有識者に聞く自治体最前線の現状と課題:標準化・ガバメントクラウド移行

富岡市は令和6年7月にOCIを基盤としたガバメントクラウドで本番稼働が始まりました。
標準化・ガバメントクラウドのプロジェクトが始まってから本番稼働まで、ベンダーのジーシーシーと二人三脚で進めてきた経緯を富岡市デジタル推進課の吉崎氏、滝上氏、およびジーシーシー市川氏に伺いました。
2024年11月8日

Evolution of System
富岡市企画財務部デジタル戦略課 課長  吉崎 健一 氏
富岡市企画財務部デジタル戦略課 課長補佐  滝上 潔 氏

富岡市様のシステムの変遷と、ガバメントクラウド移行の経緯について教えてください。

富岡市と株式会社ジーシーシー社の関係は非常に長い歴史を持ち、昭和42年、市県民税の特別徴収の受託処理から始まっているようです。その後分散機を運用し、平成11年から13年にかけてクライアントサーバーシステムに移行しました。

平成18年に妙義町との合併を機に、ジーシーシー社の「e-SUITE v1」を導入し、平成28年からはe-SUITE v1をGCCクラウド上で運用してまいりました。

令和6年7月、標準化版パッケージe-SUITE v2 for govへ移行し、ガバメントクラウド上での運用を開始しました。

ガバメントクラウドへの早期移行に踏み切った理由ですが、国の「ガバメントクラウド早期移行団体検証事業」に参加することにより、ガバメントクラウドの利用料の負担を軽減しつつ、OCIファーストユーザーとしてシステム標準化の準備を進められる点、また、ジーシーシー社と共同開発の体制をとることで、手厚いサポートを受けながら、標準化及びガバメントクラウドへの移行を進められるといった利点が想定されたため、本事業に応募しました。

令和6年7月の3連休の切り替え時とその前のテスト期間はどのような作業が発生していたか教えてください。

切り替え時の作業では、休み明けから確実な市民対応ができるよう、移行データの検証確認及び、すべての端末でシステムが正常に動作するか、出力系が問題なく動作するかの確認を行いました。

テスト期間中は、運用テスト計画書に従って、業務担当ごとに動作検証を進めました。システム開発の遅れによりスケジュールに影響が出るケースもありましたが、富岡市とジーシーシー社で協力しながら、無事、標準化システムへの移行を完了することが出来ました。

Relationship with GCC
株式会社ジーシーシー 本社営業部 次長  市川 匡彦 氏

ジーシーシー様とのかかわり方について教えてください。

標準化プロジェクトにおいて、富岡市とジーシーシー社は単なる顧客とベンダーの関係ではなく、「共同開発」という体制で進めてきました。月に1回の全体定例会と、ワーキンググループごとの定例打合せを実施し、進捗状況や仕様について確認しながら進めました。

中盤からはガバメントクラウド環境づくりの進捗や国への申請について調整を行いました。

終盤に近付くと各ワーキンググループの進捗確認、仕様の確定状況の整理、懸案事項の報告と対策検討をメインで行っていました。

特に、ワーキンググループではジーシーシー社のSEと市の業務担当者で標準化仕様書に基づき、運用面の変更が生じる部分や、問題点の洗い出し、課題解決を行いました。

GCC市川様からのコメント:富岡市様をファーストユーザーとしてお声がけした理由は、これまでも税の滞納管理システムの開発などで富岡市と密に協力してきた実績があり、信頼関係が構築されていたためです。また、長年にわたってジーシーシーのシステムを使用していただいていたことが、今回の選定に繋がりました。

ガバメントクラウド移行後の変化について教えてください。

e-SUITE v1からv2に代わったことで、ユーザーインターフェースが大きく変わりました。テスト期間中に早期にシステムに触った職員はすぐに慣れましたが、初めて触った職員は少し戸惑ったようです。

また、ガバメントクラウド環境への移行により、接続経路の変更やセキュリティの強化に伴い、若干のレスポンスダウンが発生することもありましたが、急激な遅延を感じるほどではなく、順調に稼働をしています。

これからガバメントクラウド移行を控えている自治体様へアドバイスをお願いします。

富岡市は戸籍システムを除き、全てのシステムがOCIのガバメントクラウドを利用することになります。しかし、マルチベンダーやマルチクラウド環境で標準化を進める自治体は、各システム間の情報連携をしっかり確認する必要があると考えています。システムごとの課題を一つ一つ解決していくことが、スムーズな移行に繋がると考えます。

ジーシーシーご担当者 市川様より

最初に富岡市様がファーストユーザーとして参加していただいたことが、プロジェクト成功の鍵となりました。今後も富岡市様と長期的に協力し、サポートを提供していきたいと考えています。ジーシーシーは、引き続き富岡市との関係を深め、必要な支援を続けていく意向です。

吉崎 健一 氏
富岡市企画財務部デジタル戦略課 課長
平成5年富岡市役所入庁、危機管理課、税務課、納税課を経て、令和6年度デジタル戦略課に着任。6名の課員とシステム標準化を推進する。

滝上 潔 氏
富岡市企画財務部デジタル戦略課 課長補佐
平成8年富岡市役所入庁、企画課、市民課、納税課を経て、令和4年度デジタル戦略課(旧企画課デジタル化推進室)に着任。6名の課員とシステム標準化を推進する。

富岡市
富岡市は群馬県南西部に位置し、人口約46,000人を有している。明治5年に設立された日本で最初の器械製糸工場である富岡製糸場は、平成26年にユネスコの世界遺産に登録され、その歴史的価値が広く認識されている。

市川 匡彦 氏
株式会社ジーシーシー 本社営業部 次長
平成11年入社、群馬県の西毛地区を中心に担当営業として活動したのちに、平成29年4月から埼玉支社、東京西支社、東京本社での営業活動に従事。令和4年4月より本社営業部に異動となり、地方自治体システムの標準化・ガバメントクラウドへの移行調整を含めて群馬県内市町村の営業部門現場責任者として活動中。

株式会社ジーシーシー
株式会社ジーシーシーは関東を拠点に、市区町村、県などの地方自治体や公共団体における業務全域を網羅するパッケージ・システムや受託開発システムを提供。サービス・プラットフォームの自治体クラウド化に向けて、提供するシステムの基盤を自社データセンターに集約するプロジェクトを平成28年から開始しており、同年9月より自治体クラウド・サービスとして自治体に展開している。

インタビュアー:

細野 彰則/クラウド事業統括 公共・社会基盤営業統括 公共営業本部 デジタル・ガバメント推進部 部長
尾高 花歩/クラウド事業統括 公共・社会基盤営業統括 公共営業本部 デジタル・ガバメント推進部