セルフ式讃岐うどんチェーン「はなまるうどん」が好調だ。健康を前面に打ち出し、2016年は50店を出店。2017年も積極的な出店で、現在415ある店舗を500にする計画だ。好業績の実現には迅速で正確な予算計画の策定と、それに基づく施策の実施が欠かせない。店舗数の増大で大きな負担となっていた予算管理業務の負荷軽減と高度化のために、はなまるが取った手段とは。
コクうまサラダうどんも人気の「はなまるうどん」。ショッピングセンターのフードコートなどにも多く出店している
出汁(だし)をかけたうどんを受け取り、それに天ぷらなど好みのものを自分で乗せていくセルフサービス方式の讃岐うどん。この方式のうどん店は安くておいしい本場の讃岐うどんが食べられると、今やあらゆる年代の人たちに人気で、全国どこでも馴染みのものになっている。元々、セルフ式のうどんは讃岐うどんの本場香川県以外にはあまり存在せず、全国へ普及したのは21世紀に入ってからだ。その立役者となったのが、2000年に香川県で創業した「はなまるうどん」だ。同社が2002年に県外への出店を開始し、一気に店舗数を増やしたことでまたたく間に全国に拡大、セルフ式の讃岐うどんは外食産業における新しい業態として定着した。
はなまるうどんが現在力を入れているのが、健康メニューの開発。そして食と栄養に関する研究へのサポートを通じて、働く日本人に健康を届けることだ。「ヘルシーで本格的な讃岐うどんを美味しく食べて、健康にもなって欲しい。こう考えて、様々なメニューを開発、提供してきました。その第1弾として、2013年4月にはすべての麺を1玉にレタス1個分の植物繊維を含んだ“はなまる食物繊維麺”に変えました。その後、毎日の野菜不足を解消できるようにするために、様々な緑黄色野菜がたっぷり入った“コクうまサラダうどん”をレギュラーメニュー化しました」と、はなまる経営企画室の池浦智哉氏は語る。
また、うどんを注文した顧客に期間中毎日天ぷらが1品無料となる「天ぷら定期券」や、季節商品の投入など、積極的な販売施策も来店客数の増加と売上拡大に寄与している。
2017年2月時点で、はなまるうどんの店舗数は415店ある。駅前や駅ナカなどの新立地やショッピングセンターへ1年間で50店という積極的な出店をした結果、売上高は対前年比11%増の229億円余となった。
一方で、積極的な出店攻勢により本社管理部門の負荷も高まっていた。
はなまるの業績の好調さは、本社が店舗をコントロールし、顧客と従業員の声を聞いて、それを販売施策や出店施策に反映させてきたことが背景にある。はなまるは2004年吉野家ディー・アンド・シー(現吉野家ホールディングス)と資本提携し、2006年には同社の連結子会社となった。その中で、QSC(品質・サービス・清潔さ)向上活動を行い、店舗を指導するスーパーバイザー(SV)の位置づけなども変えた。「SVは一人で7~11店舗を担当し、さらにその上に7~8人のSVを取りまとめる統括SVを置いています。この体制で、顧客や従業員の声も含めた店舗の状況を本社がつかみ、それを店舗運営の方針決定に反映させ、店舗を指導していくというフードサービス業としての原則を徹底していったのです」(池浦氏)。
本社が統括SVとSVを通して店舗をコントロールする際に、各店舗が適正な状態にあるかを判断するための材料のひとつが損益計算書(PL)に基づいた予算管理だ。今まで、はなまるでは予算作成作業を1店舗1シートのExcelで行い、経理部からの減価償却費、総務部からの社会保険料・地代家賃など各部門からの情報を経営企画室で入力し、売上高や販売管理費などは営業部、うどんなどの原価は製造部が入力していた。
ところが店舗数の拡大とともにシート数が増えていき、2016年には400シートを越えてしまった。「予算管理のファイルは1つで30MBや40MBという巨大なファイルになっていて、それを串刺しにする形で集計をかけます。そうすると、まず開くのに時間がかかります。修正して保存しようとすると、今度はフリーズしてしまって作業をやり直すこともしばしばで、本当に苦労していました」(池浦氏)。
Excelでの管理の効率の悪さを解決するために、はなまるでは各事業本部の部門長と統括SVの約50人が同時にアクセスできることを最大の要件に、クラウド型サービスを導入することにした。検討の結果、オラクルのクラウド型経営管理ソリューション「Oracle Planning and Budgeting Cloud Service(Oracle PBCS)」を採用することにした。「Oracle PBCSを選んだ最大の理由は、短期間で導入できることでした。稼働開始予定まで3カ月くらいしかなかったので、システムを1から作るのは不可能でした。そこで、業種特化型のテンプレートを活用できるOracle PBCSにしたのです」と池浦氏は選定理由を振り返る。
その上で、Oracle PBCSには2016年秋から基礎データを入れ始め、2017年2月上旬には3月から始まる2017年度の予算計画を確定させることができた。今までExcelでは手作業で集計や予実対比など帳票作成などに多くの時間を費やしていたが、Oracle PBCSにより自動化・簡略化されたことで、大幅に時間短縮できた。
Oracle PBCSで、はなまるの予算作成業務は楽になった
また、経営企画室では月次業務として、来店客数や売上高、従業員数や労働時間などの勤怠データ、給与データ、廃棄ロスなど管理会計上で必要な指標を抽出して、表にしている。Oracle PBCSには各システムと連携して、データを予算と実績で格納できる機能がある。経営企画室ではこれを活用して集計業務の負荷を軽減させるとともに、統括SVやSVも様々なデータを組み合わせて使えるようにしていく考えだ。「集計業務の効率化はメドが立ったので、今後は管理会計で必要になる分析に手を付けていきたいと考えています。例えば都心のオフィス街の店舗と郊外のショッピングセンターの店舗では、曜日によって来店客数や売り上げが全く異なります。そこで曜日別の来店客数や客単価を分析し、店舗ごとのきめ細かな販売施策につなげるなど、様々な活用の仕方を考えています」(池浦氏)。
はまなるでは、今後国内500店舗に向けて出店を積極的に推し進めていく計画だ。その実現のためにOracle PBCSを活用して、予算管理を高度化。販促企画の迅速な実施で既存店売上も伸ばしながら、事業を成長させていく考えだ。