マルチクラウドがエンタープライズ・テクノロジーの新たな現実に

主流となるマルチクラウド活用
2023年のS&P Global Marketing Intelligence調査結果

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マルチクラウドに関する2回目の年次調査

S&P Global Market Intelligence傘下の451 Researchに依頼し、北米、欧州、アジア太平洋、中東、中南米でマルチクラウドに関する調査を実施しました。この調査は、2022年第3四半期に、エンタープライズ企業の1,500名の回答者を対象に業界横断的に実施されました。なお、「エンタープライズ企業」とは、北米で1,000人以上またはその他の地域で500人以上の正社員を有する組織と定義します。

その結果、調査対象となった企業の98%がマルチクラウドをすでに導入しているか、導入計画があり、マルチクラウドが当たり前の世界になっていることがわかりました。COVID-19パンデミックにより、クラウド・インフラストラクチャとマルチクラウドの導入が加速し、企業とベンダーは、シームレスな統合マルチクラウド・エクスペリエンスにより、ビジネスの成長とイノベーションを実現するという次のレベルへの進出に新たな関心を示しています。

オラクルは、マルチクラウド戦略を採用することが重要かつ有益であると考えています。そのため、オラクルでは、技術およびビジネスのエキスパートが、お客様固有のニーズに合わせたマルチクラウド戦略の策定をサポートする体制を整えています。無料のマルチクラウドの評価についてはお問い合わせください。

調査結果の重要な点

98%

の企業がマルチクラウドを導入済みまたは導入する予定です。

96%

の企業が複数のSaaSプロバイダーを使用中または使用する予定です。

コスト

は、調査対象となったすべての企業でマルチクラウドを導入する最大の理由となっています。マルチクラウドはコストの最適化を保証します。

83%

の企業がマルチクラウド相互接続を導入済みまたは導入する予定です。

97%

の企業がクラウド管理プラットフォームを使用中または使用する予定です。

Top 5

マルチクラウドを導入する目的Top5は、データバックアップ、ワークロード/データモビリティ、コスト最適化、リスク軽減、グローバルなサービス提供です。

エンタープライズ企業のマルチクラウドを導入状況

調査対象のほぼすべてのエンタープライズ企業が、複数のプロバイダーから提供されるパブリック・クラウド(IaaSやPaaS)またはクラウド・アプリケーション(SaaS)、あるいはその両方を利用して、マルチクラウドを実現しています。

COVID-19のパンデミックは、ビジネスモデルやプロセスの急速なデジタル化に必要な柔軟性と拡張性を提供するクラウド・インフラストラクチャとサービスの採用を加速させました。時代は、すでにマルチクラウドに突入しています。

質問:御社のIT環境では、IaaS/PaaSのパブリック・クラウド・プロバイダー(AWS、Azure、Google Cloud Platform [GCP]など)をいくつ利用していますか、または利用する予定ですか。

98%の企業がマルチクラウドを利用中、または利用予定:1社のクラウド・プロバイダーを利用する企業は2%、2~3社のクラウド・プロバイダーを利用する企業は67%、4~10社のクラウド・プロバイダーを利用する企業は28%、10社以上を利用する企業は3%
マルチクラウド導入の最も重要な動機は、データ・レジデンシー、コスト、ビジネス成長です。データ主権/データ/ローカリティが41%、コストの最適化が40%、ビジネスの俊敏性とイノベーションが30%を占めています

戦略的思考

企業によっては、価格設定の変更や総所有コスト、ベンダーのロックイン、規制コンプライアンス、ビジネス継続性の中断を防ぐための防御戦略としてマルチクラウドを導入しています。

社内の関係者がビジネスの俊敏性とイノベーションを促進するクラウドを選択し、クラウド・プロバイダー間で最高クラスのサービスを実現し、現在のベンダーが提供するインセンティブや機能を活用できるようにする、攻めの戦略としてマルチクラウドを導入する企業が増えています。

世界中のさまざまな業種の企業に対して行った調査では、すべての企業がマルチクラウドからメリットを得ており、そうしたメリットとしてはデータ・レジデンシーとコストの最適化が最も多く、次いでビジネスの俊敏性と革新性が挙げられています。

質問: 御社が複数のパブリック・クラウドを利用する最も大きな動機は何ですか。

課題のトップ3

ITの不均一性は今に始まったことではありません。マルチクラウドは、オンプレミスの企業IT環境をクラウドに置き換えた鏡のようなものであり、その課題もまた同様です。マルチクラウド環境には、さまざまな機能やコンピテンシーが求められます。調査対象の全企業において、複数のパブリック・クラウドを使用する際の最も大きな課題は、クラウド・プロバイダーの管理とネットワーキング/相互接続性の2つで、それに次ぐのがデータ・ガバナンスです。

質問:御社が複数のパブリック・クラウドを利用するにおいて直面している、または直面すると思われる最も大きな課題は何ですか。

複数のパブリック・クラウドを使用していて直面する最も重要な課題

34%

クラウド・プロバイダーの管理

30%

ネットワーキング/相互接続性

24%

データ・ガバナンスの問題

マルチクラウドのトップ6ユースケース

「コストの最適化」は当然ながら、現在のユース・ケースのトップで、それに次ぐのが「ワークロード/データのモビリティ」と「リスクの軽減」です。今後を見通すと、データの冗長性/バックアップがトップに躍り出ます。企業がより良く、迅速かつ低コストで業務を遂行する方法を求める中で、最終的には、他のIT関連の意思決定と同様に、マルチクラウドもビジネス、規制、ワークロード固有のさまざまなニーズにより推進されます。

質問: 現在、御社で最も重要なマルチクラウドのユースケースは何ですか。

質問: 御社では今後どのマルチクラウドのユースケースが重要となると思いますか。


マルチクラウドの主要なユースケース:現在と今後:データの冗長性/バックアップ=現在の主要ユースケースとして(以降、現在)14%、今後のユースケースとして(以降、今後)54%、ワークロード/データのモビリティ=現在19%、今後49%、パブリック・クラウド間でのコスト最適化=現在23%、今後42%、IT環境全体のリスク軽減=現在16%、将来40%、地域拡大/グローバルサービス提供=現在13%、今後38%、開発者優先の支援=現在15%、今後31%

業界特有のユースケースでは、セカンダリ・クラウドはそれほど「セカンダリ」ではない

この調査の業種別データから、組織のプライマリおよびセカンダリクラウド・プロバイダーの利用方法に違いがあることが明らかになりました。例えば、金融サービス企業の82%はプライマリ・クラウドで、セカンダリ・クラウドの2.7倍ものデータ分析を行なっています。一方、電気通信事業者の49%は、プライマリ・クラウドに比べ2.1倍ものミッション・クリティカルな顧客向け機能をセカンダリ・クラウドでホストしています。

質問: 現在、プライマリーIaaS/PaaSパブリック・クラウド・プロバイダーで、どのような種類のワークロードをホストしていますか。

質問: 現在、セカンダリー(およびその他の)IaaS/PaaSパブリック・クラウド・プロバイダーで、どのような種類のワークロードをホストしていますか。

金融サービス:顧客対応機能-30%がプライマリ・クラウド、28%がセカンダリ・クラウド、ERP-42%がプライマリ・クラウド、52%がセカンダリ・クラウド、データ処理、分析、ビジネス・インテリジェンス-82%がプライマリ・クラウド、30%がセカンダリ・クラウド電気通信:顧客対応機能-23%がプライマリ・クラウド、49%がセカンダリ・クラウド、ERP-36%がプライマリ・クラウド、55%がセカンダリ・クラウド、データ処理、分析、ビジネス・インテリジェンス-57%がプライマリ・クラウド、23%がセカンダリ・クラウド

国によって大きく異なるマルチクラウド推進要因

レポートでは、データ・レジデンシー(40.6%)がコスト削減(40.5%)を上回り、マルチクラウドの最大の推進要因となっていますが、企業がマルチクラウドを推進する最も重要な要因は国によって異なります。

  • 米国とドイツの調査対象組織では、データ・レジデンシーが主要な推進要因として挙げられていました。
  • 英国、日本、サウジアラビアでは、コスト削減が最も重要な要因でした。
  • シンガポールでは、データ・レジデンシーが最も重要な推進要因としてコスト削減と並びました。
  • ブラジルでは、ビジネスにおける敏捷性と革新性とならび回復力/パフォーマンスが最も重要であるとされています。

質問:御社において複数のパブリック・クラウドの導入を推進する最大の要因についてお聞かせください。


マルチクラウドを導入する動機は国ごとに異なります。米国:データ主権/データ・ローカリティ=42%、コスト最適化=38%、ビジネスの俊敏性とイノベーション=30%、回復力/パフォーマンス=20%、ドイツ:データ主権/データ・ローカリティ=53%、コスト最適化=39%、ビジネスの俊敏性とイノベーション=27%、回復力/パフォーマンス=23%、英国:データ主権/データ・ローカリティ=31%、コスト最適化=44%、ビジネスの俊敏性とイノベーション=28%、回復力/パフォーマンス=25%、日本:データ主権/データ・ローカリティ=33%、コスト最適化=44%、ビジネスの俊敏性とイノベーション=28%、回復力/パフォーマンス=21%、サウジアラビア:データ主権/データ・ローカリティ=31%、コスト最適化=48%、ビジネスの俊敏性とイノベーション

リーダーの見解について

クラウド・プロバイダーを選択する際、組織内のさまざまなレベルのリーダーは、それぞれに異なる要素を評価します。調査によると、経営幹部層は技術サポート/専門性、地理的なフットプリント、セキュリティ/ガバナンス能力を最も重視し、シニア・マネージャー層は企業ブランド/評判、サービス・パフォーマンスを優先していることがわかります。

質問:プライマリ・クラウド・プロバイダーの選択を決定した要因についてお聞かせください。


クラウド導入の主な決定要素は、職階によって異なります。経営幹部/社長-28%がテクニカル・サポート/専門知識、26%が地理的フットプリント、26%がセキュリティ/ガバナンス機能、24%がデータ処理/データ分析ニーズへの対応、23%が会社のブランド/評判、23%がサービス・パフォーマンス、シニアまたはエグゼクティブ・プレジデント-26%がテクニカル・サポート/専門知識、21%が地理的フットプリント、24%がセキュリティ/ガバナンス機能、26%がデータ処理/データ分析ニーズへの対応、27%が会社のブランド/評判、20%がサービス・パフォーマンス、バイス・プレジデント-22%が技術サポート/専門知識、18%が地理的フットプリント、27%がセキュリティ/ガバナンス機能、23%がデータ処理/データ分析ニーズへの対応、26%が会社のブランド/評判、23%がサービス・パフォーマンス、シニア・ディレクタ-28%がテクニカル・サポート/専門知識、19%が地理的フットプリント、24%がセキュリティ/ガバナンス機能、20%がデータ処理/データ分析ニーズへの対応、26%が会社のブランド/評判、27%がサービス・パフォーマンス、ディレクタ-25%がテクニカル・サポート/専門知識、16%が地理的フットプリント、20%がセキュリティ/ガバナンス機能、22%がデータ処理/データ分析ニーズへの対応、27%が会社のブランド/評判、26%がサービス・パフォーマンス、シニア・マネージャ-25%がテクニカル・サポート/専門知識、15%が地理的フットプリント、23%がセキュリティ/ガバナンス機能、23%がデータ処理/データ分析ニーズへの対応、32%が会社のブランド/評判、29%がサービス・パフォーマンス、29%のサービス・パフォーマンス
97%の組織がマルチクラウド管理プラットフォームを使用または使用する予定:56%が現在使用中、19%が今後12ヶ月で、22%が今後13~24ヶ月で使用予定、3%が使用を検討中
複数のクラウドの管理は困難

複数のクラウド・プロバイダーのプラットフォームでワークロードとデータを管理することは、調査対象の企業にとってマルチクラウドの最大の課題として挙げられました。この問題は、クラウドプラット・フォームの専門知識の不足と効率的なツールの欠如に起因しています。企業のIT部門の負担を軽減するために、クラウド・プロバイダーは、クラウド間の観測と管理を簡素化する必要があります。

質問:御社のIT環境では、IaaS/PaaSのパブリック・クラウドの管理プラットフォームを利用していますか、または利用する予定ですか。

83%の組織がマルチクラウド相互接続を使用、または使用する予定:40%が現在使用中、18%が今後12ヶ月間で使用する予定、25%が今後13~24ヶ月間で使用する予定、16%が検討中だが現在の予定はない、1%が未使用かつ計画なし
複数のクラウドの接続も困難

マルチクラウドの課題としてクロス・クラウド・ネットワークの相互接続性が上位に挙げられていることから、複数の領域にまたがる効率的な運用のためのスキル向上が必要な場合が多いことがわかります。クラウド・プロバイダーは、負担を軽減するためにネットワークの相互接続をあらかじめ設定する必要があります。

質問:先の質問で、IT環境に複数のIaaS・PaaSパブリック・クラウド・プロバイダーを導入しているとおっしゃいましたが、その理由を教えてください。御社におけるクラウドの相互接続(異なるパブリック・クラウド間でデータや情報をルーティングするためのリンク)の使用についてご説明ください。

マルチクラウドのベスト・プラクティス

企業がマルチクラウドで直面する課題の多くは、ベスト・プラクティス、またはその欠如に起因します。こうした問題の多くは重複しており、データ・ガバナンス、データ・サイロ、規制遵守、コスト管理が関係しています。このような課題の相対的な重要度はセクターによって異なりますが、すべての企業では、全員が同じ見解を持つようにするために、ある程度の組織的な調整が必要です。

デジタル・ビジネスの変革を成功させるためには、テクノロジー、プロセス、そして人々の間の連携が必要です。IT運用担当者、開発者、ビジネス部門の関係者が連携し、ビジネス成果を最適化する分散ワークロードとデータをサポートするために必要な柔軟なインフラストラクチャを構築、運用、管理、統制します。マルチクラウド戦略を実行するには時間がかかりますが、その結果得られる選択の自由と運用の俊敏性には、その道のりを歩む価値があります。