株式会社ATLED
城倉和孝

 はじめに

本章より、X-WebForm Developerで作成したウェブフォームに対してプログラミングを行なう方法をご紹介します。第1章で説明したとおり、ウェブフォームに対するプログラム開発にはIDE(統合開発環境)「Oracle JDeveloper 10g(以下、JDeveloper)」を使用します。JDeveloperはVisual Basicによる開発を行なう際の「Visual Studio」にあたるものと考えていただければよいと思います。
初めに、JDeveloperの導入・設定とX-WebForm Developerとの連携設定について、なるべく初心者の方にもご理解いただけるよう、Visual Basicとも対比しつつ説明します。

 

 JDeveloperのインストールと起動
1 ) JDeveloperの入手

JDeveloperを入手するには、Oracle Technology Network Japan (OTN Japan)のダウンロードページにアクセスします。
ダウンロードサイト http://www.oracle.com/technetwork/jp/developer-tools/jdev/downloads/soft10134-101206-ja.html

JdeveloperにはいくつかのEditionがあります。
ここでは必ず「Studio Edition」をダウンロードしてください。
J2EE Edition、Java Editionの動作は保証されていませんのでご注意ください。

「JDeveloper (x.x.x.x.x) Studio Edition」をクリックすると、OTNのユーザーログイン画面が表示されます。ダウンロードにはユーザーIDとパスワードが必要です。すでにIDをお持ちの方は、ログインするとダウンロード画面が表示されます。まだお持ちでない方は無料で登録できますので、「新規プロファイルの登録の方は・・・こちらへ」をクリックしてIDを取得してください。

ログイン後、簡単なアンケートに回答すると「使用許諾書」が表示されます。内容に同意するとダウンロードのリンクが表示されるので、クリックしてご自身のPC上の任意のフォルダに保存します。

2 ) インストール
ダウンロードしたファイルはzip形式に圧縮されているので、インストール先の任意のフォルダにzipファイルを解凍するだけでインストールは完了です。とても簡単ですね。

3 ) 起動
インストールが完了したら、JDeveloperを起動してみましょう
インストールしたフォルダの直下にある「jdeveloper.exe」をクリックします(アイコンは、デスクトップにショートカットを作っておくと便利です)。

マシンのスペックによっては起動に少々時間がかかる場合があります。また、起動時にWindowsのセキュリティの警告画面が表示されることがありますが、特に問題はないので、「実行」をクリックして続行してください。
起動スプラッシュ画面があらわれた後に、JDeveloperの画面が表示されます。

第2章でX-WebForm Developerをインストールしたとき、J2SE(Java 2 Platform Standard Edition:Javaの基本ソフト)というソフトを別途インストールしました。JDeveloperでも、動作させるには同様にJ2SEが必要です。ただ、最新バージョン(10.1.3.1.0)ではダウンロードファイルにJ2SEが含まれているので、インストール時に特別意識する必要はありません。

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 X-WebForm Developerとの連携設定

インストール後、JDeveloperとX-WebForm Developerを連携動作させるための各種設定を行ないます。設定は、X-WebForm Developer→JDeveloperの順に行ないます。

1 ) X-WebForm Developer側の指定
X-WebForm Developerを起動します。その際、もしJDeveloperを起動していたら、停止してください。
メニューバーの[ファイル] - [動作環境設定] を選択し、「動作環境の設定」画面を表示します。
画面の右上にある「開発ツール連携指定」のボタンをクリックします。

「開発ツールへ登録」画面が表示されるので、JDeveloperをインストールしたディレクトリに移動し、JDeveloperの実行ファイル(jdeveloper.exe)を選択して「OK」をクリックします。

JDevelperをインストールした後に一度も起動していないと、以下のようなメッセージが表示される場合があります。

これは、JDeveloperを起動したときに作成されるシステム情報が見つからないというエラーです。このような場合、JDeveloperを最低一度は起動してから再度試してみてください。

動作環境の設定画面に戻り「OK」をクリックすると、連携設定は完了です。この操作で、JDeveloperにX-WebForm Developerに関する情報が設定されました。

2 ) JDeveloper側の設定
のちほど詳しく説明しますが、X-WebFormで作成したウェブフォームを実行してブラウザに表示させるには、JDeveloperに内蔵されている「OC4J」というWebコンテナ(Webアプリケーションを動作させるエンジン)の設定を行ないます。
JDeveloperを起動します。
メニューバーから、[ツール] - [埋込みOC4Jサーバーの設定]を選択します。

「埋込みOC4Jサーバーの設定」画面で「起動」を選び、「埋込みOC4Jへの参照に使用されるホスト名またはIPアドレス」の欄で「ホスト名の指定」を選択して、「localhost」または「127.0.0.1」と入力して「OK」をクリックします。

連携設定は以上で完了です。

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 JDevelopr各部の説明

設定が完了したら、JDeveloperの基本的な使い方を覚えましょう。

JDeveloperの各部について説明します。JDeveloperにはアプリケーション開発に必要なツールが豊富に用意されており、複数のウィンドウを複数開いて効率よく作業することができます。ウィンドウにはいろいろな種類がありますが、X-WebFormの開発時によく使う基本的な機能を説明します。

1 ) ナビゲータ
メニューバーの[表示]の中から使用するものを選択すると表示されます。ファイルを探したり、サーバー情報を管理するためのウィンドウです。
代表的なものには以下のような種類があります

アプリケーションナビゲータ

開発に必要なソースコードファイルなどをリスト表示します。リスト上のファイルをクリックすると、「エディタ・ウィンドウ」上にファイルの中身を表示することができます。
Windowsの「エクスプローラ」のような存在で、プログラムのソースコードなど、開発に使うファイルを探したり、開いたりするときに使うものです。「システム・ナビゲータ」というよく似た機能もあります。見え方が異なるだけで全く同じものを表示していますので、状況に応じて使い分けるのもよいでしょう。

接続ナビゲータ

データベースやアプリケーション・サーバーなど、サーバーへの接続を管理するために使います。
X-WebFormでデータベースを開発するときにも、ここで登録されているサーバー情報を参照します。

2 ) エディタ・ウィンドウ
「アプリケーションナビゲータ」で編集を行なうファイルを選択してクリックすると、「エディタ・ウィンドウ」が表示されます。
「エディタ・ウィンドウ」には編集するファイルに応じたエディタが用意されており、例えばJavaソースをコーディングするときはコードを記述するためのエディタ、JSFなどの画面遷移を設定するときはビジュアルに定義できるエディタが表示されます。
複数のエディタが開いている場合は上のタブで切り替えます。

3 ) ログ・ウィンドウ
コンパイルエラーやプログラムの実行結果などのメッセージを表示するウィンドウです。何か処理を行なうたびに、このウィンドウを確認しましょう。

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 アプリケーションとプロジェクト

JDeveloperでプログラムを開発するには、最初にアプリケーションとプロジェクトを作成します。アプリケーションとプロジェクトによって開発に必要なファイルや情報が階層的に分類されるので、作業を効率的に進められます。

1 ) アプリケーション
アプリケーションという言葉自体は広義なため、少々わかりにくいかもしれませんが、ここでいうアプリケーションとは、便宜上「Webシステムの単位」と考えられます。例えば「営業支援システム」というアプリケーションを作成し、配下に「顧客情報登録」「案件情報登録」「営業日報」といったプログラムを配置して管理します。
Visual Basicに置き換えると、「VBプロジェクト(vbp)」の単位と考えられるかと思います。
2 ) プロジェクト
アプリケーションに配置されるファイルには、JSP(Java Server Pages)やJavaのソースファイルといったプログラムだけでなく、アプリケーションの実行情報を記述したXMLファイルなどが含まれています。また、クラスパスやコンパイラの設定情報なども管理されます。プロジェクトは、これらの関連するファイルをグループ化する役割を持っています。1つのアプリケーションに複数のプロジェクトを配置することが可能です。
Visual BasicでVBプロジェクトの下に新規でメンバーを作成すると、「フォーム」「標準モジュール」といった分類ごとに階層ができるのと類似した考え方です。

アプリケーションとプロジェクトは、「アプリケーションナビゲータ(またはシステムナビゲータ)」で選択します。

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 アプリケーションの作成

では実際に、X-WebFormでプログラムを開発するためのアプリケーションを作ってみましょう。

1 ) アプリケーションの新規作成

「アプリケーションナビゲータ」で右クリックして、「新規アプリケーション」を選択します。

「アプリケーションの作成」画面が表示されるので、必要項目を入力します。

アプリケーション名
  通常は作成するシステムの名称を指定します。この例では「samples」という名前を指定します。
ディレクトリ
  「アプリケーション」の下にできるJavaソースファイルなど、物理的なファイルを保存するディレクトリを指定します。デフォルトはJDevelperインストールディレクトリ配下の「/jdev/mywork」ですが、特に理由がなければ変更の必要はないでしょう。
アプリケーション・パッケージの接頭辞
  ベース・パッケージ名を指定します。ベース・パッケージは作成するアプリケーションを一意に識別するもので、通常は会社のドメインを逆にした形(例:jp.co.softcreate.samplesなど)で指定したりしますが、他のアプリケーションと重複しない適切な名前をつければ特に問題はないでしょう。この例では、アプリケーション名と同じ名前をつけます。
アプリケーション・テンプレート
  「X-WebFormアプリケーション[JSP, Struts, ADF, BC]」を選択します。
これにより、X-WebFormの開発に使用できるテクノロジー(JSP、Struts、ADF、BC)の開発環境が自動的に作成されるので、開発者は全く意識する必要がありません(必要なライブラリはすべて自動で追加されます)。

必要項目を入力したあと「OK」を押すと、「アプリケーションナビゲータ」上に指定したアプリケーションと、「Model」「ViewController」というプロジェクトが自動的に作成されます。

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 JDeveloper上でのウェブフォームの作成と保存

JDeveloperからX-WebForm Developerを起動してウェブフォームを作成してみましょう。
起動前に、前項までの手順で、連携をするアプリケーションが作成されていることを再確認してください。

1 ) ウェブフォームの新規作成(X-WebForm Developerの起動)
JDeveloperを起動して、「アプリケーションナビゲータ」で連携するアプリケーションの「ViewController」を選択します。X-WebForm Developerは、ここで選択したアプリケーションに対してプログラムソースコードの自動生成を行ないますので、選択先を間違えないように注意してください。

連携するアプリケーションの「ViewController」を選択した状態のまま、右クリックでメニューを表示して「新規」を選択します。

「新規ギャラリ」画面が表示されるので、「カテゴリ」欄で[Web Tier] - [X-WebForm]を選択後、「項目」欄の「X-WebFormフォーム・ファイル」を選択して「OK」をクリックします。

起動時にライブラリをコピーした旨のメッセージ・ダイアログが表示される場合がありますが、これはX-WebFormのプログラム開発に必要な共通ライブラリ(共通的な部品)をJDeveloperのアプリケーション配下にコピーしたことを通知するメッセージです。表示されるタイミングは、新しいアプリケーションを作成した初回時、およびX-WebForm Developerがアップグレードされたときです。そのまま「了解」で続行してください。

X-WebForm Developerの画面が表示されます。このとき、X-WebForm Developerのメニューバーに、連携しているJDeveloperのアプリケーション名が表示されます。




2 ) ウェブフォームの保存
  作成したウェブフォームの保存は、X-WebForm Developerの単体動作時にxwfファイルをローカルPCに保存する操作と基本的に同様です。
この例では、以下の「お客様カード」というフォームを「namecard.xwf」という名前で保存します。
 

X-WebForm Developerのメニューバーの[ファイル] - [保存] をクリックします。
JDeveloperからX-WebForm Developerを起動すると、JDeveloper上の所定位置に自動的に保存されます。

(注意)
X-WebForm Developerの起動後にローカルPCで作成したウェブフォームを開くと、保存場所が読み込んだディレクトリに変更されてしまいます。このような場合は、メニューバーの[ファイル] - [名前をつけて保存]で保存場所を指定するダイアログを表示し、所定の保存場所を選択して保存します。
通常の所定の保存場所は「[JDeveloperインストールディレクトリ]\jdev\mywork\[アプリケーション名]\ViewController\xwf\のディレクトリ」)です。
この例では、「C:\jdk\jdev\jdevstudio10131\jdev\mywork\samples\ViewController\xwf\」にnamecard.xwfというファイル名で保存します。

JDeveloperの「アプリケーションナビゲータ」で連携元アプリケーションを見てみましょう。
「リソース」というパッケージ(便宜上ディレクトリとお考えください)の下には、「namecard.xwf」(前章までに説明したウェブフォームの保存ファイルです)が、「Webコンテンツ」パッケージの下には「namecard.jsp」(ウェブフォームを表示するためのプログラム)が、そのほか「アプリケーション・ソース」の下にもいくつかファイルが作成されています。
各ファイルについての詳しい説明は後の章で行なうのでここでは省略しますが、これらはX-WebForm Developerが自動的に保存したファイルで、ウェブフォームに対してプログラミングを行なう際に使用します。


3 ) 作成済みウェブフォームの修正
  JDeveloperに保存されたウェブフォームを修正する場合は、JDeveloperから「xwfファイル」を開きます。

JDeveloperの「アプリケーションナビゲータ」で、「リソース・パッケージ」の下に保存されている「xwfファイル」を選択します。

選択した状態のまま右クリックでメニューを表示し、「Open X-WebForm」を選択します。

X-WebForm Developerが起動し、選択したウェブフォームが開いて編集ができます。


4 ) X-WebForm Developerの終了
  ウェブフォームの作成、終了が済んだら、X-WebForm Developerは通常どおり終了して問題ありません。終了させることによるJDeveloperへの影響は何もありませんが、変更したウェブフォームの保存は忘れずに行なってください。

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 ウェブフォームの表示

作成したウェブフォームをJDeveloperを実行して表示してみましょう。
前述しましたが、JavaのWebアプリケーションを動作させるには「Webコンテナ」と呼ばれるエンジンが必要です。JDeveloperにはOracle Application Server 10gのWebコンテナであるOC4J(オー・シー・フォー・ジェー)という専用のWebコンテナが内蔵されています。X-WebForm Developer単体の動作では内蔵のWebコンテナを利用してウェブフォームをプレビューしましたが、JDeveloperとの連携時にはこのOC4Jを使用します。

1 ) ウェブフォームを表示する(JSPの実行)
  ウェブフォームはJDeveloperのアプリケーション保存時、にJSP(Java Server Pages)というプログラムファイルとして保存されます。ウェブフォームを表示するには、このJSPを実行します。
「アプリケーションナビゲータ」で「ViewController」-「Webコンテンツ」の下にある、拡張子JSPの該当ファイルを選択します。この例では、前項までに作成したnamecard.jspを選択します。

選択した状態で、ツールバーの実行ボタンをクリックしてOC4Jを起動します。

もし実行できないファイル(ここでは、拡張子がJSP以外のものと考えてください)が選択されている場合は、「ログ・ウィンドウ」に以下のようなメッセージが表示されますので、選択されているファイルを確認してください。

OC4Jの起動中は「ログ・ウィンドウ」に起動に関するログが表示されます。マシンのスペック等により、少々時間がかかる場合があります。

OC4Jが起動するとブラウザが開き、ウェブフォームが表示されます。

もしウェブフォームが表示されず以下のような画面が表示されたら、OC4Jの設定が正しく行なわれていません。前述した「X-WebForm Developerとの連携設定」の項の「JDeveloper側の設定」で、ホスト名が正しく設定されているかを確認してください。


2 ) OC4Jの停止

OC4Jが動作しているとき、実行しているプロセスの「ログ・ウィンドウ」に停止ボタンが表示されます。Webアプリケーションはクライアント(ブラウザ)とは非同期なため、ブラウザを閉じてもOC4Jは自動的には停止しません。

OC4Jを停止するには「停止ボタン」をクリックします。

OC4Jが停止すると、プロセスが停止した旨のメッセージが「ログ・ウィンドウ」に表示されます。

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 アプリケーションの保存
1 ) アプリケーションの保存
  JDeveloper上のアプリケーションに対して変更を行なった場合、設定内容を保存する必要があります。
X-WebForm Developerからxwfファイルを保存した場合はもちろん、後の章で説明するプログラムに変更を行なった場合にも保存が必要です。
保存はツールバーの「保存」ボタンをクリックします(もちろんメニューバーからでもできます)。

以上、JDeveloperの基本操作についてご説明しました。次章からは、Ajaxを使った簡単なプログラミングについて説明したいと思います。

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