2012年6月公開
組込みの統合ロードバランサ(ILB)とOracle Solarisゾーン、およびOracle Solaris 11の新機能であるネットワーク仮想化機能とを組み合わせて、単一システム上に仮想サーバーをセットアップする方法を紹介します。 最初にILBの概要を簡単に説明してから、Apache Tomcatの仮想サーバー・インスタンスをセットアップする例を紹介します。Oracle Solarisゾーンとネットワーク管理の基礎知識が必要です。
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ILBは、SPARCベースおよびx86ベースのシステムにインストールされているOracle Solarisオペレーティング・システムに、レイヤー3とレイヤー4のロードバランシング機能を提供します。つまり、ILBはネットワーク(IP)レイヤーとトランスポート(TCP/UDP)レイヤーで動作します。 ILBは、クライアントからの着信要求を傍受し、要求を処理するバックエンド・サーバーを一連のロードバランシング・ルールに基づいて決定し、選択されたサーバーに要求を転送します。 ILBはオプションで健全性検査を実行し、選択されたサーバーが着信要求を処理できるかどうかを確認してロードバランシング・アルゴリズムに必要なデータを提供します。
注: フルNATモードを使用する理由の1つは、ILBボックスの外部に特別なルートを設定する必要がないことです。 たとえば、ILBボックスは部署Aが管理しているものの、バックエンド・サーバーとネットワークは別の部署が所有している場合、部署AはフルNATモードを使用してロードバランシングを実行できます。 すべての要求はまずILBボックスに送信されます。ILBでは、要求の着信先IPアドレスをバックエンド・サーバーが所有するIPアドレスに変更し、要求の発信元IPアドレスをILBが所有するアドレスに置き換え、要求をバックエンド・サーバーに転送します。 バックエンド・サーバーは、要求が内部システムから送信されたかのように処理します。 そのため、バックエンド・サーバーに特別な設定をする必要はなく、特別なルートを設定する必要もありません。
ilbadm
CLI: このインタフェースを使用して、ロードバランシング・ルールの構成、オプションの健全性検査の実行、および統計の表示が可能です。libilb
構成ライブラリ: ilbadm
およびほかのサード・パーティ製アプリケーションは、libilb
内に実装されている機能をILBの管理に使用できます。ilbd
デーモン: このデーモンは、次のタスクを実行します。 ILBの詳細については、Oracle Solarisの管理: IPサービスを参照してください。
この例では、ハーフNATモードを使用します。つまり、トラフィックがILBに到達すると、リアル・サーバーの着信先IPアドレスはILBによって書き換えられます。発信元IPアドレスはそのままです。 このモードは通常、サーバー・ロギングに使用されます(詳細はOracle Solarisの管理:IPサービスの"ILBの動作モード"を参照してください)。
この例では、それぞれApache Tomcatサーバーを実行する2つのゾーンにまたがる仮想サーバー(IPアドレス10.0.2.20)に着信したトラフィックをロードバランシングします。 図1に示すとおり、ロードバランサ自体はマルチホーム・ゾーン(ilb-zone
)として構成されます。ilb-zone
(10.0.2.16/24)の1つのインタフェースは外部ネットワークに接続されています。 もう1つのインタフェース(192.168.1.21/24)は、同じシステムでホストされている仮想ネットワークに接続されています。 ILBは、ロードバランシング・ルールの仮想IPアドレス(VIP)として、アドレス10.0.2.20を参照します。
図1. Apache Tomcat仮想サーバーの例のダイアグラム
最初のステップとして、次の各ゾーンに一連の仮想ネットワーク・インタフェース(VNIC)と仮想スイッチ(etherstub)を作成します。
root@solaris:~# dladm create-vnic -l e1000g0 ilb0 root@solaris:~# dladm create-etherstub priv_net0 root@solaris:~# dladm create-vnic -l priv_net0 ilb1 root@solaris:~# dladm create-vnic -l priv_net0 server1 root@solaris:~# dladm create-vnic -l priv_net0 server2
etherstub priv_net0
は、Apache Tomcatサーバーを実行する2つのゾーンとILBゾーンとを接続するシステム内の仮想ネットワークとして動作します。 つまり、ilb-zone
を経由しなければApache Tomcatサーバーにはアクセスできません。
各ゾーンにファイル・システムがない場合は、次のコマンドを実行します。
root@solaris:~# zfs create -o mountpoint=/zones rpool/zones
次に、リスト1の手順に従ってILBゾーンを作成します。
root@solaris:~# zonecfg -z ilb-zone ilb-zone: No such zone configured Use 'create' to begin configuring a new zone. zonecfg:ilb-zone> create zonecfg:ilb-zone> set zonepath=/zones/ilb-zone zonecfg:ilb-zone> add net zonecfg:ilb-zone:net> set physical=ilb0 zonecfg:ilb-zone:net> end zonecfg:ilb-zone> add net zonecfg:ilb-zone:net> set physical=ilb1 zonecfg:ilb-zone:net> end zonecfg:ilb-zone> verify zonecfg:ilb-zone> exit
リスト1. ILBゾーンの作成
リスト2の手順に従って、2つのサーバー・ゾーン、server1-zone
とserver2-zone
を作成します。
root@solaris:~# zonecfg -z server1-zone server1-zone: No such zone configured Use 'create' to begin configuring a new zone. zonecfg:server1-zone> create zonecfg:server1-zone> set zonepath=/zones/server1-zone zonecfg:server1-zone> add net zonecfg:server1-zone:net> set physical=server1 zonecfg:server1-zone:net> end zonecfg:server1-zone> verify zonecfg:server1-zone> exit root@solaris:~# zonecfg -z server2-zone server2-zone: No such zone configured Use 'create' to begin configuring a new zone. zonecfg:server1-zone> create zonecfg:server1-zone> set zonepath=/zones/server2-zone zonecfg:server1-zone> add net zonecfg:server1-zone:net> set physical=server2 zonecfg:server1-zone:net> end zonecfg:server1-zone> verify zonecfg:server1-zone> exit
リスト2. サーバー・ゾーンの作成
ilb-zone
)のインストールゾーンを構成し終えたら、構成済みのゾーンをインストールする必要があります。 ここではデフォルトのゾーン・システム構成を使用し、最初の起動時に対話方式でいくつかの質問に答えていきます。 1つのゾーン(この例ではilb-zone
)のインストールが完了したら、ゾーンのクローンを数秒で簡単に作成できます。
root@solaris:~# zoneadm -z ilb-zone install A ZFS file system has been created for this zone. Progress being logged to /var/log/zones/zoneadm.20111107T101755Z.ilb-zone.install Image: Preparing at /zones/ilb-zone/root. Install Log: /system/volatile/install.9968/install_log AI Manifest: /tmp/manifest.xml.QBaGZe SC Profile: /usr/share/auto_install/sc_profiles/enable_sci.xml Zonename: ilb-zone Installation: Starting ... Creating IPS image Installing packages from: solaris origin: http://pkg.oracle.com/solaris/release ... ... Done: Installation completed in 605.138 seconds. Next Steps: Boot the zone, then log into the zone console (zlogin -C) to complete the configuration process Log saved in non-global zone as /zones/ilb-zone/root/var/log/zones/zoneadm.20111107T101755Z.ilb-zone.install
リスト3. ゾーンのインストール
ilb-zone
を起動し、いま作成した各ゾーンのステータスを確認します。
root@solaris:~# zoneadm -z ilb-zone boot root@solaris:~# zoneadm list -cv ID NAME STATUS PATH BRAND IP 0 global running / solaris shared 1 ilb-zone running /zones/ilb-zone solaris excl - server1-zone configured /zones/server1-zone solaris excl - server2-zone configured /zones/server2-zone solaris excl root@solaris:~# zlogin -C ilb-zone [Connected to zone 'ilb-zone' console]
ゾーンにログインすると、すぐにシステム構成ツールのプロンプトが表示されます。 この対話型ツールを使用して、さまざまなシステム構成タスクを順番に実行して行きます。 この例では、ilb-zone
ゾーンに対して次の構成を使用します。
ilb-zone
とします。ilb0
のIPアドレスは10.0.2.16/24
、デフォルト・ルートは10.0.2.2
とします。ilb1
のIPアドレスは192.168.1.21/24
とします。システム構成ツールを使用して構成できるのは、1つのネットワーク・インタフェースのみです。ここではilb0
を構成します。 初期構成が適用されたら、ゾーンにログインし、次の手順に従ってilb1
の構成を追加する必要があります。
root@ilb-zone:~# ipadm create-ip ilb1 root@ilb-zone:~# ipadm create-addr -T static -a local=192.168.1.21/24 ilb1/v4
server1-zone
)のインストール1つ目のサーバー・ゾーンserver1-zone
を、ilb-zone
のクローンとして作成します。 ゾーンのクローンを作成したら、server1-zone
を構成し、server1-zone
のクローンとしてserver2-zone
を作成します。 まずilb-zone
を停止し、クローンを作成します。 次に、新たにクローンを作成したserver1-zone
にログインし、このゾーンの最終的な構成を完了します。
root@solaris:~# zoneadm -z ilb-zone shutdown root@solaris:~# zoneadm -z server1-zone clone ilb-zone A ZFS file system has been created for this zone. Progress is being logged to /var/log/zones/zoneadm.20120428T004843Z.server1-zone Log saved in non-global zone as /zones/server1-zone/var/log/zones/zoneadm.2020428T004843Z.server1-zone root@solaris:~# zoneadm -z server1-zone boot root@solaris:~# zlogin -C server1-zone [Connected to zone 'server1-zone' console]
最初のゾーンのときと同様にシステム構成ツールが起動するので、次のとおりにserver1-zone
の最終的な構成を実行します。
server1-zone
とします。server1
のIPアドレスは192.168.1.50/24
、デフォルト・ルートは192.168.1.21
とします。none
に設定します。ILBは、外部ネットワーク(ilb0
経由)とプライベート・ネットワーク(ilb1
経由)の間のトラフィックを転送するエージェントとして動作します。 そのため、IP転送サービスが必要です。 この例ではIPv4アドレスを使用するので、リスト4に示すとおり、ilb-zone
非グローバル・ゾーン(ゾーンを起動してログインする必要があります)でIPv4転送のみ有効にする必要があります。
root@ilb-zone:~# routeadm -u -e ipv4-forwarding root@ilb-zone:~# routeadm Configuration Current Current Option Configuration System State --------------------------------------------------------- IPv4 routing disabled disabled IPv6 routing disabled disabled IPv4 forwarding enabled enabled IPv6 forwarding disabled disabled Routing services "route:default ripng:default" Routing daemons: STATE FMRI disabled svc:/network/routing/legacy-routing:ipv4 disabled svc:/network/routing/legacy-routing:ipv6 disabled svc:/network/routing/ripng:default online svc:/network/routing/ndp:default disabled svc:/network/routing/route:default disabled svc:/network/routing/rdisc:default
リスト4. IPv4転送の有効化
ILBゾーンilb-zone
の中から外部にpingを実行できるかどうかテストします。
root@ilb-zone:~# ping www.oracle.com www.oracle.com is alive
server1-zone
)へのTomcatのインストールロードバランシングするサービスはApache Tomcatであるため、リスト5に示すとおり、パッケージ・マネージャpkg
を使用してserver1-zone
にTomcatをインストールする必要があります。グローバル・ゾーンを経由するすべての接続をパッケージ・マネージャが代行するため、server1-zone
でのネットワーク接続は不要です。 別のゾーンにソフトウェアがインストールされている場合、ソフトウェアはローカルにキャッシュされます。そうでない場合は、ネットワーク上に構成されているパッケージ・リポジトリから、グローバル・ゾーン経由でソフトウェアがダウンロードされます。
root@server1-zone:~# pkg install runtime/java tomcat tomcat-examples Packages to install: 17 Create boot environment:No Create backup boot environment:No Services to change: 5 DOWNLOAD PKGS FILES XFER (MB) Completed 17/17 3381/3381 56.3/56.3 PHASE ACTIONS Install Phase 4269/4269 PHASE ITEMS Package State Update Phase 17/17 Image State Update Phase 2/2 Loading smf(5) service descriptions: 1/1
リスト5. Apache Tomcatサービスのインストール
Apache Tomcatのインストールが成功したら、svc:/network/http
SMFサービスのtomcat6
インスタンスを次の方法で有効化する必要があります。
root@server1-zone:~# svcadm enable http:tomcat6
現在のステータスの概要を把握するため、グローバル・ゾーンから各ゾーンをリストします。
root@solaris:~# zoneadm list -cv ID NAME STATUS PATH BRAND IP 0 global running / solaris shared 1 ilb-zone running /zones/ilb-zone solaris excl 2 server1-zone running /zones/server1-zone solaris excl - server2-zone configured /zones/server2-zone solaris excl
server1-zone
)へのテスト用ルートの構成正しく実行されていることを確認するには、グローバル・ゾーンからserver1-zone
に到達できる必要があるため、新しいルートを追加します。 ネットワークを再起動してもルートが一定になるように、次のroute -p
コマンドを使用してルートの変更を行います。
root@solaris:~# route -p add 192.168.1.0 10.0.2.16 add net 192.168.1.0: gateway 10.0.2.16 add persistent net 192.168.1.0: gateway 10.0.2.16
この変更により、図2に示すとおり、server1-zone
で実行中のApache Tomcatサービスに、グローバル・ゾーンからilb-zone
経由で到達できるようになります。
図2. Apache TomcatのWelcome画面
server1-zone
のApache Tomcatサーバーのインスタンスが正常に実行されているため、server2-zone
に別のインスタンスを簡単に作成できます。 リスト6に示すとおり、まずserver1-zone
を停止してからそのクローンを作成し、その後、両方のゾーンを起動して新しいserver2-zone
にログインします。
root@solaris:~# zoneadm -z server1-zone shutdown root@solaris:~# zoneadm -z server2-zone clone server1-zone root@solaris:~# zoneadm -z server1-zone boot root@solaris:~# zoneadm -z server2-zone boot root@solaris:~# zoneadm list -cv ID NAME STATUS PATH BRAND IP 0 global running / solaris shared 1 ilb-zone running /zones/ilb-zone solaris excl 2 server1-zone running /zones/server1-zone solaris excl 3 server2-zone running /zones/server2-zone solaris excl root@solaris:~# zlogin -C server2-zone [Connected to zone 'server2-zone' console]
リスト6. 別のApache Tomcatインスタンスの作成
もう一度システム構成ツールを使用して、次のとおりにserver2-zone
の構成を完了します。
server2-zone
とします。server2
のIPアドレスは192.168.1.60/24
、デフォルト・ルートは192.168.1.21
(ilb-zone
のインタフェースilb1
)とします。none
に設定します。数分で新しいゾーンが完成し、Apache Tomcatはすでに起動し実行された状態になります(server2-zone
からsvcs
を使用して確認します)。
root@server2-zone:~# svcs http:tomcat6 STATE STIME FMRI online 9:05:44 svc:/network/http:tomcat6
図3に示すとおり、Apache Tomcatインスタンスにはグローバル・ゾーンからも到達できます。
図3. Apache Tomcatへのグローバル・ゾーンからのアクセス
Oracle Solaris 11にはアプリケーション・インスタンスを短時間で効率的にデプロイできる方法があり、クラウド型の環境に理想的であることがすぐにわかります。
Apache Tomcatの2つのインスタンスがそれぞれのゾーンで実行されている状態になったので、ゾーン間のトラフィックを調整するロードバランシング機能を設定します。 まずはILBゾーンilb-zone
で、リスト7の手順に従ってパッケージ・マネージャ(pkg
)を使用してILBパッケージをインストールします。
root@ilb-zone:~# pkg install ilb Packages to install: 1 Create boot environment:No Create backup boot environment:No Services to change: 1 DOWNLOAD PKGS FILES XFER (MB) Completed 1/1 23/23 02/0.2 PHASE ACTIONS Install Phase 55/55 PHASE ITEMS Package State Update Phase 1/1 Image State Update Phase 2/2 Load smf(5) service descriptions: 1/1
リスト7. ILBパッケージのインストール
ILBサービスを有効化し、server1-zone
とserver2-zone
の2つのApache Tomcatインスタンスにサーバー・グループtomcatgroup
を定義します。
root@ilb-zone:~# svcadm enable ilb root@ilb-zone:~# ilbadm create-servergroup -s servers=192.168.1.50:8080,192.168.1.60:8080 tomcatgroup root@ilb-zone:~# ilbadm show-servergroup SGNAME SERVERID MINPORT MAXPORT IP_ADDRESS tomcatgroup _tomcatgroup.0 8080 8080 192.168.1.50 tomcatgroup _tomcatgroup.1 8080 8080 192.168.1.60
次のステップでは、ロードバランシング方法を定義します。 通常は、一連の手順の中でこのステップがもっとも手間がかかります。 最初に、永続性を持つtomcatrule_rr
という名前の単純なルールを定義して有効化します。このルールは、"ラウンドロビン"方式のロードバランシング・アルゴリズムとハーフNATネットワーク・トポロジーを使用して、着信先の仮想IPアドレスとポート番号(10.0.2.20:80
)宛ての着信パケットをtomcatgroup
サーバー・グループの着信先に一致させます。
root@ilb-zone:~# ilbadm create-rule -e -p -i vip=10.0.2.20,port=80 -m lbalg=rr,type=HALF-NAT,pmask=32 -o servergroup=tomcatgroup tomcatrule_rr root@ilb-zone:~# ilbadm show-rule RULENAME STATUS LBALG TYPE PROTOCOL VIP PORT tomcatrule_rr E roundrobin HALF-NAT TCP 10.0.2.20 80
リスト8に示すとおり、-f
オプションを使用すると、作成した新しいルールのさらに詳細な情報を表示できます。
root@ilb-zone:~# ilbadm show-rule -f RULENAME: tomcatrule_rr STATUS:E PORT: 80 PROTOCOL: tcp LBALG: roundrobin TYPE: HALF-NAT PROXY-SRC: -- PMASK: /32 HC-NAME: -- HC-PORT: -- CONN-DRAIN: 0 NAT-TIMEOUT: 120 PERSIST-TIMEOUT: 0 SERVERGROUP: tomcatgroup VIP: 10.0.2.20 SERVERS: _tomcatgroup.0,_tomcatgroup.1
リスト8. 新しいルールの詳細
最後に、VIPアドレス10.0.2.20
を着信先とするパケットのうち、ネットワーク・インタフェースilb0
に送信する必要のあるパケットがどれかを外部に通知する必要があります。 まず、次のコマンドを使用して、ilb0
のMACアドレスをilb-zone
で調べる必要があります。
root@ilb-zone:~# dladm show-vnic ilb0 LINK OVER SPEED MACADDRESS MACADDRTYPE VID ilb0 ? 1000 2:8:20:4e:fa:fd random 0
MACアドレス(この例では2:8:20:4e:fa:fd
)がわかったら、arp
を使用してインターネットからMACアドレスへの変換(公開、永続的)を適用する必要があります。
root@ilb-zone:~# arp -s 10.0.2.20 2:8:20:4e:fa:fd pub permanent
2つのApache Tomcatインスタンスがロードバランシングされているかどうかを確認するには、ブラウザで仮想IPアドレス10.0.2.20
を指定し、図4に示すApache TomcatのWelcomeページが表示されるかどうかを確認します。
図4. Apache TomcatのWelcomeページ
表示されれば成功です。 ところが、どちらのインスタンスから表示されたのかわかりません。 これを簡単に確認する方法があります。server1-zone
とserver2-zone
の両方で、Apache Tomcatのドキュメント・ルートにあるスクリプト例の1つ、/var/tomcat6/webapps/examples/jsp/snp/snoop.jsp
を変更します。 次の行を追加して、要求を処理したApache Tomcatインスタンスのサーバー・ホスト名を出力するようにします。
<h3>Backend server</h3> <%@page import="java.net.InetAddress;" %> <%String ip = ""; InetAddress ina = InetAddress.getLocalHost(); out.println("Server Host Name :: "+ina.getHostName());%>
変更を加えたら、仮想IPアドレスhttp://10.0.2.20/examples/jsp/snp/snoop.jsp
上のスクリプトを起動して、図5に示しているような結果を確認できます。
図5. サーバーのホスト名の確認
簡単なILBルールにはサーバーの健全性検査を含めなかったため、有効性は限定的です。というのも、ロードバランサが停止しているサーバーに要求を転送しないようにする必要があるからです。 使用できる健全性検査オプションには、 pingプローブ、TCPプローブ、UDPプローブ、ユーザー定義のスクリプトがあります。 Apache Tomcatインスタンスの健全性を確認する必要があるため、リスト9に示す簡単な健全性検査スクリプトを記述します。
root@ilb-zone:~# mkdir /opt/ilb root@ilb-zone:~# cat > /opt/ilb/hc-tomcat #!/usr/bin/bash result=`curl -s http://$2:8080` if [ "$result" != "" ] && [ ${result:0:5} = "<meta" ]; then echo 0 else echo -1 fi root@ilb-zone:~# chmod +x /opt/ilb/hc-tomcat
リスト9. 健全性検査スクリプト
このスクリプトは、サーバーにpingを送って<meta>
ヘッダーが返されるかどうかを確認するという単純なものです。 リスト9を見ると、スクリプト変数$2
があることもわかります。 ILBには、スクリプトで使用できる変数が多数あります。
$1
— VIPアドレス(IPv4またはIPv6のリテラル・アドレス)$2
— サーバーのIPアドレス(IPv4またはIPv6のリテラル・アドレス)$3
— プロトコル(UDPまたはTCPのいずれか)$4
— ロードバランシング・モード(DSR、NAT、ハーフNAT)$5
— 数値ポート$6
— 失敗を返すまでにスクリプトが待機する最長時間(秒数)server1-zone
上でスクリプトを実行し、次に示すように、成功を示す0
が返されることを確認できれば、スクリプトの実行に問題ないことを簡単に再確認できます。
root@ilb-zone:~# /opt/ilb/hc-tomcat 10.0.2.20 192.168.1.50 0
スクリプトが正常に実行できたら、次に示すようにilbadm
を使用して、スクリプトと健全性検査のルールを関連付けられます。
root@ilb-zone:~# ilbadm create-healthcheck -h hc-test=/opt/ilb/hc-tomcat,hc-timeout=2,hc-count=1,hc-interval=10 hc-tomcat root@ilb-zone:~# ilbadm show-healthcheck HCNAME TIMEOUT COUNT INTERVAL DEF_PING TEST hc-tomcat 2 1 10 Y /opt/ilb/hc-tomcat
この例では、最長2秒間、応答を待機しながら、10秒に1回スクリプトを実行します。 この健全性検査を作成したら、既存のILBルールを変更する必要があります。 現在、ILBは既存のルールの変更をサポートしていないため、リスト10に示すように、既存のルールをまず削除してから新しいルールを作成します。
root@ilb-zone:~# ilbadm delete-rule tomcatrule_rr root@ilb-zone:~# ilbadm create-rule -e -p -i vip=10.0.2.20,port=80 -m lbalg=rr,type=HALF-NAT,pmask=32 -h hc-name=hc-tomcat -o servergroup=tomcatgroup tomcatrule_rr root@ilb-zone:~# ilbadm show-rule -f RULENAME: tomcatrule_rr STATUS:E PORT: 80 PROTOCOL: tcp LBALG: roundrobin TYPE: HALF-NAT PROXY-SRC: -- PMASK: /32 HC-NAME: hc-tomcat HC-PORT: ANY CONN-DRAIN: 0 NAT-TIMEOUT: 120 PERSIST-TIMEOUT: 0 SERVERGROUP: tomcatgroup VIP: 10.0.2.20 SERVERS: _tomcatgroup.0,_tomcatgroup.1
リスト10. 新しいILBルールの作成
新しいルールが作成されると、健全性検査はすぐに有効になります。 健全性検査のステータスは、次に示すとおり、ilbadm show-hc-result
を使用して簡単に取得できます。
root@ilb-zone:~# ilbadm show-hc-result RULENAME HCNAME SERVERID STATUS FAIL LAST NEXT RTT tomcatrule_rr hc-tomcat _tomcatgroup.0 alive 0 11:01:18 11:01:23 739 tomcatrule_rr hc-tomcat _tomcatgroup.1 alive 0 11:01:20 11:01:34 1111
上の結果を見てわかるとおり、すべてが正常に動作しており、サーバーは両方とも応答しています。 では、サーバーの1つが停止したらどうなるでしょうか。 server1-zone
のApache Tomcatインスタンスを無効にし、どのような現象が発生するか確認してみましょう。
root@server1-zone:~# svcadm disable http:tomcat6
もう一度、ilb-zone
からステータスを確認します。
root@ilb-zone:~# ilbadm show-hc-result RULENAME HCNAME SERVERID STATUS FAIL LAST NEXT RTT tomcatrule_rr hc-tomcat _tomcatgroup.0 dead 63 11:22:43 11:22:50 941 tomcatrule_rr hc-tomcat _tomcatgroup.1 alive 0 11:22:30 11:22:45 952
要求はすべて、server2-zone
のApache Tomcatインスタンスに送信されています。
Oracle Solaris 11の組込み機能である統合ロードバランサ(ILB)は、レイヤー3とレイヤー4のロードバランシング機能を備えています。 ILBは、クライアントからの着信要求を傍受して、要求を処理するバックエンド・サーバーを一連のロードバランシング・ルールに基づいて決定し、選択されたサーバーに要求を転送するため、アプリケーションの耐障害性を高める強力な方法と言えます。
統合ロードバランサの製品ドキュメントを参照してください。
その他のOracle Solaris 11のリソースは次のとおりです。
リビジョン1.0、2012/06/04 |
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