分散検索とは

Jeffrey Erickson | シニアライター | 2025年11月6日

「人手が多ければ仕事は楽になる」といった考え方は、多くの手作業を要する複雑なタスクだけでなく、実はサーバーにも当てはまります。サーバーは、Web検索や大規模データセットの検索において、データの特定やインデックス化、検索や応答の提示といった、さまざまな重い処理を担当します。本記事では、分散検索が多数のサーバーを連携させることで、検索アプリケーションを支え、膨大なデータの中から必要な答えを効率的に導き出す仕組みをご紹介します。

分散検索とは

分散検索とは、大規模なデータセットを高速に検索するために、検索処理を複数のサーバーで分担する方式です。これは、パソコンのハードディスクの検索のように、1台のCPUですべてをインデックス化・検索できるケースとは異なります。分散検索では、非常に大きなデータセットへのクエリを複数のサーバー(ノード)に分散することで、処理速度を向上させます。システム内の各ノードはデータの一部をインデックス化し、素早く検索できるようにしています。検索アプリケーションで質問が入力されると、各ノードが自分の持つデータに対して並列で検索を行います。そしてその結果を集約し、ランキング付けしたうえで、検索バーに質問を入力した人に提示します。

分散検索は、データセンター内の数台のサーバーで構成される場合もあれば、世界中の各地域にまたがる数千台のサーバーで構成される場合もあります。いずれの場合でも、分散処理によって、1台のサーバーでは実現できない高速かつ効率的な検索が可能になります。

分散検索システムは、ウェブコンテンツの単純なテキスト検索、セマンティック検索、レコメンデーションエンジンや自然言語処理によく使われるビジュアル検索など、さまざまな種類の検索に対応できます。

分散検索は、フェデレーテッド検索とは異なります。どちらも大量のデータを扱うという目的は共通していますが、分散検索は1つの大規模データセットを複数のノードに分割し、各ノードが並列してローカル検索を行う統合型のシステムです。それに対し、フェデレーテッド検索は、複数の独立したデータソースに対し同時にクエリを投げる方式で、それぞれのデータソースが独自のインデックスや検索機能を持っている場合があります。分散検索は主にスケーラビリティやパフォーマンスに特化しており、一方でフェデレーテッド検索は多様なデータソースを横断的に検索する設計になっています。ただし、分散型かつマルチモーダル対応のデータベースを利用すれば、どちらの手法もシンプルなアーキテクチャで実現することが可能です。

主なポイント

  • 分散検索とは、非常に大規模なデータセットを検索する際に、必要な計算処理を複数のサーバー(ノード)に分散することで、検索を高速化する仕組みです。
  • 分散検索は、単一のサーバーが停止しても他のノードがその処理を引き継ぐことで、耐障害性も向上します。
  • 分散検索は、ウェブ検索エンジンの最も一般的な処理方式であり、ソーシャルメディアや大規模ECサイトの検索バー、また多くの企業アプリケーションや自治体サイトでも利用されています。

分散検索の解説

本質的に、分散検索とは、膨大なデータ量の検索を、多数のサーバーで分散処理することで、高速な検索を可能にし、同時にシステムのスケーラビリティや可用性を向上させる方法です。ただし、分散検索を円滑に機能させるには、多くの要素が連携して動作することが求められます。

これらには以下が含まれます。

データのパーティショニング: 最初のステップは、データを複数のノード(それぞれが1台のサーバー)に分割して割り当てることです。用途に応じて分割方法は異なり、たとえば時系列データで一般的に用いられるレンジ・パーティショニングでは、日付に基づいて月単位や年単位で分割します。一方、負荷分散のためにデータを均等に分配する必要がある場合には、コンシステントハッシュ法がよく使用されます。

インデックス作成: 分散アーキテクチャ内の各ノードは、自身が保持するデータについて、高速な検索・取得を可能にするためのインデックスを作成・管理する必要があります。用途に応じてインデックス作成手法も様々であり、テキスト検索には転置インデックス、データをソートした状態で保存・取得する場合にはB-tree、データセット内で完全一致検索を高速に行いたい場合にはハッシュテーブルなどが利用されます。

クエリ配信: 検索が開始されると、クエリはすべて、または一部のノードに配信されます。クエリルーターが、関連するノードすべてにクエリが届くよう制御します。

ローカル検索: 各ノードは並列に、自身がインデックス化したローカルデータに対して検索を実行します。

結果の集約: すべての関連ノードから得られた検索結果は、クエリルーター(クエリコーディネーター)によって収集、統合、並べ替えが行われます。

結果の提示: 最終的に集約・ランキングされた検索結果が、検索を実施したユーザーまたはアプリケーションに提示されます。

分散検索の仕組み

分散検索は、相互に接続された複数のノードが連携し、膨大なデータに対する検索クエリを共同で処理する仕組みです。こうしたシステムでは、大規模なデータセットに対するクエリを効率的に処理するため、クエリ分散、負荷分散、結果の集約を最適化する専用のアルゴリズムや技術が活用されています。

分散検索の目的

分散検索は、ウェブ検索、EC、ソーシャルメディア、リアルタイム分析などの大規模アプリケーションに不可欠な、優れたパフォーマンス、スケーラビリティ、柔軟性を提供することを目的としています。こうしたシステムの有効性は、以下のようなタスクをどれだけ効率的に処理できるかで評価されます。

大規模データセットの高速検索: 分散検索システムは、多数のサーバーが並列して処理を行うことで、Web検索エンジンレベルの大規模なデータに対しても迅速に応答できます。

応答を確実に提供: 分散検索は、データを分割して複数のサーバーで保持させることで、高い可用性と信頼性を実現します。万が一サーバーが停止した場合でも、システム内の別の稼働中サーバーに処理を切り替えることで、継続的なサービス提供が可能です。

多様な検索タイプへの適応性: 分散検索アーキテクチャにより、セマンティック検索やテキスト検索など、さまざまな検索タイプに対応できます。画像検索や地図検索といった用途に応じて、ノードを特定のデータやクエリに最適化することも可能です。

分散検索のメリット

大規模システムにおいて分散検索が主流となっている理由をご紹介します。

可用性。 パフォーマンス向上だけでなく、高い可用性や耐障害性は多くの分散システムにとって重要な目標です。分散検索システムでは、たとえ一部のノードが故障しても、検索結果を提供し続けることができます。

柔軟性。 分散検索では、データの種類やクエリの内容に応じて、ノードごとに最適化することが可能です。この専門化により、たとえばテキストのエラスティック検索、ベクトルデータのセマンティック検索、検索拡張生成(RAG)を活用したドキュメントやリレーショナルデータの検索など、さまざまな高速検索を実現できます。分散検索アーキテクチャでは、これらすべてを1つの検索バーでシームレスに利用することが可能です。

パフォーマンス: 検索結果を待たされるのは誰もが避けたいものです。検索クエリを複数のサーバーに分散させることで、待ち時間を最小限に抑えられることは、エンジニアの間ではよく知られています。分散検索は、検索の負荷をサーバーごとに分散し、並列処理することで処理速度を大幅に向上させます。

スケーラビリティ: 分散検索の最大の目的は、膨大なデータに対して検索機能を提供することです。処理を多数の計算リソースに分散することで、ノードを追加するだけで、データ量の増加やユーザー需要の拡大に対応できます。たとえば、オープンソースの分散検索・分析エンジンであるOpenSearchでは、データノードの上限を250台から750台まで段階的に拡張することができます。

分散検索の課題

分散検索は、大規模な消費者向け検索エンジンから企業内サイトでの特定用途の検索まで、多くのユースケースで有効性が実証されているため、いくつかの課題があるにもかかわらず広く利用されています。それでも、エンジニアは以下のような本質的な課題に対応する必要があります。

複雑さ: 分散システムの管理は、単一サーバーに比べて格段に複雑ですし、データ量が増えるほどさらに複雑になります。この課題を克服するためには、高度な制御やエラー処理機構を備えた分散データベースを活用するのが最適です。

一貫性: 分散検索プロセスにおいて、すべてのノードが常に最新かつ整合性の取れたデータを保つことは困難です。特に、ほぼリアルタイムでの検索を求められる動的な環境では、その難易度が高まります。ユースケースによっては、強い一貫性を求めることで検索パフォーマンスが低下することもあります。一方、ドキュメント・データベースなどで採用される「結果整合性(eventual consistency)」を許容する設計であれば、大規模検索をより高速に実現できます。

潜在的なレイテンシ: クエリの配信、複数マシンでの実行、結果の集約には一定の時間がかかります。分散システム以外のアプローチではさらに大きな遅延問題が発生しますが、分散検索システムであっても最適なパフォーマンスを維持するためには、継続的なチューニングと監視が不可欠です。

分散検索のユースケース

分散検索のアプローチが特に有効なユースケースには、共通する特徴や要求があります。たとえば、大規模で地理的に分散したデータや、多数の同時ユーザーが高速な応答を求める状況などです。

分散検索は、以下のユースケースにおいて、最適な選択肢であることが実証されています。

AIワークフローの実現: 分散検索アーキテクチャは、AI推論プロセスの基盤となっています企業のデータストアとAIモデルやAIエージェントをつなぐベクトル検索の精度を向上させ、複合AIシステムが各モデルに分散してデータを分配するのに役立ちます。

ECプラットフォーム: オンライン小売業者は、分散検索を活用して、広範な商品カタログから顧客が素早く商品を検索・特定できるようにしています。Amazon、eBay、その他の大規模ECサイトでも、分散検索がその裏で力を発揮しています。

エンタープライズ検索: 大規模な企業でも、社内文書、メール、データベースなどを対象とした内部検索エンジンの構築に分散検索を利用しています。これらのシステムでは、RAGベクトル検索を組み合わせることで、より柔軟なセマンティック検索を実現し、社内情報へのアクセス性をさらに向上させています。

ログ分析・監視: ITチームは、分散検索を活用したログ管理・監視システムを使用しています。これにより、複数のアプリケーションや他のITソースから集まるログデータを迅速に検索・分析し、トラブルシューティングやセキュリティ、コンプライアンス対応を効率化できます。

リアルタイム・アプリケーション: 分散検索は、金融取引プラットフォーム、在庫管理、リアルタイム分析など、リアルタイムなデータ処理が求められるアプリケーションでも活躍しています。

科学研究: 分散検索は、このゲノミクスのユースケースをはじめ、天文学、気候科学などの技術分野でも有効です。研究者が膨大で常に変化し続けるデータセットを管理・解析するのに役立ちます。

ソーシャルメディア・プラットフォーム: 有名なソーシャルメディアでは、分散検索を用いてユーザーが投稿した膨大なコンテンツを迅速にインデックス化・検索しています。これにより、利用者が広大なサービス内で、プロフィール、投稿、動画、コメントなどをすぐに見つけることができます。

ウェブ検索エンジン: 代表的な例として、大規模な消費者向けウェブ検索エンジンが挙げられます。こうしたサービスは、インターネット上の膨大なデータを分散検索でインデックス化・検索し、何百万人ものユーザーに対して高速かつ正確な検索結果を提供しています。

オラクルによるグローバル分散検索プラットフォームの簡素化

分散検索アーキテクチャをもっと簡単に実現するには、マルチモーダル対応の分散データベースの活用が最適です。Oracle AI Databaseは、ベクトル、JSON、テキスト、リレーショナルなど、さまざまなデータタイプをネイティブに管理できるため、ひとつのシンプルなデータベースアーキテクチャ上で多様なデータのインデックス作成・検索が可能です。さらに、オラクルは完全自動化されたグローバル分散クラウドデータベースを提供しているため、ビジネスクリティカルかつクラウド規模のアプリケーションやオープンソース・プロジェクトでも、分散検索を容易に導入できます。

Oracle AI Databaseは無料でお試しいただけます。

分散検索がますます支持を集めているのには理由があります。特に、ベクトル検索やRAGのような新しい技術が活用されるようになったことが大きな要因です。マルチモーダルAIやAIエージェントの導入が企業で進む中、分散検索を含む分散システムは、今日のビジネスが求める高速性、正確性、耐障害性を備えたアプリケーションの運用を支える重要な基盤となります。

AIプロジェクトが生産性向上の目標を達成できるかどうか、その決め手となるのは「データ」です。オラクルのeBookでは、AI導入を成功に導く強固なデータ基盤を構築するために押さえておくべき7つの重要なポイントをご紹介しています。

分散検索に関するよくある質問

分散検索とフェデレーテッド検索の違いは何ですか。

分散検索もフェデレーテッド検索も、大量のデータを対象とした検索を実現するという点では共通しています。違いは、分散検索が単一の大規模データセットを複数のノードに分散して並列検索するのに対し、フェデレーテッド検索は複数の独立したデータソースに対して同時にクエリを実行する点です。フェデレーテッド検索では、それぞれのデータソースが独自のインデックスや検索機能を持っている場合があり、多様なデータソースを横断して検索できる点が特徴です。