日本オラクル特集記事

水、食糧、ペット…刻々と変化する被災者の「つぶやき」

―災害時のSNS分析の可能性を考える

世界有数の地震国で、風水害も多い日本。災害に備えるとともに、犠牲者を少しでも減らして、被害を最小限に抑えたいというのは誰しもが考えるところだ。そこで注目されるのが災害時に住民の生の声がいち早く流れるといわれるSNSだ。今年5月、熊本地震の余震が続く中、災害時の緊急支援を軸に活動する認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンはソーシャルクラウドでツイッター情報の分析を試み、利用の可能性を探った。

災害時に住民の声をいち早く聞く手段としてのSNS

 地震などの大きな災害時には通話規制が行われるため、携帯電話や固定電話による通話はほとんど利用できなくなってしまう。それと比べると、インターネットはつながりやすいため、SNSで大量の情報がやり取りされる。これはスマートフォンが普及し始めていた2011年の東日本大震災以降一般的な傾向となり、16年4月の熊本地震でも被災状況を知らせたり、救助を求めたりするたくさんの声がSNS上で飛び交った。ツイッタージャパンによると、熊本地震では前震が起きた4月14日から16日の本震を挟んだ1週間で、関連する言葉を含むツイート数は約2610万件と、同じ条件で約115万件だった東日本大震災の20倍以上になった。

 現在、日本のツイッター利用者は約3500万人。日本の人口のほぼ3人に1人が使っていることになり、フェイスブックやLINEなども含めたSNSは電話網に次ぐコミュケーションインフラの役割を担うようになっている。

 昨今ではマーケティングツールとしてSNS分析に注目する企業も多いが、一方で災害時につぶやきをキャッチし、人命救助や被災者支援に活かす取り組みはまだ始まったばかりだ。これからは、自治体などでもSNSのつぶやきを日常的にモニタリングし、いざという時に役立てる仕組みを構築していく必要があるだろう。

 1996年の設立で、地震や水害などの緊急支援活動を中心に、27の国と地域で活動してきた認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンでも、災害時の第1報はツイッターが一番速いという感覚を持っている。「ツイッターの『つぶやき』を調べると、どこの被害が大きい、どこか崩れているなど、第一報が素早く流れています。そのため、最近では、地名、地震、震度などの広いくくりで検索し、状況を掴むために利用しています」と語るのはピースウィンズ・ジャパン広報の大成絢子さんだ。

ピースウィンズ・ジャパンは被災地に救助犬と共に駆けつける(ネパールでの様子)
写真提供:認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン

レスキュー隊と救助犬が出動し一人でも多くの人命を救うために活動

 ピースウィンズ・ジャパンは「総合商社があるように、総合NGOがあってもよい」との考え方のもと、国際協力や災害支援はもとより、医療、観光、教育、芸術、動物福祉、農業、環境などの分野で、社会変革と自らの成長の可能性を追求している団体だ。2015年度はイラク、南スーダン、ネパール、日本など12の国と地域で活動し、国内では2010年に始めた災害救助犬の育成と広島県での犬の殺処分ゼロを目指す「ピースワンコ・ジャパン」と東日本大震災被災者支援、広島土砂災害被災者支援、地域再生の事業を展開している。

 ピースウィンズ・ジャパンでは、災害が発生すると、国内では当日、海外でも翌日には現地入りできるように動き出す。2014年の広島土砂災害からはレスキュー隊が救助犬と一緒に現地に入るようになっており、人命救助のためにより迅速に現場に行くことを目指している。

 そして、現場では救助犬で家屋の下敷きや生き埋めになっている人を捜索するとともに、被災者にヒアリングし、他の救援団体と連携しながら、必要なものを届けていく。

 「今年4月の熊本地震でも、前震と本震の直後に、救助犬とレスキュー隊が出動して、行方不明者の捜索にあたりました。ツイッターも、『熊本地震』とか『ペット』『救助犬』『埋もれている』などのワードで検索しました。その中で、個人の情報がかなりたくさん出てくることが分かりましたが、分析ツールや分析者がいないため、残念ながら現場の様子を感覚的にとらえる域を超えませんでした」(大成さん)。

災害時にはツイッターの「つぶやき」も重要な情報源となる
写真提供:認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン

ソーシャル分析は緊急の救助要請や支援ニーズの変化をつかむのに有効

 熊本地震の余震が続いていた5月中旬、ピースウィンズ・ジャパンは熊本地震で被災し、避難所で生活している人たちの支援につながる情報を得るために、日本オラクルの「Oracle Social Cloud」を試してみることにした。しばらく試してみた大成さんは「使い方が簡単ですし、使いやすかったです。発災直後、レスキュー隊の出動と同時に使うことができたら、大きな力になると思いました」と言う。地震で倒壊した家屋の下に、スマートフォンを持った人が閉じ込められている可能性がある。その時に、「柱の下敷きで身動きが取れない。助けてくれ」とつぶやいた場所をつかみ、そこにいち早くレスキュー隊が駆けつけることができたら、命を救うことができるかもしれない。捜索に関する情報は、多いほうがいい。

 加えて発災直後は混乱し、状況の変化も激しいため、レスキュー隊が現場で捜索しながら、ヒアリングで事態を把握していくことと合わせて、後方支援として本部がSNSで飛び交う情報を集めて分析し、現地に提供することができると、緊急支援活動の支えになる。

 こうした使い方で重要なのは、洪水のように押し寄せる情報から緊急性が高いものや、住民のニーズに関するものをどう正確につかむかということだ。

SNS分析のしぼり込み機能に今後の期待が高まる

 発災直後は、被災地だけでなく、被災地から遠く離れた地域も含めて、たくさんの人が安否確認などをツイートしたり、コメントを書き込んだりする。その結果、膨大な量の情報が爆発的にやり取りされるため、倒壊家屋の下敷きになったり、生き埋めになったりして助けを求める人の最優先すべき情報が埋もれてしまう可能性がある。それを選り分けて探し出し、迅速かつ的確に救助に駆けつけることができるようにしなければならない。

 「Oracle Social Cloud」は、分析対象にする検索語を設定するだけで、自動的にツイッターのつぶやきを収集する。そして、インジケーター機能で絞り込み、分析結果をソーシャルレポートとして、日次で自動配信する。今回、ハッシュタグ熊本地震と記載されている「つぶやき」は約300万件、ピースウィンズ・ジャパンの活動に合わせて、「ペット」を検索語に設定して絞り込むことで抽出できた「つぶやき」は約300件だった。

 また、発災から時間が経過する中で、被災者の人たちのつぶやきも最初は水や食べ物、落ちついてくると、ペット、エコノミー症候群、仮設住宅というように変わり、ニーズも変化する。Oracle Social Cloudでは、分析した時点で最も多く出てくる言葉は大きな文字で表示され、強弱を付けて表示される。「その段階で一番高いニーズが一目で分かります。その時その時で普通に検索しても見ることはできるのですが、Oracle Social Cloudでは視覚的に表現されるので、とても使いやすく、避難所支援にも役立つと思います」(大成さん)。

多く出てくる言葉は大きな文字で表示されるOracle Social Cloudのワードクラウド機能

 このように、SNSが人々の生活に欠かせないコミュニーションインフラになる中で、Oracle Social Cloudのような分析ツールを災害時にどのように活用するか、検討する時期に来ているのではないだろうか。

【関連情報】
>> オラクルのソーシャルマーケティング・クラウド(Oracle Social Cloud)
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※本記事は、nikkei BPnet特番サイト「Digital Transformation」に掲載された記事です。

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