Oracle RAC"ハイパフォーマンス"対談《池田高志氏&小野孝太郎氏》 
前編 RACの歴史はスケーラビリティ向上の歴史

今回から2回にわたり、「Oracle Real Application Clusters(RAC)」を用いたシステム構築を手掛ける富士通北陸システムズの池田高志氏と、米国のオラクル本社でRACの性能改善に努める小野孝 太郎氏の対談を通じて、RACのスケールアウト性能向上の軌跡を振り返るとともに、パフォーマンス改善のポイントを紹介する。前編では、SIerと開発者 それぞれの立場からRACとの関わりを振り返っていただくとともに、RACの導入で苦労した点などを聞く(編集部)。
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■バージョンアップを重ねるごとにスケーラビリティが高まるRAC

池田氏
株式会社富士通北陸システムズ
データベースソリューション事業本部
ソリューション企画部
池田高志氏

1998年に富士通北陸システムズ入社。以来、一貫してOracle Databaseに関わり、ユーザー・サポートやシステム・インテグレーションなどを担当。2008年からはOracle Databaseのアップグレード・サービスの立ち上げを主導。Oracle Master Platinum保持者で、2010年には「Platinum of the Year」を受賞している。
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――池田さんと小野さんはそれぞれ異なる立場で、Oracle RAC という製品に関わっているわけですが、まずはこれまでどのような業務を担当し、その中でOracle RACとどのように関わって来たのかを教えてください。

池田:私は富士通北陸システムズに入社して以来、Oracle Database関連の業務に携わってきました。最初はサポートセンターでOracle製品をお使いのお客様の技術サポートを6年間ほど担当。その後、あ る金融系のお客様のプロジェクトに入り、Oracle RACと「Oracle Data Guard」を組み合わせたシステムの開発/設計に携わりました。その後も継続してRACやOracle Data Guardの導入、データベースのマイグレーションなど、多くのお客様にOracle製品を広く使っていただくための企画を推進しています。

 私たちは富士通グループの一員なので、まずは富士通のハードウェアを導入していただく際のご支援が主な役割となりますが、それだ けで終わるのではなく、Oracle RACやOracle Data Guardを使って"プラスアルファ"の価値を提供していきたいと考えています。

小野:私は、米国のOracle CorporationのRAC開発部門で、主にRACそのもののパフォーマンス改善を担当しています。具体的な業務は主に3つあります。1つはパフォー マンスの品質保障で、開発中の製品で期待どおりの性能が出ているかどうかを確認します。2つ目はRACを使ったシステムのパフォーマンス・チューニングで す。この中では、ベンチマークを実施したり、お客様の環境で問題が発生した際の解決のご支援を行ったりします。3つ目は開発部門の中で、製品そのもののパ フォーマンス改善のためのアイデアを提案するというものになります。

――小野さんは日本オラクルから移籍されたんですよね?

小野:そうなんです。1994年に日本オラクルに入社し、最初はRACの前身となる「Parallel Server Option」を国産ハードウェア・ベンダーのUNIXサーバにポーティングする仕事を担当していました。1996年に、その業務ごと米国本社に移籍した んです。つまり、RACには、その前身となるOracle7 Parallel Serverの時代から関わっているということになります。

 RACは、Oracle8iで「キャッシュ・フュージョン」というサーバ間でデータを同期する仕組みができてから、ガラッと変わ りました。それまではHDDを介してメモリ上のデータを同期していましたが、キャッシュ・フュージョンでインターコネクトを介してデータを同期することが できるようになり、劇的に速くなったのです。そこで、RACを他社との差別化要因として強化していこうということになり、これに関わる開発者が一気に増え たという具合です。

――池田さんはさまざまなお客様の現場を見てこられたと思いますが、当時の利用状況はどのような感じだったのでしょうか?

池田:私がオラクル製品に関わるようになった当初は、Oracle8i が登場したばかりで、まだOracle7を使っているユーザーもいるという時期でした。当時は、まだ一部の大規模システムを除いて、Oracle Parallel Serverを使ったシステムはあまり見かけませんでしたね。Oracle Parallel Serverを知らないという技術者も少なくありませんでした。

 その後、Oracle9i、Oracle 10gへとバージョンアップが進むにつれてスケールアウト性能も向上し、導入の検討対象に上ることが増えてきました。私がプロジェクトに参加した金融系シ ステムでも、Oracle Database 10gでRACを使いましたよ。以前はミッション・クリティカルなシステムではHAクラスタ構成が主流で、本番サーバに対して待機サーバを用意して冗長化 するのが一般的でしたが、RACなら両ノードがアクティブで稼動するため障害時の切り換えが速く、なおかつ両ノードを有効に使用できるという点をアピール し、そのプロジェクトでの採用が決まりました。

■「RACはスケールしない」という"誤解"

小野氏
Oracle Corporation,
Cluster and Parallel Storage Technology,
Consulting Member of Technical Staff
小野孝太郎氏

1994年に日本オラクル入社。前身となるParallel Server Optionの時代からRACと関わり続け、1996年に米国本社に移籍。データベース開発部門でRACの性能改善を担うチームに所属。世界中のRAC ユーザーから寄せられる性能問題の解決を支援している。
US開発部門でRACの性能向上を支える日本のエンジニア(前編) ユーザーの厳しい要求が改善の糧
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――小野さんの下には、日頃Oracle RACの性能問題に関してさまざまな相談が寄せられているわけですが、その中で印象に残っているもの、解決に苦労したものは何でしょう?

小野:印象に残っているというか、1つ残念に思っていることがあります。それはOracle RACの性能に関して誤解が多いということです。具体的に言うと、時々「Oracle RACの性能がスケールしない」とか「キャッシュ・フュージョンの性能に問題がある」とかいったご相談を受けることがあるのですが、よく調べてみると、実 際にはRACやキャッシュ・フュージョンの問題ではなく、ネットワーク/ストレージの設定に問題があり、それによってRACがスケールしていないかのよう に見えてしまっているんですね。RACをはじめとするオラクル製品では、システム・ログを詳細なレベルまで出力し、システムの動作状況を詳細に調査できる ようになっています。その際には、システムの他の部分のパフォーマンス情報まで取得してレポーティングするのですが、期待どおりの性能が出ていないとき に、そのレポートを見てRACやキャッシュ・フュージョンの問題だと誤解されてしまうようです。

――池田さんが、日頃Oracle RACの導入で苦労されていることは何でしょうか?

池田:性能面の問題よりも、お客様にOracle RACが従来のHA製品とどう違うのかを説明したり、キャッシュ・フュージョンの仕組みをご理解いただいたりするのに苦慮することがありますね。性能面に 関しては、インターコネクトの影響などを心配されるお客様もいらっしゃるのですが、実際に導入してパフォーマンスを測定してみれば、そうした心配はすぐに 払拭できます。あと、RACでは両ノードがアクティブになるので、運用面でHA構成とは違った配慮が必要になるといった辺りが主なところでしょうか。

――Oracle RACは従来とは異なるアーキテクチャの製品なので、不安に思う企業も多いんでしょうか。しかし、実際に導入した企業で当初危惧した性能問題が顕在化するようなことはないんですね?

池田:はい。検討段階では、Oracle RACのアーキテクチャなどを見て、「キャッシュ・フュージョンの仕組みだと、今までは発生しなかった競合が発生するわけだから、ここで処理負荷が増えて スケールしなくなるのではないか?」といった議論が出たりするんですね。確かに理論的に突き詰めれば、そういうケースはあるのかもしれませんが、実際に導 入したお客様のシステムでは、業務要件/性能目標を問題なくクリアしています。

小野:システムの性能が出なくなるような状況は、いくらでも考えられるし、作れるんですよね。問題は、そうした状況 が、実際にそれぞれのお客様のシステムで発生しうるのかということだと思います。Oracle RACの性能改善を担う者としては、常にお客様のシステム/業務に固有の事情から、またRACのアーキテクチャの事情から、どのような性能問題が生じうる のかを予測し、理解するよう努めたいと思っています。

――バージョンアップを重ねる度にスケーラビリティが向上しているRACだからこそ、実際の性能で企業を納得させられるんですね。それでは後編では、日頃小野さんがRACの性能を最大化するために駆使しているテクニックをお伺いしていきましょう。

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