SPARC M7のイノベーション

SPARC M7 Processor

Software in Siliconを活用した プロセッサ

John Soat著

 

SPARCテクノロジーの計画により際立つイノベーションの主導と高度なシリコンチップおよびエンジニアド・システムへのオラクルの取組み

IEEE/Sigarch

次世代SPARCがHot Chips 26で発表されました。

イノベーションはテクノロジー産業の原動力であり、テクノロジー・イノベーションはビジネスや政治、文化においても不可欠な要素となっています。こうしたイノベーションの重要性をオラクルは明確に認識していますが、それは理論上にとどまりません。実際に、まずソフトウェアの分野で、次にストレージやネットワーキング、ハードウェアの分野で、情報テクノロジーとその効果的な実装を向上させるべく、かなりの時間と労力、リソースをつぎ込んでいます。

米国カリフォルニア州クパチーノで開催されたHot Chipsカンファレンスで、このような取組みの注目すべき成果が明らかになりました。オラクルが次期SPARCプロセッサ「SPARC M7」のテクノロジーの詳細を発表したのです。この会場は発表にふさわしい場でした。というのも、この半導体業界における革新的テクノロジーの展示会は、マイクロプロセッサとマイクロコンピュータを扱うIEEEの技術委員会が主催し、ACMのSIGARCH(Special Interest Group on Computer Architecture)の協力を得て開催されるもので、今年26周年を迎えます。これはオラクルにとって1つの節目となる出来事です。M7の発表により、オラクルはSun Microsystemsの買収以来、4年間で6つの新しいSPARCプロセッサを世に出したことになります。このような積極的な開発ペースは、SPARCアーキテクチャに対するオラクルの取組みと、テクノロジー環境におけるSPARCアーキテクチャの意義を維持しようというオラクルの姿勢を裏づけるものです。

ソフトウェア・イン・シリコン

新しいSPARCプロセッサのイノベーションは、オラクルのエンジニアド・システムの中核をなす設計理念に即したものです。オラクルは、入念に調整された1つの統合システムにサーバー、ソフトウェア、ストレージが一体化され、そこで実行されるアプリケーションが最高のパフォーマンスを発揮することのできる、エンタープライズITアーキテクチャを目指しています。

こうした最適化戦略は新しいプロセッサにも反映されています。M7のもっとも重要なイノベーションは、ソフトウェア機能を直接プロセッサに組み込むソフトウェア・イン・シリコンという設計手法に関連したものです。特定の機能がハードウェアで実行されることで、ソフトウェア・アプリケーションの実行が大幅に高速化されます。また、プロセッサのコアが解放されて他の機能を実行できるようになるため、全体的な処理もスピードアップします。

SPARC M7の設計では、32基のCPUコアを搭載することでパフォーマンスを高速化しています。

たとえば、M7プロセッサのもっとも刺激的なイノベーションの1つに、インメモリクエリ高速化エンジンと呼ばれるものがあります。この設計固有のユニットは、特定のデータ検索機能をデータベースクエリから引き継ぎ、きわめて高速に処理します。この専用機能により、データベースクエリの実行が大幅に高速化されます。

こうしたクエリの高速化は「これまでに他ベンダーがおこなったのとは異なる方法で実現されています」と語るのは、オラクルのシステム製品管理/戦略担当シニア・バイス・プレジデント、David Lawler氏です。M7には最大8つのインメモリクエリ高速化エンジンが搭載されます。

注目すべきもう1つのM7のイノベーションとして、アプリケーション・データ整合性と呼ばれる機能があります。このソフトウェア・イン・シリコン機能は、アプリケーションが専用のメモリ領域にしかアクセスできないよう制限します。これにより、ソフトウェア・プログラマーはメモリ割当ての問題を特定できるようになるため、さまざまな点でメリットが得られます。

その結果、ソフトウェア開発が大幅にスピードアップし、製品品質も一段と向上することをオラクルは期待しています。また、本番稼動中常に保護されているメモリでアプリケーションが実行されるため、顧客もメリットを享受できると考えています。

さらに、この機能はセキュリティ機能の役割も果たします。「コードのある部分が別の部分からデータを読み込もうとすると、チップがそれを阻止します」オラクルのSPARCシステム製品管理担当ディレクター、Renato Ribeiro氏はこう語ります。

データ整合性機能はプロセッサに組み込まれているため、アプリケーションのパフォーマンスに影響を及ぼしません。「オーバーヘッドはほぼゼロです」とLawler氏は言います。

パフォーマンスの向上

100 GB/sec

新しいプロセッサに見られるもう1つのイノベーションは、超高速で圧縮データの解凍を実行する機能なります。これは、オラクルの画期的なインメモリ・データベース機能が関係する場合に特に重要となります。

使用されるデータをサーバーのメモリに直接ロードできれば、外部ストレージからデータを転送する際のレイテンシが解消され、データベース・パフォーマンスは向上します。ただし、大量のデータをサーバーのメモリに収めるためには圧縮しなければならず、それをデータベースクエリのたびに解凍するという処理が必要になります。この解凍に時間がかかり、プロセッサの貴重なリソースが占有されるというのは、典型的なボトルネックの一例です。

この制約に対処するため、オラクルのエンジニアは解凍高速化エンジンをM7プロセッサに搭載しました。このハードウェア組み込みユニットは、圧縮データの解凍をインメモリ・データベースの最高速度である100GB/秒で実行します。Lawler氏によれば、これは解凍用PCIカード16枚、あるいはCPUコア200基に相当します。

パフォーマンスに関連したM7の機能強化には、2台のコンピュータ間の通信にまつわるものもあります。メモリ共有のための超低レイテンシ・ファブリックと呼ばれるこのハードウェア相互接続は、レイテンシをマイクロ秒以下に抑えたメッセージングを実現します。これにより、「2台のマシン間でローカル接続同様のメモリ・アクセスが可能になります」とLawler氏は述べています。その結果、クラスタ内のコンピュータのパフォーマンスが向上します。

さらに、M7プロセッサは32コアの設計を採用しており、前身となる12コアのM6と比べて処理能力も向上しています。プロセス改善ほど大きなイノベーションではないものの、そこにはSPARCを業界でもっとも強力なプロセッサにしようとするオラクルの姿勢が現れています。

共同設計の優位性

SPARCアーキテクチャでは、プロセッサやオペレーティング・システム、ミドルウェア、データベース、アプリケーションから、Javaをはじめとするソフトウェア・ツールにいたるまで、コンピューティング・スタックのあらゆるレベルの設計作業を自社でおこなえるという点で、オラクルは他のエンタープライズ・ベンダーより優位に立っています。

SPARC M7プロセッサは、この共同設計のメリットを活かし、最初からオラクルのハードウェア・エンジニアとソフトウェア開発者の両者の意見を反映させる形で設計されました。画期的なソフトウェア・イン・シリコン戦略が実を結んだのは、このアプローチがあってこそです。「私たちはすべてのソフトウェアを検討したうえで、もっとも困難な点を見きわめ」、それをプロセッサに組み込んだのだ、とLawler氏は語ります。

SPARC M7は2015年中に一般提供が開始される予定です。オラクルは自社の取組みから業界全体がメリットを享受することを望んでいます。「こうした機能を利用したいと考えるソフトウェア・ベンダーがあれば、それらのベンダーにも提供していくつもりです」とRibeiro氏は述べています。


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