日本オラクル特集記事

縮小傾向の日本市場、成長を継続するヒントとは
ANAのカスタマー・エクスペリエンスへの取り組みから学ぶ

モニカ・メタ

ご存じの通り日本は、他の先進国と同様に少子高齢化に直面している。

世界で第3位の経済大国である日本は、人口減少の局面を迎えており、15歳以下の子供の数に対して65歳以上の高齢者の数は2倍となっている。この現状が将来的に労働市場に与える打撃を回避するため、安倍首相は出生率向上とこれ以上の人口減少を食い止めるため、政府主導の改善計画策定を急いでいる。

しかし、人口減少が与える影響は経済の供給側だけではない。日本の消費者市場は年々縮小し、日本企業は国境を越えて新たな顧客獲得を模索している。例えば、日本最大手の航空会社である全日本空輸 (ANA)では、5年前の国際線搭乗者の70%は日本人だった。従来通りの戦略を続けるということは、縮小傾向にある市場に対して、競合他社と熾烈な顧客獲得競争をするということを意味していた。

「日本の人口はほぼ横ばい、今がピークで今後は減っていく傾向にある。成長を維持するためには、日本人以外のお客様をサービス対象とする備えが必要」と、ANA業務プロセス改革室 イノベ-ション推進部長、荒牧 秀知氏は言う。

ANAが望む海外の顧客を対象に満足度の高いサービス提供への備えを万全にするため、同社の経営層は、顧客対応における抜本的な改革を行うことを決定し、その一環としてOracle Service Cloudを活用している。

顧客を知る

まず、ANAはお客様の旅程全体に着目して根本からお客様体験価値の可視化に乗りだした。対象者に密着して調査する「エスノグラフィック・メソドロジー」という手法に基づき、サービス企画部門のスタッフが旅行者になったつもりでその体験を分析した。実際のところ、幹部層の1人は40歳のアジアのジャーナリストになりきり、フライトの予約から搭乗にいたる過程を体験した。その後、彼女は自身が体験したことを共有し、何が足りなくて、何に改善が必要なのかについて焦点をあてた。最終目標は、ANAの経営層が同社のサービス内容を再設計することにあった。旅程全体という観点では、直接は管轄していない空港のセキュリティ領域などにも分析が及んだ。

「当社のすべてのサービスを再認識し始め、ANA起点ではなく顧客を中心にコミュニケーションすることを考えるようになった」と荒牧氏は述べる。

同社は、頻繁に利用する搭乗者や旅行者にとってのANAやほかの航空会社の体験をインタビューし、1,000項目以上の気づきを得た。搭乗者の体験を13のステップに分け、それらステップにおいて一つずつ体験の改善に注力した。

予約サポートの一元化

Oracle Service Cloudを活用し、ANAは幅広いコミュニケーション手段、たとえば電子メールやチャットなどを使った顧客からの問い合わせを管理する統合されたカスタマー・サービス基盤を構築した。今では国内線に搭乗する70%の搭乗者が、カスタマー・サービス担当者による電話でのサポートを得ることなくWebサイトからチケットの予約を行っている。

世界中の顧客からの問い合わせに対して円滑に回答を用意するために、ANAは以前に取得した顧客の電子メールとANAのウェブサイトの検索機能からキーワードを分析し、荷物サイズのガイドラインから子供連れのお客様に役立つ情報まで、Webサイトに必要なFAQを拡充した。

「このFAQによって、電子メールによる搭乗者からのお問い合わせを円滑に削減できていると認識しています。これによって当社のお客様満足度も向上しています。その理由は、お客様は問い合わせに対して電話する必要もないし、電子メールの返事を待つ必要もないからです」と、 ANA業務プロセス改革室 イノベーション推進部サービスイノベーションチームリーダー、吉村裕子氏は言う。

また、お客様はANAのモバイル・アプリを、フライト情報取得のためだけでなく、搭乗時刻とセキュリティ・チェックの混雑度合をもとに、セキュリティ・チェックを通らなければならない時刻までの残り時間を確認することもできる。

国際線搭乗者向けのよりよいサービス提供への取り組みとしては、ANAではフライトの予約状況を事前にチェックし、フライト搭乗者の国籍と相性のいい客室乗務員を配置するなどしている。将来的には、タブレット端末に頻繁に搭乗する顧客のプロファイルを格納して客室乗務員が機内に持ち込み、顧客一人ひとりに最適化したサービスを提供できるようにしていく予定だ。

さらにANAは、Oracle ExadataOracle GoldenGateを使って、膨大な量の顧客記録を管理し、緊急のフライト変更情報を搭乗者にメールで配信する仕組みを構築している。

結果はファーストクラス

2015年3月、ANAはカスタマー・サービスにおいて世界でトップ5の航空会社に選ばれた。同社はまた航空会社を評価する企業であるSkytraxによって五つ星を獲得し、過去3年間にわたってAir Transport World MagazineのAirline of the Yearに、Center for Aviationの Asia Pacific of the Yearにも選出されている。

さらに、2015年には国際線搭乗者のうち50%以上が日本人以外の搭乗者になり、5年前の30%と比較して大きく伸びている。荒牧氏はその割合は今後も会社の成長とともに増えていくと予測している。ANAの経営層は、いわゆる“カスタマー・エクスペリエンス・トランスフォーメーション”をこれらの成果をもたらすための取り組みとして評価している。

ANAの取締役会メンバーは隔月で開催されるブランド戦略会議に参加し、カスタマー・エクスペリエンス・トランスフォーメーションの進捗を議論し、意欲的な成長目標に対しての進捗度合を確認している。

「今年度の売上見込みは1.8兆円で、今後10年で2.2兆円を目指している」と荒牧氏は述べる。

だが、吉村氏は売上成長だけがANAの取り組みのゴールではないと強調する。「重要なのはお客様体験価値の向上であり、ANAがお客様の時間を大切にしていると感じていただけるのであれば、ANAを選んで頂いた甲斐があったということだと思います」と述べる。

本記事はForbes.com OracleVoiceの以下の記事を抄訳しています:
http://www.forbes.com/sites/oracle/2016/01/22/how-to-maintain-growth-despite-disappearing-customer-base