マネーロンダリング対策にグラフ分析を活用

金融機関と規制当局が「ルールベースのシステム」の使用をやめるべき理由

金融機関は、合法的な金融システムを悪用してマネーロンダリングを行う悪質かつ国際的な犯罪ネットワークに対応しきれずに苦慮しています。ルールのみに従って動作する、従来のアンチマネーロンダリング(AML)システムは、すでに限界に達しており、ますます巧妙化する国際的なマネーロンダリングネットワークと戦うには不十分です。

ルールのみに従うAMLシステムの仕組み

  • トランザクションデータにAMLルールを適用
  • 不審な行動を検知
  • 不審な点について、人間の調査員に警告

ルールのみに従うAMLシステムの限界

  • 犯罪行為の防止に役立つ可能性のある、他の種類のデータを考慮できない
  • 関係者間のつながりを把握できない
  • より大きなパターンや傾向を認識できない
  • 柔軟性がなく、状況に応じて手口を変える犯罪者に対応できない
  • 金融機関内に蓄積された膨大なデータを活用できない

最も見つかりにくい隠れ場所は、誰の目にも触れる場所です。そしてマネーロンダリング実行者は、それを巧みに活用します。彼らは、広範なネットワークや関係性を包括的に把握しない限り見抜くことが難しい手口を駆使します。ルールのみに従うAMLシステムでは、これに対応できません。」

グラフ分析を活用して、マネーロンダリング実行者の手口を封じる

金融機関は、マネーロンダリング実行者のフィールドで戦い、ルールのみに従うAMLシステムの限界を超える必要があります。グラフ分析を活用すれば、従来の仕組みでは見落とされていた複雑なマネーロンダリングのネットワークを可視化することができます。現在、銀行はこれまで以上に高度な犯罪に対する防御を強化し、組織・評判・顧客を守るための新たなアプローチを取ることができる時代に入ろうとしています。

グラフ分析とは、データを「点(ノード)」として配置し、それらの関係性を「線(エッジ)」で結んで可視化・分析する数学的手法です。どれほど複雑で遠い関係性であっても把握できるため、これまで発見できなかったパターンやつながりを明らかにすることができます。

多くの業界がこの技術を利用して、これまで発見できなかった洞察を得たり、AMLルールを遵守したりしています。とくに最高コンプライアンス責任者にとっては、マネーロンダリング実行者による巧妙なネットワークに対抗する有効な手段となり、コンプライアンス体制の強化にもつながります。

マネーロンダリングとの戦いは転換点を迎えています。変化し続ける規制やビジネス環境の中で、効果的なAML対策の実施はますます困難になっています。ルールベースの検出と、手作業の調査プロセスに頼り続けてきた金融業界は、いま急速にグラフ分析技術の導入を進めています。顧客や関係者、関連口座や支払い、その他のデータを視覚的に結びつけることで、グラフ分析はより包括的な顧客プロファイルを提供し、見えにくいリスクを明らかにし、金融犯罪の検出と調査を最適化します。これにより、従業員への負担を軽減しながらカスタマー・エクスペリエンスも向上させることが可能になります。」

—Aite-Novarica Group

Oracle Financial Crime and Compliance Management Cloud Serviceのグラフ分析

Oracle Financial Crime and Compliance Managementは、Oracle Labsの研究に基づき、2018年にグラフ分析を導入しました。データの取り扱いやクエリ処理、可視化におけるオラクルの卓越した専門性を活かしたこの技術は、金融機関がAMLルールを遵守できるよう強力に支援します。

内部データ、外部データ、ネガティブなニュースデータを統合したグラフの例

1. 中核にあるのはデータ

  • オラクルの金融犯罪・コンプライアンス管理におけるグラフ分析ツールは、Oracle Financial Services Data Foundationによって支えられています。このソリューションには、業界で最も包括的な金融犯罪対策向けデータモデルが組み込まれており、20年以上にわたる改良と実績を通じて洗練されてきました。
  • オラクルの統合型Financial Crime Graph Modelは、Financial Services Data Foundationと連携して機能し、データを統合・インデックス化することで、グラフ分析による可視化を可能にします。Financial Crime Graph Modelは柔軟性に優れており、あらかじめ定義されたスキーマに依存しないため、データが限られている場合でも有効に活用できます。
  • ユーザーは、Oracle Databaseなどのマルチモデル構成を活用することで、データの問い合わせや管理方法を柔軟に選択できます。
  • Financial Crime Graph Modelは、データレイク、リレーショナルデータベース、単発のデータセット、外部のデータフィードなどから情報を取得します。このツールは、顧客とその関係性をより包括的に把握できるよう支援し、すべてのデータソース間のつながりをモデリングすることを可能にします。
  • オラクルの定量化された統合機能は、オープンソースインテリジェンスや外部データソースに基づいて、オンデマンドかつリスク評価済みの情報を提供します。
  • パナマ文書の公開で知られる国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)からのデータも、グラフに統合されています。この情報により、潜在的な不正関与者を即座に特定し、対応することが可能になります。

2. 優れたクエリ言語

  • グラフクエリ言語は使いやすく、理解しやすくなっています。データ間の関係が複雑であっても、間接的であっても、遠く離れていても、パターンを簡潔に表現できるロジックが適用されます。
  • オラクル独自の、SQLに似た言語であるProperty Graph Query Language(PGQL)は、オープンソースプロジェクトとして開発されており、クエリを簡潔に表現することで、そのコーディングと処理をより容易かつ高速にしています。
  • PGQLによるクエリは、SQLで実行される同様のクエリよりも1~2桁高速に動作します。

グラフを使えば、データをより直感的な方法で管理できます。例えるなら、人がホワイトボード上で考えを整理するやり方に似ています。弊社のシステムは、並列処理や、最新のサーバーが備える大容量メモリを活用しています。これにより、あらゆるデータ間の関係性を直接的にモデリングできるのです。」

Hassan Chafi Oracle Labs、研究・先端開発担当バイスプレジデント

3. 高速な処理

  • オラクルは、スケーラブルなインメモリグラフ分析エンジン「Oracle Parallel Graph Analytics(Oracle PGX)」を使用しています。
  • Oracle PGXは、並列処理と潤沢なメモリを活用することで、非常に高速な応答を実現します。
  • ユーザーは、よく使われるクエリを実行するための組み込みアルゴリズムを利用できるだけでなく、ニーズに合わせてカスタムアルゴリズムや制約条件を作成することも可能です。
  • 独自のアルゴリズムを構築したいユーザーは、専用のAPIを活用して、柔軟にカスタマイズできます。

4. 強力なビジュアライゼーション

  • ユーザーはノードをクリックすることで、さまざまなデータポイント間の関係性を直感的にたどることができます。
  • グラフ分析のビジュアライゼーションは、オープンソースのデータサイエンスノートブックを基盤としており、「Oracle Financial Services Crime and Compliance Investigation Hub」モジュールを通じて、「Oracle Financial Services Enterprise Case Management」アプリケーション内に組み込まれています。
  • ビジュアライゼーションのリアルタイム更新により、リスクスコアの背景情報も把握しやすくなります。
  • つながりを視覚化することで、データサイエンティストはアルゴリズムをより容易に作成できるようになります。これは、グラフ分析を機械学習のエコシステムに組み込む際の精度向上にもつながる重要な要素です。

Oracle Financial Crime and Compliance Management

オラクルのアンチマネーロンダリング向けソフトウェアスイートが、金融機関の健全性を守り、コンプライアンス管理の有効性を向上させる方法について、詳しくご覧ください。