サプライ・チェーン全体の在庫精度を向上させる方法

オラクル産業戦略グループ、ディレクタ、John Klinke

ゲスト投稿者: RF-SMART(オラクルのパートナー)

在庫管理では、いくつかの重要な指標を使用してサプライ・チェーンの効率を判断する必要があります。製造業者、小売業者、大規模な多国籍企業、成長中のスタートアップ企業のいずれであっても、高い在庫精度を可能な限り迅速に達成することで最大の利益が得られます。結果として顧客満足度が向上し、最終的に収益を改善できます。

在庫精度が重要な理由

正確な在庫管理を行うことで、倉庫、製造現場、小売店などの場所に関係なく、信頼性の高い最新の在庫状況を把握できるようになります。しかし、この情報を事務スタッフや一部の従業員に提供するだけでは不十分です。シームレスなコネクテッド・サプライ・チェーンを実現するには、在庫を扱うすべての従業員が在庫状況をリアルタイムで把握できることが必要です。このような改革の影響は、以下のように急速に波及します。

  • 注文履行の迅速化 - スタッフが関連する製品を正確にピック、梱包、出荷するには、新規の注文を受理した瞬間から、タイムリーで信頼性の高いデータが必要になります。在庫精度のレベルは、これらのタスクの実行速度と、エラーの発生率を左右します。理想的なシナリオは、作業者が特定の製品の場所と数量を瞬時に判断できることです。在庫精度は最終的に、顧客が購入した製品をどの程度迅速に受け取るかを決める重要な要素となります。言うまでもなく、納入にかかる時間は企業が競争力を高めるうえで重要な要素であり、顧客満足度と顧客維持にも顕著な影響を与えます。
  • 倉庫の効率化 - 正確なデータを業務レベルで可視化すると、スタッフは日々の業務をより生産的かつ効率的に実行できるようになります。倉庫フロアによくある問題として、配置が間違っていたり、在庫切れや販売期間の終了によって販売できなくなったりしている商品を探して従業員が歩き回り、不要な時間を費やしていることが挙げられます。在庫精度を実現すれば、このような問題を軽減できます。
  • 信頼性の高い在庫棚卸 - 在庫精度と在庫棚卸の関係には多少の周期性があります。つまり、在庫棚卸を正確に行うと在庫精度が向上し、在庫精度が向上すると在庫棚卸を効率的に行えるようになります。この過程を円滑にするコツは、適切なテクノロジーとプロセスを導入することです。在庫棚卸を行うために倉庫の業務を中断したり、注文の履行を遅延させたりしている場合、その方法では効率が低下しています。モバイル・データ収集などのソリューションを導入すれば、業務を継続しながら、指定された多数のゾーンの在庫棚卸を一度に行えるようになります。さらに、在庫棚卸を定期的に行えば、1年に1回、倉庫を閉鎖して大掛かりな在庫棚卸を行う必要がなくなります。
  • コスト削減 - 従業員の生産性が向上し、より効率的(モバイル・データ収集の導入によって、日常業務の生産性が推定で最大35%向上)かつ正確に注文を履行できるようになれば、必然的にコストが削減されます。チームのミスが減少し、時間とコストを節約できます。

在庫精度の障壁

業務に組み込まれているルーチンや手法からの脱却には困難が伴うこともあります。一般的な例として、手動の紙ベースのプロセスの使用が挙げられます。今も倉庫で受領した商品を書面に記録し、そのデータをERPに手動で入力している企業は少なくありません。この方法では、2つの人的エラーが発生する可能性があります。1つは、商品の到着時に誤った品目情報を書き留めることで、もう1つはその後の行程でERPに不正確なデータを入力することです。

このような手法は、可視性の低下という全体にかかわる問題にもつながります。つまり、在庫データの記録と取得をリアルタイムで正確に行えない場合、サプライ・チェーン全体で問題が発生する可能性があります。

在庫精度を向上する方法

在庫精度を向上するには、まず既存のプロセスを理解する必要があります。業務のどこに非効率性があるかを特定することで、重要な要因に対処し、最適化するための戦略をたてることができます。

  1. まず、倉庫全体のプロセスで、それぞれの製品の現在のタッチポイントの数を確認します。目標は、その数をできるだけ少なくすることです。製品を処理する回数が多いほど、誤って配置されたり、ERPに誤って記録されたりする可能性が高まります。紙ベースのプロセスで在庫を追跡している場合、タッチポイントの減少に取り組むことは、人的エラーが発生するリスクを一時的に減らすのに有効です。
  2. もう1つの重要な手順は、品目名、品目番号、説明が表示されるすべての場所でこれらの一貫性を維持することです。たとえば、ピック・スリップに記載されている情報が製品や棚に付いているラベルと一致しない場合、作業者が確認に費やす時間が増えることになります。作業者が間違った品目をピックすると、返品や顧客満足度の低下の原因にもなります。
  3. 品目を一意に識別できる、より高度な方法の1つとして、バーコードの使用が挙げられます。製品(と各製品の保管場所)にバーコードを付けることで、倉庫のピッカーがピック・スリップに記載されている品目との関連づけを迅速かつ正確に行えるようになります。この方法を使えば、品目名と説明を確認する作業のようにあいまいさが生じることはありません。

モバイル在庫管理

次に行うのは、モバイル在庫管理ソリューションの実装です。この手順では、倉庫や製造現場にハンドヘルド・デバイスを導入します。このデバイスを使用することで、作業者がすべてのタッチポイントで在庫をスキャンできるようになります。モバイル在庫管理を導入すれば、受領から数量確認、ピッキング、出荷に至るまでのすべての段階で、リアルタイムのデータをERPに入力できます。従業員は品目の数量と場所を即座に確認できるため、注文品のピッキングと梱包が効率化されます。販売チームとサポート・チームは、正確な製品情報を顧客に迅速に提供できるため、顧客満足度が向上します。

モバイル在庫管理の最も重要な点は、エラーが発生しやすい紙ベースのプロセスを排除し、時間とコストを節約できることです。従業員は、在庫が倉庫に入庫したらすぐにハンドヘルド・デバイスを使用します。手動での数量確認やデータ入力を行う必要がなくなり、人的エラーが発生するリスクが大幅に軽減されます。また、モバイル・ソリューションは包括的なERPシステムよりはるかに直感的かつ簡単に操作できるため、倉庫や製造現場のスタッフはその使用方法をすぐに習得できます。従業員が複数のシステムの使用方法を習得する必要がなくなるため、トレーニングも迅速化されます。

クラウドの利点

モバイル在庫管理は、在庫精度の向上を妨げる多くの機能上の課題に対処できます。一方で、在庫データに流動的にアクセスできなければ、人的エラーや手動プロセスのリスクは解消されません。ここで、オラクルのお客様であるAlbelliの事例を紹介します。ヨーロッパを拠点とするメーカーであり、ネット販売も行うこの企業は、翌年に向けて大きな成長が見込まれており、拡張を支援するスケーラブルなソリューションを必要としていました。

Albelliは、オンプレミスのERPからOracle Cloud SCMに切り替えると同時に、RF-SMARTのモバイル在庫管理ソリューションを実装することを決定しました。同社は、クラウドへの移行によって、データのバックアップやアクセスの制限に関する心配が解消されることを知っていました。Oracle Cloud SCMは、インターネット接続が可能であれば、複数のデバイスでどこからでもアクセスできます。Albelliのチームは、VPNを必要とすることなく、倉庫内で発生している問題にいつでも対応できるようになりました。同社はこれらのメリットによって、顧客への配送日数を2日にすることに成功しています。

サプライ・チェーン全体でのモビリティの連結

次に、クラウドベースのモバイル在庫管理システムが各企業にもたらす影響を紹介します。接続性の向上が企業の財政状況に大きな影響を与えることは明らかですが、サプライ・チェーンにはどのような影響があるでしょうか。

  • 流通 - 従業員は商品の受領時からハンドヘルド・デバイスを使用して、倉庫に入庫する在庫をスキャンします。Oracleでは即座に製品情報が更新され、後続のすべてのタッチポイントでも更新が行われます。商品を棚入する際には、モバイル在庫管理ソリューションがOracle Cloud SCMとの統合に基づいて適切な保管場所を提案します。ピッキングでは、ピッキング・パスと適切な場所を事前に選択できます。梱包と出荷に関する作業も記録されるため、顧客の注文のステータスについて最新の情報を正確に提供できます。このような効率化が、最終的にコスト削減、生産性の向上、顧客満足度の向上を実現します。
  • 製造 - モバイル在庫管理は、メーカーによる商品の生産能力をどのように強化できるでしょうか。まず、メーカーがRF-SMARTなどのソリューションを使用することで、組立プロセスのすべての段階を追跡できるようになります。タスクを完了の各段階に分類し、組立に使用されたすべての構成部品を記録できます。これにより、ベスト・プラクティスを実践しながら、生産数量をリアルタイムで記録できます。
  • ラベル印刷 - ラベル印刷を行う企業は、複数のデータ・ソースを使用して作業することが多いため、製品ラベルのコンテンツを組み合せる作業が複雑化します。さらに、それぞれテンプレート要件が異なる複数の目的のために、複数のプリンタが同時に使用されます。これらの要因による制限が、ラベル印刷を必要以上に困難な作業にしています。これらの課題は、ラベル印刷の統合によって克服できます。このテクノロジーは、1つのインターフェイスを使用してERPとサードパーティ・システムからラベルを印刷することを可能にします。既存のプリンタを接続してネットワークを形成できます。このソリューションは、ほとんどのネイティブ・プリンタ・アプリケーションより使いやすい、ドラッグ・アンド・ドロップ設計のツールも提供します。一貫性のあるラベリングと、よりコネクテッドな印刷ソリューションを選択することで、在庫精度と効率をさらに高めることができます。

最初の手順の実行

サプライ・チェーン・テクノロジーは、よりコネクテッドな企業の実現に役立ちますが、ビジネス・プラクティスを変えるための投資と取組みを行う価値があるかどうかは各企業で判断する必要があります。

オラクルが取り組んできた課題に関連づけることができる場合には、どのような手順で在庫精度を向上できるかを検討する価値があります。運用面のベスト・プラクティスやテクノロジーの実装など、ビジネスに利益をもたらすことが実証されている変化については、受け入れることが重要です。

RF-SMARTについて

RF-SMARTは、35年以上にわたる経験を持つモバイル在庫管理ソリューションのグローバル・リーダーです。RF-SMARTはオラクルの製品チームと直接連携して、Oracle Cloud SCMに在庫管理、製造管理、PAR管理の機能を提供するリアルタイム・アプリケーションを開発しました。現在までに世界の800を超えるクラウドの顧客が、同社のソリューションによって正確性、生産性、収益性を向上しています。