Spring Bootとは

Alan Zeichick | シニアライター | 2024年10月29日

ソフトウェア開発は、ワープロで白紙の新しいドキュメントを開くときと似ています。「最初に何から手をつけるべきか?」、「複雑なアプリケーションを作る際に、面倒な定型コードや設定ミス、重要な項目の抜け漏れをどうやって防ぐか?」といった課題が出てきます。そこで役立つのがアプリケーションフレームワークです。アプリケーションフレームワークは、さまざまな種類のアプリケーションのための構造を提供します。開発チームがアプリケーションフレームワークを選択したら、本格的にソフトウェア開発が始まります。単なる穴埋めテンプレートほど単純ではないものの、アプリケーションフレームワークが下準備を担うことで、シンプルなマイクロサービスやWebアプリから、従来型のクライアント/サーバーアプリケーションまで、幅広いプロジェクトに対応できます。

Java開発者にとって、最も利用されているアプリケーションフレームワークの一つがSpringです。Springはきわめて柔軟で汎用性が高く、小規模なサービスから、企業の中核を担うような大規模システムまで、さまざまな用途に利用されています。しかし、その高い柔軟性はメリットである一方、選択肢の多さから複雑になりやすいというデメリットもあります。そこで登場するのがSpring Bootです。Spring BootはSpringを拡張したもので、依存関係の管理や設定など、煩雑になりがちな部分を自動化してくれるため、より簡単に使い始めることができます。

そのため、Springの導入を検討している場合は、Spring Bootの利用を積極的にご検討いただくことをおすすめします。

JavaにおけるSpring Bootとは

Spring Bootは、Springベースのアプリケーションを作成するためのオープンソースのJavaフレームワークです。2000年代初頭に開発されたSpringは、エンタープライズ向けアプリケーションで非常に高い人気を誇るJavaフレームワークとなりました。その後、Spring Bootが登場し、Springのあらゆるツールや技術を拡張しながら、より簡単に使えるフレームワークとして提供されるようになりました。これにより、アプリケーションの開発を迅速に進めることができるようになっています。

JavaとSpring Framework

Java開発者にとって、Springには依存性注入、イベント管理、国際化、データ・バインディング、型変換、アスペクト指向プログラミングなど、実に多彩な基盤技術がそろっています。テスト、モック、データオブジェクト、Model-View-Controller方式のWebアプリケーション、リモート処理、タスクスケジューリングなど、思い浮かぶ機能はほとんどSpringでカバーできます。どの機能を使うかは、開発チームやアーキテクトの判断次第で、必要なものだけを選んでも、すべてを活用しても構いません。

Spring Frameworkは、Apache 2.0ライセンスのもとで提供されるオープンソース・ソフトウェアです。

Springプロジェクトには数多くのサブプロジェクトが用意されており、クラウドアプリ向け、セキュリティ、Webサービスの公開や利用、認証情報の管理、データアクセス、イベント管理、さらには人工知能まで幅広くカバーしています。柔軟性が高い分、複雑になりがちなのも事実です。Springベースの大規模アプリケーションを構築しようとすると、設定や選択肢が非常に多く、その一部は手動で設定した後にコードを書き始めてしまうと、変更が難しくなることもあります。

そこで登場するのがSpring Bootです。

SpringとSpring Bootの違い

  • Spring Bootは、Springのサブプロジェクトの一つです。こちらもApache 2.0ライセンスのもとでオープンソースとして提供されています。
  • 開発者の中には、Spring BootのコードベースがSpring Framework本体よりも大きいことに驚く方もいます。これは、Spring BootがSpringを拡張し、賢く自動設定を行う「意見を持った(opinionated)」設計となっているためです。
  • 開発者が「どんなものを作りたいか」をSpring Bootに伝えると、必要なモジュールやサードパーティ製ライブラリの読み込みや設定を自動的に判断して進めてくれます。
  • ここでいう「賢い」というのはAIの意味ではなく、Spring Bootの選択はアルゴリズムに基づいて決定されます。
  • なお、Spring Boot自体の重さが最終的なアプリケーションに影響を及ぼすことはありません。むしろSpring Bootは必要なものだけを選択するため、アプリケーションはスリムになります。
  • つまり、Spring Bootは「意見を持っている」フレームワークですが、その意見は非常に適切だと言えます。
  • たとえば、アプリケーションに組み込みWebサーバーが必要な場合、従来のSpringアプリケーションでは、どのWebサーバーを選び、どう設定するかをすべて自分で決める必要があります。セキュリティ設定なども手動で対応します。
  • 一方、Spring Bootを使えば、アプリケーションにWebサーバーが必要な場合、自動的にWebサーバーを導入し、必要な設定もすべて行ってくれます。

主な違い

SpringとSpring Bootの主な違いは、「複雑さ」と「使いやすさ」のバランスにあります。

Springは、ほぼ無限にカスタマイズ可能ですが、その分、どのモジュールやサードパーティ製ライブラリを導入するのか、どの機能をどのように設定するのかといった選択をじっくり時間をかけて決める必要があります。そして、その作業が終わらないと、本格的なコーディングを始めることができません。

一方、Spring Bootを使えば、インストールや設定に関する多くの選択をフレームワークが自動で行ってくれるため、開発をよりスムーズかつスピーディに始めることができます。確かに、カスタマイズの幅はやや減りますが、実際には困るケースはほとんどありません。ほとんどのシチュエーションでは、Web開発やマイクロサービス開発にはSpring Bootの方が適しています。例外的なケースや大規模なプロジェクトの場合のみ、Springを直接使う選択肢もあるでしょう。

主なポイント

  • Springはエンタープライズ向けJavaアプリケーション開発のための、とても強力ですが同時に複雑なフレームワークです。あらゆるサイズや用途のドライバー、レンチ、ドリルビット、ソケットがそろった工具箱のようなもので、選択肢が多すぎて迷ってしまうほど機能が充実しています。
  • Spring Bootは、Springをもっと使いやすくしたバージョンのような存在です。特定の作業に必要な道具だけを詰め込んだコンパクトな工具箱をイメージすると分かりやすいでしょう。
  • SpringもSpring Bootも、どちらもJavaでモジュール・アプリケーションを開発するために利用できます。
  • Spring Bootは、マイクロサービスやWebアプリのような小規模アプリケーション開発で特に力を発揮します。理由は、シンプルな設定と賢いデフォルト値がそろっているため、チームがすばやく開発を始められるからです。
  • 逆に、アプリケーションが非常に大規模かつ複雑になる場合は、より柔軟性の高いSpring Frameworkの利用を検討する価値があります。

Spring Bootの解説

Spring Bootは、エンタープライズ向けJavaアプリケーションを構築するためのオープンソースのアプリケーション・フレームワークです。開発チームが素早く開発を始められるよう設計されており、従来のSpringで必要だった煩雑な設定作業を省略して、スタンドアロンのSpringアプリケーションを簡単に作成できます。

Springプロジェクトの目標は、「意見を持った(opinionated)」設計を通じて、より速くスムーズな開発体験を実現することです。つまり、どのSpringモジュールや機能を有効にするか、どのサードパーティ製ライブラリを導入するかをアルゴリズムで自動的に決定し、その設定も自動で行います。さらに、組み込みWebサーバー、セキュリティシステム、メトリクス、分析機能など、Javaプロジェクトに役立つさまざまな非コーディング要素も追加してくれます。

執筆時点での最新バージョンであるSpring Boot 3.3.4は、最低でもJava 17とSpring Framework 6.1.13以上が必要です。Spring Bootは、Maven 3.6.3やGradle 7.x・8.xなどのビルドツールと連携可能です。また、組み込みサーブレットにはTomcat、Jetty、Undertow、またはServlet 5.0以上に対応したコンテナを利用できます。GitHubとの連携も一般的です。

Spring Boot最大のメリットは、Springアプリケーション・フレームワークの豊富な機能を、その複雑さを意識せずに利用できる点です。Java 17以降に対応したJava仮想マシン(JVM)であればどこでもアプリケーションを実行でき、別途WebサーバーやWARファイルを用意する必要はありません。

また、Spring Bootでは従来のXMLファイルによる設定ではなく、application.propertiesファイルを用いて設定を行います。これは、Oracle DatabaseやMySQLなどのデータベースを利用するアプリケーションに最適です。実際、MySQLを使う場合はSpring Bootが自動的にインメモリデータベースの設定も行ってくれます。データアクセス技術に幅広く対応できるSpring Data JPA(Java Persistence API)も利用可能です。

Spring Bootアーキテクチャの詳細について知りたい方は、Spring Bootベースのアプリケーションの例をご覧ください。

Spring Bootの仕組み

Spring Bootは、他の多くのJavaアプリケーションフレームワークやアドインと同様に、「依存性注入(DI)」と「制御の反転(IoC)」という仕組みを活用して、Javaプログラムにさまざまな機能を追加します。

DI(依存性注入)とは、アプリケーションで利用するオブジェクトや機能そのものを、外部フレームワークであるSpring Bootが用意し、提供してくれる仕組みです。開発者はそれらを自分で作り込む必要がなく、状況に応じて、それらのオブジェクトや関数へのインターフェースを知っている、または定義するだけで十分です。

IoC(制御の反転)は、プログラムの流れ(コントロールフロー)が外部から提供される仕組みです。Spring Bootの場合、開発者はアプリケーションの処理ロジックに集中でき、イベントループやメッセージの振り分けなどはフレームワーク側が担います。Springの特殊なIoCコンテナが、こうしたオブジェクトや機能の依存性注入を効率的・簡単に行ってくれます。

また、SpringやSpring BootではJavaアノテーションも活用されています。アノテーションは「@」記号を頭につけてソースコード中に記述されるタグで、コンパイルには影響しませんが、プログラムに関するメタデータとして機能し、追加機能を提供する際に利用されます。

開発者は、Spring Bootを利用する際、まず新しいプロジェクトのMavenのpom.xmlファイルやGradleのbuild.gradleファイルに、必要なSpringの依存関係およびSpring Boot Starterの依存関係を追加します。その上で、たとえばWebサービス用のRESTコントローラーを構築する場合には@RestControllerなど、適切なSpring Bootアノテーションをコードに付与していきます。Spring Bootは、設計やコーディングを大幅に簡単にするさまざまな機能も提供してくれます。たとえば、Jacksonを使ったシリアライズ/デシリアライズなど、3種類のJSONマッピングライブラリとの統合があらかじめ用意されています。また、Spring SecurityはHTTPやフォームを利用するアプリケーションをはじめ、あらゆるWebアプリケーション構築に不可欠なセキュリティ機能も備えています。

Spring Bootフレームワークは、アプリケーションを4つの層に分けて設計します。HTTPリクエストやJSONデータの処理をビジネスロジックから分離し、さらにビジネスロジックを、データのオブジェクト表現と外部データベース上の実際のデータから分離します。この4層アーキテクチャは、そのままマイクロサービス開発に活用できるだけでなく、Webアプリケーションに最適なModel-View-Controller(MVC)デザインパターンとしても応用できます。

すべての依存関係を追加し、プログラムロジックを書き終えたら、MavenやGradleの標準コマンドを実行することでアプリケーションを起動できます。Spring Bootは、プロジェクトで必要となるSpring Frameworkの各種コンポーネントを自動でインストールし、最適な形で設定してくれます。また、もし自己完結型の実行ファイルを作成したい場合でも、Spring Bootなら複数のJARファイルをまとめた「ネストされたJARファイル」を直接作成できます。このJARファイルを配布すれば、Java 17以上に対応した標準JVMや、GraalVMのようなネイティブ・イメージ・プラットフォーム上でアプリケーションを実行できます。

Spring Bootの利点

Spring Bootは、従来のSpring Frameworkを直接使う場合と比べて、エンタープライズ向けJava開発者に多くの利点をもたらします。一般的に、プロジェクトの要件をSpringでもSpring Bootでも満たせる場合は、セットアップがより簡単で、高い生産性を実現できる、Spring Bootの利用をおすすめします。主な利点として、次の点が挙げられます。

  • 開発のスピードアップ: Spring Bootを使えば、開発チームはすぐに開発を始められます。Spring Bootの「意見を持った(opinionated)」アルゴリズムが、必要なモジュールや機能、サードパーティ製ライブラリを自動的に検出・読み込み・設定してくれるためです。一方、従来のSpringの場合は、開発者が何を導入すべきかを一つひとつ手動で選ぶ必要があります。
  • 構成を簡素化: JavaやC++、C#などの言語で開発する場合、アプリケーションのあらゆる要素を細かく設定する作業は時間がかかり、ミスも発生しがちです。Spring Bootは、モジュールやサードパーティ製ライブラリの自動設定機能が非常に優れており、開発者の手間を大幅に減らしてくれます。また、開発途中で利用するモジュールやライブラリが変更になった場合でも、Spring Bootが自動的に設定を調整してくれるので安心です。
  • マイクロサービス向けの機能が標準装備: Spring Bootは、リアクティブ、イベント駆動、バッチ、サーバーレス、クライアント/サーバー型、Webアプリケーションなど、あらゆる種類のエンタープライズJavaアプリケーション開発に利用できます。しかし特にマイクロサービス開発に強く、その理由はサービスディスカバリー、ロードバランサ、分散実行トレーシング、リアルタイム・メッセージ・ストリーミングといったパターンが最初から組み込まれているためです。加えて、Spring Bootアプリケーションは起動と終了が非常に速いため、マイクロサービスの拡張にも非常に適しています。
  • 依存関係の管理: 依存関係とは、アプリケーションのコードの一部が、ライブラリやモジュール、プラグイン、マイクロサービス、APIなどに頼って動作することを指します。Spring Bootには、依存性注入(DI)という仕組みが標準で組み込まれており、外部で定義されたオブジェクトや機能を、ほとんど手間をかけずにアプリケーションへ取り込むことができます。これにより開発者は、ライブラリやAPIなど外部リソースの細かい技術的な部分を気にせずに、プログラムの本質的なロジックに集中できるようになります。
  • 本番運用に適した機能: ソフトウェアの目的は「作ること」ではなく「実際に動かすこと」にあります。しかし、エンタープライズ向けのJavaアプリケーションは、パッケージングや配布方法に明確な業界標準がなく、その点で難しさがあります。Spring Frameworkを使ったアプリケーションでも同じ課題がありました。Spring Bootでは、この問題を解決するために、実行可能なJARファイルや配布用のWARファイルなどを選べるようになっています。アプリケーションを直接コンテナ環境にデプロイしたり、WindowsやUnix/Linuxのシステムサービスとして動作させることもできます。
  • シームレスな統合 エンタープライズ向けのJavaアプリケーションは、データベースやERPシステム、クラウドアプリ、従来型のクライアント/サーバーアプリケーションなど、さまざまな他のシステムと連携する必要があります。Spring Bootには、こうした外部システムと連携するための機能が最初から豊富に備わっています。また、ほとんどすべてのオープンソース・プロジェクトや主要なソフトウェアベンダーが、Spring Bootとの連携ツールやガイダンスを用意しています。たとえばオラクルは、JDBCやUCP、Spring Bootやマイクロサービス向けOracle Backendに加え、さまざまなOracleテクノロジー向けのSpring Boot Starterも提供・サポートしています。

Spring Bootの主な機能

Spring Bootは、長年にわたりエンタープライズ向けJava開発者のニーズに応える形で進化してきました。機能が非常に多いため最初は圧倒されますが、実際にはSpring Bootの役割は「開発の簡素化」です。プロジェクトに必要なモジュールや機能、ライブラリをSpring Bootが自動的に選んで組み込んでくれるので、開発者はインフラ周りや土台作りではなく、本質的なプログラムロジックに集中できます。

開発プロセスの簡素化に役立つSpring Bootの機能のいくつかを次にご紹介します。

  • 自動設定: Spring Bootは「意見を持った(opinionated)」設計により、プロジェクトに最適なモジュールや外部ライブラリを自動的に選定し、さらにその設定まで自動で行います。これにより、開発者はモジュールやライブラリを選ぶ手間だけでなく、それぞれの設定方法を調べたりする手間が大幅に省けます。この作業は通常、非常に時間がかかり、ミスも起こりやすいため、大きな工数削減につながります。
  • スタンドアロン型の実行可能JARファイル: Spring Bootの大きな特長の一つが、スタンドアロン実行可能JARファイルを作成できることです。このJARファイルをランタイム環境に直接配布すれば、そのまますぐに実行できます。JARの中には、Javaのクラスファイルやメタデータだけでなく、アプリケーションの動作に必要な画像やその他のリソースもすべて含まれます。
  • 組み込みWebサーバー: エンタープライズJavaアプリケーションでHTTPサーバーが必要な場合も、Spring Bootならサーバーのインストールや設定を自動で行い、強力なデフォルトのセキュリティ・オプションも適用します。利用できるサーバーには、Tomcat、Jetty、Undertowなどがあります。
  • Spring Boot Starter: エンタープライズ・アプリケーションでは、Webサーバーや分析ツール、デバッガー、設計パターン、データの永続化、通信、モック、ロードバランサなど、実に多くのライブラリや依存関係が必要となります。Spring Boot Starterは、そうした関連するライブラリや設定をひとまとめにして、1つの設定ファイルで一括管理できる仕組みです。これにより、プロセスを簡素化し、コード量を減らし、見落としを防ぎます。必要なものがすべて一度にそろうのでとても便利です。
  • 外部化された設定: Spring Bootを使うと、アプリケーションのコードをさまざまな環境で簡単に動かすことができます。外部化設定により、コマンドライン引数やプロパティファイル、環境変数など、数多くのプロパティを実行環境ごとに柔軟に調整できます。これらの設定は1つのファイルに集約し、アプリケーション実行時に読み込まれ、@アノテーションを通じて簡単に参照できる仕組みになっています。
  • Spring Boot開発用ツール: エンタープライズ向けJavaアプリケーションを開発する際、開発者は普段使い慣れたIDEやDevOpsツール、ソースコード管理ツールなど、好みのツールチェーンを利用できます。さらにSpring Bootには、エラー管理、ログの出力、リモート実行、クラスパスの管理といった作業を支援する専用の追加ツールも用意されています。
  • Spring Boot Actuator: Spring Boot Actuatorを使うと、アプリケーションの稼働中にヘルスチェックや状態監視を行うための専用エンドポイントを簡単に定義できます。これらのエンドポイントは、HTTPやJMX(Java Management Extensions)を使って有効化・無効化・公開が可能です。通常は、好みのアプリケーション管理ツールからこれらを監視し、アプリケーションが正常に動いているかどうか、メモリ不足や停止、動作の遅延、例外発生など、問題がないかを素早く確認できます。
  • 依存関係管理の簡素化: Spring Bootフレームワークの最大の強みの一つは、開発者が依存関係の設定をほとんど手動で行う必要がなくなる点です。Spring Bootには依存関係管理を簡素化するための仕組みがあり、必要なモジュールやライブラリを自動的に設定できます。また、Spring Boot Startersを使えば関連するライブラリをまとめて管理でき、アプリケーションをスタンドアロンで実行可能なJARとしてパッケージ化することもできます。
  • 本番運用向けの機能: アプリケーションの導入準備が整ったら、Spring Bootは本番環境への導入を助けるさまざまな機能を提供してくれます。たとえば、各種設定をまとめて管理できるSpring Boot Starter、アプリケーション配布用のスタンドアロン実行可能JAR、稼働中の状態監視ができるSpring Boot Actuatorなどがあります。
「なぜSpring Bootはこれほど人気があるのか」の図解

なぜSpring Bootはこれほど人気があるのか

Spring Bootのメリットは、アプリケーションの開発から本番環境への導入まで幅広くあります。

Spring Bootの代表的な機能

開発:

  • 自動設定
  • Spring Boot開発用ツール
  • シンプルな依存関係管理
  • 組み込みのWebサーバー

導入:

  • スタンドアロン実行可能JARファイル
  • Spring Boot Starters
  • 外部化された設定
  • Spring Boot Actuator
  • 本番運用向けの機能
上記およびその他のさまざまなメリットにより、Spring Bootは多くのJava開発者に選ばれる人気のフレームワークとなっています。

Spring Bootのアーキテクチャ

Spring Bootは、シンプルなマイクロサービスから、企業で重要な役割を担う大規模アプリケーション、最新のクラウド向けアプリケーションまで、あらゆる種類のエンタープライズJavaアプリケーション開発に活用できます。一般的なSpring Bootアプリケーションは、用途に応じてカスタマイズ可能な4つの層で構成されています。たとえば、シンプルなマイクロサービスであれば、データベースや永続化層が不要な場合もあります。

下から順に、この4層の構成は以下のとおりです。

  • データベース層: 実際にアプリケーションが利用するデータベースであり、CRUD操作が行われる部分です。Spring Bootでは、拡張可能なあらゆるタイプのデータベースを利用できます。
  • 永続化層: 永続化層は、実際のデータベース層に対して、オブジェクト指向とリレーショナルデータベースの間をつなぐ抽象化レイヤーです。アプリケーションのロジックは、ビジネス・オブジェクトを通じてこの永続化層とやり取りし、永続化層のコードが、それらをリレーショナルデータベースの行や列に変換し、CRUD操作をデータベース層に伝達します。
  • ビジネス層: 開発チームにとって、課題解決の中核となるのがビジネス層です。ビジネス層には、プログラムの処理の流れやイベント処理の指示が含まれます。プレゼンテーション層を介してユーザーや外部アプリケーションとやり取りし、永続化層を通してデータとも連携します。
  • プレゼンテーション層: Spring Bootアプリケーションのプレゼンテーション層は、HTTPやJSONを通じて外部と通信します。ここでリクエストの認証が行われ、JSONデータが展開されます。サービスリクエストはビジネス層に渡されて処理されます。アプリケーションの外部インターフェースは「ビュー(View)」と呼ばれることもあります。

Spring Bootのセットアップ方法

Spring Bootを試してみたい場合、そのセットアップもとても簡単です。この手軽さが、多くの開発チームでSpring Bootが選ばれ、学生をはじめ多くの方が学んでいる理由の一つでもあります。始める際は、公式のDeveloping Your First Spring Boot Applicationのドキュメントもご参照いただくことをお勧めしますが、ここでは流れを簡単にまとめます。

  1. Java 17以上がインストールされていることを確認します。
  2. MavenまたはGradleの構成を行い、Spring Bootアプリケーションフレームワークを含めるようにMavenのpom.xmlまたはGradleのbuild.gradleファイルを定義します。
  3. プロジェクトに必要な依存関係を管理する、Spring Boot Starter用のクラスパス依存関係を追加します。
  4. Spring Bootの機能を活用できるよう、適切なアノテーションを付与してコードを書きます。数行の「Hello World」から、大規模なミッションクリティカル・アプリケーションまで、どのような規模でも対応できます。
  5. MavenまたはGradleを使ってローカルでアプリケーションを実行し、期待通り動作するか確認します。
  6. 必要に応じて、アプリケーションを配布用のスタンドアロン実行可能JARファイルとしてパッケージングします。

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Spring Bootとオラクル製品の連携

Spring Bootのデータベース層は、クラウドでもオンプレミスでも、さまざまなデータベースに対応しています。その中でも、特に人気が高いのがOracle DatabaseとMySQLです。オラクルの開発チームは、Spring Bootのサポートに力を入れており、コードをオープンソースライブラリに還元するだけでなく、オラクル独自の多彩なフレームワークやライブラリとの連携も積極的に推進しています。また、Oracle DatabaseやOCIサービス向けにサポートされたSpring Starterも、Oracle Cloud Marketplaceで提供されています。

Oracle Backend for Microservices and AIは、2024年6月に発表された新しいプラットフォームで、Oracle Databaseをはじめとするインフラストラクチャコンポーネントを活用し、複数のクラウド上で動作する「Backend as a Service」を提供します。これにより、開発者はSpring Bootなどのフレームワークを使用して、マイクロサービスを構築・デプロイできるようになります。本プラットフォームは、マイクロサービス基盤の構築、テスト、運用に関わる作業を大幅に簡素化します。また、「AI Sandbox(開発者向けプレビュー版)」が組み込まれており、Oracle Database 23aiを活用したRAGやエージェント技術による素早い検証・試行も可能です。AI Sandboxは、Spring AI Microservice向けのコード自動生成にも対応しており、生成したコードはOracle Backend for Microservices and AI上で管理・デプロイできます。Oracle Backend for Microservices and AIは、コマンドライン・インターフェース、Visual Studio Code(VS Code)用プラグイン、IntelliJ用プラグイン、サービス・ディスカバリー、イベント管理などの機能も備えています。

結果として、Spring Bootはビジネスにとって最適なオープンソースの選択肢となっています。Spring Framework単体を使う場合と比べて、開発チームが複雑な業務アプリケーションをはるかに短期間で開発できるようになります。Spring Bootが必要な機能や外部ライブラリを自動的に導入し、適切に設定してくれるので、開発者は複雑な技術作業に時間を取られることなく、本来注力すべきビジネス課題の解決に集中できます。

AIモデルは、不正のリアルタイム検知や、医療分野での新たなインサイトの発見、カスタマーレビューやSNSの感情分析など、さまざまな場面で活用されています。これらに共通するのは、「データを賢く活用した開発」であるという点です。このeBookでは、実際のAIユースケースを11事例ご紹介しています。

Spring Bootに関するよくある質問

Spring Bootとは何で、どういった用途で使われますか?

Spring Bootは、Java開発者がSpring Frameworkの強力な4層アーキテクチャを活用しながら、より簡単にアプリケーションを構築できるようにするアプリケーションフレームワークです。開発生産性の向上、リリースまでの時間短縮、自動設定機能によるエラー発生リスクの低減、といった多くのメリットがあります。

Spring Bootはバックエンド用のフレームワークですか?

Spring Bootはエンタープライズ向けJavaアプリケーションを構築するためのフレームワークです。クラウド環境やオンプレミスの両方に対応し、Webアプリケーション、マイクロサービス、クライアント/サーバー型などさまざまなソフトウェア開発に使えます。Spring Bootは、フロントエンド(プレゼンテーションやビジネスロジック)からバックエンド(永続化処理の抽象化やデータベース連携)まで、幅広い機能をカバーしています。