ユーザーコミュニティ座談会(前編)
「データベーススペシャリスト資格不合格が勉強会のきっかけでした」
冬の到来を間近に控えた今年11月1日、Oracle技術者コミュニティの主宰者たちによる座談会が、日本オラクル本社において開催された。出
席者は、「Oracle LOVERS(オラクルラバーズ)」の吉田 基崇氏、「わんくま同盟」の中
博俊氏と初音氏、および「データベース友の会」のQuatrex氏(ペンネーム)の4名。東京・青山の日本オラクル本社で定期的に勉強会を開催している彼
らに集まっていただき、コミュニティ発足の経緯や勉強会の意義などについて意見を交わしていただいた。(編集部)
<座談会参加者>
吉田 基崇氏
データベース技術者が集う「Oracle LOVERS」の主宰者。元オラクル社員であり、現在は福岡と東京を往復しながら双方で勉強会を開催。
中 博俊氏
コミュニティの楽しさを追求している「わんくま同盟」の主宰者。発祥の地は大阪だが、現在は全国に展開中。勉強会は東京地方では月1回くらい、全国で見ると年40回くらい現地スタッフ主導で開催している。
初音氏
「わんくま同盟」の参加者。オラクルのACE(Oracle技術者コミュニティを熱心にサポートした方に対する認定制度)であり、.NETをはじめ多くのプログラミング言語に精通している。しばしばイベントなどでもセッションを担当。
Quatrex氏
データベーススペシャリストの資格取得を目標に掲げる「データベース友の会」の主宰者。自身も勉強会を通じて同資格を取得。
■動機はさまざまでも「必要」から生まれたコミュニティ
――本日は、お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。それではまず、コミュニティを作った経緯や目的からお聞きします。
![]() 中 博俊氏が主宰する「わんくま同盟」は、大阪、東京、名古屋、福岡を中心に各地で勉強会を開催している |
中氏:
「わんくま同盟」の始まりはブログでの活動でした。このブログが広がるにつれて、「気軽に出席できる勉強会が(当時住んでいた)大阪にもある
といいよね」という話が持ち上がり、勉強会を始めたのです。そして、勉強会を続けていくうちに規模が大きくなり、今では大阪、東京、名古屋、福岡のスタッ
フがそれぞれ定期的に開催するまでになりました。
Quatrex氏:
全国で開催しているって、すごいですよね。参加者はやはりエンジニアの方が多いですか?
中氏:
そうですね。でも、エンジニアでない方も結構いらっしゃいます。勉強会は通常、スピーカーを数人決めて、1コマ50分間で好きなことを話して
もらうスタイルで行っています。内容は技術的なことでも技術的じゃないことでもOKです。過去には、.NET開発やオラクルの製品、プログラム言語といっ
た技術的なもの以外に、作曲やゲーム、着物の帯などをテーマにした勉強会も実施しました。最近では宇宙のネタで1日やろうという企画が進んでいたりして、
非常に多岐にわたっています。
吉田氏:
何を軸に集まっているのですか?
中氏:
軸は特にないんですよ。スピーカーもコミュニティの内外から自由に参加していただいています。懇親会などで「今これを勉強しています」とか耳
にすると、それをテーマにスピーカーをお願いすることもあります。勉強会のスケジュールは来年末の分まで決めてあるので、そのコマにスピーカーをどんどん
割り振るという感じですね。
![]() 「Oracle LOVERS」主宰者の吉田 基崇氏。同ユーザー会ではmixiで参加者を募集する |
吉田氏:
僕は福岡に住んでいまして、出張でしばしば東京や横浜に行くのですが、単に往復するだけではもったいないと思い、手始めに福岡と品川でそれぞ
れエンジニアを集めて勉強会を開催しました。これが最初です。その1年後くらいから日本オラクル本社で勉強会をやらせてもらうようになったのですが、それ
を機にコミュニティの名称を変えようということになり、「Oracle
LOVERS」にしたのです。L、O、V、E、Rにも、それぞれ意味を持たせています。
勉強会は基本的に日本オラクル本社で月に1回のペースですが、できる限り福岡でも開催しています。オラクル本社で勉強会を開催することの一番のメリットは、OTN協賛のため実機にオラクル製品をインストールして使ってもライセンス違反にならないという点です。
当初は勉強会の度に福岡からタワー型のパソコンを持ってきて(笑)、そこにどんどんオラクル製品をインストールしていました。現在は
Amazonのクラウド上でいろいろやっています。基本的に勉強会の内容は、オラクル製品を実際にインストールして、それを使うというものです。
Quatrex氏:
私も品川のときに何回か参加したことがあります。あのときは、勉強会を始めて半年ぐらい経ったころですか?
吉田氏:
そうですね。また、参加者はmixiの中だけで集めています。これは、自己アピールできる人に参加してほしいからです。mixiを活用している方は何かしら自己アピールしていますから。
中氏:
Oracle LOVERSの勉強会には毎回どれぐらい集まりますか?
吉田氏:
少ないときは8人ほど、多いときは20人程度というように波があります。ちなみに、小田圭二の回はすごく増えます(笑)。
中氏:
わんくま同盟の場合、東京で開催するときはテーマによって参加人数が変わる傾向がありますね。最近は40人ほどで、最高記録は120人ぐらいでした。東京以外の地域で開催するときは20人から40人程度です。
![]() 「データベース友の会」を主宰するQuatrex氏。データベーススペシャリスト試験が勉強会開催のきっかけになった |
Quatrex:
「データベース友の会」では去年の8月に初めて勉強会を開きました。きっかけは、去年データベーススペシャリストという情報処理の資格試験を
受けた際に、答え合わせ会のようなところで「もし落ちたら一緒に勉強会をやりましょう」と話していた人が試験に受かっちゃったことです(笑)。また、
Oracle LOVERSの勉強会に何回か参加するうちに、「勉強会って自分でもできるかもしれない」と思ったことも(勉強会開催の)動機の1つです。
勉強会の会場については、オラクルに相談したところ、本社(東京・青山)の部屋を貸してくれることになりました。ほかにもコネを使って、いろいろな会社の会議室や区民館などを借りています。
勉強会の参加者数は最高でも20人ぐらいです。私の目が届く人数が現状ではこれくらいという気もしています。ただ、今後は増やしていきたいですね。また、1回の参加人数よりも開催場所にこだわり、大阪や名古屋などでも開きたいと思っています。
中氏:
それなら今度、大阪近辺でわんくま同盟のスピーカーをやってみてはいかがですか? そこでつながりを作って、気の合う人で独自に開催するというのがよいと思います。
Quatrex氏:
本当ですか! ぜひお願いしたいですね。
■参加者に喜んでもらうことが一番うれしい
――次に、コミュニティを運営していく上でのモチベーション、つまり継続していく力の源となっているものを教えてください。
初音氏:
わんくま同盟の場合は先に開催スケジュールを決めてしまいますので、いやでもやらざるを得ないような状況になります(笑)。でも、モチベーションには波がありますから、あまり大上段に「やるんだ!」と構えると、その気持ちが折れたときが大変です。
中氏:
開催する側から言えば、自分のことよりも、「今日は勉強になった」と参加者に感じていただけることのほうが、うれしいですね。それが続いていけばモチベーションが上がります。
吉田氏:
僕は最初のころ、福岡と東京の間で技術のかけ橋になっていることがすごく楽しかった。僕を媒介として情報がやり取りされて、そこから何かが広がっていけばいいと思っていました。
それに、オラクル本社の青山センターという場所や、いろいろなものを貸し出してもらえることもモチベーションの向上につながります。(こうしたことは)本来は難しいと知っていますから。
エンジニアの中には本当に疲れ切っている人もいますから、そういう方が勉強会に来てホッとできたらいいなと思います。そこから次につながる何
かが生まれたら素敵ですよね。Oracleというしっかりした技術の上で積み上げられていく時間を参加者が喜んでくれたら、勉強会をやってよかったと思い
ますね。
また、Oracle LOVERSの勉強会に来ていただいたQuatrexさんが別の勉強会を開いてくれていることも、本当にうれしく思います。Oracle LOVERSの勉強会に来ていた人がオラクルの社員になったりとか、そんなことも起きています(笑)。
Quatrex氏:
勉強会の参加者に喜んでいただけるというのは、やはりモチベーションになりますね。こちらが思っている以上に、役に立ったと感じていただいて
いるようです。データベーススペシャリストの勉強会でも、1回しか参加していないのに「おかげで合格できました」と言われたり(笑)。「そんなに持ち上げ
なくてもいいですよ」と言っても、「いやいや、それがすごくきっかけになったんですよ」とか言われて。そういうときは、「ああ、やってよかったな」と思い
ます。
これは最近のことですが、今年の試験に合格したにもかかわらず、「何か恩返しをしたい」と、わざわざ勉強会に参加してくれた方がいらっしゃい
ました。また、講師を買ってでる方もおられます。僕自身、不思議に思ったくらいなのですが(笑)、そういうのはちょっと感動的ですらあります。
昨今では、厳しい経済情勢を背景に教育費を削る企業も珍しくなくなりました。そうした会社では、勉強をあきらめてしまう社員の方も少なくない
ようです。しかし、そのままだとずっと停滞した状況が続いてしまいます。そこで、たとえお金が出なくても自分たちの力を高めていくんだという参加者の気持
ちに、勉強会を通じて貢献できたらいいなと。ちょっと照れくさいですが、そんなことを思っています。

(左から)「わんくま同盟」の中 博俊氏、「データベース友の会」のQuatrex氏、「Oracle LOVERS」の吉田 基崇氏。ユーザー会に対する3氏のスタンスはさまざまだが、オラクルを長く愛してやまない点は共通している
(後編に続く)
- 「Oracleライフ」を満喫した秋の一日 ユーザー会主催「勉強会」レポート
- ユーザー会インタビュー1 「データベース技術者が集まる場を作りたかった」「データベース友の会」主宰者 Quatrex氏
- ユーザー会インタビュー2 「ドレスコードがなく、コスプレありの勉強会です」「わんくま同盟」主宰者 中 博俊氏
- ユーザー会インタビュー3 「『技術で世の中を良くしたい』と思う人が集まれば、何かが変わる」 「Oracle LOVERS」主催者 吉田 基崇氏
- ユーザーコミュニティ座談会(前編)「データベーススペシャリスト資格不合格が勉強会のきっかけでした」
- ユーザーコミュニティ座談会(後編)「会社の外に出ていろいろな世界が広がっていることを知ることも大事」



