人事向けAIエージェント:12のユースケース
Margaret Lindquist | シニア・ライター | 2025年7月1日
AIエージェントは、タスクを割り当てられ、環境を監視し、役割に基づいて行動し、経験やユーザー・エクスペリエンスを基に行動を最適化することができるソフトウェア・プログラムです。AIエージェントは、組織がタスクを自動化、効率化し、意思決定を改善できるよう支援するように設計されています。AIエージェントはガイダンスを支援するだけでなく、予測 AIツールとは異なり、大規模言語モデル(LLM)学習に基づいて、ユーザーの要求に応じて、または自らの主導で、ユーザーの代わりに行動を起こすこともできます。
人事組織は、詳細な求人情報を迅速に作成したり、福利厚生などに関する定型的な質問に従業員に迅速に回答したり、パフォーマンス・レビューの要約を作成するなど、さまざまな方法でAIを活用しています。しかし、AIエージェントはより深いレベルの分析と行動をサポートすることができます。AIエージェントはシームレスに連携することで、リクエストや指示を受け、専門の担当者(福利厚生、特典、オンボーディング、リワード・アシスタントなど)に異なるタスクの責任を割り当て、ユーザーが求める情報の提供やタスク実行の完了を知らせるために人間の言語を使うことができます。AIエージェントは自律的に動作するように設計できますが、人間がAIエージェントの推薦事項を評価、アウトプットの品質に関するフィードバックを提供、さらには推奨されたアクションを却下することで、AIエージェントがより効果的に動作するよう支援します。
AIエージェントとは
AIエージェントは、生成AIと自然言語インターフェースを使用して、従業員レコードの情報更新、福利厚生ハンドブックの更新、複雑な表やグラフのテキスト要約の配信など、さまざまなタスクでユーザーを支援する、人工知能によるソフトウェア・ツールです。自然言語処理タスクをサポートする機械学習モデルであるLLMと、モデル自体を変更せずにLLMの出力を最適化する方法を提供する 検索拡張生成(RAG)を使用しています。
人事におけるAIエージェントとは
人事におけるAIエージェントは、採用、オンボーディング、福利厚生管理、タレントマネジメントなどの一般的な人事業務に、推論、記憶、意思決定といった人間のような特性や機能を適用することができます人事ワークフローに導入されるAIエージェントは、HCMシステムの従業員データ、企業のドキュメント、ERPシステムにおける財務データ、その他の社内ソースのデータ、さらには業界の報酬データや企業の福利厚生動向などの外部ソースのデータにアクセスすることができます。
エージェントは、人間や他のソフトウェアプログラムとやりとりする対話型エージェントと、特定のタスクや特定の役割に関連する機能エージェントの2つのカテゴリに分類することができます。たとえば、パフォーマンス管理エージェントは、従業員の業績データを要約し、達成事項または改善点を明確にして、パーソナライズされたキャリア開発案を作成する役割を担うことができます。対話型エージェントは、これらの潜在的なキャリアプランを伝え、従業員からのフィードバックを取り入れ、活用することができます。
採用エージェントのタスクには、求人要件の文書化、AI生成の求人情報のレビュー、求職者の面接日程調整などが含まれます。チャットボット・エージェント型は、求職者とコミュニケーションを取り、フィードバックを受け取って分析し、次のステップで人間の入力が必要な場合に採用マネージャーにアラートを発することができます。福利厚生管理者エージェントは、保険の適用やその他の企業福利厚生について質問する従業員に対して、人間の言語による回答を提供することができます。
従業員が質問すると、対話型エージェントはその要求を監督エージェントへ伝え、監督エージェントは計画を作成し、要求に対応するために必要な行動を決定します。監督エージェントは生成AIエージェントに応答作成を依頼することもあります。企業の福利厚生に関する特定のナレッジを収集する必要がある場合、監督エージェントはRAGエージェントを呼び出し、LLMや企業のドキュメント・リポジトリから適切なデータを取得します。また、人事福利厚生アナリスト・エージェントに、従業員の補償オプションに関する情報を検索するよう指示することもあります。最後に、監督エージェントがLLMからの最終的な回答が正確かどうかをチェックし、従業員とのコミュニケーションのために対話型エージェントに転送します。
AIエージェントの全体目標は、人事および事業部門のマネージャーが、従業員へのアドバイスや従業員との関係構築に多くの時間を費やし、管理業務に時間を割かないように支援することです。EY-Qualtrics Allianceの調査によると、従業員のエンゲージメントの高い企業は、そうでない企業に比べて従業員の離職率が50%低くなっています。
人事におけるAIエージェントの主な構成要素
それぞれのAIエージェントは、コグニティブ・センターに入力された情報を受け取り、そこから何らかのアクションを指示します。これはユーザーに代わりすぐにアクションを起こすこともあれば、別のエージェントに特定のタスクを実行するよう指示することもあります。人事機能に適用されるAIエージェント・プロセスの主な3つの構成要素は次のとおりです。
- 入力 AIエージェントは、給与範囲や従業員の属性などの構造化データ、および従業員の業績レビューやソーシャルメディアへの投稿などの非構造化データにアクセスできます。そのデータを使用して、リクエストのパラメータを定義することができます。たとえば、ハイアリング・マネージャー・エージェントは、特定の仕事に関する基本的な要件をドキュメントにまとめ、生成AIが作成した求人広告を確認して正確性を確認することがあります。
- 頭脳 エージェントの 「頭脳」は、入力されたクエリやLLMによって生成された情報に基づいて、意思決定やプロセスの次のステップを決定する責任があります。エージェントの中には、実行される必要のあるアクションの全体的なセットを決定する責任を持つものがある一方で、1つのステップだけを担当するものもある場合があります。
- アクション。エージェントはリクエストを評価すると、アクションを実行するか、他のエージェントにアクションを実行するよう指示します。タスクには、給与帯情報や給与履歴に関するリクエストがあったことを報酬エージェントに通知すること、クエリに対する回答を口頭で伝えること、企業ポリシーを更新し、変更による影響を受ける可能性のある従業員にそれを通知することなどが含まれます。
人事におけるAIエージェントの主なメリット
AIエージェントは、生成AI機能と意思決定アルゴリズムを組み合わせて、個人および組織による目標設定、行動計画の策定、タスクの完了、フィードバックからの学習を支援し、自らタスクを実行します。エージェントは音声言語を用いて人間と会話することができ、文脈や優先順位に関する知識が必要な複雑な問題や マルチステップのプロセスを処理するように設計されています。主なメリットは次のとおりです。
- 効率と生産性の改善 AIエージェントは、管理業務の自動化や パーソナライズされたキャリア・サポートの提供だけでなく、入社手続き、雇用契約書の作成、人事考課、報酬や福利厚生プログラムなどのプロセスを効率化することで、人事担当者や従業員の効率と生産性の向上を支援します。
- 意思決定の改善 AIエージェントは、業界の報酬動向、退職金制度、福利厚生などのトピックについて、人事マネージャーや他の従業員にガイダンスを提供することができます。AIエージェントは複数の従業員とのやりとりを処理するため、従業員の動向や感情に関する最新かつ正確な情報を人事担当者に提供することで、人事組織内の意思決定をサポートすることができます。
- 運用コストの削減 AIエージェントは、人事組織が職務記述書のアピールや 求職者とのコミュニケーションに最適なチャネルを特定できるよう支援でき、また従業員の福利厚生、研修、スケジュール管理などの問題解決を支援することができます。これらのタスクを引き受けることで、人事チーム・メンバーの時間を大幅に短縮することができます。
- 従業員エクスペリエンスの向上 AIエージェントは、福利厚生、給与、その他の人事トピックに関する質問への正確な回答を従業員に迅速に提供することで、従業員エクスペリエンス全体の向上を支援することができます。
- 作業の自動化 AIエージェントは、複雑なリクエストを分解して解決することで、予測AIソフトウェア機能を拡張し、人事チームやマネージャーが人間のインサイトを必要とする戦略的イニシアチブに集中できるようにします。予測AIツールは、シンプルなタスクや明確な問題の解決を支援することはできますが、単独で行動するようには設計されていません。AIエージェントは、複雑なタスクを割り当てられ、特定の役割に基づいて行動し、人間のフィードバックを利用して今後の行動を改善することができます。
人事におけるAIエージェントの主なユースケース
人事におけるAIエージェントの最も一般的なユースケースは、膨大なデータを分析するAIの機能を活用して、管理者のオーバーヘッドを削減し、単調な人事業務を簡素化することです。人事担当者がメリットを期待できる分野は次のとおりです。
キャリアおよびパフォーマンス開発
AIエージェントは、最も面倒な人事業務の1つであるパフォーマンス・レビュー作成の負担を軽減することができます。マネージャーはエージェントに対し、他のチームメンバーからのフィードバックの収集、レビュー用の下書きの作成、さらには従業員との1対1の面談時間の設定などを指示することができます。AIエージェントが定型業務を管理することで、マネージャーと従業員は業務への期待や成長機会に関するより深い会話に集中することができます。AIエージェントはまた、個人の雇用プロファイルと興味に基づいてキャリア目標を推奨し、従業員がその目標を達成するためのステップを特定できるよう支援することができます。従業員は、AIエージェントの学習を支援するために、これらの推奨を調整することができます。
- キャリア計画ガイド TAIエージェントは、マネージャーと従業員のキャリアに関する会話内容を記録し、重要なポイントを要約し、従業員のキャリアロードマップの一部としての目標作成を支援し、両者が承認すれば、その要約を従業員の記録に追加することができます。
- パフォーマンスと目標アシスタント エージェントの生成AI機能を使用し、パフォーマンスと目標アシスタントは、従業員が業績レビューの前に目標をドキュメントにまとめることができるよう支援することができます。
- 学習および研修アドバイザー 従業員はこのAIエージェントに、自分のキャリア計画や現在のスキルセットに合った研修プログラムを特定し、登録するよう指示することができます。アドバイザーはまた、特定のトレーニング・モジュールに関する従業員のフィードバックを収集し、それを適切な人事スタッフに提供することができます。
報酬および福利厚生管理
給与と福利厚生の管理は、AIエージェントの最も価値のある2大ユースケースです。AIエージェントは、従業員の給与や福利厚生に関する質問に迅速に回答し、従業員の時間追跡や 欠勤管理を支援することができます。
- タイムカード・アシスタント このAIエージェントは、従業員の労働時間のタイムリーで正確な追跡をサポートします。また、タイムカードアシスタントは、たとえば残業代や増額支給のパラメータを明確にすることで、従業員に給与の計算方法を説明することができます。
- 源泉徴収ガイド AIエージェントは、従業員が扶養家族の人数、可処分所得水準、定期的な支出要件などの要因に基づいて源泉徴収を理解および選択できるよう支援します。
- 給与ガイドライン・アナリスト 人事組織はこのようなAIエージェントを活用することで、社内の従業員の給与データや業界の動向データを収集し、新入社員や既存の従業員の給与に関するガイダンスを提供することができます。たとえば、業界の給与動向のレポートを任されている人事マネージャーは、エージェントをサードパーティー・ソースに送ってデータを収集し、生成AI 機能を用いてそのデータを整理および要約して経営陣に報告することができます。
- 休暇・欠勤アナリスト 従業員はAIエージェントに対して、休暇、病欠、個人休暇、家族休暇、医療休暇、その他の休暇について質問し、必要に応じて追加情報を要求することができます。また、事前承認を得て、マネージャーや人事担当者による確認を求めることもできます。
従業員ライフサイクル管理
個人や組織はAIエージェントを活用することで、従業員のキャリア進捗を管理することができます。これには、従業員記録の更新や従業員による教育内容の検討支援といった日常的なタスクの処理と、キャリアガイダンス提供の両方が含まれます。AIエージェントは、日常的な部分を自動化することにより、マネージャーをより高度な議論に時間を割くことができます。
- 新入社員オンボーディング・アシスタント このAIエージェントは、入社後数日から数週間の従業員をサポートし、企業ポリシーに関する情報に簡単にアクセスできるようにし、従業員が実行する必要のあるアクションや期限についてアラートを発します。
- 求職者アナリスト このAIエージェントは、従業員に募集中のポジションと必要なスキルを示すことで、組織内で他のキャリア機会を探索できるよう支援します。また、履歴書のヒントや面接指導も提供することができます。
- 特典およびアワード・アナリスト このAIアナリストは、勤続年数、パフォーマンス、役職、その他の要因に基づく特典やアワードについて、従業員に常に情報を提供することができます。たとえば、このエージェントは従業員に対して、VPになったのでビジネスクラスを利用する権利があることや、勤続10周年の次の給与で5,000ドルのボーナスが支給されることを通知することができます。また、関連する企業ポリシーについてマネージャーにガイダンスを提供することもできます。
- 個人および雇用情報アシスタント このAIエージェントは、従業員が企業ディレクトリの個人プロファイルを更新したり、昇進や転勤などの仕事の節目に関する情報にアクセスできるよう支援します。
- 雇用契約アナリスト このAIエージェントは、従業員からの質問に回答したり、内容をわかりやすい言葉で要約することで、従業員による雇用契約条件の理解を支援します。また、契約要件や期限を把握することで、従業員とマネージャーの双方が、賞与の支給や認定資格の期限を守るための計画策定など、必要な行動を把握することができます。
人事AIエージェントの統合
人事AIエージェントは、組織の人材管理システムにある給与、パフォーマンス、トレーニング、目標などの包括的なデータへのアクセスを活用しています。たとえば、マネジャーに組織全体の給与状況を大まかに把握させ、人員計画やタレントマネジメントを支援するなどの目的で、人事エージェントと企業のERPシステムなどのシステムとの連携は極めて重要です。相互接続されたシステムは、人事、財務、営業などの機密データをプラットフォーム・レベルでセキュアに保護し、権限のある人のみがアクセスできるようにすることで、より多くのセキュリティを確保することもできます。
オラクルのAIエージェントによる企業人事の変革
オラクルは、Oracle Fusion Cloud HCMアプリケーションに、募集、採用、キャリア・プランニング、パフォーマンス管理、その他多くの人事機能向けのAIエージェント機能を継続的に組み込んでいます。このアーキテクチャは、HCMやその他のFusionアプリケーションを利用するお客様が、既存のエージェントを拡張したり、新規エージェントを作成し、企業全体で導入および管理することを容易にするために設計されています。
高性能なAIサービスは、組織のデータを使用して、異常の発見、複雑なタスクの自動化、セキュリティの向上、生産性の向上などを支援することができます。方法
人事におけるAIエージェントに関するFAQ
AIエージェントが人事で採用を改善する方法を教えてください。
AIエージェントは、ポジションの要件に基づいて求人情報を作成し、雇用主のニーズに最も一致する応募者を特定し、プロセスを効率化するためのインサイトや推奨事項を採用マネージャーに提供することで、従業員の採用改善を支援できます。またエージェントは、求職者の質問に回答したり、応募プロセスをガイドすることで、求職者のエクスペリエンス向上を支援することもできます。
AIエージェントが従業員研修や育成において果たす役割を教えてください。
AIエージェントは、従業員にパーソナライズされた推奨を行い、従業員とマネージャーのフィードバックを使用してガイダンスを改善することで、従業員研修と育成において重要な役割を果たすことができます。
AIエージェントがパフォーマンス・レビューを管理する方法を教えてください。
AIエージェントは、従業員一人ひとりのスキル、興味、後継者計画に基づいて目標を推奨し、成功基準の定義を支援することで、パフォーマンス・レビューを支援することができます。マネージャーはエージェントに対して、従業員とのより適切なパフォーマンスや目標に関する話し合いの進め方についてアドバイスを求めることもできます。
