日本オラクル特集記事

アメリカズカップ本戦 オラクル・チームUSAが新デザインのヨットを公開
~エンジニアリングを極めたデータマシン~

バミューダ・ロイヤルネーヴァルドックヤード発 — 最先端のテクノロジーを駆使し、スピードの極限に挑むアメリカズカップ。“海のF1”とも呼ばれるヨットレースの最高峰に参戦するオラクル・チームUSAは、今年6月のアメリカズカップ防衛戦で使用するヨットを公開した。空力を考慮して作られたこの流線型のフォイリングカタマラン艇は、現代芸術の傑作であり、同時にエンジニアリングの極致でもある。

アメリカズカップ バミューダでの本戦コースはこれまでの大会より狭く短くなっている。そのため新しいオラクル・チームUSA艇の機動性は特段重要となる。

2月14日に英領バミューダ諸島にあるオラクル・チームUSAの拠点で発表された新しい改良型ヨットは、今大会の新しいスペックに従い、長さ15メートル、重さ2,400キログラムというサイズである。これは、2013年9月にサンフランシスコ湾で行われた前回のアメリカズカップ大会で、エミレーツ・チーム・ニュージーランドに9勝8敗という歴史的な逆転勝利を納めた約22メートルの巨大なオラクル・チームUSA艇よりもはるかに短く、軽くなっている。

こうした小型のAC50カタマランは、4年前のレース艇よりも操作が容易であるため、乗組員が大胆な、時として不安定な態勢をとるのが容易かつ安全になり、競争上の優位性を得ることができると、オラクル・チームUSAのパフォーマンスディレクターを務めるイアン・フレッシュ・バーンズ氏は語っている。

バミューダのグレートサウンドで間もなく開催される第35回アメリカズカップ大会の本戦のコースは、これまでの大会よりも狭く短いという事実を踏まえると、この操作性は特に重要である。5月に行われる予選には5チームが参戦し、その勝者が6月の決勝戦でオラクル・チームUSAに挑むことになる。

ACクラスのボートに関しては、「以前は大きいほうが有利だった」と、オラクル・チームUSAのスキッパーであるジミー・スピットヒル氏は語る。2010年までは90フィートのボートがアメリカズカップの標準であったという。「とはいえ、新しいヨットのパフォーマンスには圧倒されるばかりだった。」

空飛ぶヨット 先に着水したチームが負け

新しいオラクル・チームUSAカタマラン艇の最も印象深い特徴には、4年前のモデルから改良された部分もある。たとえば、炭素繊維製のウィングセールだ。2013年より短くなったものの、依然として24メートルの高さがある。また、胴体下のハイドロフォイル、すなわち「ダガーボード」も改良されている。これはヨットを持ち上げて水上を滑走させ、抵抗をほぼゼロに抑えてボートを高速化する。

最新のオラクル・チームUSA艇の設計者は、パートナーであるエアバスのエンジニアと協力し、民間航空機の翼や翼端と同様の空力、特殊材料、構造化負荷計算を適用した。今はシュリンク包装フィルムで覆われているウィングセールには、航空機の翼と同じようなフラップがあり、さまざまな風の条件に合わせてウィングを上下に動かし、調整することができる。この結果、4年前のアメリカズカップ決勝戦のオラクル・チームUSA艇と比べ、ウィングセールの抵抗が3分の1~2分の1も減り、パワーは約2倍に高まっているとバーンズ氏は語っている。

ハイドロフォイルに関しても、パートナーが新しい設計や製造プロセスを開発し、重量を減らして形状を最適化することで、10~15トンの荷重に安全に対応するとともに、ボートのスピードを最大限に高めている。

また、ウィングセール、フォイル、ジブセイルといった船体パーツを制御する人力の油圧システムも不可欠だ。このシステムは特に、乗組員が不安定なフォイリングモードでヨットの安定性を制御するために重要である。

Airbus A350 XWB旅客機の飛行制御システムから取り入れた、新しい制御システムの反応性も改善されており、オラクル・チームUSAのカタマラン艇は初めてレースタイム全体を通じて水上を滑走できるようになったと、エアバスのビジネス開発責任者のピエールマリー・ベロー氏は語っている。バミューダのレースでは、2013年よりも約15%速い、時速96キロに届くほどのスピードが見込まれ、競合チームも水上での滑走時間が100%となるよう目指している。要するにバーンズ氏の言葉を借りれば、「先に着水したチームがおそらくレースに負ける」のである。

どこもかしこもデータだらけ

オラクル・チームUSA艇はデータ分析マシンでもある。ヨットと乗組員が出帆するたびに、さまざまなボート部品や身体部分に取り付けられた1,000個ものセンサーから1テラバイトものデータ(大半が動画)が収集され、分析のために高性能データベース・マシン「Oracle Exadata」に送られる。

たとえば、ボートのウィングセールには約400もの空力用圧力センサーが取り付けられている。エアバスが開発したこれらのセンサーはMEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれ、多様な状況下における硬質帆周辺の気流に関する重要な情報をオラクル・チームUSAにもたらし、乗組員がパフォーマンスと操作をさらに最適化するために役立つ。

乗組員に取り付けられたセンサーは、心拍数や発汗、乳酸レベルから、ボート上で過ごした時間数、さらにはセールを巻き上げて調整することで動力を生み出す、ウィンチハンドルを回す際に使うエネルギーに至るまで、あらゆるデータを収集する。このデータがその後、個人のトレーニングや栄養プログラムのための情報源となり、チームメンバーのパフォーマンスを最大化する。

レース中にリアルタイムで実施できるデータ分析は限られている。乗船中の6人の乗組員(ボートの小型化により11人から減少)は、精神的作業と身体的作業に没頭しているからだ。押し寄せる波のただ中で秒刻みの戦術的判断を下し、ハンドルを回し続けるという過酷な作業である。乗組員が対処できるのはせいぜい、船内の小型Linuxサーバーに接続された、高耐久性タブレットでわずかな基本ダッシュボードを見ることぐらいだとバーンズ氏は述べている。

長期的なビッグデータの課題は、バミューダ近辺に吹く予測不能な大西洋の風を地図上に描くことである。オラクル・チームUSAのデータエキスパートは、「Oracle Exadata」、「Oracle Big Data Discovery」、「Oracle R Advanced Analytics」といったシステムおよびツールを用いて、この課題に取り組んでいる。

バミューダ諸島のグレートサウンドでの数カ月に及ぶトレーニングにおいて、チームはさまざまな個所からすでに数百万もの気象データポイントを収集しており、今後はそれらを相互に関連付ける必要がある。その目的は、100メートル単位、あるいは50メートル単位のグリッドまでレースコースの風のパターンを(半ノットの精度で)予測し、正確な進路を描いて操作を最小限に抑えることにあるとバーンズ氏は語っている。

参考記事:【イラスト図解】“海のF1”の技術進化、「空飛ぶ船」の誕生

本記事はForbes.com OracleVoiceの以下の記事を抄訳しています:
http://www.forbes.com/sites/oracle/2017/02/16/new-oracle-team-usa-boat-an-engineering-marvel-data-machine/