Joseph Tsidulko |シニア・ライター| 2025年7月29日
大規模言語モデル(LLM)は、テキストや音声など様々な手段で提供されるユーザー入力に対して、人間のような回答を生成することを主な目的として設計された人工知能の一種であり、近年ますます普及しています。大規模言語モデル(LLM)は大量のテキストでトレーニングするため、プロンプトを通じて提供される文脈に基づいて次の単語や単語列を予測できるようになります。さらに特定の著者やジャンルの文章スタイルを模倣することも可能です。
LLMは2020年代初頭に研究機関から急速に普及し、一般の認知を得ました。それ以来、リクエストを解釈し関連性のある回答を生成する優れた能力により、これらは独立した製品としてだけでなく、ビジネス・ソフトウェアに組み込まれた付加価値機能としても普及し、自然言語処理、機械翻訳、コンテンツ生成、チャットボット、文書要約などの機能を提供しています。
このテクノロジーは引き続き急速に進化を続けており、より大規模なデータセットを取り込み、モデルのパフォーマンス向上を図るためのトレーニングやチューニングのレイヤーを加えています。より広範かつ深いトレーニングは、ますます強力なコンピュート・インフラストラクチャによって実現され、組織目標を達成するための計画立案に活用できるますます高度な推論能力を生み出しています。これらの推論機能もまた、高度な大規模言語モデル(LLM)を用いて人間のオペレーターが設定したタスクを遂行するAIエージェントの機能を支えています。
大規模言語モデルは、書籍やWeb、その他のソースから抽出された数十億語もの膨大なデータセットをもとにトレーニングされ、質問に対して人間のような状況に適した応答を生成する能力を持つAIシステムです。LLMは、質問(LLM用語では「プロンプト」)を理解し、自然言語で回答を生成するように設計されているため、顧客の質問への回答、レポート情報の要約、言語間の翻訳、詩やコンピュータコードの作成、メールの下書き作成などのタスクを実行できます。LLMは通常、トレーニングに使用された言語の文法とセマンティクスを深く理解しています。組織固有の自社データを活用するよう構成することで、その組織に特有の回答を返すことも可能です。
LLMは質問を理解するよう設計されていますが、こうした優れた機能がある一方、ユーザーはLLMの限界にも留意すべきです。古いデータや不明瞭なプロンプトは、チャットボットが企業の製品について誤った回答をするなど、誤りを引き起こす可能性があります。十分なデータが不足していると、LLMは実際に存在しない情報を作り出す(ハルシネーション)場合があります。LLMは予測に優れていますが、これまで特定の結論に至った過程の説明には不十分な面がありました。これらは、新しいLLMが改善を目指している分野の一部です。
それでもLLMは、自然言語処理分野において大きな進歩を遂げています。企業での用途は多岐にわたり、新規アプリケーションが迅速に開発・導入されています。
主なポイント
自然言語処理は1960年代から人工知能研究において活発に取り組まれてきた分野であり、初期の言語モデルは数十年前にさかのぼります。大規模言語モデルは、ニューラルネットワークに機械学習より高度なモデルを生成するディープラーニングを活用することで、この分野を飛躍的に発展させました。大規模言語モデル(LLM)のもう一つの特徴は、基盤モデルのトレーニングが、人間の介入を必要としないデータのラベリングという形で実施される点です。
現在のLLMの概念は、2017年にGoogleが発表した画期的な論文において、トランスフォーマー・ネットワークと呼ばれる強力な新アーキテクチャが紹介されたことで誕生しました。トランスフォーマーはセルフアテンション・メカニズムを駆使し、並列処理を可能にしたことで、モデルのトレーニングと導入の両方の速度向上とコスト削減を実現しました。OpenAIはこのアーキテクチャを適用し、多くの専門家が初の最新LLMと見なすGPT-1を開発しました。
企業はこれに注目し、LLMが数多くのユースケースを支え、ビジネスの生産性向上、効率化、顧客への迅速な対応を支援する膨大な可能性を提供していることへの認識を急速に深めています。
LLMは機械学習の過程で開発された数多くのAIモデルの一つです。ただし、これらのモデルを特徴づけ、際立たせる要素がいくつか存在します。最も大きな要素はその規模です。LLMにおける「大規模」とは、最終出力を計算するパラメータの数、およびそれらのパラメータを調整してモデルをトレーニングする際に投入されるデータの量を指します。
LLMは、多くの種類の最先端アプリケーションを支える元となる技術です。一般市民がLLMの驚異的な機能を広く知ることに繋がったきっかけは、OpenAIがブラウザベースで公開したGPT-3.5モデル、そしてGPT-4oやGPT-4といった最新バージョンであるChatGPTの登場でした。その利益は企業内にも全体にわたり広がり、金融サービス、人事、小売、マーケティング・営業、ソフトウェア開発、カスタマーサポート、医療など、さまざまな業界や事業部門においてLLMがその能力を発揮しています。
LMMの一般的なビジネス・アプリケーションには、カスタマーサービス用チャットボット、顧客感情分析、文脈に即した会話的で自然な翻訳サービスなどが挙げられます。またLMMは、製薬研究におけるタンパク質構造の予測、ソフトウェアコードの生成、企業がビジネス・プロセスの自動化に導入を拡大しているエージェントの強化など、より専門的なタスクを背後で実行しています。
LLMは、拡大を続ける数多くのビジネス・ユースケースに適用されています。たとえば、多くの企業がカスタマーサービス戦略の一環としてチャットボットを導入しています。しかし、これらのモデルの多用途性により、創造的な企業アプリケーション開発者は、単純な言語的な回答生成にとどまらず、さまざまな課題に取り組むためにこの基盤となるテクノロジーを活用しています。
1. カスタマーサポートの自動化
カスタマーサポートは、企業環境におけるLLMの最も顕著な活用例であり、特に顧客に対して効果が発揮されます。言語モデルを活用した対話型ユーザインターフェース(チャットボット)は、24時間体制でほぼ無限の問い合わせに対応可能です。これにより、顧客のフラストレーションの主な原因である、負担過多のコールセンタースタッフに起因する応答時間を大幅に短縮することが可能です。
チャットボットを他のLLM搭載アプリケーションと統合することで、サポートコール後のフォローアップ業務(代替部品、ドキュメント、アンケートの送付など)を自動化できます。LLMはまた、人間のエージェントを直接支援し、タイムリーな情報提供、感情分析、翻訳、やりとりの要約などを実現します。
50か国以上、80言語以上で事業を運営するファンドマネージャーは、これらの機能を活用し、顧客が自身のニーズに最適な金融商品をより容易に見つけて選択できるようにしました。退職金口座管理を専門とする同社は、カスタマイズされたチャットボットによりカスタマーサポートを最新化し、サービスレベルを150%向上させるとともに、運用コストを30%削減しました。顧客は現在、同社のWebページにアクセスし、24時間いつでも、複数の言語でチャットボットに口座に関する質問をすることができます。
2. コンテンツの生成と要約
LLMは、オリジナルのコンテンツを生成したり、既存のコンテンツを要約することができます。どちらのユースケースも、大小さまざまな企業にとって非常に有用であり、レポート、メール、ブログ、マーケティング資料、ソーシャルメディア投稿の作成に生成AIを活用しながら、生成されたコンテンツを特定のグループや個々の顧客に合わせてカスタマイズできるようLLMの機能を活かしています。
要約は、分野に応じた配慮のもと、大量の情報を人間がより迅速に確認し、理解しやすい形式に凝縮します。LLMは、テキスト内のさまざまなアイデアの重要性を評価した上で重要な部分を抽出する方法、あるいは原文から最も適切かつ重要な情報と判断した内容を簡潔に要約する方法のいずれかでこれを実現します。
LLMは、要約が過度に一般的になり、原文の重要な詳細や強調点が抜け落ちる「平均的な要約」を行うと批判されることがあります。要約の信頼性を評価し、それに基づいてさまざまなモデルのパフォーマンスをランク付けすることも困難です。それでもなお、企業はこの機能を積極的に導入しています。
ある主要なクラウド通信企業は、数百件に及ぶサポートチケットの記録や、ほぼ20言語で毎日行われているチャットの記録を自動的に要約するためにLLMを導入しました。これらの要約は現在、サポート・エンジニアが顧客の課題を迅速に解決し、全体的なエクスペリエンスを向上できるよう支援しています。
3. 言語翻訳
Googleがトランスフォーマーを開発した当初の目的は、機械の言語間の翻訳能力を向上させることにありましたが、開発者がその幅広い機能に注目するようにになったのは後になってからでした。このアーキテクチャを初めて導入した開発者たちは、その目標を達成し、英語からドイツ語への翻訳において比類のないパフォーマンスを実現しました。しかも、従来のモデルよりも大幅に少ない時間とコンピューティング・リソースでこのモデルをトレーニングすることができました。
現代のLLMは、この限定的なユースケースをはるかに超えた進化を遂げています。ほとんどの場合、LLMは翻訳を専門にトレーニングされているわけではありせんが、両言語のデータセットで幅広い学習を行った際には、ある言語のテキストを解釈し、別の言語で明確に言い換えることに優れています。この言語の壁を打破する画期的な進歩は、国境を越えて事業を営む企業にとって極めて貴重です。多国籍企業は、高度な言語サービスを使用して、たとえば製品やサービスに対する多言語サポートの開発、ガイドやチュートリアル、マーケティング資料の翻訳、そして新しい国への進出時に既存の教育資料を用いた従業員教育などを行っています。
マルチモーダル・モデルの進歩
活発な研究分野として、言語以外のモダリティで出力を生成するAIの基盤モデルとしてのLLMの活用があげられます。LLMの驚異的な多用途性により、ラベル付きデータを用いたファインチューニングプロセスを通じて、音声や画像、さらには動画の解釈や生成が可能となります。プロンプトを受け取ったり、言語以外のモダリティで出力を生成するこれらのモデルは、大規模マルチモーダル・モデル(LMM)と呼ばれることがあります。
環境への配慮
LLMを開発し大規模に運用するには、通常、膨大な処理能力が必要となります。数百、時には数千ものGPUクラスタを用いて単一のモデルを数週間にわたりトレーニングする際に、膨大な量のエネルギーを消費する可能性があります。また、完成したモデルが導入された後も、推論を実行するインフラストラクチャは、絶え間ないユーザークエリに対応するために、引き続き多大な電力を必要とします。
GPT-4のトレーニングには推定50ギガワット時のエネルギーが必要でした。一方、50ギガワット時のエネルギーは、理論上、米国の平均的な家庭4,500から5,000世帯に1年間電力を供給できる量に相当します。現在、ChatGPTは毎日数百万件のクエリに対応するために、数百メガワット時の電力を消費していると推定されています。言語モデルがより大規模になるにつれ、エネルギー消費とサステナビリティに関する懸念はより深刻化する可能性が考えられます。そのため、人工知能企業はカーボン・フットプリントを削減するための代替エネルギー源の模索における最前線に立って取り組んできています。
オラクルは、企業がこの画期的なテクノロジーの詳細な仕組みや電力需要に煩わされることなく、LLMの力を活用できるようにします。Oracle Cloud Infrastructure (OCI) Generative AIは、複雑なインフレストラクチャの管理を回避しつつ、カスタマイズされた、非常に効果的でコスト効率の高い方法で最新のLLMの導入を簡素化する、フルマネージド・サービスです。企業は複数の基盤モデルから選択したうえで、専用のGPUクラスター上で自社データを用いてそれらをファインチューニングし、ビジネス・ニーズに最適なカスタム・モデルを生成することが可能です。
基盤テクノロジーをより詳細に調整したいと考える企業は、Oracle Databaseの機械学習に注目しています。このプラットフォームは、機密データをOracle Databaseから移行する必要なく、機械学習ライフサイクルの主要要素を簡素化・自動化することで、データサイエンティストが迅速にモデルを構築できるようにします。機能には、一般的な機械学習フレームワーク、API、自動機械学習(AutoML)、コード不要のインターフェースに加え、アプリケーションで使用するモデルを生成するための30種類以上のハイパフォーマンスなデータベース内アルゴリズムが含まれます。
また、大手企業の多くは、Oracle AIインフラストラクチャを活用して独自のLLMを構築しています。AIサービスなどのより高いレベルのAIを支える基盤であり、高速化されたコンピューティング、ネットワーク、ストレージを備えた最も要求の厳しいLLMにも利用可能です。
大規模言語モデル(LLM)が企業の運営方法や顧客との関わり方を変革する可能性は非常に大きく、このテクノロジーにおける新たなブレークスルーや投資は、世界市場を動かし、企業戦略を一変させる可能性があります。一方で、ビジネス・リーダーやITリーダーにとっては、このテクノロジーから得られる多くの具体的なメリットを特定しようと努める一方で、誇大評価を冷静に捉え、LLMの基本的な仕組み、その限界、導入における課題を理解することが重要です。
LLMは、私たちの働き方を変革する多くの画期的な技術を支えています。
大規模言語モデルを特定用途向けにファインチューニングする方法を教えてください。
大規模言語モデル(LLM)は、自己学習を用いた事前学習段階を経て基盤モデルを構築した後、より少量のドメイン特化型ラベル付きデータを用いた教師あり学習段階を経ることで、特定の用途向けにファインチューニングされます。
大規模言語モデルの活用により最もメリッを得る業界を教えてください。
ほぼすべての業界がLLMのメリットを認識しつつあります。医療、金融サービス、小売などでは、カスタマーサポートの改善やビジネス・プロセスの自動化など、さまざまなユースケースの検討が進められています。
大規模言語モデルはエンタープライズ・システムと統合可能でしょうか。
大規模言語モデルは、基盤モデルをエンタープライズ・データでファインチューニングし、検索拡張生成を通じて独自データでモデルを拡張することで、エンタープライズ・システムと統合されることがよくあります。