Tom Luckenbach著
2013年2月公開
この記事では、オラクルのPillar Axiomストレージ・システムの使用時にHybrid Columnar Compressionを有効化する方法について説明します。
注: Hybrid Columnar Compressionの使用に関する技術情報やビジネス上の利点について詳しくは、「関連項目」に記載されたホワイト・ペーパーへのリンク先を参照してください。
Hybrid Columnar Compressionは、レベルの高いデータ圧縮を実現し、コストの削減、スペースの節減を提供するほか、I/Oの削減によるパフォーマンスの向上を促進します。 オラクルのストレージ・デバイス上でデータベース機能とストレージ機能の両方を使用するように最適化されているため、ウェアハウス圧縮とアーカイブ圧縮の両方に有効なテクノロジーです。
平均的なストレージ削減は、Hybrid Columnar Compressionがどのレベルで実装されているかに応じて、10倍から15倍までの幅があります。実環境の顧客のベンチマークでは、最大204倍のストレージ削減という結果が得られています。
平均的な10倍のストレージ削減でも、ストレージの新規購入の必要性を減らすことができ、多くの場合は数年間購入する必要がなくなります。 たとえば、100TBのデータベースで10倍のストレージ削減を達成すると、10TBの物理ストレージしか使用していないことになります。 これで90TBのストレージが使用可能になるため、ストレージの購入を長期にわたって遅らせることも可能になります。 この使用可能となった90TBのストレージを、100TBのデータがそれぞれ10TBの実際のディスク領域に圧縮されたデータベースをさらに最大9つ格納するために使用することも可能です。
Hybrid Columnar Compressionは、オラクルのストレージ・システム上でのみサポートされます。 以下の各手順では、Pillar Axiom 600ストレージ・システム上でOracle DatabaseをHybrid Columnar Compressionと併用する設定プロセスの概要について説明します。 新しいデータベースを作成する場合であっても、既存のデータベースの表を圧縮する場合であっても、手順は同様です。
Pillar Axiomストレージ・システム上のHybrid Columnar Compressionは、Oracle Database 11g Release 2で使用できます。 Pillar Axiomストレージ・システム上でHybrid Columnar Compressionを有効にするための前提条件は、Oracle Automatic Storage Managementをボリューム管理に使用する必要がある、ということだけです。
注: Oracle Automatic Storage Managementに関する詳細情報については、「関連項目」に記載されたリンク先を参照してください。
Hybrid Columnar Compressionの利用に向けてデータベースを作成または使用するには、次の3つの基本的な手順を実行する必要があります。
これらの手順は、以下の項でさらに詳細に説明します。
注: パッチ13923374(オラクルのGrid Infrastructure 11.2.0.3.3)などのPatch Set Update(PSU)には、Hybrid Columnar Compressionのパッチ(13041324)やその他のパッチが含まれているため、Patch Set Update(PSU)をインストールする場合もあります。
GI_HOME
とDB_HOME
の両方のカタログでOPatchユーティリティをバージョン11.2.0.3に更新します。データベース内でHybrid Columnar Compressionを有効にするには、基盤となるOracle Automatic Storage Managementディスク・グループの次の3つの属性設定を変更する必要があります。
compatible.asm
を11.2.0.3
以降に設定する必要があります。compatible.rdbms
を11.2.0.3
以降に設定する必要があります。storage.type
をAXIOM
に設定する必要があります。ディスク・グループの属性の設定について詳しくは、このドキュメントにあるHybrid Columnar Compressionの参考資料を参照してください。
次の手順は、Hybrid Columnar Compressionと互換性のあるOracle Automatic Storage Managementディスク・グループを作成する方法を示しています。
注: ディスク全体をOracle Automatic Storage Managementディスク用に使用することをお勧めします。 明示的なパーティションを作成する必要はありません。
たとえば、Oracle Linuxでは、root
ユーザーは次のコマンドを使用して、ディスク全体をOracle Automatic Storage Managementの候補としてタグ付けします。
# oracleasm createdisk DATA01 /dev/mapper/2000b080000001269
Oracle Solarisでは、root
ユーザーは次のコマンドを実行して、Oracle Automatic Storage Managementで使用されるデバイスごとに所有権をoracle
ユーザーおよびグループに変更する必要があります。次に例を示します。
# chown -L oracle:oinstall /dev/rdsk/c0t000B080001003904d0s2
mpathadm list LU
コマンドでも、マルチパス・デバイスが一覧表示されます。
asmca
ツールを使用し、External
に設定された冗長性レベルを使用して1つ以上のディスク・グループを作成します。注: Oracle Linuxを使用する場合は、(現在は)ディスクへのデフォルト・パスを/dev/oracleasm/disks
に設定する必要があります。 そうしないと、ディスクがPillar Axiomストレージとして正しく識別されない可能性があります。
set compatible
およびset attribute
コマンドを使用して、互換性レベルとストレージ・タイプを設定します。 たとえば、リスト1はDATA
という名前のディスク・グループの例を示しています。[Oracle @ myhost] $ export ORACLE_HOME=/u01/app/11.2.0.3/grid [Oracle @ myhost] $ export ORACLE_SID=+ASM [Oracle @ myhost] $ sqlplus / as sysasm SQL * Plus: Release 11.2.0.3.0 Production on Tue May 1 18:04:06 2012 Copyright (c) 1982, 2011, Oracle. All rights reserved. Connected to: Oracle Database 11g Enterprise Edition Release 11.2.0.3.0 - 64bit Production With the Real Application Clusters and Automatic Storage Management options SQL> alter system set 'compatible'='11.2.0.3' scope=spfile sid='*'; System altered. SQL> alter diskgroup DATA set attribute 'compatible.asm'='11.2.0.3'; Disk group altered. SQL> alter diskgroup DATA set attribute 'compatible.rdbms'='11.2.0.3'; Disk group altered. SQL> alter diskgroup DATA set attribute 'storage.type'='AXIOM'; Disk group altered.
リスト1
注: ディスク・グループが実際にPillar Axiomストレージであるかどうかを検証するチェックがあります。 オラクル以外のストレージ上で最後のSQLコマンドを実行しようとすると、次のようなエラー・メッセージが表示されます。
ORA-15287: could not set disk group attribute storage.type due to incompatible disks ORA-15285: disk '/dev/mapper/XXXXXXXX' violates disk group attribute storage.type
残りの手順では、データベース内のデータについて取り上げます。 新しいデータベースを作成している場合であっても、圧縮データのために既存のデータベース内に新しい表を作成している場合であっても、基本的な要件は同じです。 つまり、いずれの場合も、Hybrid Columnar Compressionと互換性のあるOracle Automatic Storage Managementディスク・グループの表領域を使用します。
領域や操作上の考慮事項に応じて、既存のディスク・グループにHybrid Columnar Compressionの圧縮された表を作成するか、または新しいディスク・グループを作成することができます。 この手順で注意すべき重要な項目は、データベースの互換性設定がディスク・グループと一致している必要があることです。 つまり、データベースの互換性をディスク・グループと同じバージョン(11.2.0.3
以降)に設定することも必要です。
最後に、圧縮データを実際に作成するための方法にはさまざまなものがあります。 ここでは、Hybrid Columnar Compressionを使用して、圧縮された表データを作成するためのSQL文の例を2つ紹介します。 以下に示した最初のコマンドは、アーカイブ・ユースケース用に表のコピーを作成します。 2番目のコマンドは、"alter table move"の方法を使用して(新しい表を作成するのではなく)表データを直接圧縮します。 これにより、オンライン・ユースケースに適した、指定された圧縮タイプでデータが"即座に"圧縮されます。
SQL> create table MYDATA_COMP_ARCHIVE compress for ARCHIVE HIGH as select * from MYDATA; SQL> alter table MYDATA move compress for QUERY LOW;
Hybrid Columnar Compressionに関するより詳細な説明(特に、表の移行へのアプローチやその他のベスト・プラクティス)については、ホワイト・ペーパー"ExadataのHybrid Columnar Compression(HCC)"を参照してください。
Hybrid Columnar Compressionに対応したOracleデータベースのバックアップでは、リカバリ時に設定が保持されます。 ソースのOracleデータベースでcompatible=11.2.0.3
が設定されている場合は、正しくパッチが適用された宛先のリカバリ時にHybrid Columnar Compressionが使用可能になります。
新しいデータベースを作成している場合は、Oracle Database Creation Assistant(dbca
)を使用できます。 dbca
ツールを使用しているときにデータベースの互換性を設定するための"技"を次に紹介します。 手順6/12を実行しているとき、Oracle Automatic Storage Managementディスク・グループとデータベース間の互換性不一致に関する警告が表示されることがあります。 この要件を満たして警告を無効にするには、Storage Typeを一時的にFile Systemに設定し、手順9までクリック・スルーします。 「All Initialization Parameters」をクリックして、compatible
パラメータを11.2.0.3
に設定します。 次に、手順6に戻り、通常どおりに進めます。ただし、今回はStorage TypeをOracle Automatic Storage Managementに設定します。
Tom Luckenbachは、1988年からエンタープライズ・ハードウェアおよびソフトウェア市場での仕事に従事しています。 ここ10年間は、エンタープライズ・ストレージ・ソリューションに重点を置いています。 カリフォルニア生まれではありませんが、サンフランシスコを生まれ故郷と呼んでいます。 カリフォルニア生まれのライターと結婚し、ノースカロライナ州のダーラムに3人の子供と一緒に住んでいます。 時間を見つけてフライフィッシングを楽しんでいます。
リビジョン1.0、2013年2月27日 |