オラクル、データベース、クラウド・インフラストラクチャ、アプリケーションにAIを導入

オラクル、インフラストラクチャ、開発ツール、アプリケーションにおける新しい人工知能製品を発表

Aaron Ricadela| 2023年9月19日


6月、オラクルは生成AI市場に参入し、大規模言語モデル(LLM)を顧客に提供する契約を締結するとともに、複雑なシステムをトレーニングするスタートアップによる数十億ドルのクラウド・コンピューティングのコミットメントを発表しました。

それから3カ月後、このソフトウェア・メーカーは、クラウド・インフラストラクチャ、電子健康記録(EHR)ソフトウェア、データ分析ツール、ERP、カスタマーサービス・ソフトウェアなど同社の製品全体にわたり、強力なAIテクノロジーを幅広く活用しています。AI開発者からの契約済みビジネスは40億ドルに倍増しています。

「生成AIは約1年前に登場し、全てを変えています。オラクルで全てが変わりつつあることは確かです」オラクル会長兼最高テクノロジー責任者(CTO)のラリー・エリソンは9月19日にラスベガスで開催されたCloudWorldカンファレンスの基調講演で述べました。

同カンファレンスでオラクルは、生成AIクラウド・サービス、医療業界向けソフトウェアの人工知能強化、AIシステムで使用される非構造化および半構造化データの保存と高速検索のための新しいデータベース機能を発表しました。オラクルはまた、マーケティング担当者がキャンペーンを作成したり、サービス・エージェントが会話を要約することができるようにする顧客管理ソフトウェアの機能強化や、ビジネス・データ・アナリスト向けの生成AIによるアシスタントの提供開始も発表しました。

インターネットやプライベートなデータセットから収集したパターンから学習し、ユーザーが新たなインサイトに到達することを支援する生成AIシステムは、開発と資金調達を活発化させ、大規模な言語モデルをトレーニングして実行するために必要なコンピューティング・パワーを求めてしのぎを削っています。これらのモデルは、医療診断や市場分析の要約、会話の分析、テキストや画像の作成、コードの記述などを支援することができます。しかし、LLMにはほとんどのビジネス・データセンターにある従来のコンピューティング機能を超える、膨大な量の並列処理能力と高速データ通信が必要です。そのため、開発者は必要なネットワークや特殊なチップをより容易に利用できるパブリック・クラウドで、この作業をより多く実行するよう推進されています。

生成AIは約1年前に登場し、全てを変えています。オラクルで全てが変わりつつあることは確かです」

ラリー・エリソン オラクル会長兼最高技術責任者

オラクルは、生成AIツールをビジネスにもたらすために、チップメーカーであるNVIDIAの最も強力なH100 AIプロセッサのクラウドでの使用を拡大し、高度なチップがOracle cloud computingサービスにもたらすネットワーキング・スピードと価格における優位性をアピールしています。お客様からもご対応頂いています。AI開発企業は、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上で、第4四半期末の5月31日時点の2倍となる40億ドル以上のトレーニング容量を購入する契約を締結しました。

オラクルはデータを処理に必要な場所にすばやく移動させ、AIモデルをトレーニングしている間、プロセッサ間でデータを迅速にやりとりする独自のクラウド・コンピューティング・インフラストラクチャを提供している、とエリソンは述べています。

オラクルはまた、特定の分野の予測機能を向上させるために独自のデータを追加することで、標準モデルを迅速かつ手頃な価格で微調整することを求める企業の要望にも対応しています。「彼らは独自のトレーニング・データを使用することを求めています。そのための最適な方法は、補完的なトレーニング・データをオラクルのベクトル・データベースに格納することです。

オラクルでは、AIモデルのトレーニングを他のクラウドよりもはるかに速く、何倍も安価に実行できます」と、エリソンは語ります。

生成AIを活用するビジネスは大きな利益を得る可能性があります。lGoldman Sachsによると、生成AIはオフィス・ワーカーの生産性を高め、創薬を迅速化し、ソフトウェア開発を加速させることで、今後10年間で世界のGDPを7%、つまり7兆ドル近く押し上げる可能性があります。コンサルタント会社のMcKinsey & Co.は、生成AIと関連テクノロジーが2030年から2060年の間に営業、マーケティング、コーディング、研究開発などの分野で現在の仕事の半分が自動化されることで、世界のGDPを最大4.4兆ドル増加させる可能性があると予測します。

支援と分析

オラクルは、AIによるツールを複数の方面で提供しています。オラクルは6月、カナダのトロントを拠点とする大規模言語モデル開発業者、Cohereと提携し、Cohereのテクノロジーに基づくAI機能をOCIの顧客に提供するとともに、このスタートアップに投資を行いました。このコラボレーションに基づく最初の製品は、現在市場に投入されています。

  • AI Vector Searchは、Oracle Database 23cに、ドキュメント、画像、およびその他の非構造化ファイルに関するセマンティック情報をベクトルとして、つまり大規模な言語モデルが密接に関連する用語を迅速に検索できるテキストの数値表現として格納する機能を追加します。この機能により、Oracle Databaseのユーザーは、LLMとプライベート・ビジネス・データを組み合わせて特定の知識分野の回答を提供する手法である、Retrieval Augmented Generation(RAG)を実行することもできます。APEXを含むOracle Database開発ツールに生成AI機能を追加することで、開発者の生産性も向上させることもでき、ユーザーはコーディングなしでアプリケーションやクエリを記述することができます。
  • OCI Generative AIにより、ビジネスはCohereが構築したLLMをAPI経由で自社のアプリケーションに統合し、それらのモデルをオラクルの高速でコスト効率に優れたOCI Superclusterサービス上で実行することができます。このサービスは試験的に顧客に提供されますが、一般に提供されるようになれば、AI Vector Searchと連動して、事前に学習させたモデルと顧客独自のデータを組み合わせたRAGアプリケーションを作成できるようになる見込みです。生成AIサービスは、Oracle Cloud Applications、NetSuite ERP、および医療アプリケーションの新機能の基盤にもなっています。
  • AIによる処理能力の向上: オラクルは、ユーザーのプロンプトから回答を提供する際の推論パフォーマンスを最大30倍向上させ、NVIDIAの前世代A100チップと比較してトレーニング・パフォーマンスを4倍向上させる、NVIDIAの最新H100チップを自社のクラウド・インフラストラクチャ上でより広く利用できるようにする予定です。AIモデルをトレーニングするお客様は、OCI Superclusterにより、数万個のH100チップを高パフォーマンスかつ低レイテンシのネットワークで接続することができ、当初はオラクルのイリノイ州シカゴと英国ロンドンのデータセンターで利用可能です。OCIはまた、小規模モデルのトレーニングやAI推論用にNVIDIAのL40S GPUも提供する予定です。
  • Oracle Clinical Digital Assistantは、ソフトウェア企業の電子健康記録と連動し、医師が患者との会話中に自動的にメモを取り、医薬品や臨床検査の注文、再診の予約などのアクションを提案する、音声と画面を駆使したユーザー・インターフェースを提供することで、ペーパーワークを削減することができます。また、医師は、患者のEHRからMRIの結果やその他の要素をタイピングなしで口頭で呼び出すことができるようになります。このソフトウェアは来年中に提供開始予定です。
  • Oracle Advertising and Customer Experience,は、マーケティング担当者とサービス・エージェントを対象としており、AI生成による顧客対応のドラフト作成、ヘルプ記事の作成と検索、顧客とのやり取りから要な情報を要約する重機能が追加されています。マーケティング担当者は、AIによるステップバイステップのプロセスを経ることで、企業のブランド・ガイドラインに準拠したキャンペーンを起草することができます。
  • Oracle Analytics Cloud,は、データを可視化し、コラボレーションするためのプラットフォームであり、分析者はAIが生成する応答を見聞きしながら、平易な言語を使用してデータとやりとりすることができます。このソフトウェアも、テキストファイルや画像ファイルから重要な情報を自動的に読み取り、引き出すように設計されています。
生成AI:これは歴史上もっとも重要なテクノロジーなのでしょうか。おそらくそうでしょう。」エリソンは述べます。「ひとつだけ確かなのは、これからそれが明らかになるということです。

ラリー・エリソンオラクル会長兼最高技術責任者


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