日本オラクル特集記事

「Oracle Cloud Days Tokyo 2016」基調講演レポート

第4次産業革命を率いるGE、なぜ企業は改革を迫られるのか

インターネットが引き金となり様々な業界が大きな変革期を迎えている。これを「第4次産業革命」と称し、自ら牽引するのがGE(ゼネラル・エレクトリック)だ。「産業界を熟知しているからこそ」と創業134年の同社はその根拠を説明する。日本オラクルが10月都内で開催した自社イベント「Oracle Cloud Days Tokyo 2016」でGE Digital チャネル・アライアンス・ビジネス開発、ベンチャー担当 グローバル責任者のデンジル・サミュエルズ氏が、GEの改革への取り組みとその背景について語った。

「Oracle Cloud Days Tokyo 2016」で、「GEのクラウド戦略によるビジネストランスフォーメーション」について講演するGEのサミュエルズ氏

産業界の生産性はこの6年で1%しか増えていない

サミュエルズ氏はまず、生産性について辛い現実を示した。「1991年~2010年、産業界の生産性は4%増加した。だがここ6年の生産性増加はわずか1%にとどまっている。」1%の増加で生まれる価値は金額にして約1兆ドル。これは、人手不足が今後さらに深刻化すると予想され、成長国の中で生産性の低さが指摘されてきた日本には特に、重くのしかかかる現実だ。

この低成長の解決策としてGEが至った結論こそ、「インダストリアル・インターネット」だ。これまで我々が使ってきたGoogle検索やAmazonでショッピングができるインターネットがコンシューマー向けであるのに対し、産業用に企業が利用するインターネットを構築しようと提唱し、2015年にGE Digitalが誕生した。「我々がなぜインダストリアル・インターネットを構築するかー我々は現在も航空エンジンや発電所を製造するインダストリアルカンパニーだからだ」とサミュエルズ氏は説明する。

GE Digitalの土台となる戦略的技術がクラウド上で稼働する「Predix」だ。インダストリアル・インターネットのOSとも言えるもので、機器との接続性、GEが培った産業界の知見が組み込まれており、IoTのためのアプリケーションと分析、機械学習、マシンレベルの安全性といった機能も備える。誰もが参加できるオープン性を特徴とし、拡張も可能だ。

インダストリアル・インターネットのパワーとは?

インダストリアル・インターネットを利用するデジタルカンパニーのビジネスとはどのようなものか?サミュエルズ氏はGEの主力製品分野の1つである航空エンジンを例に、ビジネスがどう変わるのかを説明した。

航空機の心臓とも言えるエンジン、絶対に運航中の故障があってはならない。そのため、航空エンジンメーカーはどこもしっかりしたメンテナンス契約を結んでいる。ここにリアルタイム・センシング技術が活用できる。エンジンのブレードなどにセンサーを装着し、航空機が上空でエンジンに加わるストレスの状況をリアルタイムで知ることができる。これにより、メンテナンスは事後的なものから、予兆的なものに変わる。航空機はメンテナンス目的で運航から外れた瞬間に、収益の機会を失うので、このような予兆保全による運行停止期間の短縮は航空会社に大きなメリットをもたらす。

「産業機器にデジタル技術を組み込むことで、インサイトを得ることができ、資産の活用度が向上することでリターンを得ることができるようになる。つまり生産性のアップであり、ダウンタイムの削減だ」とサミュエルズ氏。「これが10~15%生産性をあげる方法だ」と続けた。GE自身は2016年に5億ドル、2020年までに10億ドル相当の生産性アップを目指していると言う。

だがインダストリアル・インターネットがもたらすメリットは、部品メーカーとその顧客の関係に止まらない。OT(制御技術)がIT(経営情報技術)と結びつくことで可能性は無限になる。航空エンジンの情報をメーカーだけでなく、フライトオペレーションに活用し、乗務員のスケジュール、貨物運用、地上のオペレーションなどと組み合わせれば全体としての生産性は加速する。予兆メンテナンス単独利用をはるかに上回る価値が得られる。このような連携を実現するのがPredixであり、ITへの価値拡大こそがGEとオラクルが4月に戦略的提携を結んだ狙いだ。

Predixを介してオラクルのERPやサプライチェーンなどのアプリケーションとそれらを支えるビジネス・プラットフォームと連携することで、「OTとITが初めて一つになる。フロントオフィスもバックオフィスも変わる」とサミュエルズ氏はその潜在性を強調した。

新興のクラウド企業には任せられない

なぜオラクルとの戦略提携を選んだのか? 興味深いところだが、サミュエルズ氏の回答はいたって妥当かつシンプルなものだった。「インダストリアル・インターネットはコンシューマー・インターネットより桁違いに規模が大きくなり、なおかつ正確性と可用性、そして強固なセキュリティが求められる。これはエンタープライズ級の企業で高い実績がなければ任せられない。オラクルは我々がOTの世界でやっていることを理解している」(サミュエルズ氏)。

もちろんGEはオラクルの顧客でもあり、Oracle ERPをGEの全事業でグローバルに実装している。また、GEの顧客の多くもオラクルのアプリケーションやデータベースを導入している点も選定理由だったようだ。

両社は提携のもと、OTとITで分断されている情報の縦割り構造、工場と経営の垣根を取り除く。GEのOracle ERP Cloudを利用したERPプロジェクトは、1,400人以上のユーザー、3万5,000の仕訳伝票バッチがあり、30のシステムと連携し、20の外部システムと接続する規模に達していると言う。約175人のオラクルのチームがGEの業務をサポートし、オラクルはGEから1億7,500万〜2億ドルの受注を見込む。

「クラウド企業の中には、オラクルは古い企業と揶揄する人がいる。GEは130年以上の歴史を持つが、常に自らをイノベーションしながら進化している。我々と同様に、創業から39年間培ってきた深さ、経験、ノウハウをベースに常に最先端へと進化を続けるオラクルこそがベストパートナーだ。数年前に生まれた企業にはとても真似できない」とクラウド企業におけるオラクルの”経験値”を評価した。

第4次産業革命時代に「インダストリアル・インターネット」で先陣を切るGE。GEは第2次産業革命期の代表的存在であるトーマス・エジソン氏が興した会社だ。GEはDow Jones Index発足時の32社のうちの1社だが、現在でもリストに残っているのはGEだけだ。残酷な産業界を見てきたからこそ、常にノウハウの上にイノベーションをおこしていく重要性を理解しているのだろう。

スピーチを結ぶにあたってサミュエルズ氏は会場に向かって、「皆さんの会社も何らかの資産を持っているはずだ。数ヵ月後に誰かがやってきて、おいしいところを持っていかれてしまう可能性はある」と警告した。GE自身が日々自社内で問いかけている問いであり、説得力を持って会場に響いた。