複合AIとは

Jeffrey Erickson | シニアライター | 2025年11月6日

複合AIは、優れたスポーツチームのようなものだと考えてください。それぞれの選手が持つ個々の強みを組み合わせることで、素晴らしい成果が生まれます。同じように、AIモデルにも専門分野があります。言語理解が得意なモデルもあれば、パターンの発見に優れるモデル、論理的な判断に秀でたモデルもあります。これら異なるAIモデルが連携することで、単独のモデルでは実現できない、より強力なソリューションを提供することが可能になります。ここからは、複合AIの特徴について詳しくご紹介します。

複合AIとは

複合AIとは、機械学習や自然言語処理(NLP)、ナレッジグラフ、ルールベース推論など、複数のAI技術を組み合わせて、難易度が高い現実のビジネス課題に対応する手法です。統計的手法、シンボリック手法、ナレッジベース手法など、さまざまなAI技術の強みをひとつのソリューションに融合することで、単一のAIモデルだけでは対処できない複雑かつ繊細な課題にも対応できるようになります。

主なポイント

  • 複合AIは、機械学習、NLP、ナレッジグラフ、ルールベース推論など複数のAI技術をひとつのシステムに統合し、特定の成果を実現します。
  • 複合AIソリューションの目的は、より繊細で信頼性が高く、説明可能な結果を提供することです。
  • 複合AIを構築するには、さまざまなAIモデルをサポートし、データの統合を支援するプラットフォームが必要となります。

複合AIの解説

多くのAIシステムは、主にひとつの技術だけを用いて運用されており、それぞれに長所と短所があります。たとえば、機械学習モデルは画像のパターン認識には優れていますが、その判断根拠が見えにくい場合があります。一方、ルールベースのシステムは透明性が高く監査もしやすいですが、環境の変化には柔軟に対応できません。複合AIは、こうしたギャップを埋めるために、それぞれの技術が得意な部分を組み合わせて活用します。たとえば、コンプライアンスにはルールを用い、適応性には機械学習を活用し、文脈の理解にはナレッジグラフを使用します。これにより、強力かつ信頼できるソリューションが実現します。

サービスデスクで利用される会話型AIエージェントを例に考えてみましょう。この場合、ユーザーの要望を理解するためにニューラル言語モデルを使い、タスクを自動化するためのルールを用い、企業情報を検索できるナレッジベースを活用します。これにより、ユーザーの意図を理解するだけでなく、学習し、論理的に考え、実際の企業リソースを活用して高品質な回答を提供できるAIアシスタントが実現します。

このアプローチはサービスデスクだけでなく、不正検出、コンプライアンス自動化、予知保全など、さまざまな分野で有効です。

複合AIがビジネスにもたらす重要性

多くの企業は、ひとつのAIモデルや限られた手法だけを使うことに限界があると感じ始めています。複合AIは、意思決定のスピード向上、リソースの有効活用、変化への柔軟な対応を実現し、チームの可能性を広げます。データが変化したり新たな要件が出てきた場合でも、最初から作り直す必要はなく、必要なコンポーネントを追加・調整するだけで対応できます。

特に、信頼性が高く説明可能な自動化を求める企業にとって、結果に対する根拠を明確に示せる複合AIは大きな魅力があります。規制対応が求められる業種でも、正確で信頼性があり、監査可能な結果が得られる点が強みです。パフォーマンスの向上だけが目的ではなく、「どのように結果を導き出したか」を証明できることも重要です。複合AIは、自動化やエージェント型テクノロジーなど、さまざまな新たな可能性を切り開きます。

複合AIの仕組み

複合AIの特徴は、さまざまなAI技術を組み合わせて活用する点にあります。具体的には、機械学習やシンボリック推論、知識表現などを活用します。複合AIのアーキテクチャでは、これらの異なる技術を階層的に組み合わせて、それぞれの強みを活かせるように設計されています。この連携は、入念なシステム設計によって実現されます。たとえば、データは複数のコンポーネントを通過し、それぞれが固有の役割を果たします。自然言語処理モジュールは非構造化テキストから意味を抽出し、ナレッジグラフは豊かな文脈情報を提供し、推論エンジンはビジネスロジックや規制ルールを適用します。

複合AIは、これらの要素を連携させることで、個々のAI技術だけでは実現できない優れた結果を生み出します。さらに、単一のAIモデルでは対応が難しい、より複雑なタスクにも取り組むことが可能です。

複合AIの8つの主要要素

複合AIは、機械学習、自然言語処理、ナレッジグラフなど複数の人工知能技術を組み合わせて、複雑な課題に対応する統合的なソリューションを実現します。
複合AIシステムは、データベースや文書などのデータソースに加え、データクレンジングのためのデータ処理層にもアクセス可能です。

複合AIシステムは、高い適応性とモジュール性を備えています。そのため、組織は新しいデータソースやコンポーネント、さらには新しい生成AIモデルを追加する際も、アプリケーション全体を再設計する必要がありません。複合AIシステムに含まれる主なコンポーネントは以下の通りです。

1. 機械学習:機械学習は、過去のデータから学習し、見えにくいパターンを発見したり、予測や推奨を行ったりする役割を果たします。また、システムが新しい情報に継続的に適応できるようにします。

2. 自然言語処理(NLP):NLPはAIに人間の言語を理解・解釈・生成させる技術です。これは、会話型アシスタントやAIエージェント、ドキュメント分析、構造化・非構造化テキストからの意味抽出に不可欠な技術です。

3. ナレッジグラフ:ナレッジグラフは、データを相互に関連付けられたエンティティや関係として整理し、文脈を与えることで推論を支援します。これにより、複合AIシステムは個々の概念をマッピングし、つながりを認識し、より的確な意思決定を行えるようになります。

4. ルールベースのシステム:ルールのベースシステムは、あらかじめ定められた透明性の高いロジックを適用し、コンプライアンスの維持、例外対応、組織ポリシーの遵守を支援します。これは監査や説明責任が重要な規制業界や構造化された環境で特に有用です。

5. 最適化アルゴリズム:複数の選択肢の中から最適な解決策を特定する必要がある場合、最適化アルゴリズムは制約と目標のバランスをとるのに役立ちます。リソースの割り当てやスケジューリング、業務プロセスの改善などに役立ちます。

6. シンボリックAI:シンボリックAIは、論理やシンボル、関係性を用いて推論や問題解決をシミュレートします。明示的に人間が定義したルールやシンボルを使って問題を解決し、ルールやオントロジー、専門知識などを統合する仕組みを提供します。

7. コンピュータビジョン/オブジェクト検出:コンピュータビジョンは、写真やビデオ、スキャンした書類などの画像ベースのコンテンツをAIが解釈・分析する機能です。これにより、自動的なオブジェクト検出や不良品検出、ビジュアル検索などが可能となります。

8. ロボティック・プロセス・オートメーション (RPA):RPAはAIではありませんが、ビジネスのワークフローにおける繰り返しの多い定型作業を自動化するものです。AIコンポーネントと統合することで、RPAは効率を高め、ヒューマンエラーを削減するのに役立ちます。

複合AIの重要な要素

複合AIは、複数のAI技術を組み合わせることで、より深い理解、強力な問題解決力、そして実際の成果を実現します。以下が主な特徴です。
複合AIシステムは、これらの機能や他の技術を組み合わせることで、強力かつ信頼性の高いインテリジェンスを提供します。

複合AIシステムの各コンポーネントは、より柔軟で文脈理解に優れ、さまざまなビジネスのニーズに適応できるインテリジェントなAIを実現するために役立ちます。主な特徴は以下の通りです。

  • コンテキスト認識:ナレッジグラフや専門ルールなど、領域固有の知識を活用し、より的確で根拠のある意思決定をサポートします。
  • 柔軟性と拡張性:モジュール設計により、ニーズの変化に合わせて簡単に対応できます。また、拡張性の高いアーキテクチャにより、データ量や分析の複雑さが増しても対応可能です。
  • 人とAIの協働:結論に至った理由を説明できるため、利用者が結果を信頼し、さらなる改善にもつなげやすくなります。
  • 精度と効率の向上:複数のAI技術の強みを融合することで、エラーの減少や問題解決のスピード向上が期待できます。
  • 統合性:シンボリック、統計的、機械学習など多様な手法を1つのシステムに組み合わせることで、多様な課題に柔軟に対応できます。

複合AIの業種別ユースケース

政府: 自治体では、複合AIを活用して市民サービスの向上や不正防止、ならびに説明可能なモデルやNLP、AI意思決定フレームワークを用いたプログラム管理を実現できます。

ヘルスケア:医療分野では、画像分析のための機械学習、医療記録の要約のためのNLP、治療プロトコルの提示のためのナレッジベース推論を組み合わせることで、診断や患者ケアを支援できます。

金融:金融業界では、統計モデル、不正検出ロジック、コンプライアンスルールを組み合わせることで、リスク評価を強化し、レポートの自動化を実現します。

製造業:製造業では、センサーや画像認識、専門ルールなどを活用し、予知保全、品質チェック、プロセス最適化を実現し、より迅速で高度な生産ラインを構築できます。

小売業:複合AIは、予測分析、パーソナライズ、在庫最適化を組み合わせ、ターゲットを絞ったマーケティングや在庫管理の強化に貢献します。

運輸・物流:リアルタイムデータ、最適化アルゴリズム、ルールベースのシステムを活用し、ルート計画やサプライチェーン管理、予知保全を効率化できます。

AIエージェントの大規模な構築・展開・管理

複合AIソリューションやAIエージェントがビジネスにインパクトをもたらすためには、お客様のワークフローと簡単に連携し、事業の成長に合わせて拡張できることが重要です。Oracle Cloud Infrastructure AI Agent Platformは、お客様が選択した機械学習や言語モデルを活用し、高度なAIエージェントを構築・展開・管理できるツールを提供します。これにより、パーソナライズされ、文脈に応じたサービスを大規模に実現し、魅力的なカスタマー・エクスペリエンスを提供できるバーチャルAIエージェントの開発が可能です。

複合AIは、信頼性の高い自動化や、より高度な意思決定を求める企業にとっての次なるステップです。こうしたシステムは、組織ごとの専門知識とより深く連携し、モジュール構成や柔軟性を活かすことで、高い可用性や精度、説明可能性を備えた結果を実現します。

複合システムはビジネスに大きな効果をもたらしますが、AI自体もすでに効率性を高める強力な手段です。AIが業務プロセスの改善、コスト削減、生産性向上に大きく貢献できる9つの領域をご紹介します。

複合AIに関するよくある質問

AIの主な種類にはどのようなものがありますか?

AIにはさまざまな分類方法がありますが、複合AIシステムでよく使われるモデルとしては、機械学習モデル、自然言語処理、ナレッジグラフ、ルールベースの推論モデルなどが挙げられます。

複合AIとは何ですか?従来のAI手法とは何が違いますか?

複合AIは、機械学習や自然言語処理、ナレッジグラフなど、複数のAI技術を組み合わせ、一つのAI技術だけでは解決が難しい複雑なビジネス課題にも効果的に対応できる手法です。一方、従来のAIは一つの手法やモデルに依存することが多く、複合AIのような柔軟性がありません。この柔軟性により、複合AIはより複雑な課題にも対応できます。

複合AIを使うメリットは何ですか?

複合AIを活用することで、さまざまなAIアプローチを組み合わせて幅広い用途に対応でき、従来の単一手法のソリューションと比べて、精度や適応性、解釈可能性の向上が期待できます。また、シンボリック推論と機械学習を組み合わせることで、AIが導き出す判断の根拠が明確になり、結果の説明や検証も容易になります。