7ステップでAIエージェントを作成する方法

Aaron Ricadela | シニア・ライター | 2025年3月20日

企業では、生成AIを日常的なビジネスプロセスに組み込むことにより、より多くの価値を引き出そうとしています。企業は、さまざまなアプリケーションにAIエージェントと呼ばれるプログラムを導入し始めています。このシステムは、文章や音声による会話を行い、事前にあらゆる状況への対処方法をプログラムしなくても、データベースにクエリしてマルチステップのタスクを実行するように設計されています。

エージェント型の人工知能アプリケーションは、コンピュータ・ユーザーやそのカレンダーとのやりとり、ローカル・システムやクラウド・システム内の情報の活用、検索エンジンやその他のWebサイトを使用して質問に回答したりアクションを実行することによって、必要な情報を収集するために段階的に動作させることができます。予測能力と、自然言語で人間のユーザーとやりとりする能力は、元となるAIの大規模言語モデル(LLM)に依拠しています。

生産性向上アプリケーション、顧客管理アプリケーション、バックオフィス・アプリケーションを提供する企業では、AIエージェントのカスタマイズ、指示、アクティブ化、独自のアプリケーションの作成を行うためのデザイン・スタジオを顧客に提供し始めています。ここでは、エージェントを構築する7つのステップや、現場でAIエージェントを業務に導入する方法に関する一連の有用なガイドラインをご紹介します。

AIエージェントとは

AIエージェント・ソフトウェアは、膨大なデータで訓練されたLLMを活用して、概念間の類似性を見つけ出し、相関付けを行います。これにより、コンピュータ・ユーザーが意図する意味について、対話型の言語で関連性の高い予測を行うことができます。エージェントは、ユーザーと言語モデルの間の仲介役として設計されており、さまざまな領域で問題に対処するために、積極的な働きかけを行います。

財務予測の支援、人事採用プロセスの複数のステップのナビゲーション、営業担当者に対し顧客アカウント情報の要約やアップセル(営業)機会の特定など、組織による反復的なプロセスの自動化を支援できます。

7ステップでAIエージェントを作成する方法

AIエージェントは、ユーザーの組織での役割を理解し、ワークフローが適切であり続けるようにビジネス文書からデータを引き出し、事前にコード化された指示ではなく自然言語による指示に応答することを目的としています。状況の変化に対応できる柔軟性を持つためには、組織は事前に準備する必要があります。

1.エージェントの構築方法を選択します。企業は、ソフトウェア・ベンダーが提供する事前構築済みのエージェントをカスタマイズしてプロセスを自動化するか、ゼロから独自のエージェントを構築するかを事前に決定する必要があります。業界におけるAIエージェントのテストと導入は初期段階にあるため、ほとんどの企業では価値を実現するために、事前構築済みのエージェントをカスタマイズする可能性が高いです。意思決定を行う際には、組織は次の事項を考慮する必要があります。

  • AI人材: カスタム・エージェントの設計には、必要なプログラミングやシステム統合を行うAI開発者、データ・サイエンティスト、ユーザー・インターフェースの専門家が必要となります。一方、アプリケーション管理者は、デザイン・スタジオ環境で既製のエージェントをカスタマイズできます。
  • モデル・トレーニングの専門知識: ほとんどの企業は、ゼロからAIエージェントを開発する際に必要となるLLMを選択できるだけの知識や経験に乏しく、また、ゼロから構築したモデルが時間の経過とともに不正確にならないように微調整するためのナレッジを自社で持っていない可能性があります。
  • コスト: ゼロから構築するには、開発への初期投資の増加に加えて、LLMへのAPIコールの料金が必要になります。オラクルなどのベンダーが提供する事前構築済みのAIエージェントをカスタマイズしても、既に企業が支払っているSaaSアプリケーションのサブスクリプション料金を超えるコストは発生しません。
  • 高品質データ: エージェントがAIを使用できるようにするには、ビジネス・データを事前に準備する必要があります。そのためには、データをベクトル埋込みに変換することが必要になることが多くなります。ベクトル埋込みは、概念間の関係を数学的に示すもので、ユーザーが質問する際に意図を推測するのに役立ちます。また、ゼロからエージェントを構築する組織は、「過剰適合」にも注意する必要があります。過剰適合とは、LLMが訓練されたデータに厳密に従いすぎることにより、新しい知識分野に一般化できなくなることです。
  • ガバナンスと監督: 企業は、業務を文書化し、IT以外の事業部門のマネージャにも透明性を確保できるエージェントが必要な場合があります。IT部門は、エージェントが公開または特定の従業員への開示が想定されていない機密データにアクセスできないようにすることも検討する必要があります。

2.LLMを選択する際、既成概念にとらわれないこと。デザイン・スタジオで顧客がエージェントを改良できるようにしているSaaSアプリケーションのベンダーは、自社のソフトウェアがどのLLMとやりとりするかをあらかじめ選択するか、管理者に選択肢を限定して提示する可能性があります。ゼロから構築する場合は、Anthropic、Cohere、Google、IBM、Meta(一般的なLlamaモデルの開発者)、Microsoft、Mistral、OpenAIなどのLLMから選択する必要があります。このアプローチにより、エージェント・ソフトウェア・スタックのすべてのレイヤーを、その元となるモデルも含めて、企業が管理できるようになります。同時に、市販のエージェントをカスタマイズする場合と比較して、より多くのソフトウェア・コンポーネントを維持する責任が生じます。

3.ワークフローを設計し、ツールを定義します。事前構築済みのエージェントをカスタマイズすることも、一般のビジネス・ユーザーではなく、アプリケーション管理者の業務です。管理者は、事前設計済みのワークフロー・テンプレート(コード付きのユースケースをカタログ・ビューで表示)から始めることも、カスタマイズされた新規のワークフローを作成することもできます。事前構築済みのエージェントのワークフローを定義するために、管理者はエージェント・デザイン・スタジオのフィールドに特定の自然言語による指示を入力するか、リストからアクションを選択して、エージェントがユーザーとやりとりする方法、データの表示方法、または予約のスケジュール設定方法を指定します。管理者は、エージェントが質問に回答する際に使用するツールを選択したり、従業員が質問する可能性のある質問のサンプルを用意したりすることもできます。

このプロセスは、エージェントが行う必要がある業務内容や、どの情報にアクセスする必要があるのかなど、エージェントの役割を定義するのに役立ちます。たとえば、従業員に医療についての福利厚生を説明する人事アプリケーションのエージェントは、医療、眼科、歯科、その他の医療保険に関する書類へのアクセスが必要となります。一方、財務の福利厚生エージェントは、雇用主が提供する退職金や株式プランに関する情報を参照する必要がある場合があります(これについては以下で詳しく説明します)。

4.検索拡張生成(RAG)ドキュメントをアップロードします。エージェントに指示とツールが与えられたので、管理者はドキュメント・アップローダーを使用して、検索拡張生成(RAG)用のビジネス文書を準備します。RAGは、実行時にLLMへビジネス文書やデータを提供し、トレーニング中にモデルが学習した内容を拡張するAIテクノロジーです。管理者は、エージェントが文書をどのように使用する必要があるかについて、自然言語による指示を提供します。効果的なエージェント構築ソフトウェアによって、ベクトル・データベースを抽象化し、コンピュータ・ユーザーが検索する内容に基づいて、実行時に非常に関連性の高い結果を出力します。

5.「作成する」をクリックします。管理者は、指示、トピック、ドキュメントを基盤としてデザイン・スタジオに名前を付け、UIボタンをクリックするだけでエージェントを作成できます。自然言語による指示により、ワークフロー(または他のエージェント)はその機能を理解できます。AIエージェントは、実行中に、強化学習と呼ばれる数学的な試行と報酬プロセスを通じて、パフォーマンスを向上させる方法を学習するように設計されています。

デザイン・スタジオなしでゼロから構築する企業は、財務、人事、顧客管理、その他のアプリケーションに加え、ユーザーのデータベースや文書との統合も必要になる場合があります。AIエージェント・フレームワークは、ソフトウェア・アーキテクチャ、通信プロトコル、クラウドおよびローカルデータソースへのコネクタ、監視ツールを提供することにより、企業が新しいエージェントを構築する際に、ゼロからコードを記述する代わりとなる方法を提供します。一般的なオープンソース・フレームワークには、LangChain、LlamaIndex、Microsoft ResearchのAutoGenなどがあります。

エージェント・スタジオ環境には、管理者が直接アクセスする必要のないフレームワークが含まれている場合もあります。

6.境界を設定します。このタイミングで、エージェントが正確性を維持し、アクションを実行する前に承認を求めるタイミングを特定できるように、ガードレールを設置します。エージェントを設定する管理者は、電子メールの送信やレコードの更新などの前にスタッフの承認を得る要件を追加できます。

管理者は、質問に回答できる条件を設定することもできます。また、元となるLLMが回答を創作する(生成型AIの欠点であるハルシネーション/幻覚)のではなく、企業ITシステムから情報を引き出すか、ユーザーに説明を求めるよう指示を追加できます。たとえば、管理者は次のように入力できます。「ユーザーに質問するか、システムを問い合わせて、扶養家族の数に関する情報があることを確認してください。回答がわからない場合は、適当に答えないようにしてください。」

また、エージェントは、実行中のクラウド・サービスからコンテンツの適正化機能を継承するように設計できます。

7.テスト、導入、およびモニターします。管理者は、スタジオのテスト・エリアでサンプルのやりとりを実行し、エージェントの回答が適切で役立つものかどうかを判断して、エージェントが引用しているソースを確認できます。また、組織がエージェントの指示やその基盤となるLLMを変更した場合、ユーザー・インタラクションがどのように変化するかを確認できます。その後、管理者がデザイン・スタジオから直接エージェントを展開できます。

エージェントは、RAGデータとユーザーへの指示のどの組み合わせが最も有用な結果をもたらしたかを測定することにより、時間の経過とともにパフォーマンスを向上させることができます。ビジネス管理者は、エージェントのパフォーマンスを評価し、フィードバックをユーザーとの今後のやりとりに反映できます。

コンテキスト認識AIエージェントが、業務アプリケーションでマルチステップ・ジョブをどのように達成できるかをご覧ください。

Oracle Applicationsのエージェントをカスタマイズするには、Oracle Fusion Applications向けのOracle AI Agent Studioを使用します

Oracle AI Agent Studioを使用すると、IT管理者はOracle Fusion Cloud ApplicationsでAIエージェントを設定し、有給休暇残日数の確認、顧客の購入履歴の取得、製品返品処理、修理費用の見積もりを目的とした製造設備の画像の分析など、さまざまなタスクでユーザーを支援できます。

Fusionの管理者は、事前に作成されたテンプレートから開始します。このテンプレートは、ワークスペースにタイルとして表示され、開始に必要なコードが含まれています。次に、エージェント設計者は、導入するエージェントに対して、機能の範囲と制限、情報を検索するために必要なドキュメントやその他のデータソースを指示します。ゼロから新しいエージェントを作成することもできます。AIエージェントの利用にあたって、追加費用はかかりません。Fusionサブスクリプション料金に含まれています。

AIエージェントについてのよくある質問の作成方法

AIエージェントの仕組み

AIエージェントは、業務アプリケーションや個人用の生産性ソフトウェアに組み込まれた仮想アシスタントで、コンピュータ・ユーザーの質問への対応や、タスクの完了を支援します。事前に設定されたルールやワークフローに依存していた従来のソフトウェア・アシスタントとは異なり、AIエージェントは自然言語による指示や文脈を理解するように設計されており、新しい状況にも適応します。

AIエージェントは未来の形なのか?

AIエージェントは、人間の介入への依存度が低くなり、より多くのビジネス・ユーザーや消費者とのやりとりから時間をかけて学習することにより、さまざまなビジネス・アプリケーションに導入され、今後はさらに有用なものになると予想されます。

Oracle AI Agent Studio for Fusion Cloud Applicationsを使用すると、Fusion Applications内の事前構築済みのAIエージェントを変更したり、新しいAIエージェントをすばやく作成したりすることができます。