【Oracle Open World 2010レポート】
トム・カイト キーノート　
オラクルデータベースアプリケーション開発 最新情報　第1回

先日開催されたOracle OpenWorld 2010のキーノートから、データベースエキスパートのトム・カイトによる、オラクルデータベース開発の最新情報をお届けしよう。今回は、 アプリケーション開発の工数を大幅に削減する開発ツール「APEX」と「SQL Developer」を紹介する。（編集部）

■インストールレスのアプリケーション開発ツール「APEX」
　「Oracle Application Express（APEX）」は、デスクトップ環境へのインストールを必要としないWebブラウザベースのRAD（Rapid Application Development）ツール。その最新版であるAPEX Release 4の新機能のひとつが「Websheets」だ。これはエンジニア向けの機能ではなく、エンドユーザー自身が簡単な操作でページコンテンツを管理して小規模なアプリケーションを開発するための機能で、いわばOracle Databaseを簡易な表計算ソフトのように利用するためのものだ。APEXが必要なメタデータを自動的に管理するので、スキーマの定義やテーブルの作成も不要になる。

　APEXのもうひとつの新機能が、クライアント側で動作するJavaScriptやAJAXのウィジェットをAPEX側で自動生成する「Dynamic Actions」。JavaScript/AJAXのプログラミングスキルがなくても、クライアント側のUIの動作をメニュー操作で指定するだけで、それらを活用したWebアプリを開発できる。

　そしてこれまでのAPEXに足りなかったチーム開発機能も今回新たに追加された。従来よりも大きなエンジニアのチームでAPEXアプリケーションのチーム開発が可能となり、同じモジュール上で同時に多数のエンジニアが共同作業を進められるようになった。エンドユーザーやテスター、QA担当者などがアプリケーション上の「フィードバック」リンクをクリックすると、アプリケーション全体の状態が保存され、エンジニアはそれを使って現象の再現が可能になる。

　またAPEXの最新版では新しいOracle APEX Listenerも提供された。これは従来APEXを呼び出すゲートウェイとして利用されてきたApacheに対する拡張モジュールのmod_plsqlの代わりとなるもので、Javaベースの非常に軽量なリスナーだ。WebLogic、Oracle Glassfish、そしてOC4Jなどミドルウェアやアプリケーションサーバーのレイヤで動作する。

【APEX技術資料】についてはコチラ

■データベース構築のあらゆるシーンで使える「SQL Developer」
　次に、GUIベースのデータベース開発ツール「SQL Developer」に注目しよう。このツールはJavaで記述されており、WindowsのほかLinux、Mac上で動作する。Oracle Databaseをはじめ、JDBCドライバが利用可能なあらゆるデータベースに対して利用可能だ。SQLスクリプトの実行、PL/SQLのデバッグ、スキーマの構築、そしてデータモデリングツール(無償化予定)を使うことで、既存のデータベースに対するリバースエンジニアリングなども実施できる。

　最新版では、Oracle Database 11gに内蔵された各種のモニタリング機能やプロファイリング機能をSQL DeveloperのGUIで表示可能になっている。その1つが、リアルタイムSQLモニタリング機能で、いまデータベース上で実行されているクエリの実行計画や処理時間をリアルタイムに表示できる。

　またパフォーマンスチューニングには欠かせない「Automatic Workload Repository（AWR）」と「Active Session History（ASH）」、PL/SQLの個々のプロシージャの処理時間を計測する「Hierarchical Profiler」、そしてPL/SQLのコンパイル後のクロスリファレンステーブルを表示する「PL/SCOPE」などもSQL Developerから利用可能になった。これらの機能はこれまで、データベース管理者向けの管理ツールであるEnterprise ManagerやGUIを持たないコマンドツールSQL*Plusを介してしか利用できなかったが、今後は開発者向けツールであるSQL DeveloperのGUI上で簡単に使えるわけである。

　SQL Developer 3.0では、他にもいくつかの新機能が追加されている。そのひとつが「DBA Navigator」だ。これは各種のデータベース管理機能を備えており、例えば表領域の作成やサイズ変更、簡単な再構成、セキュリティ設定、ユーザーやロールの作成なども行える。

　もうひとつの機能は「SQL Tuning Advisor」で、これも従来はEnterprise Managerでのみ使えたもの。実行したいSQL文を入力すると、用意すべきインデックスや、統計情報の更新、SQL文の書き換えのアドバイスといったチューニング支援が得られる。

　「DBMS Scheduler」はこれまで作成が難しかったDBMSジョブをSQL DeveloperのGUI上で簡単に作成しスケジュール設定できる優れもの。そして「Autotraceの自動比較機能」は、最初にクエリを1回実行し、SQL文に修正を加え、クエリを再度実行すると、その2回のクエリ間で各種のパフォーマンス統計情報がどう変化したかを自動的に比較して表示してくれる。

【SQL Developer技術資料】はコチラ

(第2回に続く）