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オラクル・コーポレーション
ロブ・プレストン
重要なテクノロジー・トレンドを表す流行り言葉も、着実な軌道を描くタイミングがやってくる。一見、束の間のトレンドだと思われていた“Eコマース”、“データ・ウェアハウジング”、“モバイル・コンピューティング”、“仮想化”といったものも、IT分野の調査・助言を行うガートナーが提唱する「先進テクノロジーのハイプサイクル」における、“過度な期待のピーク期”、“幻滅期”、“啓蒙活動期”、“生産性の安定期”を経て今に至っている。
「すべての先進的な企業は、テクノロジー・カンパニーである」―“デジタル・ビジネス”の時代になって、この考え方が当たり前になりつつある。我々はこの現象に賛辞を述べてきてはいるが、本当にすべての企業が賛同していることなのだろうか自問自答したい。
メディア業界では“ハイテクに精通した”CEOをどこか特別視し、AmazonやUberのようなデジタル・ネイティブを引き合いに出しては、テクノロジーを活用したビジネスの創造的破壊(ディスラプション)を行っているシンボル的存在に仕立てあげようとする。企業はテクノロジー・カンパニーであるべきという見解は、あたかも流行り言葉の域を出ず、“啓蒙活動期”にはおよそ到達できるような状態ではない。
しかしながら現実は、金融、運輸、製造、消費財、農業、ヘルスケア、エネルギーなどほぼすべての業界において、テクノロジー・カンパニーは例外ではなく、当然のことになりつつある。AmazonやUberだけがデジタルのけん引役と思うなら、考えなおしたほうがいいかもしれない。
次に紹介する事例は、長い伝統ある業界の企業は単に最先端でイノベーションを遂げようとしているわけではなく、純然とデジタルの利点を活用しながら事業成長に役立てようとしている。こうした企業は、ブランドや顧客のロイヤリティの強弱に関わらず、競争力向上と生き残りをかけ、テクノロジーをその事業基盤として有効活用しているのだ。
テクノロジーで限られたリソースをさらに有効活用
ミシシッピ州西部で貨物列車を運行するUnion Pacificは年に数億ドルをITに投資している。その目的はひとつ、限界のある線路網により多くの貨物列車を走らせることだ。それが同社にとって売上と利益に影響を及ぼす、唯一の収益向上策である。事実、新路線を開通するコストは1マイル当たり250万ドル、新規の貨物列車購入は200万ドルかかる。
Union PacificのCIOであるリンデン・テニソン氏は、「我々は成長を遂げるために十分な金額を投資できていない」と2012年に述べているが、当時同社の設備投資額は32億6,000万ドルであった。(2014年の設備投資額は41億ドル。純利益は18%増の51億8,000万ドル、売上は9%増の239億9,000万ドル)「我々はITを活用して目標に到達する必要がある」と述べていた。
IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)のパイオニアでもあるUnion Pacificは貨車や線路に取り付けたセンサーから収集されるデータを解析し、わずかの障害を交えながら3万2,000マイルの線路網を高速かつ安全に走行させている。同社が呼ぶ“線路網の不安定さ”を改善している。
農作物を生産するMonsantoでは、バイオテクノロジーやクラウド・サービス、データ・アナリティクス(莫大な演算能力が必要)といったテクノロジーが、同社が掲げる1) 2030年までに主要な作物の生産量を倍にする、2) 生産単位あたりのリソースを3分の1に抑える、3) 世界中の農家の生活を改善する、といった3つの目標達成に向けた必要な要素となっている。
テクノロジーを商材に事業部門を設立
こうしたテクノロジーを自分たちの目的として使うのみならず、外向けの販売商材として展開するという動きも出てきている。 Union Pacificを例にとると、光ファイバー・ネットワークの余剰部分の販売や自社向けに用意した仮想現実のトレーニング・ソフトウェアなど外販で年間数千ドルの売上を上げている。
もう1つの例がUniversity of Pittsburg Medical Center(UPMC)の営利団体であるTechnology Development Center(TDC)だ。このヘルスケアと保険を提供するUniversity of Pittsburg Medical Centerは、オラクルのような成功しているソフトウェア開発会社の利益率が50%弱なのに対し、自社が2%である現状を改善する目的で、収益性の高い取り組みをはじめることを決定した。
UPMCはTDCを開設し、現在約200人の従業員を有している。IT関連製品を直接またはテクノロジー・ベンダーのパートナー経由で販売している。その新規事業のパートナーには、シリコンバレーのスタートアップ企業であるHealth Fidelityも含まれる。Health Fidelityは診療記録用の自然言語処理ソフトウェアを開発し、TDCが販売している。また、Windowsベースのヘルスケア向けデータ・アナリティクスのアプリケーションを開発するFluenceとも協業している。
NYSE Euronext(ニューヨーク証券取引所とEuronextが合併し2007年に誕生)は株式取引事業の利益率が縮小するなか、テクノロジー事業へ果敢に進出し、金融機関向けにホスティング、ネットワーク・サービス、データ・サービス管理、株式取引プラットフォームを販売している。「自社を応用技術の会社だと考えている」とCEOのダンカン・ニーダーアウアーは2年前の座談会で語っていた。
デジタル・パイオニアを買収する老舗企業
どの産業でも鍵となる専門テクノロジーを必ずしも開発できるわけではない。時折、買収するという選択肢もある。
例えば、2012年12月にCapital OneがING Directsを買収したことで、デジタル・バンキングの信用を即座に手に入れた。同社は続いて、顧客が出費傾向を他人と比較できるオンライン・ツールを提供するBundle、デザインとユーザー・エクスペリエンスのコンサルテーションを手掛けるAdaptive Path、顧客の出費傾向に応じてディスカウントを提供するモバイル・テクノロジーのスタートアップ企業であるBankOnsを買収した。
Walmartは過去2、3年でクラウドのワークロードを管理するOneOps、ソーシャル・ネットワークと連携するソフトウェアを開発するTasty Labs、データ・アナリティクスのInkiru、ウェブサイト最適化のTorbit、ソーシャル上の製品レコメンド・アプリのLuvocracyを次々と買収している。
1970年代からテクノロジーの有用性を自認するFedExは最近、広域かつグローバルなEコマース機能を提供するBongo Internationalを買収した。
“世界を侵食する”ソフトウェア
John DeereやFordのような製造業は単に農機具や自動車を生産しているわけではない。マーク・アンドリーセンが4年前に予言したことを補足するかのように、両社はすでにソフトウェア企業である。
Deereの農機具に搭載されたソフトウェアによりディーラーはリモートで監視し、修復やアップグレードを行う。
Fordは自社の車両向けにアンドロイド向けアプリのエコシステムを構築、ダッシュボードのドライバー・インターフェース、MyFord Touchを持続的にアップグレードしている。Fordはソフトウェア企業のように、顧客がディーラーに行かずにアップデートをダウンロードできるようにしている。
テクノロジーが主導する次の産業革命が到来
売上規模約1,490億ドルの産業コングロマリットであるGEは、金融サービス事業から手を引き始め、「次世代の産業時代への投資」を推進、「いかなる企業も実現不可能な手段で物理とデジタルの世界」を融合していくと、同社CEOのジェフリー・イメルトが直近の年次報告書で述べている。
イメルトが説明する、GEが行うテクノロジー主導による3つの巨大な賭けは以下のとおりだ。
1つ目は、イメルトが唱える「エネルギーの移行」だ。GEは石油、ガス、数多の企業が開発・提供する新エネルギーを支援するテクノロジーを提供している。2つ目の賭けは、最新のオートメーション・ツール、3Dプリンター、データ・アナリティクスによる先進の製造手法。3つ目は「インダストリアル・インターネット」。GE独自の用語で、IoTの概念を、産業機器、医療機器、家電などに応用する取り組みだ。
実際、どの業界に属しているのか
Tesla Motorsは自動車メーカー?それとも、テクノロジー・カンパニー?Netflixはエンターテイメント企業?それとも、テクノロジー・カンパニー?ドイツのエレベーター製造メーカー、Thyssen Kruppは磁気浮上テクノロジーという分野を再構築し、Amgenは自社保有のDeCode Geneticsのデータベースがアイスランドに暮らす100人中1人以上のゲノム配列を解析し、どの薬剤を開発するかを決める手助けをしている。
UPSのCIOであるデイブ・バーネスは37年前に同社で仕事をはじめたころ、「テクノロジーをビジネスの目標達成に応用する運送会社」と考えていた。いまとなってはUPSを、「トラック、貨物、飛行機、配送センター、集配場を図らずも保有するテクノロジー・カンパニー」と評している。
何を作ろうが売ろうが、テクノロジーが主導する世の中で自社をどのように位置づけるのだろうかが重要となる。