デジタル・トランスフォーメーション成功のための5大要件

私たちの世界は今、カスタマー・エクスペリエンスを根本から再構築し、従来のビジネス・モデルや業務を一変させ、ネットワークとクラウド・インフラにこれまで以上の要求を課す、デジタル・トランスフォーメーションを迎えています。

世界経済フォーラムによると、デジタル・トランスフォーメーションは通信およびメディア分野だけで2.3兆ドル規模のビジネス・チャンスを生んでいます。しかし、通信サービスプロバイダーや、デジタルサービス・プラットフォームを提供する企業にとっては、それ以上の意味を持ちます。なぜなら、あらゆる産業のデジタル・トランスフォーメーションを支える中心的な役割を担っているからです。その理由は、皆さんが提供している通信ネットワーク、IoTプラットフォーム、クラウド・インフラ、アプリケーション、そしてサービスこそが、企業によるデジタルサービス提供の礎となっています。今後10年間で1,000兆円を超える価値がデジタル化から生まれるとされており、その中核を担うのが通信業界なのです。

企業や通信サービスプロバイダーがデジタル・トランスフォーメーションに取り組む中で、克服すべき課題は多岐にわたります。具体的には次のような点です。

  • デジタルサービスやコンテンツによって生成される膨大なトランザクションとゼタバイト規模の複雑なデータをスケーリング・管理・保護すること。
  • 人やモノの接続と相互通信が進む中で、数十億のデバイスや機器を管理すること。
  • ネットワーク機能や業務プロセスを簡素化・自動化すること。
  • さまざまな利用モデルとサブスクリプション・モデルを活用して、デジタルサービスや顧客データを収益化し、保護すること。
  • あらゆるデジタルチャネルで、よりパーソナライズされた「ライブ」なカスタマー・エクスペリエンスを提供すること。

これらの課題に対応し、デジタル・トランスフォーメーションを成功に導くための5つの必須要件をご紹介します。

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点をつなぐ(全体を統合的に捉える)

デジタル・トランスフォーメーションへの取り組みを成功に導くには、「ネットワークの進化」「デジタルビジネス」「カスタマー・エクスペリエンス」という3つの柱を持つことが重要です。こうしたトランスフォーメーションへの取り組みが3つの柱すべてを包括的に網羅していれば、顧客とつながり、収益化を図り、顧客とのエンゲージメントを深めることで、新たなデジタル・エクスペリエンスを創出できるようになります。たとえば、ネットワーク内のビデオ最適化により、ビデオコンテンツの収益化とカスタマー・エクスペリエンスの双方が向上します。3つの柱全体にわたってセキュリティ、ポリシー、顧客データ管理、分析をエンドツーエンドで統合することで、デジタル・エクスペリエンスをまったく新しいレベルに引き上げることができます。

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統合、統合、統合、

人やデバイス、モノがますます接続・通信・取引を行うようになる中で、サービスベースのアーキテクチャとオープンなアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)に基づいた、統合型のクラウドおよび通信インフラ、プラットフォーム、サービスが不可欠です。そのためには、オンプレミス、パブリック、プライベート、ハイブリッド・クラウドといったあらゆる環境において、ネットワーク機能とIT運用プロセスの簡素化、仮想化、自動化、統合が求められます。また、データセンター、シリコンチップ、データベース、ネットワーク、アプリケーションといったすべてのレイヤーでセキュリティ・ポリシーに基づいた監視と自己修復の機能が必要です。さらに、エンタープライズ・リソース・プランニング、カスタマー・エクスペリエンス、およびIoTプラットフォームを収益化および通信アプリケーションと統合して、ビジネスの全構成要素(人、プロセス、モノ)をつなげることで、デジタルサービスの提供を成功に導くことができます。

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「構想から収益化、そしてサポートまで」一貫したカスタマー・エクスペリエンスの提供

デジタル・トランスフォーメーションへの取り組みを成功へと導いている組織は、そのすべてのプロセスと業務の中心にカスタマー・エクスペリエンスを据えています。構想から収益化、そしてアフターサポートまで、顧客とのすべてのエンゲージメントにおいて、パーソナライズされ、コンテキストに即した、有意義な体験を提供しています。これを実現するには、顧客が何を体験しているのかの包括的な可視化が必要です。そのためには、ネットワークノード、モバイルアプリ、ソーシャルメディア、セルフサービス、コンタクトセンターなど、あらゆるタッチポイントでのデータを収集・分析し、活用することが不可欠です。適切なタイミングで適切なチャネルを通じて顧客と接し、コンテキストに即したデータとインサイトを活用し、迅速に問題を解決することで、現場の担当者は顧客にとって有意義かつ能動的なエンゲージメントを提供できます。統合された収益化機能を備えたクラウドベースのカスタマー・エクスペリエンス・ソリューションは、新規顧客のスムーズなオンボーディングを可能にし、新たなデジタルサービスの設計、課金、請求、レポート作成までを包括的に支援します。

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革新的なデジタルサービスを提供する

デジタルサービスの設計において、イノベーションは不可欠です。それは、完全にデジタルなサービスの提供であったり、デジタルチャネルを通じたPaaS(Product-as-a-Service)であったりします。いずれにしても、サブスクリプション、従量課金、都度払い、フリーミアム、製品横断の割引、バンドル提供、独自指標に基づく料金設定など、支払い方法や利用形態に多様な選択肢を提供できる柔軟性が成功の鍵となります。この分野で成功する鍵は、市場の変化に迅速に対応できる柔軟性にあります。AI、機械学習(ML)、ソーシャル・リスニング、ビッグデータを活用した予測分析により、過去の行動履歴に基づいた魅力的なオファーの提示、ソーシャル上の反応への迅速対応、そしてビジネス・パフォーマンスのリアルタイムな可視化が可能になります。

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最新のテクノロジー・イノベーションを活用する

スケーラビリティと信頼性に優れたクラウド、4G/5Gモバイル・インフラ、AI、ML、バイオメトリクス、ブロックチェーンといった革新技術の活用は、デジタル・トランスフォーメーションへの取り組みを成功に導く重要な要素です。統合型のクラウドおよびモバイル・ネットワーク・インフラには、より多くのデータ、接続、トランザクションに対応できるスケーラビリティ、保存機能、セキュリティが求められます。AIは、カスタマーサービスのチャットボットやロボット工学から分析まで幅広く活用され、通信サービスプロバイダーや企業によるパーソナライズかつ自動化されたカスタマー・エクスペリエンスの提供を可能にします。MLは、ユーザーの負担をアプリケーション側に移し、たとえユーザーの質問が不完全でも正しい回答を導く役割を果たします。また、デバイスやアプリケーションから得られるデータに基づいて、有用なインサイトを提供します。感情や行動の認識といったバイオメトリクス技術により、企業は顧客とのエンゲージメントをさらにパーソナライズできるようになります。顧客が何を買いたいのか、どのような扱いを望んでいるのかを感情や行動から把握することで、より効果的なコミュニケーションが実現します。そしてブロックチェーン技術により、支払い、IoTおよび顧客データの共有、アイデンティティのやり取り、購入・請求履歴の追跡といった価値トランザクションが即時かつ安全に実現します。

この5大要件を満たし、デジタル・トランスフォーメーションにおける数兆ドル規模のビジネス・チャンスを捉えられる組織こそが、未来を手にするのです。