日本オラクル特集記事

「食とアートの島」香川県豊島で、Pepperが観光案内係として活動開始

瀬戸内海で豊かな自然に囲まれた香川県土庄町豊島は3年に1度開催される「瀬戸内国際芸術祭」で、『食とアートの島』として世界に知られるようになっている。人口減少食い止めが課題となっている土庄町ではソフトバンクグループのPSソリューションズが豊島家浦港への人型ロボット「Pepper」の設置に協力、外国人観光客を中心とした観光振興に役立てようとしている。観光案内係としてのPepperはオラクルのクラウドサービスが問い合わせ対応や情報収集・発信のための主な機能を提供、トランスコスモスがPepperの動作設計や、アプリ開発を担う形で稼働が実現した。土庄町では家浦港のPepperを活用して、情報発信、集客を行うだけでなく、収集した情報を分析し、今後の観光施策に活用する。また今後、小豆島の玄関口である土庄港にもPepperを設置する予定だ。


「食とアートのまち」瀬戸内海の豊島が観光振興に役立てるPepperを導入。来島する観光客の利便性を高めて、観光客数を増加させるループを作ることが目的。

■来島者の案内とコンテンツ発信のため、港にPepperを設置

瀬戸内海に浮かぶ豊島(てしま)は香川県土庄町に属する全周20km、人口1,000人の自然豊かな島だ。土庄町の人口は1947年の2万7,000人がピークで、2010年には1万5,000人にまで減少、豊島もピーク時の3,000人から現在では900人を切るまでになっている。そのため、人口減少の打破が大きな課題となっており、土庄町では観光の振興や島外からの交流促進によって人の流れを創ること、魅力ある産業を創ること、子育てを楽しめる環境を創ること、時代に合った住みやすいまちを創ることの4つを目標に掲げ、様々な施策を展開している。

観光振興という観点で見たときに、土庄町への観光客は1988年の瀬戸大橋開通時の宿泊者90万人が最多で、それ以降右肩下がりが続いてきた。しかし、2010年に第1回が開かれ、以来3年おきに催される瀬戸内海の島々を舞台にした現代美術の国際芸術祭「瀬戸内国際芸術祭」がきっかけになって、微増に転じている。「2016年の瀬戸内国際芸術祭は、3月から10月まで108日間の会期中、全体で100万人以上の来場者があります。中でも豊島は非常に人気があり、島の人口をはるかに上回る15万人を超える来場者があり、時には船に乗れない人も出るほどです。その内半数以上が外国人で、特にヨーロッパからの観光客が多いのです。そこで、この動きを発展させて、観光振興につなげ、町が目標としている人の流れの創出を図りたいと考えました」と香川県土庄町町長 三枝邦彦氏は語る。

豊島では2013年7月から14年3月まで、ソフトバンクが2人乗りの超小型モビリティの実証実験を行い、大好評だった。それを受けて、2016年3月にはソフトバンクと傘下のPSソリューションズが日本オラクルの協力のもと、電動バイクと電動アシスト自転車をレンタルするパーソナルモビリティ事業「瀬戸内カレン」を開始、12月までの9か月間で2,400名余りが利用するまでになっている。その経験の上に、PSソリューションズでは観光地の情報発信や旅行体験をテクノロジーで変革し、人の流れを創り出すための取り組みを開始。土庄町の協力を得て、豊島の家浦港にソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」を観光案内係として設置、来島者への案内と満足度向上、コンテンツの発信を目指すことにした。

■訪日外国人旅行者が大きく伸びる地方部での経済効果取り込みが課題

Pepperは2017年2月から稼働を開始している。「豊島は景色がとてもよく、海抜320メートルの檀山からの景色は箱庭のようで、瀬戸内海が360度見渡せます。地下水が豊富で320のため池があり、お米もふんだんに採れますし、かつては酪農の島としても知られました。もちろん漁業も盛んで、食料は自給自足できる位です。瀬戸内国際芸術祭に出品したアート作品は17点が今も展示されていて、観光客は『食とアートの島』を堪能できます。今回のPepperの設置で、多数来島する外国人観光客への対応ができるようになると大きな期待を寄せています」と豊島自治会長兼豊島食プロジェクト推進協議会会長 山本彰冶氏は語る。

政府は2016年3月に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」で、2020年には訪日外国人旅行者数4,000万人、消費額8兆円の目標に掲げており、消費金額は2015年と比べて、4兆5,000億円伸びることが見込まれる。一方で、訪日外国人旅行者の宿泊数を2013年と15年で比べると、首都圏、愛知、近畿の三大都市圏が187%であるのに対して、それ以外の地方部が212%と地方部の伸びが三大都市圏を大幅に上回る。そのため、急増する訪日外国人旅行者の経済効果をどう取り込むことができるのか、これが地方創生への切り札になっている。

そのためには訪日外国人旅行者の情報収集手段をつかみ、それにアプローチする施策を講じることが重要になる。国土交通省観光庁の調査によれば、出発前にチェックする情報源の第1位は個人ブログで30%、滞在中に役に立った情報源の第1位はスマートフォン(インターネット)で60%超に上る。こうした訪日外国人旅行者の動きに対して、地方の観光地や自治体は十分な対応ができていないのが現実だ。ホームページは作ってみたものの、タイムリーな情報発信ができておらず、スマートフォン対応や多言語対応もなされていないケースも多い。それを人手で行うには限界があり、このままでは、地方を訪れる可能性が大きい訪日外国人旅行者の経済効果を取り込むことができない。

■撮影写真はSNSで自動発信、来島観光客の声も収集、観光施策に活かす

今回、豊島家浦港へ設置されたPepperの目的は単純な観光案内ではなく、来島する観光客の利便性を高めて、観光客数を増加させるループを作ることだ。テクノロジーで、「知る」「楽しむ」「発信する」の3つを有機的につなげ、4兆5,000億円に上る経済効果を取り込み、地方創生につなげていく。具体的には、朝8時30分に船が家浦港に到着するとPepperが出迎え、飲食店や見どころなど島の観光案内をする。観光客はその情報をもとに豊島を観光、その中で撮った写真をSNSへ投稿する。観光客が家浦港に戻ってくると、Pepperが今回の豊島滞在に関するアンケートを実施し、記念写真を撮影、それをSNSに投稿する。投稿された画像は自動で加工・編集(マッシュアップ)され、新しい観光情報のページが作られて、発信される。こうして発信された観光客の写真を見て、今まで豊島を訪れたことがない人が行ってみたいと思うようになっていく。

■「Tourism×Tech Tourtech」の推進

今回、Pepperの主な役割である観光案内や情報の収集、発信はOracle Service CloudとOracle Social Cloudを使うことで可能になった。観光客とPepperのコミュニケーションでは、Oracle Service Cloudの人工知能を活用して、豊島の見どころや特産品などを日本語、英語、中国語でPepperが観光客に提示する。またPepperが撮影しSNSへ投稿した記念写真や観光客がSNSに投稿した写真のマッシュアップ、表示、分析はOracle Social Cloudを利用して行う。この一連の流れを支える、Pepperの動作設計やアプリの開発をトランスコスモスが担当した。このように家浦港でのPepperの設置と稼働は、Pepper本体を提供したソフトバンクに加え、運用とコンテンツの拡充を担当するPSソリューションズ、クラウドサービスを提供する日本オラクル、Pepperアプリ開発のトランスコスモスの3社がパートナーとして、協業することで初めて実現した。今後、PSソリューションズでは土庄町の協力を得て、地域と共にコトづくりに挑戦。新たな観光資源を創出する取り組みとして、テクノロジーを活用したスポーツ・ツーリズム体験として、「豊島周回ハーフマラソン(仮称)」の開催などを行っていく考えだ。

この豊島でのPepper運用をステップに、観光産業をデジタルテクノロジーで、より魅力的、刺激的、快適にする「Tourism×Tech Tourtech」プロジェクトでは、様々な企業に参加を広く呼びかけ、全国の自治体が効率的かつ効果的に情報を発信し、観光客へのよりきめ細かな情報提供ができる企業ネットワークを構築。そして、観光施策の改善を実現し、観光客の満足度向上につなげていく。それらの活動の結果として、訪日外国人旅行者の経済効果を取り込み、自治体がかかえる人口減少などの課題の解決に貢献していく予定だ。

※本プロジェクトはソフトバンクロボティクスのPepperを活用し、独自に使用しています。