エネルギー危機の到来しかしそれは何であり、何から生じたのか。

Oracle Energy and Waterチーム

「エネルギー危機」という言葉は、マスメディアの見出しからカンファレンス、消費者フォーラム、そしてこのブログに至るまで、さまざまな場所に見られます。このトピックの内容は世界全体に関係する課題であり、このようにあちこちで取り上げられることは、驚くことではありません。その原因の解明や影響の理解に取り組み、今後のロードマップについての合意を目指すと、このグローバルな課題がいかに複雑であるかが明確になります。

1つの危機のさまざまな原因

簡単に言えば、エネルギー危機は世界的なエネルギー不足によるものです。このエネルギー不足は、物価を上昇させ、多くの国で人々が既に感じている生活費の上昇につながります。しかし、このエネルギー不足の原因は複雑であり、より詳細な解明が必要です。

危機の影響は時間が経つにつれてより強く感じられていますが、その原因は時間をかけて生じてきたものです。全体的な論点は、化石燃料への人類の継続的な依存ですが、パンデミックの余波、最近の地政学的事象、好ましくない気象条件、および環境にやさしいエネルギー源への投資不足がこの危機につながっていると考えることができます。これらについて、新型コロナウイルスから順に検討しましょう。

新型コロナウイルスのパンデミックはエネルギーにどのような影響を与えたのでしょうか。2020年から2021年にかけてパンデミックが世界中に広がるにつれて、エネルギー需要は劇的に低下しました。1ウイルスの広がりを抑制するために設定されたロックダウンや渡航制限などの取り組みは、総エネルギー使用量を低減する連鎖的な効果をもたらしました。需要が減少したため、燃料価格も低下しました。実際、多くの燃料の価格は数十年間で最低の水準に達しました。2必要となる燃料が少なくなったため、供給も減少しました。3

各国が制限を解除し、新型コロナウイルスからの回復へと進み始めると、エネルギー需要が元に戻ってきました。しかし、使用量は増加しましたが、供給は後れたままでした。4電力市場では、通常、ガス価格によって電力価格が決まります。5供給量が限られた中で需要が増加したため、2021年にはガス価格が上昇しました。6その結果、エネルギー・コストが上昇しました。

2022年、ロシアとウクライナの紛争の影響により、供給がさらに混乱しました。7国際エネルギー機関が強調しているように、ロシアは世界最大の石油・ガス供給国の1つであり、世界のエネルギー市場で重要な役割を担っています。8たとえば、2021年にロシアはEUで消費されるガスの40%を供給しました。9紛争開始後に課された制裁には、ロシアからの石油輸入の段階的停止(EU内)や全面禁止(米国内)が含まれていました。10これにより、市場への燃料供給量がさらに減少し、価格が急激に上昇しました。11

前述のように、天然ガスの価格はエネルギー・コストに影響を及ぼします。残念ながら、天然ガスの価格は大幅に上昇しました。石炭に代わる液化天然ガスの需要が、さらに価格を押し上げました。12昨年12月に中国がLNGを大規模に確保したことで、欧州では1週間でガスの卸売価格がほぼ倍増しました。13欧州とアジアの天然ガスのベンチマーク価格は2022年10月に史上最高値となり、前年の10倍に達し、米国の翌月価格は2020年10月の3倍になりました。14他の化石燃料も同様の傾向を示しています。世界で石炭消費量が最も多い2つの国である中国とインドで石炭火力発電所の在庫が2022年冬まで少なかったため、国際石炭価格は前年比で5倍に上昇しました。15化石燃料の価格が上昇していることから、代替エネルギー源への転換が明白な解決策になるように思われます。しかし残念なことに、インフラストラクチャへの各国の投資は、二酸化炭素への取り組みに比べて遅れています。

近年、石油や天然ガスの投資は減少していますが、政府がクリーンな代替エネルギーを導入する取り組みを行って、これを埋め合わせているわけではません。16多くの国が2030年までに排出量をネット・ゼロにすることを公約していますが、多くの場合、政府はこれを支える支出を行っていません。17実際、2015年以降、ソーラー・パネルや風力タービンなどの主要エネルギー・インフラへの投資は頭打ちになっています。18

一方、化石燃料に代わる既存の選択肢の多くは、断続的なエネルギー源であり、エネルギーを発生させるために風、太陽、または水に依存しています。世界各地で発生した気象災害の影響で、これらのエネルギー源の出力は制限されています。たとえば、ブラジルや他の地域では干ばつにより水力発電に影響が生じ、欧州では風力発電量が想定を下回りました。19これらのエネルギー源からの供給量が不足すると、化石燃料に頼る必要性が高まり、さらなる価格上昇につながります。すべての人々がエネルギーを必要とするため、このような価格上昇は、世界のほぼすべての地域で認識されています。

個人と産業への影響

化石燃料価格が上昇するにつれ、生産に使用されるエネルギーのコストも急激に上昇しています。20こうしたコスト上昇により、世界中の消費者は、エネルギー支出の上昇として負担を強いられています。これは、世界各地で認識されている、生活費危機の主な要因となっています。21

Carbon Briefの分析によると、2021年夏から2023年春までに予想される家庭用エネルギー料金の上昇のうち96%はガス料金によって生じる見込みです。22そして、この料金の増加によって、世界各地の世帯の所得が奪われています。

2021年10月、ドイツのエネルギー価格は前年の6倍となり、過去最高に達しました。23一方、英国では、2022年冬の世帯支出の11%をエネルギー・コストが占めると予測されています。24イギリスのヨーク大学の研究によると、2019年に英国で燃料貧困に直面した世帯は5分の1未満でしたが、2023年1月までに約3分の2が燃料貧困に直面すると予想されています。25 5分の1の世帯では、純所得の25%以上がエネルギー料金として消費される見通しです。26

米国エネルギー情報局によると、米国では、料金が2021年より既に7.5%上昇しています。27コスト上昇に直面し、既に2,000万世帯以上で公共料金の支払いが遅れていると全米エネルギー支援協会(NEADA)は報告しています。28 8月に発表されたNEADAの数字によると、平均未払い額は約403ドルから792ドルにほぼ倍増しています。29危機は深刻化しており、連邦政府は電力料金が2023年にかけて上昇し続けると予想しています。30

家庭のエネルギー消費は多くの人にとって重要ですが、産業分野もエネルギーに依存しています。そして、その影響はビジネスの世界全体に及んでいます。多くのエネルギー企業は、より高いコストをかけてエネルギーを購入しながら、契約価格や上限価格によって、顧客から回収できる金額が制限されているため、倒産を余儀なくされています。2022年には、英国だけで約30社のエネルギー供給企業が倒産しました。31

燃料コストが消費者の所得を大きく奪うにつれて、エネルギー部門以外の企業もその影響を受けます。多くの世帯が自由裁量の支出を減らしてエネルギー料金を補っているため、小売業者やホスピタリティ業者では、経営コストの上昇と売上の減少による二重の影響を受けています。32

このように、一般顧客向けの企業は事業を継続するために苦労していますが、製造業や建設業などのエネルギー消費量の多い産業も非常に大きな影響を受ける可能性があります。たとえば、中国では、既に3分の2の省で計画停電が行われていますが、一部の重工業では、鉄鋼やセメントなどの製品の製造を縮小するよう指示されています。33

コスト削減のための介入やイノベーションがなければ、個人、組織、国家に対する経済的な影響は甚大な規模になる可能性があります。では、どのように対処すればよいでしょうか。

今こそ、即時的かつ野心的な解決策を

複数の要因がエネルギー・コストの上昇に関係しているため、複数の解決策を用いることで、その影響を軽減できます。これらの解決策は、即時的なコスト削減から長期的な投資にまで及ぶものであり、各世帯から政府に至るまで、社会のさまざまなレベルで実施する必要があります。1つの方法だけを先に進めるのではなく、複数の方法を並行して試すことで共通の目的地に到達できます。

世界中の多くの政府は、特に影響を受けやすい消費者のために、エネルギー・コストが世帯支出に与える影響を抑制したり削減したりする試みを既に開始しています。これらの多くは、低所得世帯向けの補助金の形で実施されています。一方、多くの公益事業者は、支払い可能な料金設定、割引、または助成金を通じて、困難に直面している顧客をサポートし、支払いが遅延する危険性のある人々を支援しています。しかし、経済的な介入だけでなくて、消費者行動も有効である可能性があります。

世帯での支払い額を減らす最も簡単な方法は、エネルギー使用量を減らすことです。これは、難しそうに感じるかもしれませんが、行動の簡単な変更がすぐに節約につながります。よくある例としては、ボイラーの温度設定を下げる、使用していないデバイスをコンセントから抜く、バッテリーは使い切ってから再充電する、などがあります。しかし、適切な設備がある世帯では、より大幅な節約が可能です。

適切な絶縁材などで家をリフォームすると、暖房に必要なエネルギーの消費量を削減できます。一方、ソーラー・パネルやヒート・ポンプを使用すると、エネルギー料金を減らすことができる可能性があります。34ただし、これらには初期費用がかかります。これらを拡大して社会全体に利益をもたらすには、住宅のエネルギー効率の改善に使用できる助成金や融資などの政府の取り組みが必要になる可能性があります。しかし、政府に対する圧力は、これだけではありません。

長期的には、各国では化石燃料への依存を減らす必要があるため、これらの市場に遠慮する必要はありません。再生可能エネルギー源への投資は、将来のエネルギー危機に対する保護要素となる35エネルギー自給を達成し、すべての人々のためのクリーンで手頃な価格のエネルギーの未来に向けて取り組むのに役立ちます。