カスタマー・エクスペリエンスを向上させる8つの方法

Natalie Gagliordi | コンテンツ・ストラテジスト | 2024年4月23日

カスタマー・エクスペリエンスとは、単なるマーケティングの流行語ではなく、製品の使用であれ、パーティで友人からブランドの話を聞くことであれ、顧客と企業とのあらゆるやりとりのすべてを総称したものです。企業にとって優れたカスタマー・エクスペリエンスには、成長を促す長期的な顧客関係を構築するための取り組みが含まれます。今日の消費者は、求めるサービスや製品を購入する場所に事欠かないため、顧客に繰り返し利用されるように、記憶に残る有意義でパーソナライズされたエクスペリエンスを提供することがビジネスに求められています。

しかし、カスタマー・エクスペリエンスとは正確にはどのようなもので、ビジネスはどうすれば快適なエクスペリエンスを提供できるようになるのでしょうか。最近では、一貫して優れたカスタマー・エクスペリエンスを提供するには、マーケティング・チームやカスタマー・ケア・チームにとどまらない多角的なアプローチが求められます。つまり、顧客に対するデータドリブンな理解をサポートし、信頼性の高い適切なデジタル・エクスペリエンスをシェーピングするために最新のテクノロジーを取り入れるということです。

カスタマー・エクスペリエンスとは?

カスタマー・エクスペリエンス(CX)とは、評価、購入、購入後のプロセスを通じて顧客をサポートし、エンゲージメントし、満足感をもたらすために組織が行うあらゆることを意味する総称です。カスタマー・エクスペリエンスの良し悪しは、ビジネスにとって重要な差別化要因となり得ます。有意義なカスタマー・エクスペリエンスを提供するということは、顧客を惹きつけ、ビジネスに満足させ、最終的にカスタマー・ロイヤルティを喚起するような形でカスタマー・ニーズに優先度を設定することを意味します。その背後で、カスタマー・エクスペリエンスへの取り組みは、顧客関係管理ソフトウェア、クラウド・サービス、AIや機械学習を実装したチャットボットなど、さまざまなソフトウェア・システムやテクノロジーに支えられています。

カスタマー・エクスペリエンスとカスタマーサービス

カスタマー・エクスペリエンスとカスタマーサービスは非常に密接に関連していますが、ビジネスにおいては異なる機能を果たします。通常、カスタマーサービスとは、一般的な質問に対する回答を提供したり、特定の問題や苦情を解決するなど、製品またはサービスの購入前後における企業の顧客に対する支援方法を指します。役立つ迅速なカスタマーサービスの提供は、有意義なカスタマー・エクスペリエンスをシェーピングするための主要な要素です。

また、ビジネスが不満を持つ顧客にどのように対応するかは、企業全体に対する消費者の認識に影響を与える可能性があるため、カスタマーサービスはブランド・ロイヤルティを育成する上で重要な役割を果たします。対照的に、カスタマー・エクスペリエンスはさらに大きな範囲に及びます。そこには、顧客と製品やブランドとのあらゆるやりとりが含まれます。カスタマーサービスの側面に加え、製品を使用するとき、広告を見るとき、オンラインで調べるときなど、顧客との関係における他の側面も対象となります。

カスタマー・エクスペリエンスの重要性

カスタマー・エクスペリエンスは、いかなるビジネスにとっても非常に重要であり、企業の成長と成功に大きな影響を及ぼす可能性があります。卓越したカスタマー・エクスペリエンスは、クロスセルとアップセルのチャンスを通じて成長への道を開くだけでなく、カスタマー・アドボカシーおよびクチコミ・マーケティングを促進し、それによって売上を上昇させ、低コストでビジネスに新たな顧客をもたらします。また、カスタマー・エクスペリエンスの取り組みは、顧客からのフィードバックを得るための新たな手段を生み出すこともでき、人が求めるもの、必要とするもの、価値付けるものへのより深く深い理解に基づき、ビジネスが製品、サービス、そしてカスタマー・ジャーニー全体を改善できる方法と改善点について、貴重なインサイトを提供することができます。逆に、良くないカスタマー・エクスペリエンスは、潜在顧客や既存顧客を遠ざけるだけでなく、ビジネス全体の評判を落とすことにもなりかねません。

カスタマー・エクスペリエンスの向上が必要な理由

カスタマー・エクスペリエンス戦略を改善する理由は非常に簡単です。ビジネスが顧客に有意義なエクスペリエンスを提供することで、顧客の維持と獲得の改善、売上の増加、カスタマー・ロイヤルティの強化が可能になるほか、競合他社との差別化を支援できます。成約だけにこだわると、ビジネスを長続きさせるカギとなる顧客との強いつながりを確立するチャンスを逃すことになりかねません。

こうした有意義なエクスペリエンスを提供する上で重要な要素は、ビジネスが顧客とのやりとりに使用するテクノロジーです。時代遅れのテクノロジーは通常、企業を際立たせる独自の記憶に残るカスタマー・エクスペリエンスを構築するために必要な分析、自動化、パーソナライズの機能が欠如しています。また、古いシステムは、新しいクラウドベースのテクノロジーやアプリケーションとうまく統合されない場合があり、その結果、カスタマー・エクスペリエンスがばらばらで断片的になり、運用が非効率になり、ビジネスの応答性が低下します。

ある企業が、顧客のシンプルな質問にオンラインで迅速に回答するチャットボット機能を追加したいとします。この機能により、カスタマーサービス担当者はより複雑な問題に注力することができます。また、顧客が特定のタイプの質問をする際に好まれることがよくあるチャネルでもあります。企業には、チャットボット機能を提供するか、サードパーティ・サービスを迅速に統合できるコンピューティング・インフラストラクチャが必要です。今日、顧客が期待するデジタル・エクスペリエンスには、複数のソースからのテクノロジー機能とデータ・ストリームの組み合わせが必要となることが多く、これらはクラウドに存在することも、オンプレミスのデータセンターに存在することもあります。カスタマー・エクスペリエンス戦略の中で新しいテクノロジーやイノベーションを迅速に活用できるビジネスは、顧客の期待に応え、競争力の高い市場で存在感を維持するための体制がより整っています。

低品質なカスタマー・エクスペリエンスがもたらす影響

製品とサービスをどこで、いつ、どのように購入するかに関する選択肢が増え続け、消費者はかつてないほど多くの選択肢を持つようになりました。消費者は自分の期待通りの対応をしない企業には背を向けるため、ロイヤリティを得ることは困難です。消費者行動とCXがブランド・ロイヤルティにどのように結びついているかについての調査で、CXソフトウェアおよびサービス会社のEmplifiは、消費者の86%が、2~3回の嫌な経験だけで、かつて好きだったブランドを見限るようになることを明らかにしました。製品やサービスの問題であれ、ウェブサイトのパフォーマンスの悪さであれ、マイナスなカスタマー・エクスペリエンスはビジネス成長を低下させる主な要因です。

さらに、顧客がビジネスに対して好ましくない印象を抱くと、そうした顧客セグメントからソーシャルメディアやオンライン・レビュー・プラットフォームを通じて否定的なフィードバックが寄せられます。そのような不満は何百万人もの人にリーチする可能性があり、ビジネスに長期的な影響を及ぼします。良くないカスタマー・エクスペリエンスの原因がテクノロジーの問題やソフトウェアの欠点にある場合、他の運用領域も同様のイノベーション不足に悩まされている可能性があります。デジタル・タッチポイントを最適化し、従業員にパーソナライズされたエクスペリエンスを提供するために必要なデータ分析と自動化を提供することはすべて、顧客とのやりとりの質向上につながります。

CXの測定

ビジネスでは、顧客フィードバック調査の実施、カスタマーサポートとのやりとりやチケットの分析、ウェブサイト分析による顧客行動の追跡など、さまざまな手法や指標を用いてCXを測定しています。PwCの調査によると、米国の消費者の80%近くが、速度、利便性、知識豊富な支援、フレンドリーなサービスが有意義なカスタマー・エクスペリエンスの主な要因であると回答しています。こうした調査結果は、企業がこれらの分野のパフォーマンスを測定する手段を備えているかどうかを評価するための出発点となります。

どのようなアプローチや重点領域であれ、顧客からのフィードバックを積極的に求め、耳を傾けることは、顧客の意見、嗜好、懸念を理解する上で不可欠です。また、ビジネスが改善点を特定し、変化するカスタマー・ニーズに適応することも支援します。企業がCXの長所と短所を測定するために使用する方法は正確には、ビジネスの性質、ゴール、およびカスタマー・エクスペリエンスの特定の側面を評価する目的によって異なります。

カスタマー・エクスペリエンスを向上する8つのステップ

社内外を問わず、カスタマー・エクスペリエンスに対する期待は常に変化しています。成功を収めているビジネスは、カスタマー・エクスペリエンスを継続的に評価および改善する必要性を理解しており、戦略、取り組み、テクノロジーを評価して、CXプログラムの成功を確実なものにしています。

1. 顧客の抱える問題の把握

顧客満足度調査、ネット・プロモーター・スコア、カスタマー・エフォート・スコアは、ビジネスが顧客の問題点を把握するために使用する一般的なツールです。これらの評価により、顧客は良いことも悪いことも含めて的を絞ったフィードバックを提供することができ、企業はそれをカスタマー・エクスペリエンス全体の改善に利用することができます。製品やデジタル・プラットフォームのユーザビリティ・テスト、ミステリー・ショッピング、オンライン・レビューや評価の分析も、ビジネスで不足している点を認識し、改善方法や改善点を理解するための方法です。

2. エクスペリエンスのパーソナライズ

パーソナライズは、ターゲットを絞ったマーケティング、カスタマイズされた製品の推奨、またはカスタマイズしたコミュニケーションが含まれることがあり、データを活用してより適切なカスタマー・エクスペリエンスを生み出します。データ分析や機械学習などのテクノロジーにより、企業は個々の顧客の好みに合わせて製品の推奨、コンテンツ、マーケティング・メッセージをカスタマイズし、顧客とのやりとりをより適切で効果的にすることができます。このようなカスタム・フィットをもたらすことで、 顧客とその愛用ブランドとの間に長期的な感情的結びつきを育むことができます。

3. カスタマー・エクスペリエンスの監査

カスタマー・エクスペリエンス監査は、ビジネスが自社のCX戦略精全体を精査し、改善が必要な製品やサービス、やりとりを特定するための方法です。CX監査では、さまざまなタッチポイントとプロセスを体系的に評価し、それらが顧客の期待に一致しているかを確認する必要があります。たとえば、CX監査では、顧客がビジネスを発見した方法、そのビジネスから購入することを選択した理由、販売・納品プロセス、カスタマーサービスとのやりとり、販売後の顧客とのあらゆるコミュニケーションを確認することができます。 CX監査が正しく行われれば、カスタマー・インサイトが向上し、カスタマー・ジャーニーで摩擦となる点の削減を支援することができます。

4. カスタマー・ジャーニーのマッピングの使用

カスタマー・ジャーニー・マップは、顧客とビジネスのやりとりを最初から最後まで示すために使用されます。カスタマー・ジャーニー・マッピングでは、カスタマー・ライフサイクル全体を詳細に描き出すことで、カスタマー・タッチポイント、やりとり、問題点を理解し、顧客のエクスペリエンスを現実的に可視化します。これは、ビジネスが顧客とブランドとのやりとりを可視化し、改善点を特定することを支援し、基本的に理想的なカスタマー・ジャーニーへの最適な道筋をグラフに示します。また、カスタマー・ジャーニー・マッピングにより、ビジネスは顧客の見解を真摯に検討し、その視点から顧客とビジネスとのやりとりを見ることが必要になります。

5. カスタマーサービスの向上

カスタマーサービス担当者、オンライン・チャット・サポート、セルフサービス・オプションと顧客とのやりとりの質と効果は、カスタマー・エクスペリエンス全体を左右する可能性があります。カスタマー・ニーズへの共感や理解が不十分な場合、顧客は過小評価されていると感じることになる可能性があり、一方、十分なトレーニングを受けていないサービス担当者は、顧客からの問い合わせや懸念への対応に苦労する可能性があります。カスタマー・エクスペリエンスを向上させる方法としては、顧客からの問い合わせの解決にかかる時間の短縮、問題解決に必要なデータの調整と提供、魅力的なセルフサービス・オプションの提供、サポート・チャネル全体にわたり緊密な連携を確保することなどが挙げられます。

6. エクスペリエンスを高めるテクノロジーの導入

モバイル・アプリの不具合、ウェブサイトのパフォーマンス低下、デジタル・プラットフォームの不便なユーザー・インターフェースは、顧客を苛立たせ、企業の信用を失墜させる可能性があります。これらは、パフォーマンスの低いテクノロジーにより企業のCXの取り組みが損なわれかねない多くの要因のほんの一部に過ぎません。スケーラブルなクラウド・インフラストラクチャ、マルチクラウド・コンピューティング環境、クラウド統合サービスなどのテクノロジーは、企業が顧客にシームレスなデジタル・エクスペリエンスを効果的に提供するために必要なアプリケーションとデータの組み合わせを管理できるよう支援します。

7. 顧客の期待を常に上回るイノベーション

顧客は、企業がイノベーションに対応することを期待しており、オンライン・バンキングやB2Bの調達におけるエクスペリエンスを、ファストフードのオーダー・アプリでもフィットネス・アプリでも、すべての消費者向けアプリケーションのエクスペリエンスと比較しようとします。そのため、企業には期待に応えられないことがないよう、定期的に機能を追加できるコンピューティング・インフラストラクチャが必要です。データ分析を利用したパーソナライズ、対話型AIチャットボットおよびバーチャル・アシスタントによるカスタマーサービス強化、最適化されたウェブサイト、直感的なモバイル・アプリケーションはすべて、カスタマー・エクスペリエンスの向上に貢献する可能性があります。

8. オムニチャネル戦略の構築

ソーシャルメディアであれ、メールであれ、オンライン・チャットであれ、消費者がブランドとやりとりする方法に関する好みは非常に多岐にわたります。通常、消費者はただ、その瞬間に最も便利だと思う選択肢を選びます。つまり、経営者はさまざまなオムニチャネル・タッチポイントを一度に管理し、顧客が必要なときに適切な情報を確実に提供できるよう準備する必要があります。これらのチャネルを連携させるには、データとアプリケーションの効果的な統合によるコミュニケーション・ギャップの解消と、カスタマー・ジャーニー全体を通しての一貫性と継続性の提供を支援することが必要となります。

ビジネスは、カスタマー・エクスペリエンスを理解し、改善するために、さまざまな方法を組み合わせて使用します。有意義なカスタマー・エクスペリエンスの可能性を高めるために、ビジネスはまず適切な戦略を決定し、次に顧客とのやりとりの実行と継続的な強化を支援する適切なテクノロジーを見つけ出す必要があります。

Oracle Cloudによる有意義なカスタマ・エクスペリエンスの提供

テクノロジーの観点から見ると、カスタマー・エクスペリエンスは、アプリケーション、データ・ソース、およびプラットフォームのさまざまな組み合わせを利用しています。クラウド・テクノロジーは、運用上の複雑さと、CXイノベーションの妨げとなることがよくあるITオーバーヘッドを削減することができます。Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の高いパフォーマンス、セキュリティ、および信頼性により、ビジネスでは従来のエンタープライズ・アプリケーションからクラウドネイティブなアプリケーションまで、幅広いワークロードを実行し、顧客需要の増減に応じてリソースをスケールできます。OCI統合サービスにより、カスタマー・エクスペリエンスの向上に必要となる、顧客、従業員、システム間での自動化と状況に応じた会話のレベルが可能になります。OCIを利用することで、ビジネスはアプリケーション、データ、パートナー・エコシステムを同期させ、イベントベース、マルチモーダル、エンドツーエンドのプロセス・オートメーションと継続的なCXイノベーションを実現できます。

カスタマー・エクスペリエンスの向上に関するFAQ

カスタマー・エクスペリエンスの5つのCについて教えてください。
カスタマー・エクスペリエンスの5つのCとは、有意義で記憶に残るカスタマー・エクスペリエンスを生み出すための重要な側面を示すフレームワークです。そうした側面には、顧客中心主義、一貫性、コミュニケーション、カスタマイズ、文化が含まれます。

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カスタマー・エクスペリエンスを最適化するには、顧客をより深く理解するためのカスタマー・セグメンテーションとペルソナ・マッピング、関連製品やサービスを提案するためのパーソナライズされたやりとり、そして顧客行動を理解し、それに応じてエクスペリエンスをカスタマイズするための分析が必要になることがあります。

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