エンジニア視点での "押し"はココ! 「Oracle Enterprise Manager 12c」の魅力
年々、複雑化が進む企業システム。その管理の手間はますます増える一方で、最近ではクラウド化など新たな社内ニーズも出てきた。これによってさ
らに管理の手間が増える自社システムを、果たしてこの先もしっかりと管理していけるのか?――そんなシステム管理者の不安を解消すべく、昨年オラクルが満
を持してリリースしたのが「Oracle Enterprise Manager 12c -Total Cloud
Control-」だ。カタログ情報だけからではわからない最新システム統合管理基盤の魅力、使い所を、オラクルの技術者らが"エンジニア視点"で語って
くれた(編集部)。
【記事目次】
オラクル製品に最適化された機能を多数備え、アプリケーション領域からインフラ領域までを統合的に管理できるツールとして提供されているのが
Oracle Enterprise Managerである。2004年に統合管理の機能を備えた最初のバージョンとしてOracle
Enterprise Manager
10gがリリースされた後、2010年には同11gが、そして昨秋には最新版の同12cがリリースと着実にバージョンアップを重ね、さまざまな機能強化が
図られている。
今日、国内外のさまざまなベンダーがシステム統合管理ツールを提供しているが、それらのツールとの際立った違いとして「オラクル製品に特化し
た深い機能を持っていること」を挙げるのは、日本オラクル 製品戦略統括本部 戦略製品ソリューション本部 System & Application
Management Group シニアセールスコンサルタントの小幡創氏である。
![]() 日本オラクル 製品戦略統括本部 戦略製品ソリューション本部 System & Application Management Group シニアセールスコンサルタントの小幡創氏 |
「オラクルはこれまで、買収などを通じてさまざまな技術を取り込んできました。その中にはJavaアプリケーションの性能分析ツールやテス
ト・ツールなど、システム管理にかかわるものも数多く含まれています。それらのテクノロジーを盛り込みつつ、オラクル製品に特化した統合システム管理ツー
ルとして開発されたのがOracle Enterprise Managerなのです」(小幡氏)
小幡氏は、最新版となるOracle Enterprise Manager 12cにおける機能強化のポイントとして、「データベース監視機能の強化」、「Exadataとの連携強化」、そして「クラウドライフサイクル管理機能の追加」の3つを挙げる。具体的にどう変わったのか、以下に見ていこう。
Oracle Enterprise
Managerにはデータベースの性能を監視するための機能が数多く備わるが、最新バージョンである12cではさまざまな改善が図られ、さらにきめ細かく
パフォーマンスを監視できるようになった。その代表例の1つとして小幡氏が挙げるのが「Active Session
History(ASH)分析」だ。
ASH分析は、アクティブなセッションに関する情報を1秒おきにサンプリングすることにより、データベースの性能を可視化するという機能であ
る。この機能を使うことで、あるタイミングでどのSQLが実行されたのか、どういった待機イベントが発生しているのかといった、SQLのチューニングを行
ううえで有用な情報を取得することができる。従来のバージョンでは、詳細情報を表示する範囲が5分間に固定されていたが、「表示範囲をより自由に設定した
い」というユーザーの声に応え、Oracle Enterprise Manager
12cでは表示範囲や表示内容を任意に設定できるように改善された。これにより、「以前よりも柔軟な性能分析が可能になりました」と小幡氏は話す。
【ココが押し!】
Active Session Historyの表示範囲や内容を自由に設定できるようになった!
Active Session Historyの表示範囲や内容を自由に設定できるようになった!
「Automatic Database Diagnostic
Monitor(ADDM)」の機能強化も、12cで注目すべきポイントだ。ADDMはデータベースの全体的なパフォーマンス分析を行い、チューニングす
べき項目を自動的に抽出するという機能だが、従来はデータベースがハング状態になると同機能を使うことはできなかった。そうした状態から手早く復旧する方
法はシステムを再起動することとなるが、当然、それによって進行中のトランザクションや診断用の情報は失われてしまう。この課題の解決策として
Oracle Enterprise Manager 12cで搭載されたのが、「リアルタイムADDM」である。
「この機能により、データベースがハング状態になった場合でも、特殊なコネクションを使ってデータベース内部を診断し、その分析結果に基づくアドバイスを提示させることができます。この機能もユーザーの要望に基づいて実装されました」(小幡氏)
【ココが押し!】
リアルタイムADDM でDBがハングしても診断が行える!
リアルタイムADDM でDBがハングしても診断が行える!
データベース内のオブジェクトを管理するための機能も強化されている。データベースには多数の表やその索引が保存されており、それぞれの表が
どうなっていて、どこに索引が張られているのかを管理しなければならない。ただし、実際の開発現場では、本番環境と検証環境、開発環境のそれぞれに対して
個別に変更が加えられるため、表や索引の差分管理は容易ではなかった。そこで、従来からOracle Enterprise
Managerに搭載されていたのが、オブジェクト構成管理機能である。これを使えば、表や索引の差分比較を行ったり、2つのデータベースを同じ状態にし
たりすることができる。
Oracle Enterprise Manager
12cでは、この構成管理の機能も強化されている。これまでは単にオブジェクトの定義しか比較できなかったが、12cでは表データの内容まで比較すること
が可能になった。これにより、「表の定義が同じかどうかだけでなく、その表の各行のデータが一致しているかどうかまでチェックすることができます」と小幡
氏は説明する。
【ココが押し!】
複数の表データを行レベルで比較できる!
複数の表データを行レベルで比較できる!
テスト・データを作成するための機能が強化されたことも見逃せないポイントだ。開発したシステムのテストでは本番環境と同じデータを使いたい
ところだが、そこに顧客情報などが含まれている場合、それが情報漏えいにつながる恐れがある。そのため、Oracle Enterprise
Managerには、従来から機密データをマスキングするための機能が用意されていた。これを使うことで、本番環境と同等のデータを用いつつ、表に含まれ
る機密データを保護することができるのだ。
ただし、データ量が膨大になると、そもそもマスクすべきデータがどの表のどの列に含まれているのかを探すだけでも大変な作業になる。また、す
べてのデータをテストに使うのではなく、必要十分な量にデータを減らして処理を行うケースも多い。Oracle Enterprise Manager
12cでは、こうした作業の負担を軽減すべく、単に機密データをマスキングするだけでなく、機密データを検出したり、表の関連性を保持したままデータ量を
削減したりする機能が追加されている。さらに、一度マスクしたデータをデータ管理者が元に戻すことができる「可逆マスク」という機能も追加されている。
【ココが押し!】
データ・マスキングの機能が強化され、マスキング対象データの抽出、データのサブセット化、データ復帰が可能に!
データ・マスキングの機能が強化され、マスキング対象データの抽出、データのサブセット化、データ復帰が可能に!
なお、Oracle Enterprise Manager 12cのデータベース監視/管理機能については、ドキュメントや小幡氏による解説動画(WMV/MP4形式)を資料として公開している。ぜひ以下のリンク先からご参照いただきたい。
【Oracle Enterprise Manager 12c――データベース監視/管理機能の強化ポイント】
●解説資料「Oracle Enterprise Manager 12cによるデータベース管理」(PDF)
●動画による解説資料(上記資料に音声による解説をプラス)
WMV版(前編) WMV版(後編)
MP4版(前編) MP4版(前編)
●解説資料「Oracle Enterprise Manager 12cによるデータベース管理」(PDF)
●動画による解説資料(上記資料に音声による解説をプラス)
WMV版(前編) WMV版(後編)
MP4版(前編) MP4版(前編)
![]() 日本オラクル テクノロジー製品事業統括本部 技術本部 Exadata技術部 シニアエンジニアの若林千寿子氏 |
Oracle Exadataの監視および管理のための新機能が追加されていることも、Oracle Enterprise Manager
12cの重要な機能強化点だと話すのは、日本オラクル テクノロジー製品事業統括本部 技術本部 Exadata技術部
シニアエンジニアの若林千寿子氏である。
「Oracle Exadataの管理は前バージョン(Oracle Enterprise Manager
11g)から対応していましたが、12cではリソース監視の部分で大幅に機能強化が図られたほか、Exadata Storage
ServerやInfiniBandの管理機能が追加されたことも大きなポイントです(若林氏)」
Oracle Enterprise Manager 12cでは、Oracle
Exadataを監視/管理する際、実際のハードウェア構成を模したイメージが管理画面に表示されるようになった。この画面で機器の稼働状況や温度を確認
することが可能なほか、発生しているインシデントを容易に把握できる。
【ココが押し!】
Exadataのハードウェア構成、稼働状況をビジュアルに確認できる!
Exadataのハードウェア構成、稼働状況をビジュアルに確認できる!
強化されたリソース監視機能では、データベース・ノードにおける計算リソースと、Exadata Storage
Serverの記憶域リソースが確認できる。計算リソースについては、個々のデータベースにおけるCPU使用率や、データベース/クラスタの各ノードへの
配置状況を確認できる。一方、記憶域リソースに関しては、データベースごとのI/O使用率と、Oracle Automatic Storage
Management(ASM)におけるディスク・グループの配置状況の確認が可能だ。
「Oracle Exadataは、フルラックで 8
台、合計96コアのデータベース・サーバを搭載でき、さらに数十TBのデータ領域をサポートする大規模なシステムです。そのため、複数のアプリケーション
をまたいで利用したり、統合データベース環境として導入したりするケースが増えています。統合データベース環境として使う場合、個々のデータベースのリ
ソース消費量の確認が必須になるでしょう。そこで、Oracle Enterprise Manager
12cでは、データベースごとのCPU使用率やストレージへのI/O使用率を容易に把握できる仕組みを追加しました」(若林氏)
【ココが押し!】
Exadataのリソース監視機能が強化され、CPU使用率やI/O使用率も一目で把握!
Exadataのリソース監視機能が強化され、CPU使用率やI/O使用率も一目で把握!
さらに、Oracle Exadataでストレージ領域として使われるExadata Storage
Serverの監視/管理機能も強化されている。具体的には、ディスクのIOPSやスループット、平均レスポンス時間、そして高速なフラッシュメモリを
使ったキャッシュ機構である「Exadata Smart Flash Cache」の使用率などについて、1台ごとの情報だけでなくExadata
Storage
Server全体の状況を簡単にチェックできるようになっている。加えて、管理のための機能も追加されており、従来はコマンドラインで行っていた一部の作
業をOracle Enterprise Manager 12c上で行えるようになった。
InfiniBand Switchについても、監視/管理のための機能が用意されている。これを使うことで、InfiniBandファブリックの概要やスイッチのポート単位の詳細な情報、接続ステータス、スループットやトポロジなどを確認することできる。
【ココが押し!】
Exadata Storage Server の稼働状況、Exadata Smart Flash Cacheの使用率、InfiniBand Switchの全体的な状況も一発でわかる!
Exadata Storage Server の稼働状況、Exadata Smart Flash Cacheの使用率、InfiniBand Switchの全体的な状況も一発でわかる!
複数台のOracle Exadataを利用するユーザー向けの機能として、構成管理のための機能が追加されたこともOracle Enterprise Manager 12cの大きな特徴だと若林氏は話す。
「開発環境と本番環境、災害対策のためのディザスタ・リカバリ用など複数のOracle
Exadataを利用しているケースにおいて、それぞれの構成の違いをOracle Enterprise
Managerで確認できるようになりました。具体的には、ハードウェア構成の確認と、バッチ・レベルでの構成比較が行えます。これらは複数台の
Oracle Exadataを管理している企業にとっては非常に便利な機能だと言えます」(若林氏)
【ココが押し!】
複数台のExadataの構成比較が簡単にできる!
複数台のExadataの構成比較が簡単にできる!
これら、Oracle Exadataの管理にかかわるOracle Enterprise Manager
12cの機能強化点については、ドキュメントや若林氏自身による解説動画(WMV/MP4形式)を資料として公開している。ぜひ以下のリンク先からご参照
いただきたい。
【Oracle Enterprise Manager 12c――Oracle Exadata管理機能の強化ポイント】
●解説資料「EM 12c で進化した Exadata 監視」(PDF)
●動画による解説資料(上記資料に音声による解説をプラス)
WMV版 MP4版
●解説資料「EM 12c で進化した Exadata 監視」(PDF)
●動画による解説資料(上記資料に音声による解説をプラス)
WMV版 MP4版
Oracle Enterprise Manager 12cでは、データベースやOracle
Exadataの監視/管理機能の強化が図られたのに加えて、「クラウドライフサイクル管理」という新たな仕組みが追加された。ここで言うクラウドとは、
自社でクラウド環境を構築して利用するプライベート・クラウドのことを指し、「Infrastructure as a
Service(IaaS)」と「Database as a Service(DBaaS)」に特化した機能を提供している。
このクラウドライフサイクル管理で提供される機能は、次の3つに大別される。
- Consolidation Planner
- Cloud Management
- Chargeback and Trending
![]() 日本オラクル テクノロジー製品事業統括本部 技術本部 基盤技術部 エンジニアの大熊涼介氏 |
このうちConsolidation Plannerは、「サーバ統合の計画を自動化するためのツール」だと日本オラクル テクノロジー製品事業統括本部 技術本部 基盤技術部 エンジニアの大熊涼介氏は説明する。
「Consolidation
Plannerは、複数の物理サーバ、プライベート・クラウド環境へのシステム統合に向けた計画の立案を支援する機能です。例えば、数百台のサーバを数台
のハードウェアに集約するといった場合に、どのサーバとどのサーバを組み合わせて、どのハードウェア上で動かすのかといったことを考えるのは容易ではあり
ません。そこでConsolidation
Plannerでは、個々のサーバの負荷や環境を自動的にチェックし、最適な組み合わせをレポートとして出力するという仕組みを提供しています」(大熊
氏)
【ココが押し!】
膨大なサーバ群のクラウド上への統合計画を支援!
膨大なサーバ群のクラウド上への統合計画を支援!
プライベート・クラウドを構築するメリットとして、ユーザー自身で仮想サーバ環境を構築できるようにすることで管理コストを削減する「セルフ
デプロイ/セルフプロビジョニング」の実現が挙げられる。この仕組みを提供するのがCloud
Managementだ。具体的には、サーバ仮想化ソリューションである「Oracle VM
3.0」と連携し、ハイパーバイザや仮想マシン、各種ソフトウェア・コンポーネントの管理を可能にするほか、ユーザー自身でサーバをデプロイできる「セル
フサービスポータル」の仕組みも提供する。これにより、ハードウェア・リソースを迅速に提供する環境を整えられるわけだ。
【ココが押し!】
ユーザー自身が仮想環境を構築するセルフサービス機能でクラウドの管理コストを削減!
ユーザー自身が仮想環境を構築するセルフサービス機能でクラウドの管理コストを削減!
また、このようにしてプライベート・クラウドを構築した場合、個々のユーザー部門の利用状況に応じて課金を行うケースが一般的である。これを
実現するための仕組みがChargeback and Trendingだ。物理サーバや仮想サーバ、データベース、さらには「Oracle
WebLogic
Server」などの使用量に応じて時間単位で課金し、その結果をレポートとして出力してくれる。課金内容を細かく調整することも可能であり、例えば利用
しているCPUやメモリ/ストレージ容量に応じて利用料を変更できるほか、月額固定で料金を算出するといったカスタマイズも可能となっている。こうして得
られた情報を基に、ユーザー部門に対して請求を行うわけである。
なお、大熊氏によれば、Chargeback and Trendingで取得したデータをAPI経由で利用できる仕組みも提供される予定だという。
「近々リリースされるパッチセットでは、API経由でChargeback and
Trendingによって取得したデータを利用するための仕組みを提供する予定です。これを使えば、ユーザーが開発した課金システムや他社の課金システム
からChargeback and Trendingの情報を取得することが可能になります」(大熊氏)
【ココが押し!】
ユーザー部門の利用状況に応じたきめ細かな課金を実現!
ユーザー部門の利用状況に応じたきめ細かな課金を実現!
昨今、サーバ仮想化技術の進化、そしてハードウェア性能の向上などにより、例えばWindowsとLinux、Solarisなどを1つの
ハードウェア上で稼働させるといったことが実現可能になっている。こうした仮想化環境を統合的に管理できるだけでなく、プライベート・クラウド環境を構築
するための機能まで提供するOracle Enterprise Manager 12cの利便性は極めて高いと言えるだろう。
Oracle Enterprise Manager 12cのクラウド管理機能については、ドキュメントや大熊氏自身による解説動画(WMV/MP4形式)を資料として公開している。ぜひ以下のリンク先からご
参照いただきたい。
【Oracle Enterprise Manager 12c ――クラウド管理機能のポイント】
●解説資料「Cloud Management」(PDF)
●動画による解説資料(上記資料に音声による解説をプラス)
WMV版(前編) WMV版(後編)
MP4版(前編) MP4版(前編)
●解説資料「Cloud Management」(PDF)
●動画による解説資料(上記資料に音声による解説をプラス)
WMV版(前編) WMV版(後編)
MP4版(前編) MP4版(前編)
なお、4月に開催されるOracle OpenWorld Tokyo
2012では、米国から来日するバイスプレジデントより、Oracle Enterprise Manager
12cの最新情報が紹介される。また、Oracle
Developセッションでは、小幡氏によりクラウド管理の具体的な様子が紹介される。クラウド環境の管理に関する具体的なイメージをつかみたいという方
は、ぜひこちらのセッションにご参加いただきたい。
【Oracle OpenWorld Tokyo 2012お勧めセッション】
4/5(木) 15:20-16:05
Total Cloud Control with Oracle Enterprise Manager 12c-エンタープライズ・クラウドを支える次世代の運用管理基盤
オラクル・コーポレーション バイスプレジデント
スティーブ・ウィルソン
4/6(金) 14:00-14:45
Oracle Enterprise Managerによるクラウド基盤構築・運用ベストプラクティス
日本オラクル 製品戦略統括本部 戦略製品ソリューション本部 System & Application Management Group シニアセールスコンサルタント
小幡創
4/5(木) 15:20-16:05
Total Cloud Control with Oracle Enterprise Manager 12c-エンタープライズ・クラウドを支える次世代の運用管理基盤
オラクル・コーポレーション バイスプレジデント
スティーブ・ウィルソン
4/6(金) 14:00-14:45
Oracle Enterprise Managerによるクラウド基盤構築・運用ベストプラクティス
日本オラクル 製品戦略統括本部 戦略製品ソリューション本部 System & Application Management Group シニアセールスコンサルタント
小幡創



