日本オラクル特集記事

2025年までに企業のデータセンターは80%なくなる!?
オラクルCEOが予測

Oracle OpenWorld San Francisco 2016基調講演レポート

オラクルが9月18日から22日まで米サンフランシスコで開催した「Oracle OpenWorld 2016」で、CEO(最高経営責任者)のマーク・ハード氏は2015年のOpenWorldで打ち出した「2025年のクラウドに関する予測」に加え、新たに3つの予測を発表した。

売上げが伸びない中で成長をー企業の悩みを解決するクラウド

世界141カ国から6万人が集まるOracle OpenWorldは、今年もクラウドのイベントとなった。初目の基調講演で経営執行役会長 兼 CTO(最高技術責任者)のラリー・エリソン氏が最新世代のクラウド・インフラストラクチャを発表して「Amazonのリードは終わる」と攻勢を見せた後、2日目に登場したハード氏は事例を交えてオラクルのクラウドの現状と展望を語った。

ハード氏が昨年のOpenWorldで披露した「2025年のクラウドに関する予測」とは、次のようなものだ。

1. 運用環境にあるアプリケーションの80%がクラウド・ベースになる
2. SaaS市場はスイートを提供できる2〜3社のベンダーがシェア80%を占める
3. 開発とテスト環境の100%がクラウドになる
4. エンタープライズ・データのほとんどがクラウドに保存される
5. エンタープライズ・クラウドは最も安全なIT環境になる

それから1年、企業がクラウドを選ぶ方向性は変わっておらず、加速しているものもある。たとえば、3の「開発とテスト環境」では40%の企業が「クラウドで運用している・運用予定」としており、2025年よりも前に予測を達成できるとハード氏は展望した。

ハード氏は、企業がクラウドを選ぶ根拠を経済面から分析した。主要国の経済成長は、6.7%の中国を除き、軒並み2%台以下。ロシア、ブラジルなどマイナス成長が予想されている国もある。企業の売上高の成長が伸び悩む中、CEOは市場におけるシェアを増やして支出を減らす戦略を展開するしかない。シェアを増やすためには革新的な製品、サービスの提供が大切だが、それに回す予算がないというのが現状だという。

イノベーションで重要な役割を果たすITを見ると、大手企業ではITインフラの”高齢化”が進んでいる。アプリケーションの平均使用年数は21年、ハードウェアは5年半。これにより、「IT支出の80%がメンテナンスに費やされている」とハード氏はいう。これに加えて、セキュリティへの要件も高くなっており、追加の支出を余儀なくされている。

それらをすべて解決するのがクラウドだ。クラウドを利用すれば、メンテナンス作業が不要になり、セキュリティ対策も専門家に任せることができる。ハード氏は、「同じことを低コストでできるだけでなく、安全性、信頼性、拡張性が改善し、さらに簡単に利用できる」とメリットをまとめ、これがクラウドへのシフトを起こしているとした。実際、企業のIT支出が増加しない中で、上位クラウド事業者は年44%増で成長しているという。「上位のクラウドベンダーの売上は300億ドルに達しつつある。全体のIT市場は1兆ドルなので、比率はまだ少ない。だが急成長している」とハード氏。

「クラウドは単に技術的シフトではなく、これまでとは異なる経済モデルにおける技術的シフトだ。これが企業のビジネスモデルを変える」(ハード氏)

「大企業と同じ技術を得られる」 クラウドを導入するそれぞれの理由

ではオラクルのクラウド事業はどうか。

オラクルは年間52億ドルを研究開発に投資しているが、これは売上比で主要クラウドベンダーでは最大という。SaaSにはじまり、PaaS、そしてIaaSとクラウドラインナップを拡大しており、世界に19カ所のデータセンターを持つ。これを2万社以上の顧客が利用している。ハード氏はクラウドをホテル事業にたとえ、データセンターの設備投資の後、顧客の受け入れがはじまっているとした。

会計年度2017年第1四半期(2016年6月ー8月期)は、IaaS/SaaS/PaaSの合計の売上げは、前年同期比59%増の9億6,900万ドルーほぼ10億ドル事業となっている。クラウドが全体の売上げに占める比率は、10%を超えた。これも、1年前の6〜8%からの拡大となる。

基調講演ではOracle Cloudの顧客企業も多数紹介された。大企業の例では、銀行のHSBCのCFO、ジョアンナ・フィールディング氏が登場し、「コストの管理と透明性」「効率性に欠けるレガシーアーキテクチャからのシフト」を目的に、オラクルのSaaSをクラウドで実装することにしたと語った。銀行でもクラウド移行がはじまっている重要な事例となるが、規制当局との確認をとりながら進めているという。

中堅企業の例として登場したのは、米テキサス州ダラスに本拠を置く、200以上のゴルフ場やスポーツクラブを運営するClubCorpだ。創業50周年の老舗だが、M&Aなどにより積極的に事業展開を図っている。同社はオラクルのSaaS、PaaS、IaaSと全スタックを利用してITの刷新を図った。「われわれの戦略の中心は買収だが、それまでのITではやりたいことができなかった」と同社CIOのパトリック・ベンソン氏は述べる。中でもSaaSでは「全レイヤーにセキュリティが組み込まれている。これにより、顧客と株主を保護できる」と語った。IaaSについては「リアルタイムでの情報アクセスに必要なパフォーマンス」が理由だという。

「われわれは大企業ではない。だがオラクルと組んで、オラクルのクラウドを利用することで、大企業と同じレベルの高度な技術やソリューションを利用できる。これはまたとないチャンスだ。さらに、コストも節約できた」と満足顔で語った。

クラウドによりメンテナンスからイノベーションへ、予算が逆転

数社のクラウドへの移行事例を紹介した後、ハード氏は「2025年のクラウドに関する予測」に、新たに3つを加えた。

1つ目に挙げたのは、「IT予算の80%がクラウドに費やされる」だ。新規のアプリケーションはほぼすべてSaaSになり、開発とテスト環境の100%がクラウドになるという予想から割り出したもので、これによりクラウドインフラへの投資は急成長すると見る。

クラウドに多くのワークロードが移行することから、「企業が所有する大規模データセンターは80%なくなる」とハード氏は2つ目の予測を加える。SaaSへの移行が進み必要なアプリケーションがクラウドに移行した後、残るのは代替ソリューションのないレガシーアプリケーションのみ。データセンターは、このレガシーアプリケーションをホスティングするのみに使われるという予測だ。

1つ目と2つ目により、IT予算はメンテナンスから解放され、イノベーションにシフトできる。これが3つ目の「CIOは80%のIT予算をイノベーションに費やす」という予想につながる。パッチ、アップグレードといったメンテナンスの面倒な作業とコストは、クラウド事業者が受け持つ。これにより、顧客とのエンゲージを強め、新しい製品を市場に迅速に投入するといったことが可能となる。これは、CEOの課題であるシェア増加につながる対策なのだ。