「Ask Tom」のトム・カイト氏に聞く、
クラウド時代を生き抜くデータベース技術者とは?
第2回 クラウドに技術者はどう備えるべきか?

トム・カイトは、オラクルの社員であり、データベース技術者のための人気Q&Aサイト「Ask Tom」を主宰するデータベース技術者だ。そのトム・カイトに、データベース技術者が「クラウド」の登場というITの大きな変革期にどう備えるべきかを聞いた。
今回トム・カイトは、クラウドにデータベース技術者がどう備えるべきかを語る。(編集部)


■クラウド時代に技術者はどのようにスキルを身につけるべきか
img_pickup_101013.jpg――クラウドによって技術は複雑化していくが、開発者はどのようにスキルを学び、維持していけばいいのか?

トム・カイト:
今日の開発者はそれぞれの目指すべき得意分野にフォーカスし、必要な知識を吸収していけばいいだろう。
私自身の話をすると、私はメインフレームの技術者としてキャリアをスタートし、メインフレームにおける必要な事のすべてを学んだ。次に、CのUNIXプ ログラマーとしてのキャリアを再スタートした。このように1980年代から1990年代初期までは必要な事はすべて学ぶ必要があったものの、そこで必要な 知識はそれほど膨大なものではなかった。しかし今日は、システムのすべてを把握するための知識は膨大であり、全てを把握するのは難しい。だが、データベー スにアプリケーション、プロトコル、J2EEやPHP、Ruby、Pythonといった言語まで、個々の分野に特化した場合に必要とされる知識はそれほど 多くない。必要な事を必要なだけ学べばいいだろう。

――トム・カイト自身はどのように取り組んでいるのか?

トム・カイト:
個々の開発者がすべてをカバーするのは非常に難しい。私はユーザインタフェースの部分は苦手だが、サーバ側のコードを記述するデータベースは得意なの で、その専門家になった。他のさまざまな分野に関する知識ももってはいるが、より詳しい話、例えばXMLの話題を私に聞くのは間違いだ。
今日、システムの開発にはユーザインタフェース、ビジネスロジック、データベースの少なくとも3つの専門家が必要だ。例えばユーザインタフェース1つを とっても関連するJavaライブラリなど学ぶべき事項は多く、この分野の専門家が必要となる。私からアドバイスできるのも、自分の得意分野に限られる。こ うした専門外の話題でも、以前までであれば「わからない」と答えることも少なかったが、最近では「わからない」と返答する機会も非常に増えてきた。自分の 苦手分野は無理をせず、遠慮せずにその専門家にお願いすることも重要だろう。
だが同時に、自身の専門家としてのスキルを磨き続けることは非常に重要だ。私もデータベースの専門家として、十何年以上にもわたって常にスキルを磨き続 けている。技術は常に変化しており、例えばデータベースの分野ではそれまでマニュアルで設定しなければいけなかったものが、今日ではほとんどが自動化され ている。このように、同じ分野でも必要とされる知識は常に変化しており、それに適応していかなければならない。


■必要とされる技術者であり続けるには
――スキル維持における学習方法やトレンドの把握について、何かいい方法はないか?

トム・カイト:
オンラインフォーラム(ベンダやメディアなどが提供する技術者コミュニティサイト)への参加を勧めたい。例えば私は毎朝、Ask Tomのサイトに行く前にオンラインフォーラムをチェックするのを習慣にしている。これを1990年代初めごろからずっと続けている。そこにはさまざまな 参加者がおり、私が書き込んだソリューションに誤りがあれば、それを訂正してくれる。このギブ&テイクの繰り返しだ。このようにして少しずつ知識が磨かれ ていくわけだ。
オンラインフォーラムに参加することのメリットは、外部の人間との交流を持てることだ。例えばある開発者がある会社で3年間仕事をしていたとすると、そ の会社に関する知識は多く身につくだろう。だがほかの会社が同じ問題に対しどのように取り組んでいるかはわからない。オンラインフォーラムはこれを補完し てくれる存在だ。
例えばあなたがOracle OpenWorldに参加して、ユーザー事例のセッションに参加して成功事例を吸収し、それを自分の所属する会社へフィードバックしたとする。うまくいけ ば「そうか! われわれにこうしたアイデアはなかった」ということになるだろう。オンラインフォーラムは、こうした外部との交流を無料で提供してくれる場だ。オラクルが 提供しているサイトでは「Oracle Technology Network(OTN)」といったフォーラムがある。

だが気を付けてほしい。こうしたオンラインフォーラムでは「削除」キーは存在しないからだ。私が初めてオンラインフォーラムに投稿した内容はまだイン ターネット上に残っており、ときどき見返しては恥ずかしくなっている。1994年10月のことで、当時はまだニュースグループだったが、若気の至りといっ た感じだ。だが恥ずかしがらないでほしい、こうした場に少しずつ慣れ、こうしたオンラインコミュニティを通じて知り合う仲間も増えてくるだろう。

――日本人は全体的にシャイな技術者が多いと感じている。

トム・カイト:
この話はオンラインと実際のヒューマンコミュニケーションも同様で、技術者は全体に「プレゼンス」を出すことを恐れている。たとえ相手のほうが賢かった としても、臆せず自分のアイデアを出し、コミュニケーションを成立させてほしい。私自身も講演のために世界中を飛び回っているが、初期のプレゼンテーショ ンは本当にひどいものだった。だが次第に慣れてきて、人前でうまく話せるようになった。こうした対人スキルは非常に重要で、特に私のように在宅勤務中心と なった現在では、電話会議のスピーカーを通じては起こりえない会話がある(カイトによれば、すでに3年前からオフィスには出社していないという)。ぜひ、 さまざまな方法で人との交流の場を広げてほしいと思う。

(終わり)

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