ラリー・エリソンが語る、オラクルの生成AI戦略の概要

オラクルの会長兼CTOが、自社サービスの改善とお客様の最大の問題解決にGenAIをどのように活用しているかを説明します。

Michael Hickins | 2023年9月20日


オラクルの会長兼CTOのラリー・エリソンは、お客様やオラクル自身が最も難解な問題に取り組むのを支援する目的で、同社の膨大なクラウドサービスのポートフォリオに生成AI(GenAI)を組み込む方法について説明しました。

エリソンは、Oracle CloudWorldの基調講演で、屋内外での食品栽培、ヘルスケアの改善、アプリケーション開発の自動化のためのツールなど、AIを活用した新しいサービスの数々も発表しました。

エリソンは、昨年リリースされたOpenAIのChatGPTバージョン3.5が、政府関係者だけでなく一般市民からも広く注目を集めたことについて指摘しました。さらに、これが技術の進歩では珍しいレベルの注目であることと、その理由が明らかであることについても述べました。

「これは歴史上もっとも重要で新しいテクノロジーなのでしょうか?おそらくそうでしょう。ひとつだけ確かなのは、これからそれが明らかになるということです。」と、エリソンは述べています。

オラクルは、企業が生成AIモデルを開発する上で、クラウドベンダーの中で最も有利な立場にあるとエリソンは述べています。その理由は、オラクルのGen2 Oracle Cloud Infrastructure(OCI)は、超高速RDMA(リモート・データ・メモリ・アクセス)ネットワーキングを使用し、NVIDIA GPUを巨大なスーパークラスタに接続することで、生成AIモデルを効率的にトレーニングできるからです。

これは歴史上もっとも重要で新しいテクノロジーなのでしょうか?おそらくそうでしょう。」

ラリー・エリソン オラクル会長兼CTO

RDMAネットワーキングとは、「ネットワーク内のあるコンピュータが、そのコンピュータをタップして中断させることなく、他のコンピュータのメモリに実際にアクセスできる」ことを意味します。「従来のネットワークの何倍もの速さで、あるコンピューターから別のコンピューターへ大量のデータを移動させることができるのです。」

エリソンは、OCIのスピードとコスト優位性が、Cohere、NVIDIA、X.AIなどのベンダーが大規模言語モデル(LLM)の学習にOCIを活用している理由だと指摘しています。「クラウドの世界では、『時は金なり』が常識です。」とエリソン。「オラクルは、はるかに速く、何倍も安価です。」

エリソンは、生成AIがオラクル自身の新製品開発方法を変えつつあると指摘しています。

例えば、エリソンによれば、オラクルはJavaで記述された古いアプリケーションのサポートは継続しますが、今後のアプリケーション開発では、開発者のプロンプトに基づいてGenAIツールによってOracle APEXで自動的に生成されたコードを使用する予定とのことです。「今後はコードを書くのでなく、生成する予定です」と、エリソンは言います。「アプリケーションの構築方法や実行方法が根本的に変わります。全てが変わると言っても良いでしょう。」

エリソンはまた、APEXアプリケーション・ジェネレーターによって、小規模な開発チームでもより迅速なアプリケーション開発が可能になると述べています。また、コードはGenAIによって生成されるため、セキュリティ上の欠陥を大幅に減らすこともできます。「これはとても大きなことです」と、エリソンは語ります。

エリソンがOracle CloudWorldの基調講演で発表したその他の新機能は以下の通りです。

  • 文書、画像、その他の非構造化データのセマンティックコンテンツ をベクトルとして保存し、これらを使用して高速な類似性クエリを実行する、新しい統合ベクトルデータベース。この新機能により、Oracle DatabaseとAutonomous Databaseで構築されたアプリケーションにLLMベースの自然言語インターフェイスを追加し、エンドユーザーが自然言語で質問を投げかけて必要なデータを得られるようになります。この種の機能は、オラクルのパートナーであるCohereが開発したような、一般的な事前トレーニング済みLLMを、医療や法律などのより専門的なコンテキストに適応させるために必要となります。
  • 開発者が新しいオブジェクト・リレーショナル・データベースでJSONドキュメントからリレーショナル表スキーマを生成できる新機能。この機能により開発者は、構造化データベースで使用されるSQLクエリ言語の長所を生かしながら、JSONドキュメントを使用してアプリケーションを構築する柔軟性を得ることができます。このため開発者は、時間がかかりエラーの原因となるスキーマを事前に計画することなくアプリを構築できます。

最も困難な問題の解決に貢献

オラクルは政府、医療機関、食品生産者が、それぞれの業界において人間の生活を向上させるような革命を起こせるよう、手助けをしていくつもりだとエリソンは述べています。

  • オラクルは、医療機関が医療用品の在庫と所在をより正確に把握するために使用できる、モノのインターネット(IoT)のプラットフォームを構築しています。さらにオラクルは、医療機関がセンサーを使って患者の症状やその他のデータを追跡できるよう、IoT機能も提供する予定です。
  • オラクルはまた、医療機関が、電子カルテ、医療画像、および診断へのアクセスと保存を改善できるよう支援する予定です。エリソンによれば、オラクルは医療機関がこうしたデータの保存コストを削減し、生成AIを診断に役立てられるようサポートしていくとのことです。エリソンは、このようなサポートよる影響について、「数百万人の患者の転帰が改善されるだろう」と予測しています。
  • オラクルはApplied Inventionsと提携し、Autonomous Database、AI、ロボット工学、データ分析など、さまざまなオラクル・テクノロジーを活用した温室を開発しています。この温室は、気候に関係なく世界中どこでも利用でき、生産者は消費地に近い場所でより効率的に食料を栽培することができます。たとえば、Oracle Cloudは、さまざまな地域の日照量、土壌の栄養成分、植物の画像など、大量のトレーニング・データを収集し、移植や収穫の理想的な時期を判断しています。AIを搭載した温室は、水使用量を98%、土地使用量を90%削減することができます。気候変動が著しい現在、これらは極めて重要な検討事項であるとエリソンは述べています。「1万年の歴史を持つ産業に対する現代的なアプローチです。」

次なる展開

生成AIに話を戻すと、エリソンは、ほとんどのテクノロジーは「各国首脳や政界のトップ、一般市民やその他の専門家の注目を集めることはありません」と言います。しかし、GenAIに関しては、「誰もが次なる展開を知りたがっています」。

次にやってくるのは、このテクノロジーを最も有効かつ経済的に活用するための世界的な競争です。エリソンによると、この分野におけるオラクルのお客様やパートナー(Cohereや NVIDIAなど)は、スピードとコストの面で先行しているとのことです。

人類の歴史に新たなチャプターが刻まれようとしています。しかし、ハリウッドの脚本と同じように、それが人間の脚本家によって書かれるのか、それともGenAI自身によって書かれるのかは、まだわかりません。


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