有識者に聞く自治体最前線の現状と課題:クラウド活用による電子契約システムの再構築

大阪府は、これまでの「電子調達(電子入札)システム」を、電子契約機能などを備えた「電子契約システム」として再構築し、2025年1月より稼働を開始しました。これにより、入札参加資格申請から、入札・契約、請負金額の請求・支払いまでの手続き全てがオンラインで行えるようになりました。また本システムの導入により、システムで管理する年間約13,000件(入札及び随意契約)の入札・契約事務のスピードアップやミスの防止などの効果に加え、クラウド上での構築により、柔軟なリソース調達や災害対応の強化といったクラウドならではのメリットも見込まれます。
本記事では大阪府における本システム担当者様と、開発を担当された東芝デジタルソリューションズ株式会社様にクラウド導入の背景や課題などについてお話を伺いました。 (2025年11月7日大阪府庁にて撮影・収録)

有識者に聞く自治体最前線の現状と課題
(左から)
東芝デジタルソリューションズ株式会社 ICTソリューション事業部 関西官公ソリューション部 営業担当 大石 雄 氏
大阪府総務部契約局総務委託物品課 参事 大西 雅美 氏
大阪府総務部契約局総務委託物品課 課長補佐 藤原 章博 氏
東芝デジタルソリューションズ株式会社 ICTソリューション事業部 関西官公ソリューション部 技術担当 佐藤 文俊 氏

本システムをクラウド移行することとなった経緯と理由について教えてください。

大阪府総務部契約局総務委託物品課 大西 雅美氏(以下 大阪府・大西氏):

元々大阪府では、外部のデータセンターを契約し、リースで調達したサーバー上でシステムを構築して利用しておりました。2021年頃、システムの再構築を検討する中でクラウドを利用する方向で進めるようになりました。

リソースの調達時に一番困るのは、一般的な契約期間の5年間を見据えたリソースの設定です。そこの見積もりを誤ると、リソース不足でシステムが動かなくなってしまったり、リソース過多で過剰投資になってしまったりします。毎回検討は慎重に行っていましたが、クラウドであれば必要なリソースの増減を柔軟に行うことができ、最適化された状態で利用ができますし、災害時の対応を含むハードウェアの運用が楽になることからクラウド利用のメリットが大きいと判断しました。逆に言うと、今回の新システムについては、クラウドのデメリットが少なかったということです。

再構築に至った背景としては、契約書だけ電子化したとしても府においても事業者の皆様においてもメリットがあるのかという問題がありました。これを解決するために、電子契約だけではなく、契約手続きの全てをペーパーレスによるオンラインで行えるようにすることで府と事業者双方のメリットが生まれるシステムとして再構築することとしました。
また、府と事業者が双方向でオンライン手続きを行うシステムは、クラウドとの相性が良く、コスト面でも優位なことから、クラウドを利用することしました。

東芝デジタルソリューションズ様がOCIを選定された理由を教えてください。

東芝デジタルソリューションズ株式会社 ICTソリューション事業部 関西官公ソリューション部 佐藤 文俊氏(以下 東芝デジタルソリューションズ・佐藤氏):

大阪府様がクラウド化の方針を示されている中、弊社としてクラウドベンダーを調査した結果、OCIを選定した理由は3つです。具体的には、オンプレミスからのスムーズな移行が望めるということ、CPU・メモリ・ディスクそれぞれ増減が可能であり適切かつ柔軟なリソース配分が可能であること、ISMAPに準拠し、多くの大企業を含めたあらゆる規模の業種業界への導入実績があり、政府情報システムにふさわしいセキュリティを備えていること、になります。

更にコストの優位性も強みであり、OCIは他社クラウドと同スペックで比較したところ、コストが約1/4に抑えられるという結果となりました。また利用期間中の為替を固定にできる契約は、為替リスクが無くなるため、弊社としては見通しが立てやすいです。

OCI導入にあたって東芝デジタルソリューションズ様が工夫された点と運用を始めてからの所感を教えてください。

東芝デジタルソリューションズ・佐藤氏:

工夫した点は、サーバースペックとデータ容量のサイジング、ネットワーク接続方法です。サーバースペックとデータ容量は既存システムの利用状況をもとに最適化された数値を算出しました。ネットワークについては、庁内の他システムとの連携を鑑みて、府庁からOCIを閉域網で接続するというようなご提案をしました。 構築期間中、最も気を使ったのは、データベースです。工程上、かなりぎりぎりのタイミングでしたが、「Oracle Database 23ai」の発表がありました。これまで培ってきたOracle製品のオンプレミス時の知見やノウハウを活かして、最新版である「23ai」で構築しました。またシステムを運用保守する上で様々なツール・資産がありますが、ツール・資産が「23ai」でも、設定変更でそのまま使えるのは、OCIを選んでよかったと思っています。

人材育成という点では、もともとOCI有識者をプロジェクトに参加させていましたが、無償資格取得プログラムを活用してOCI技術者を新たに育成できました。

運用を開始してからでいうと、クリティカルな事象については、クラウド基本利用料の中で24時間サポートを受けられるという点は、電子契約システムの特性上非常に有効と思っています。

有識者に聞く自治体最前線の現状と課題

今後のシステム検討の方向性と、その中でOCIに期待することをご教示ください。

大阪府・大西氏:

まず自治体ITシステムの調達に関していうと、最近は一からスクラッチみたいなシステム開発ではなく、いろいろなソフトウェアの組み合わせによる構築が主流になる中で、同じ条件での競争性や公平性をどう担保するのかが難しくなっていると感じます。仕様書の内容を汎用的な表現にしすぎると、どのような機能を求めているのかが分からなくなったりするので、どうしても何かしらのソフトウェアをベースに求める機能を表現せざるをえない。

それとクラウド利用に関して、個人的にはシステムに最適化されたクラウドを選定すべきだと思っており、まずクラウドを選択するという話ではない。クラウドを特定されてそこの中で構築しろと言われるよりは、システムがまず一番にあって、自分たちが構築したいシステムに最適なクラウドを選ぶべきなのかな、と思います。

OCIに期待することとしては、我々が実現してきたセキュリティにおけるクラウドベンダーへの依存度が高まる中で、それをきちんと守ってもらうというのはクラウドを使う上での当たり前の話として、大前提になります。その上で、府としてはもうハードウェアの部分については、システムに必要な性能のみを意識してシステムが作れるような形になればいいのかなと。ただ、先ほども述べた通り、多くのシステムベンダーが様々なソフトウェアやクラウドの組み合わせを提案してくる入札とするには、どのような仕様とするか、どのような入札の方法とするかなど、非常に難しい課題だと感じています。

大阪府総務部契約局総務委託物品課 藤原 章博氏:

クラウドの活用により、従来のハードウェア調達のようにリース期間や詳細な機器仕様、従来型のデータセンター管理を意識する必要がなくなりました。また、ハードウェア資源の需要変動にも柔軟に対応でき、障害対応を含む運用・保守の効率化が図れる点にメリットを感じています。

一方で、障害発生時の対応については、これまでと異なり、機器類や現場の状況を直接確認できないことに心理的な不安があります。

特に、電子契約システムは、入札・契約事務を扱う重要な府民向けサービスです。システム管理者が安心して稼働、運用できるよう信頼性の向上に努めていただければと思います。

東芝デジタルソリューションズ様が自治体様へ提案をする際に意識していること、そしてOCIに今後期待する点を教えてください

東芝デジタルソリューションズ・佐藤氏

まず意識していることは、安定かつセキュアなシステムを提供することです。そのためには安定したクラウド環境が必要だと考えています。また、最近のクラウドだとサービスがすぐ新しいものに置き換わるなど変化が速いので、長く使える良いサービスを意識的に選択するようにしています。今後はAIの活用などもサービスの付加価値として提供していきたいと考えています。

OCIに期待することとしては、Oracle製品で培ってきたノウハウを活かせるような仕組みを維持してもらうことです。安心してOracle製品を使い続けられるようコストや技術面など会社としての取り組みに期待します。

大西 雅美 氏

大阪府総務部契約局総務委託物品課 参事

藤原 章博 氏

大阪府総務部契約局総務委託物品課 課長補佐

佐藤 文俊 氏

東芝デジタルソリューションズ株式会社 ICTソリューション事業部 関西官公ソリューション部 技術担当

大石 雄 氏

東芝デジタルソリューションズ株式会社 ICTソリューション事業部 関西官公ソリューション部 営業担当

インタビュアー:

尾高 花歩/クラウド事業統括 公共・社会基盤営業統括 公共営業本部 デジタル・ガバメント推進部