グリーンフィールド・アプローチによる保険会社の3大課題への取り組み方法

Oracle Financial Services、マスター・プリンシパル・ソリューション・アーキテクト、Paul Karam

保険業界では、保険会社がテクノロジー活用システム、デジタル・イネーブルメント、そして顧客中心主義の強化という新たな時代へ積極的に移行しているという共通認識があります。しかし、その過程で、各社はこれまで依拠していた従来のモデルやレガシー・システムの不十分さに直面せざるを得ません。では、レガシー・システムでは対応しきれない新製品やサービスにおける市場のギャップに対し、保険会社はどのように対処すべきでしょうか?その答えは、ゼロベースでデジタル・エコシステムを構築するグリーンフィールド・アプローチの採用です。これは、保険会社が変化する規制や市場の需要に迅速に適応し、最新のクラウド・インフラストラクチャを最大限に活用して拡張し、APIのオープンな統合フレームワークと連携して最新のクラウド・サービスから恩恵を得て、さらにはアクチュアリーや製品担当者がそれぞれの引受ガイドラインに基づき新製品を迅速かつ効果的に展開することを可能にすることでイノベーションを推進します。

グリーンフィールド・アプローチは、レガシー・システムからの直接移行とは異なります。テクノロジーは、複雑なコードや制約、依存関係なしにゼロから開発されます。製品やサービスの市場投入速度が遅い高コストのレガシー・システムで運用する企業にとって、グリーンフィールドの取り組みは、インシュアテック/フィンテックの革新的なテクノロジーと連携するためのオープンな環境を創造できます。ほとんどの企業にとって、グリーンフィールド・アプローチを有効活用する戦略的な方法は、クラウドに最適化され、陳腐化したインフラストラクチャに縛られない新しいテクノロジー・プラットフォームをバックオフィスに導入することから開始することです。将来のポリシー管理システム(PAS)を選定する際に、グリーンフィールド特性を持つMinimum Viable Product(MVP)アプローチを採用することで、保険会社は大規模な移行プロジェクトのリスクを低減できます。グリーンフィールドPASの選定と導入が成功した後、組織の将来のニーズに合致した適切なターゲット・プラットフォームが選択されたことを確認すれば、短期的または長期的に移行を実施できます。最後に、組織や保険会社がミッションクリティカルなワークロードをクラウドへ移行する計画を開始するにつれて、グリーンフィールド・アプローチは、フロント・オフィスとバックオフィス向けのデジタルファースト戦略を通じてクラウドへの直接的なパスを提供します。

グリーンフィールド・アプローチが対処に寄与する保険会社にとっての主要3課題:

1. 市場投入までのスピードが課題

保険会社が競争を勝ち抜くには、マルチ・チャネルやモバイル強化サービスを通じて、カスタマー・エクスペリエンスを継続的に再定義する必要があります。また、製品やサービスを技術的に革新し、迅速に市場投入することも求められます。依存関係や制約の少ないアプローチであるグリーンフィールド・イニシアチブを採用することで、製品やサービスの変更や更新を、より容易に実装できるようになります。

2. デジタル・エクスペリエンスの課題

現在の競争力の高い環境においては、すべてのバック・オフィス・プロセスを単一のデジタル・フレームワークに統合することが不可欠です。つまり、複雑なコードや特定のスキルを持つスタッフに依存する従来の考え方やプロセスを排除する必要があります。デジタル対応のグリーンフィールド・アプローチにより、保険会社は顧客に対して、非接触型で付加価値の高いモバイル対応のサービスを提供し、競争力を高めることができます。

3. ITコストの課題

保険会社は、顧客に最適なソリューションを、可能な限り低コストで提供する方法を常に模索しています。しかし、レガシー・システムの運用やメンテナンスは、市場投入までのスピードを速めることができず、かえって高コスト体質を招いています。グリーンフィールド・アプローチでは、アジャイルな新しいコア・プラットフォームや、デジタル化、ストレート・スルー処理を導入することで、ITコストを削減できます。

デジタルファースト戦略のためのグリーンフィールド・アプローチの採用

グリーンフィールド・アプローチの最大のメリットは、既存のインフラストラクチャに依存することなく、システム、製品、サービスを構築できる点です。この柔軟性により、企業文化や思考様式の変革が進み、テクノロジー対応の新たなプラットフォームを通じたイノベーションが加速します。さらに、クラウドベースのシステムを活用することで、取引量の増加に応じてビジネスを拡張できます。一方で、グリーンフィールド導入にあたっては、企業の準備状況に関する重要な検討事項も存在します。

グリーンフィールド・アプローチへの移行には、ステークホルダーの全面的な合意と、企業文化の変革が不可欠です。以下の観点を事前に慎重に評価する必要があります。

このような検討は重要ですが、グリーンフィールド・アプローチが、保険会社に対し、レガシーからクラウドへの移行を直接支援し、イノベーションの可能性を大きく広げるものであることは間違いありません。

  • ただし、このアプローチの導入には、十分な評価と実地テストが求められます。組織で、学習曲線の急な新しいポリシー管理システム(PAS)を導入するための「学習する姿勢」を備えていますか?
  • デジタル・ファースト戦略を実行するには、テクノロジー面と企業文化の双方に変化が求められます。教育や指導を進めるために、必要なツールを備えていますか?
  • 保険業界は本来、リスク回避的です。組織は、サイバー・セキュリティへの投資に前向きな体制を整えていますか?

オラクルは、通信事業者が主要ビジネス機能の価値について共通理解を形成し、ベスト・プラクティスに基づいたベンチマークを行い、PASプラットフォームによるグリーンフィールド展開への投資価値を示すことを支援します。さらに、当社のチームは、ITリーダーおよびビジネス・リーダーが変革の正当性を策定し、レガシー・システムがもたらす課題を抱える保険会社に応じて、主要な実現要因と関連するビジネス・インパクトを特定できるよう支援します。