日本オラクル特集記事

クラウドで変化への対応と確かな安全を両立させる
~「Oracle Cloud Days Tokyo」レポート

フリーランス・ライター
末岡 洋子

日本オラクルは12月8日と9日、都内で自社イベント「Oracle Cloud Days Tokyo」を開催した。創業30周年、最大手のデータベース企業としてエンタープライズでは老舗ベンダーだが、クラウドでもSaaS、PaaS、IaaSを揃えるという本気ぶりだ。イベントのテーマは「POCO(The Power Of Cloud by Oracle)」—オラクルのクラウドで何ができるのかを示し、優位性を伝える。ここでは初日の基調講演の模様をレポートする。

●何十年も前に作られたレガシーシステム

基調講演のステージに立った日本オラクルの取締役 代表執行役社長 兼 CEOの杉原 博茂氏はまず、10月に米オラクルが開催した「Oracle OpenWorld San Francisco」の報告を行った。

同イベントには141カ国から6万人が参加、この中には日本から参加した500人も含まれている。開催地サンフランシスコのあるベイエリアの経済効果はなんと150億円にも及んだとのことだ。Oracle OpenWorldでは共同創業者でCTOを務めるラリー・エリソン氏、CEOのマーク・ハード氏をはじめとした幹部が、現在の変化やエンタープライズ市場の展望、そしてオラクルのクラウド戦略を語った。

産業界ではスピードが加速しており、「”Agility”--俊敏性」が重要になっている、と杉原氏。「いかに素早く市場に参入できるか、成長・拡大して生き残っていくかが重要になっている」という。

一方で、今年の7月8日、ユナイテッド航空、Wall Street Journal、ニューヨーク証券取引所がそれぞれシステムの支障により業務に障害が出たことに触れた。ニューヨーク証券取引所の場合は約4時間の間取引ができず、大きな損失になったことが予想される。「インターネット、検索エンジンなどがなかった何十年も前に作られたレガシーシステムがたくさんある。サイバー・セキュリティにかかる費用は年々増加しており、オンプレミスモデルがどれぐらい続くのか疑問が投げかけられている」と杉原氏は説明する。

●変化に拍車をかけるミレニアル世代

このような技術のシフトは、既存のエンタープライズ・ベンダーにも影響を及ぼしている。具体的には、IBMのx86サーバー事業の売却、Hewlett-Packardの分社化、DellによるEMC買収計画などで、この4社とNetApp、Teradataを合わせた6社合計の売上高はこの2年で約2兆円減少しているという。これらはクラウドの台頭と普及が無関係ではないはずだ。

産業界、そしてエンタープライズIT業界の変化に拍車をかけているのが、1980年代〜2000年代前半生まれの”ミレニアル”世代だ。日本では、”ゆとり”と呼ばれる世代で、考え方、消費の仕方、生活の仕方がそれまでの世代とは異なるデジタル・ネイティブだ。世代交代という課題は、日本では特殊さを伴う、なぜか?少子化により人口の減少が進んでいるためだ。「2020年の東京オリンピック・パラリンピックの時には、3割以上が65歳以上、さらには250万人の人口減が見込まれる。これは人口269万人の大阪市がまるごとなくなるのと同じ」と杉原氏、「唯一の方法は、生産性を上げること。ここでITが重要な役割を果たす。ITは他人事ではない」と続けた。

われわれを取り巻く環境の変化に対し、クラウドは重要な対策となりうる。杉原氏はOracle OpenWorldを振り返り、「ラリー(エリソン氏)がものすごいパッションでクラウドはこういうものだといった」とオラクルが本気であることをアピール。また、CEOのハード氏は、”2025年のビジョン”として10年後を予測し、1)アプリケーションの8割がクラウドで稼働、2)アプリケーションスイートを提供するベンダーは2社で80%を占める、3)開発テスト環境は100%クラウドになっている、4)セキュリティはプロに任せた方が良いという認識の下で企業の全データがクラウド上で保存される、5)安全なIT環境の考え方が変わり、エンタープライズ・クラウドが最も安全と考えられるようになる、と5つを披露したと報告した。

●「POCO」は日本オラクルオリジナルのキーワード

「オラクルが考えるクラウドは、社会の様々なものがつながる新しい世界を実現する。ソーシャル、IoT、ビックデータなどの技術をオラクルは全て持っている」と杉原氏はオラクルの包括性をアピールする。クラウドという新しいパラダイムでは、SaaSではSalesforce.com、IaaSではAmazon Web Services(AWS)など、新参ベンダーを相手に戦うことになり、古くからのライバルであるSAP、IBM、Microsoftなどもクラウドに拡大しつつある。オラクルはチップからアプリケーションまでを揃えており、「秀逸なハードウェアとソフトウェアを極力まで融合させ、使う側のために何ができるかを突き詰めていく」とした。POCOはそれを分かりやすく伝える日本オラクルオリジナルのキーワードとなる。

すでにSaaSでは600近くのアプリケーションがあり、IaaS、PaaSも備える。アプリケーションは”完全なスイートの提供”を目標に、クラウドに向けて10年がかりでコードを書き換えた。「Oracle ERP Cloud」は1,300社が、人事管理の「Oracle HCM Cloud」では5,000社が導入しているという。日本でも、サッポロビール、Francfrancなどのブランドを運営するバルス、リコー、東京ガスなどさまざまな業種が導入しているとのことだ。

杉原氏が差別化として強調したのは、セキュリティ、オンプレミスとクラウドとの連携、ミッションクリティカルな領域でこれまで培ってきた信頼だ。セキュリティではOracle OpenWorldで発表した最新の「SPARC M7」プロセッサを紹介、32の暗号化アクセラレーションを備え、“常時オン”の暗号化機能がシステムを保護する。「Salesforce.com、AWSでは作れない。なぜならチップは開発していないから」と杉原氏。サイバー攻撃が増えていることもあり、このような機能は「これからの日本社会にとても重要」と述べる。オンプレミスとクラウドのどちらでも使える点も重要な差別化だ。「(PaaSにより) 既存資産とSaaSの両方を活用し、新しい価値を創造できる」と胸をはる。

●クラウドの時代だからこそ原点回帰

そして信頼。「基本はずっとやってきたIT基盤、メインフレームの時代と同じ。コスト、信頼性、性能、プロプライエタリに対し業界標準技術、互換性、セキュリティ。原点回帰しましょう」と杉原氏は述べ、会場に向かってオラクルとともにクラウドへ移行するよう呼びかけた。

続いて行われたデモでは、「Oracle HCM Cloud」「Oracle ERP Cloud」のSaaS製品と「Oracle PaaS」を紹介した。HCMは人材の獲得、育成、適材適所の配置、パフォーマンスを網羅するもので、事業部別に幹部候補生の数の分布を見たり、幹部候補生になっていない社員のどこがマイナス評価になっているのかを調べたり、データベースの分析エンジンを利用して社員がどのぐらい伸びるのかの予測をするなどのことを行った。モバイル対応もしており、デモはiPadで行われた。

PaaSでは、Exadataのクラウド提供などにより「エンタープライズレベルのクラウドを提供する」と日本オラクル 執行役 副社長 クラウド・テクノロジー事業統括 三澤 智光。「真のミッション・クリティカルな仕組みをパブリッククラウドで提供できる環境が整っている」と優位性を強調した。

末岡 洋子
フリーランス・ライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。