SOA/BPMの現場から - 日本のお客様事例 -

第4回 BPM 実現のために -BPMとスキル分析-

日本オラクル株式会社 テクノロジーコンサルティング統括本部
市川 義規 (いちかわ よしのり)

目次

BPM と「分析」

BPMにおける分析の重要さ

今回は、BPMにおける分析、特にスキルの分析についてまとめてみましょう。さっそくですが、この文章をごらんの皆さまはBPMにおける分析について、どの程度ご存知でしょうか?あまりご存知ではない方も多いのではないかと思います。少なくとも私は、BPMにおける分析について、それほど目にする機会がないですから。

BPMで目にしやすいのは、BPMの概要記事や、BPMS(BPM実現の一翼を担うソフトウエア/システムです)の機能説明です。モデリングのノウハウも、最近は多く目にするようになりました。

しかしながら、BPMの「分析」については情報があまり多くありません。BPMでは現状の業務プロセスをモデリングしたあとで、課題を解決する新しい業務プロセスを定義します。課題の解決策を考えたり、新しい課題を発見したり、解決策の妥当性や選択を議論したりするには、現状プロセスの「分析」が重要です。

どうやって分析を行うのか?

とても重要なBPMの「分析」ですが、これはどうやって実施するものなのでしょうか?具体的に説明するとなると、なかなか難しいところがあります。シックス・シグマやバランス・スコア・カードなど、著名な手法/フレームワークを活用すれば良いでしょうか?それとも、ブレーン・ストーミングをしてアイデアを出し合えば良いでしょうか?

そもそも、BPMで解決しようとしている課題によって、アプローチは変わっていきます。実際には、ケース・バイ・ケースなのかもしれません。なかなか定型的には語りにくいテーマだと思います。

しかしながら、何の指針もなく漫然とはじめるのは非効率的です。以前に読んだ本では、「業務プロセスを見ていれば、業務プロセスがあなたに『どうしてほしいか?』を語りかけてくるので、それに耳を傾ければよい」と書いてありましたが……確かにそういう側面はありますが、さすがにそれでは禅問答のようです。そこで、ここではBPMプロジェクトを進める上で必要なスキルの分析を例に挙げ、BPMと分析について簡単にまとめてみましょう。地味なテーマですが、分析の手法を考える上では格好のテストケースになると思います。

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スキル分析をしてみよう

スキル分析の概要

ここで取り上げるスキル分析は、BPMで現状業務プロセスをモデリングし、新業務プロセスを検討している際に行う分析の1つです。製品のレポート機能をカスタマイズして使用します。想定しているケースとしては、

  • 現状業務プロセスの課題を解決する施策はいくつか思い当たる
  • 施策を実行する上で十分なスキルがあるかどうかがわからない

といったかたちになります。

この場合のスキル分析の内容は、下記の3点にまとめることができます。

  • 必要なスキル項目をまとめる
  • 担当する(予定の)メンバーにスキル・チェックを行う
  • スキルの不足を発見する(あるいは、不足を埋めるプランを立てるところまでがんばる)

プロセスと連動したスキル分析

一般的なスキル分析は、手法をBPMに限定するものではありません。しかしながら、今回は「BPMの」スキル分析を対象にしているので、スキル分析もプロセス中心に考えます。

プロセス中心に考えることで、業務プロセスのどの部分で、どんなスキルが必要になるかを見極めます。Oracle BPA Suiteを使用することで、モデル化した業務プロセスに情報を埋め込むことが可能です。

いきなり必要なスキルを埋め込んでいく方法もありますが、ここはひとつ緩衝を設けて、必要とされる「機能」を埋め込んでいきます。

業務プロセスに必要な「機能」を埋め込むことで、モデルは単なるお絵かきではなく、スキル分析の入力たる情報のかたまりになります。ここからはOracle BPA Suiteの機能を使用し、情報を整形します。

整形した情報から、チェックすべきスキル項目がわかります。アンケート形式でメンバーのスキル習得状況を明らかにすれば、不足しているスキルが明確になります。

プロセスと関連の薄いスキル

このような方法で、業務プロセスのモデルに情報を集約し、決められた手順でスキル分析を行うことができます。ここで注意が必要なことは、業務プロセスとは完全に紐付かないスキルも存在することです。特に基礎的なスキルやコンピテンシーが該当します。追加の分析が必要かどうかは、評価や教育の対象とするスキルの範囲に依存するでしょう。

一般的な分析の小道具

Oracle BPA Suiteの分析ツールについて、もう少し紹介しておきます。Oracle BPA Suiteは、業務モデルの分析を補助するツールをいくつか提供しています。

分析ツールの中でも汎用性が高いのが、下記の2つのレポート機能です。

  • Configurable Relationship Analysis (CRA)
  • Enterprise Asset Evaluation (EAE)

"Configurable Relationship Analysis (CRA)"は、プロセスを取り巻く情報の関連性を、2次元のマトリクス形式で出力してくれるレポートスクリプトです。モデルに含まれる情報であれば、縦軸と横軸に配置することが可能です。

"Enterprise Asset Evaluation (EAE)"は、3次元のポートフォリオ分析を提供するレポートスクリプトです。軸は定性的な指標を選択します。

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まとめ

これまでに、弊社のOracle BPA Suiteを使用したスキルの分析について述べました。スキル情報の集約とスキル分析を定型的に行い、スキルのギャップを洗い出します。ここで取り上げたスキル分析は、BPMにおける分析の極々一部ですが、その他の分析にも通じる共通的な考え方(プロセス指向)があります。

業務プロセスのモデルにスキルを直接的に埋め込まなかった理由は、業務プロセスとスキルを直接的に関連付けるよりも、業務プロセス - 機能 - スキルと紐付けたほうが、発展が見込めるからです。ここで出てきた「機能」は、システムの開発規模や工数見積もり、備品や人の調達に密接に関連します。スキル分析の出力であるスキルも、これらと関連します。こういった緩衝を設けることで、分析はプロジェクトの規模や、予算にも範囲を広げることができます。

これからも本連載では、SOA/BPMの勘所についてご紹介させていただきます。今後とも、「SOA/BPMの現場から - 日本のお客様事例 -」をよろしくお願いいたします!

日本オラクルのコンサルティングサービス部門(Oracle Consulting Service Japan [OCSJ])の中で、テクノロジーコンサルティング統括本部では、約200名 のコンサルタントが年間約200プロジェクトでテクノロジー製品全般に関する支援を行っています。

支援対象のシステムには、本稿で紹介したBPMの業務改善プロジェクト、SOAのシステム設計のほか、Oracle WebLogic Server/Oracle データベースを使ったシステム基盤に求められる高可用性、大規模システム、新機能実装システムなどが数多く含まれており、これらシステムの実践的な構築スキルやノウハウを日々蓄積しています。企業システムにおける最適な戦略の企画・策定から、迅速なインプリメンテーション、安定稼働まで、日本オラクルのコンサルティングサービスは、お客様特有のニーズを満たしたサービスを提供します。

日本オラクルのコンサルティングサービスに関するお問い合わせは、Oracle Direct 0120-155-096 まで。

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市川 義規 市川 義規 (いちかわ よしのり)
SOA/BPMチームのBPM担当コンサルタント。
ご無沙汰しております!長らく支援させていただいたBPM/SOAプロジェクトが無事カットオーバーし、この連載が再開できるようになりました。