自治体窓口は、申請書の記入・確認・転記といった作業が来庁者の所要時間の増加や職員負荷につながりやすく、改善の余地が大きい領域です。弥彦村役場は令和4年度から窓口改革に着手し、令和7年度には「ゆびナビぷらす~窓口DX SaaS版~」の導入により、基幹情報とのデータ連携を活かした“書かない窓口”を実現し、記入ミスや読み取りづらさへの対応、職員の動線などの課題にアプローチしています。本記事では、住民アンケートから見える評価、導入前後の変化、スモールスタートから全庁・他業務展開を見据えた今後の構想、さらに提供側(BSNアイネット様)から見たクラウド基盤(OCI選定)のポイントなどについて、お話を伺いました。
弥彦村役場 住民福祉部 住民福祉課 主任 小川 佳紀 氏:
弥彦村では令和4年度から窓口改革に着手し、その時に導入したのがBSNアイネット様の窓口DX SaaSの前身となるLGWAN-ASPのバージョンでした。令和5年度のタイミングで人事異動があり、制度の理解からということで、システムの活用はちょっと横に置き、まずは従来の紙のやり方でやっていこう、と一度BPRが停滞した時期がありました。令和6年度、私が出向していたデジタル庁から戻り、改めて窓口改革を進めてほしいという命題を受け、課長と係長と改革当初の目的・目標を再認識して理想の窓口イメージを共有し、それを実現できるツールが窓口DX SaaSであり、導入に向けて進んでいく形となりました。 従来のLGWAN-ASP版と窓口DX SaaS版の違いとして、やはりデータ連携の部分が一番大きなメリットになってくるかなと思います。データの前方連携により「書き損じ」「記憶違い」「判読不可の文字」がなくなるため、そういった面で窓口DX SaaSの方が全然使い勝手がいいですね。
弥彦村 小川 氏:
来庁者全員ではないですが、窓口でシステムを利用された方にアンケートを取らせてもらい、オンラインでの申請書事前作成機能が強みのLGWAN-ASP版に比べて、データ連携による窓口対応が強みの窓口DXSaaS版のほうが高評価をいただいています。時間が短縮された点や、書かずに済んだ点が、肯定的なコメントとして多く上がってきていますね。 今までは申請書に書いてもらったものがちょっと達筆すぎて読めなかったり、書き間違いがあったり、記憶違いがあり、システム登録する時にチェックして、間違いがあれば再確認する流れがありましたが、先ほどお伝えしたデータ連携ができるため、再確認することがなくなりシステムを使っている上で大きなメリットになっています。一方で、今回の窓口改革はシステム導入が目的ではなく、机等のレイアウトも見直していて、例えば、窓口のすぐ後ろにプリンターを配置し、入力した数秒後に背後のプリンターから出せるようにするなど、職員の動線もかなり効率化を図っています。*証明書発行対応時間という点においても、手書きの部分や、その確認の部分がなくなったりすることにより明らかに短くなっていると感じます。住民票の写し等の証明書発行が一番多い手続きになりますが、感覚的に以前と比べて半分くらいの時間になっているのではないでしょうか。また窓口改革の中で、昨年度デジタル庁の窓口BPRアドバイザーに支援していただいて、窓口利用体験調査を行ったところ、転出だと50分超、転入だと2時間超との結果が出ており、導入後どれだけ時間短縮できるか試行錯誤中です。
弥彦村 小川 氏:
現状はスモールスタートで、標準化20業務のうち住民記録・印鑑登録・国保・年金の4業務を前方連携し、証明書の発行と転居転入転出の手続きだけとなっていますが、それを他の手続きに拡充していきたいです。標準化20業務以外の業務や村独自のサービスもデータ連携を行って、漏れがないように、手続きができれば、住民も職員も共にハッピーになる理想の窓口に近づけると考えています。
株式会社BSNアイネット 公共ビジネス統括部 公共第一事業部 営業部 田川 巧 氏 :
窓口DXSaaSというシステムは、ご存知のようにデジタル庁様から認定をいただいて、ガバメントクラウド上に構築する書かない窓口のサービスになっています。従来の書かない窓口のサービス(LGWAN-ASPサービス等)と異なる点としては、やはりデータ連携ができる点です。よくあるのが、自治体様が持っている情報をもっと活用しようみたいな話がある一方、いざ実施しようとするとセキュリティ等の関係で実現が難しいといった課題です。その点、窓口DXSaaSでは基幹系システムと同じ環境(ガバメントクラウド上)に窓口システムを構築することで、自治体様の持っている世帯の情報だとか、国保の有無とか、各種手当の資格といった情報を連携して、住民の方も簡単に申請書の作成ができることが一番の特徴であると思います。
BSNアイネット 田川 氏:
OCIを選定した一番の理由としては、弊社の基幹系システムがOCIを使っており、CSPをOCIで構築していることが一番大きなところでございます。他のCSPベンダーだと、データ連携とかシステムのシナジーっていうところが生み出せませんので、同じCSP同士を組み合わせて導入させていただいたっていうのが最も効率的な導入の仕方なのかなと思って選定させていただきました。
BSNアイネット 田川 氏:
今後の展望としては、弊社はマルチCSPに対応しておりますので、自治体様の基幹系システムのCSPに合わせた形で、適切なご提案というのが一番大事なのかなと思っております。当社の窓口だけじゃなくて、他の申請方法として事前申請とか先ほどありましたけれども、そういったところも自治体様のニーズに合わせてご提案していく必要もあるかと思うので、窓口だけでなく、自治体様のフロントヤードの考え方に沿って、適切な提案ができればと思っています。
弥彦村役場 総務部 総合政策課 主事 古俣 一樹 氏:
バックヤード業務について、なかなか業務量が減らないような感覚があるので、デジタル技術、例えばRPAや生成AIを活用して少しずつ効率化を目指していこうかなと。それにより効率化された時間を、住民のサービスの向上につなげていきたいと考えています。今後の課題というところでは、システムの導入を前提として考えるということではなくて、その先に何があるか、住民の方でのサービスの向上というところを考えて、きちんと導入していきたいと考えています。
弥彦村 小川 氏:
窓口DX SaaSが稼働して1ヶ月ちょっとですが、多くの自治体から問い合わせや視察依頼があり、全国で関心のある分野の取り組みであると改めて実感しましたし、町村規模の団体で実践しているところはなかなかまだないので、小規模自治体ならではの取り組みとして広めていけたらいいのかなと考えています。同様の取組みを検討されている他自治体さんへのアドバイスとしては、やはり窓口担当課だけで進めていってもうまくいかないし、行革部署だけで進めていってもうまくいかないというところがあります。組織全体として取り組むために、窓口利用体験調査から丁寧に進め、職員一人一人が問題意識を持ち、少しでも改善していこうという意気込みが大切かと思います。また、システム導入が目的ではないので、そこを履き違えないように、業務フローなどもしっかりと考えていただければと思います。
弥彦村役場住民福祉部住民福祉課 主任
弥彦村役場総務部総合政策課 主事
株式会社BSNアイネット 公共ビジネス統括部 公共第一事業部 システム部 マネジャー
株式会社BSNアイネット 公共ビジネス統括部 公共第一事業部 営業部
菊地 司/公共・社会基盤営業統括 デジタル・ガバメント推進部 担当マネジャー
高山 聖/事業戦略統括 戦略事業推進本部 担当シニアディレクター