JDeveloper 11g によるリッチクライアント開発

第2章 ADF Faces Rich Clientを体験

日本オラクル株式会社 セールスコンサルティング統括本部
Fusion Middleware SC本部 Fusion Middleware レディネス部
智野 潤子 (ちの じゅんこ)

第1章「 ADF Faces Rich Clientとは」では、ADF Faces Rich Clientが提供する主な機能を紹介しました。この章では、デモ・アプリケーションを実行してADF Faces Rich Clientが提供するUIコンポーネントとその機能を実際に体験してみましょう。

目次

デモ・アプリケーションの概要

ADF Faces Rich Clientの開発チームは、各コンポーネントが提供する機能を簡単に確認することができるデモ・アプリケーションを用意しています。ADF Faces Rich Clientのデモ・アプリケーションを実行するには、Webブラウザで次のURLにアクセスします。

ADF Faces Rich Clientは実行時に、各ブラウザに最適化されたページのレンダリングとJavaScriptコードを生成するため、使用するWebブラウザとそのバージョンに制約があります。ADF Faces Rich Clientが対応しているWebブラウザとそのバージョンは表1のとおりです。

表1 ADF Faces Rich Clientが対応しているWebブラウザとバージョン
Webブラウザ 対応バージョン
Internet Explorer 7.0以上
Firefox 2.0.0.2以上

デモ・アプリケーションにアクセスすると、図1のようなページが表示されます。

図1 デモ・アプリケーションの初期画面
図1 デモ・アプリケーションの初期画面

表示されたデモ・アプリケーションには8つのタブ・ページがあり、それぞれADF Face Rich Clientの機能を使用したサンプルやそのソースコードを参照することができます。各タブ・ページでは、表2のようなサンプルが提供されます。

表2 デモ・アプリケーションの8つのタブ・ページ
タブ 内容
Tag Guide 各コンポーネントのタグの一覧とタグごとのサンプル(詳細は「 Tag Guideによるコンポーネントのサンプル」を参照)
Skinning スキンの変更によって各コンポーネントの表示がどのように変わるかを確認できるサンプル
File Explorer ADF Faces Rich Clientのさまざまな機能を使用したファイルの表示や検索を行うアプリケーションの実装例(詳細は「 File Explorerデモによる機能紹介」を参照)
Framework Features 部分ページ・レンダリング、コンバータやバリデータ、ヘルプ・システムとの連携、ドラッグ&ドロップ、ページ・レイアウトなどADF Faces Rich Clientが提供する機能にフォーカスしたサンプル
Sample Page Templates ページ・テンプレートのサンプル
Visual Designs メニュー、テーブルなどデザイン別のサンプル
Styles 各コンポーネントのinlinestyleおよびcontentstyle属性の変更によって各コンポーネントを表示がどのように変わるかを確認できるサンプル
Commonly Confused Components 似たようなコンポーネントの使い分け方について説明したサンプル
この章で使用するデモ・アプリケーションはOTN-Jからダウンロードでき、Oracle JDeveloper上で実行することも可能です。詳細は、次のドキュメントを参照してください。

Tag Guideによるコンポーネントのサンプル

デモ・アプリケーションの[Tag Guide]タブ・ページでは、ADF Faces Rich Clientによって提供されるUIコンポーネントなどのタグのサンプルを参照することができます。デモ・アプリケーションの初期画面の[Tag Guide]リンクまたはタブをクリックするとタグがアルファベット順に表示されます(図2)。

図2 ADF Faces Rich Clientデモ - Tag Guide(Alphabetical)
図2 ADF Faces Rich Clientデモ - Tag Guide(Alphabetical)

また、[By Group]タグをクリックすると、タグが表3のようなグループごとに表示されます。

表3 ADF Faces Rich Clientの主なグループ
グループ 説明
Component Tag Active Components アクティブ・データ・フレームワークに関連したUIコンポーネントのタグ
Input Components テキスト・フィールドやチェック・ボックスなど入力フォームで使用するUIコンポーネントのタグ
Layout Components UIコンポーネントのレイアウトのためのタグ
Navigation Components リンクやボタンなど他のページへナビゲートするためのタグ
Output Components テキストやメッセージなどを表示するためのタグ
Query Components 検索フォームを作成するためのタグ
Table Components テーブルやツリーなどコレクション・データを表示するためのタグ
Other Tag Behavior ポップアップの表示や印刷用ページへの切り替えなどを操作するためのタグ
Converters コンバータのタグ
Validators バリデータのタグ
Drag and Drop ドラッグ&ドロップ機能を実装するためのタグ
Listener イベント・リスナーのタグ

図3 ADF Faces Rich Clientデモ - Tag Guide(By Group)
図3 ADF Faces Rich Clientデモ - Tag Guide(By Group)

[Tag Guide]画面でタグ名をクリックすると、そのタグを使用したサンプルを確認することができます。図4はchooseColorを選択した場合に表示されるサンプルです。画面右側の入力フォームを使用すると各タグの属性値を変更でき、[Update]ボタンをクリックすることで適用されます。
また画面上部のリンクを使用することで、各タグに関連した情報を参照することができます。

表4 Tag Guideのリンク
リンク 説明
Tag Documentation タグの属性や関連するイベントについて説明したドキュメントを参照
Skinning Key Demo タグに対応したUIコンポーネントのスキンの設定を変更し、コンポーネントの外観がどのように変わるかを確認
Skinning Key Documentation スキンで設定できる項目について説明したドキュメントを参照
Visual Design Demo UIコンポーネントのビジュアル・デザイン例
View Page Source 現在表示しているページのJSPソースを参照

図4 chooseColorタグのサンプル
図4 chooseColorタグのサンプル

File Explorerデモによる機能紹介

この節では、デモ・アプリケーションのFile Explorerの実行を通して、ADF Faces Rich Clientが提供する次のような機能を紹介します。

  • パネルの表示の切り替え
  • テーブル形式でのデータ表示
  • ポップアップ・ウィンドウ/ポップアップ・メニューの表示
  • ドラッグ&ドロップ
  • スキンによるアプリケーションの外観の変更

File Explorerアプリケーションを表示するためには、前節で表示したデモ・アプリケーションの初期画面で[File Explorer]リンクまたはタブをクリックします。

パネルの表示の切り替え

ADF Faces Rich Clientには、パネルの機能表示/非表示を切り替えることができるコンポーネントが多数用意されています。このようなコンポーネントは、 部分ページ・レンダリングの機能が使用されているので、表示/非表示を切り替えてもページ全体の再読み込みは発生しません。File Explorerでは、次の3つが使用されています。

  • タブ区切りパネル
  • アコーディオン・パネル
  • スプリッタ区切りパネル

図5 File Explorerデモ
図5 File Explorerデモ

タブ区切りパネル

File Explorerデモの右側の領域は3つのタブ・ページで構成されています。初期状態は[Table]タブが選択されておりテーブル形式でデータが表示されていますが、図6のように[Tree Table]タブをクリックするとツリー・テーブル形式でデータが表示されます。同様に、[List]タブをクリックするとリスト形式でデータが表示されます。

図6 [Tree Table]タブ・ページ
図6 [Tree Table]タブ・ページ

アコーディオン・パネル

File Explorerデモの左側の領域は、アコーディオンのように複数のコンテンツが開閉して表示が切り替わるパネル(アコーディオン・パネル)で構成されています。初期状態は [Folders]が開いた状態になっており、そのコンテンツ(ツリー)が表示されています。一方 [Search]は閉じた状態なので、ヘッダーのみが表示され、コンテンツは表示されていません。
アコーディオン・パネルでは、図7のように、ヘッダーの[+]または[-]アイコンで表示/非表示を切り替えることができます。

図7 アコーディオン・パネル
図7 アコーディオン・パネル

スプリッタ区切りパネル

File Explorerデモの画面は、スプリッタによって上下、左右に分割されています。画面上部のページのヘッダー部分や画面左側のアコーディオン・パネルはサイズの変更や表示/非表示を切り替えることができます(図8)。スプリッタによって区切られたパネルの一方の領域が非表示になるか、サイズが変更されるともう一方の領域はサイズが再計算され、表示が変更されます(図9)。

図8 スプリッタ
図8 スプリッタ

図9 画面左側の領域を非表示にした状態
図9 画面左側の領域を非表示にした状態

テーブル形式でのデータ表示

File Explorerデモでは、テーブル形式やツリー・テーブル形式でデータを表示しており、それぞれ次の機能が使用可能です。

  • データのソート
  • 列の幅や表示順の変更
  • ドッキングを解除

データのソート

ADF Faces Rich Clientのテーブルやツリー・テーブルの列ヘッダに表示されている三角のアイコンをクリックすると、データをソートできます。

図10 データのソート
図10 データのソート

列の幅や表示順の変更

ADF Faces Rich Clientのテーブルやツリー・テーブルは、実行時にドラッグ&ドロップで列の幅や表示される順番を自由に変更することができます。また [ビュー]メニューを使用すると、列の表示/非表示を切り替えたり、列が表示される順番を変更することができます。

図11 列の表示/非表示の切り替え
図11 列の表示/非表示の切り替え

ドッキングを解除

テーブルまたはツリー・テーブルの上にある [連結解除]ボタンをクリックすると、テーブルがパネルからドッキングが解除され、図12のようにWebブラウザのウィンドウいっぱいに表示されます。ドッキングが解除されたテーブル/ツリー・テーブルは、右上の[×]ボタンまたは[連結解除]ボタンをクリックすれば元の状態に戻ります。

図12 treeTableのドッキングが解除された状態
図12 treeTableのドッキングが解除された状態

ポップアップ・ウィンドウ/ポップアップ・メニューの表示

ADF Faces Rich Clientは、ポップアップでウィンドウやメニューを表示する機能を提供しています。画面左下の[About]リンクをクリックすると、図13のようなポップアップ・ウィンドウが表示されます。

図13 ポップアップ・ウィンドウの表示
図13 ポップアップ・ウィンドウの表示

また、テーブルの行を右クリックすると図14のようにポップアップ・メニューが表示され、ファイルのプロパティの表示や削除、コピーなどの操作が可能です。

図14 ポップアップ・メニューの表示
図14 ポップアップ・メニューの表示

ドラッグ&ドロップ

ADF Faces Rich Clientでは、コンポーネント間でのドラッグ&ドロップの操作によってデータを移動、コピーまたはリンクする機能を実現するためのフレームワークを提供しています。ドラッグ元のコンポーネントとドロップするターゲットのコンポーネントをそれぞれ指定するだけで、ドラッグ&ドロップの機能をWebアプリケーションに追加することができます。図15はFile0.pdfをドラッグ&ドロップでMyFiles\Folder0からMyFiles\Folder2に移動させているところを示しています。

図15 ドラッグ&ドロップでファイルを移動
図15 ドラッグ&ドロップでファイルを移動

スキンによるアプリケーションの外観の変更

ADF Faces Rich ClientのUIコンポーネントはスキンによってアプリケーションの外観が定義されます。開発者が独自のスキンを作成したり、既存のスキンを拡張したりすることも可能です。
File Explorerデモでは、 [Select Skin]からスキンを選択し[Refresh]ボタンをクリックすると、実行時にスキンを変更することができます。図16は、スキンをデフォルトの[richDemo]から[simple]に変更した場合の画面です。

図16 simpleスキンを適用したFile Explorerアプリケーション
図16 simpleスキンを適用したFile Explorerアプリケーション

まとめ

この章では、デモ・アプリケーションを使用してADF Faces Rich Clientが提供する機能として次のような機能を紹介しました。

  • パネルの表示の切り替え
  • テーブル形式でのデータ表示
  • ポップアップ
  • ドラッグ・アンド・ドロップ
  • スキンによるアプリケーションの外観の変更
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智野 潤子 智野 潤子 (ちの じゅんこ)
日本オラクルで主に開発ツール/フレームワーク製品を担当しています。