日本オラクル特集記事

デジタルは破壊するのではなく、支援するもの

日本オラクル 新年度事業戦略

日本オラクルが2017年度の事業戦略を発表した。その中で、改めてクラウドに積極的に取り組む姿勢を打ち出しているほか、新たに「Digital AID by POCO (クラウドのちから:The Power of Cloud by Oracle)」というキーワードも盛り込まれている。その具体的な内容について、取締役 代表執行役社長兼CEOである杉原博茂氏の話も交えながら紹介していく。

大きな成果を収めた2016年度

日本オラクル株式会社は2017年度の事業戦略を発表した。これまで日本オラクルでは「2020年までにNo.1クラウドカンパニーになる」という目標を掲げた「Oracle Japan VISION 2020」の実現に向け、さまざまな取り組みを進めてきた。2017年度においてもこの方針を堅持し、「社会に貢献するクラウドカンパニー」となるべく、多方面に渡ってさまざまなチャレンジを進めることが示されている。

日本オラクルのビジネスや、将来に向けた戦略であるOracle Japan VISION 2020は市場からも高く評価されており、2016年度は株価ベースで+9%の成長を実現し、時価総額も508億円の増額という結果となった。細かく見ていくと、売上は前年度比+5.7%の1,702億円、営業利益は502億円で+6.7%、純利益は+11%の336億円を達成している。さらに日本オラクルが注力しているクラウドの領域を見ると、SaaS/PaaS/IaaSの成長率は+39.3%であり、当初予想である+16%~32%を大幅に上回る結果となった。新規顧客数も+350社(SaaS:150社、PaaS:200社)となり、着実にオラクルのクラウドサービスは広まりつつある。

既存ビジネスも堅調だ。新規ライセンス売上は前年比+3.9%、「Oracle Exadata Database Machine」をはじめとする「ハードウェア・システムズ・プロダクト」も+3.1%と売上を拡大している。既存のビジネスを伸ばしつつ、クラウドという新しい領域にも果敢にチャレンジする「パラレル構造改革」を日本オラクルでは推し進めており、その成果が数値として表れた形だと言えるだろう。また、営業職を中心にクラウド人材を積極的に採用しており、社員数は94人も増加(2015年5月31日と2016年5月31日の社員数増減比)している。

デジタルで人々を助ける「Digital AID by POCO」

さらなるビジネスの成長を目指し、杉原氏が2017年度の最重点施策として紹介したのは「Digital AID by POCO」である。ITはさまざまな領域に浸透し、既存のビジネスを大きく変えつつある。たとえばUberは、タクシー業界に大きなインパクトを与えている。このようなデジタル・テクノロジーを活用した変革を欧米では「デジタル・ディスラプション」と呼ぶが、杉原氏は日本にはそぐわないと話し、その理由を次のように説明した。

「北海道から沖縄まで、私は日本全国に行っていますが、地方に行くと『デジタルは必要なの?』と言われますね。自分たちの仕事を奪うものと捉えられているようです。そうではなく、みなさんの生活をサポートする、あるいは少子高齢化をはじめとする社会的な課題を解決する、そのためにデジタルを活用する。そういった思いを込めて『Digital AID by POCO』を提唱していきます」

AIDには「助ける」や「支援する」といった意味がある。つまり「Digital AID」は、デジタル・テクノロジーを使って人々の生活やビジネスを助ける、あるいは社会的な課題の解決を支援することを指す。その実現に使うのが「POCO」、つまりオラクルのクラウドサービス群である。

実際にオラクルのクラウドを活用した事例として杉原氏が紹介するのは、「米八(よねはち)」のERPクラウドの導入だ。赤飯や栗ご飯、五目ご飯といった「おこわ」やお弁当の販売で業績を伸ばす米八だが、その背後には迅速に販売状況を把握できないなどといった課題があった。それを解決するために選ばれたのがオラクルのERPクラウドであり、わずか3カ月で導入を完了させている。この事例が持つ意味を杉原氏が語った。

「これまでERPの導入には1~2年程度の時間がかかり、また数億円のコストが発生していました。しかし今回の事例は導入を決めてわずか3カ月後にカットオーバーし、しかもトレーニングを行うことなく使われるようになった。つまり、スマートフォンを買ってきて使うのと同じようにERPが使えたというわけです。これが『Digital AID by POCO』の本当の意味だと考えています」

テクノロジー・カンパニーとしての強みを打ち出す

さて、2017年度具体的な施策としては、「SaaS/PaaS/IaaS事業の拡大」、「エンタープライズ営業の強化」、「システム事業の拡大」、「地域ビジネス成長への貢献」の4つの柱に加え、「オラクルと他社との違い、それは、テクノロジー・カンパニーであること」という文言が追加されている。その理由について杉原氏は「オラクルは30年もの間、企業で使われているシステムや社会インフラで使われるミッションクリティカルなシステムを支え続けてきたテクノロジー・カンパニーであり、それが他社のクラウドサービスとの違いになっています。今後、この私たちの強みを積極的に標榜していきます」と語る。

最重要施策の4本柱の具体的な取り組みを見ていこう。まず「SaaS/PaaS/IaaS事業の拡大」についてはERP/EPMクラウドサービスを積極的に展開するほか、パートナー企業とのクラウド・プラットフォームについての協業を推進する方針だ。

 「エンタープライズ営業の強化」は、製造と金融、流通/サービス、通信/公益、公共の5つのインダストリー別の組織を設置する。さらに大口顧客へのソリューション一体提供の強化や、日本企業の海外事業支援にも取り組む。

 「システム事業の拡大」では、ストレージやサーバー、ソフトウェアをパッケージ化した「コンバージドインフラストラクチャ」戦略を展開する。またビッグデータやIoTの領域で重要性が高まる、ストレージ製品のニーズ拡大によるビジネスの成長も見込んでいる。

 「地域ビジネス成長への貢献」も重要なポイントとなる。こちらは新たに中国四国支社長を任命し、これによって7支社7支社長体制を整えた。今後、47都道府県すべてにオラクルソリューションを導入することを目標とし、各地でのクラウド人材の採用も促進する予定だ。

地域貢献について、デジタル格差の解消にも杉原氏は言及する。

「アメリカにはニューヨークやロサンゼルス、シカゴ、シアトルなど複数の大都市がありますが、日本は東京と大阪、神奈川に集中してしまっています。その地域格差をオラクルのクラウドで解消したい。クラウドによる、所有するITから使用するITへのシフトを戦略的に促してデジタル格差を解消していく。これは我々の大志であります」

少子高齢化や地域格差などといった社会的な問題の解決に、オラクルが持つテクノロジー、そして「クラウドのちから」がどのように活かされていくのか。日本オラクルの2017年度の取り組みにぜひ注目していただきたい。