaaS)の売上を足すと、2015年度のクラウドの売上は21億ドルに達する。オラクルの年間売上高の382億ドルのうち、未だ5.5パーセントでしかないが、クラウドが成長エンジンであることは明白だ。

オラクルのCEOであるマーク・ハードはクラウド・ビジネスの現状について、「我々が行っていることは、業界でも非常に稀なことだ。規模の拡大と成長のペースが両立している。世界最大のエンタープライズ・クラウド・カンパニーを目指している」と述べた。

オラクルはなぜ、クラウドの破壊的なビジネス・モデルに同調し、既に同社のクラウド・ビジネスは成長軌道にのっているのか。エリソン、キャッツ、ハードの経営トップ3人の決算発表における発言から考察してみたい。

1. なぜオラクルのクラウド・ビジネスは急成長しているのか

決算発表でエリソンはこの疑問への回答として2つの理由を挙げた。

エリソンはSaaSについて、10年かけてクラウド向けに再度設計した業務アプリケーション製品群であるFusion Applicationsが急速に受け入れられ、オラクルは1,000社以上のFusion ERPの顧客を持ち、その数はSaaSの競合企業であるWorkdayの10倍と言及した。

「クラウドERPの中堅企業および大企業向けの市場は、オラクルとWorkdayの2社のみ。そして、我々は勝ち続けている。オラクルはHCM、セールス、サービス、マーケティング、サプライ・チェーンといったSaaS領域でもNo.1、No.2のポジションの製品を提供しており、どのクラウド・カンパニーよりも多くのSaaSアプリケーションを持っている」(エリソン)

エリソンはPaaS領域において、Oracle DatabaseやJavaのクラウド・サービスには「積り積もった需要」があると自信を見せる。ユーザーはデータベースのワークロードやJavaのアプリケーションを「ボタンひとつ」でクラウドに移行できる。「だから、オラクルのPaaSビジネスはSaaSビジネスよりも急速に拡大している」(エリソン)

オラクルは米国時間6月22日に、データ管理、インテグレーションなど多数のクラウド・サービスを発表し、PaaSで大きな賭けに出た(当日の発表資料)。

2. なぜクラウド・ビジネスは、ライセンスやサポートよりも魅力的なビジネスなのか

オラクルはクラウド型のソフトウェアやプラットフォームの提供を通じて、顧客に多くの価値を提供している。ソフトウェアを提供し、顧客のためにそれを稼働させている。だから、ライセンスやサポートの契約よりも、クラウドの契約のほうがより多くの売上を生み出すと、エリソンは説明する。

しかし、SaaSとPaaSからの利益はどの程度あるのだろうか。

エリソンは、「驚くかもしれないが、ライセンスやサポートと変わらず、非常に収益性が高い」と述べた。

オラクルがクラウドのライバル企業と異なるのは、クラウドのデータセンターに必要なコンポーネントを所有していること、Oracle DatabaseやJava、Exadataなどが代表的だ。コスト的な優位性に加え、規模の経済も重なり、顧客が自ら運用するよりも安価にアプリケーションを提供できる。一方で、売上の大きな部分を占める高い利益率も維持できる。

従来のライセンス/サポート・モデルと比較して、クラウドの契約についてエリソンは、「売上は上昇傾向。利益も上昇。利益幅もほとんど同じ」と述べた。

一方で、IaaSの利益率は低い傾向にある(利益は生み出しているが)。「IaaSにおけるAmazonの利益率を見ればわかる。規模を拡大すれば高い利益を生み出すと思う」(エリソン)

3. クラウドはオラクルの新たな市場となる

ハードによると、2015年第4四半期にオラクルからSaaSを購入した顧客の60パーセントは、以前からのアプリケーションの顧客ではなかった。同年第3四半期に限れば、その割合は82パーセントだ。

オラクルがSaaSとPaaSの販売のターゲットにしているのは、グローバルに展開している中堅規模の会社だ。これらの会社はオラクルのオンプレミスのソフトウェアを今まで検討したこともなかった。

エリソンは、「SaaSが中堅規模の会社に適しているのは、コンピュータを購入し、データセンターを開設し、一定の従業員を雇用し、ライセンス・ソフトウェアを購入するコストも時間も必要ないからだ」と述べた。

4. クラウドはOracle Databaseの利用とアップグレードに影響はないのか

エリソンの考えでは、企業は今まで以上にパブリックとプライベート・クラウド間でより多くのワークロードを頻繁に移行するという。

「我々はクラウド上にあるものも、オンプレミスにあるものも互換性を担保できる唯一の企業だ。ボタンを押すだけで、プライベート・クラウドからオラクルのパブリック・クラウドにワークロードを移し、その逆も可能だ。開発テストをパブリック・クラウドで行い、本番をプライベート・クラウドで実行するなど自由自在だ」(エリソン)

このハイブリッド・クラウド・モデルは、オラクルの最新データベース、Oracle Database 12cの採用に拍車がかかるだろう。多くの企業はマルチテナントやインメモリ・データベースといった機能をクラウド・バージョンで試用し、オンプレミスのプライベート・クラウド環境で同様のことを実行するようになる、とエリソンは予測する。

キャッツは、セキュリティに関連するオプション製品の採用が大幅に増え、Oracle Database 12cのマルチテナント・オプションに関心を示す顧客が増えたと説明する。パブリック・クラウド・プロバイダで導入している効率性、アーキテクチャを参考にしながら、自社内やプライベート・クラウドでの利用を模索する。

5. 既存の顧客は、オンプレミスのアプリケーションやデータベースをクラウドに移行するのか

この質問に対してハード曰く、一斉にそうなることはないという。オラクルの新規クラウド顧客の60パーセントは、オラクルのアプリケーション製品を使ったことがなかった。既存のオンプレミスの顧客からの売上を意味するライセンス・アップグレードやサポートの売上は2015年度第4四半期で、8パーセント成長(管理会計上の為替レート)した。サポート契約の更新率も、従来よりも高いレベルを維持した。

しかし、依然巨大で成長し続けるこの収益源にについて話題にしたとしても、ハードとキャッツはオラクルのクラウドへの注力と優位性について控えめに語ることはない。

ハードは、「長期間にわたって、大規模なオンプレミス環境を維持することもできなくはない。しかし、ワークロードはクラウドへ移行している。我々にとって絶好の機会なのは、オンプレミスの顧客基盤を維持する一方で、クラウドへのシフトを通じてマーケットシェアを拡大することだ。成功に向けて前進していく」と述べた。

キャッツは、既存の顧客がオンプレミスのライセンスを維持する一方、クラウドを介して新しい機能を購入していると説明する。さらに、「我々が推し進めているとおり、徐々にクラウドへ移行して欲しい」と述べた。

ビジネスの歴史が語るように、旧来の大手企業はテクノロジーの破壊から何度も抗おうとしてきた。クラウド・コンピューティングの時代が到来し、オラクルは一転、劇的なシフトを推進している。注目すべきことは、オラクルのクラウドの成長を示す数字は、テクノロジーを利用する企業がオラクルのSaaS、PaaSを購入し、自身をクラウドへシフトする現象の表れなのだ。

本記事はForbes.com OracleVoiceの以下の記事を抄訳しています: