小売業向けOracle Data Platform

価格最適化

小売最適化の課題と機会

小売業者は、収益性を最大化しながら市場でのポジションを維持するために、増大する課題に直面しています。価格設定は長い間、小売業者が売上を促進し、新規顧客を獲得し、既存顧客を維持し、市場シェアを拡大するために利用できる重要な手段の1つでした。しかし、この10年間におけるeコマースとオムニチャネル・ショッピングの台頭により、消費者にとって買い物をすることと、事前に複数の小売店の価格を比較することがかつてないほど容易になったため、その重要性はさらに高まっています。

情報が不正確、断片的、場合によっては過多であることから、小売業者による適切な価格決定が困難になることがあります。また、戦略的な価格設定は、小売業者が競合他社との差別化を図る上で重要な手段になりえますが、十分な情報に基づかない価格設定の判断は、収益、収益性、顧客満足度に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。多くの小売業者の利益率が低いことを踏まえると、製品の売上、収益性、市場シェアを最大化するために最適な価格を決定することは非常に重要です。しかし、データに課題があるため、多くの小売業者は需要や価格変更が売上や利益率に与える影響を理解しないまま価格決定を行わなければならず、品揃え全体にわたってこのような情報不足の価格決定を何万回も行うことを余儀なくされます。

多様なデータセットを統合し、高度な分析と機械学習を大規模に適用する機能により、小売業者は競争力のある価格設定、心理的価格設定、プロモーション価格設定、価格バンドル、そしてますます動的な価格設定など、価格戦略の幅を広げ、適切な価格戦略(または戦略の組み合わせ)を特定し、価格設定を最適化することができます。そうすれば、適切な時期に適切なチャネルを通じて、適切な顧客に適切な価格で適切な製品とサービスをプッシュすることができるのです。

高度な分析と機械学習で小売店計画を簡素化

Oracle Data Platformが小売業者による個々の商品の適切な価格設定の特定、商品ライフサイクル全体を通しての価格設定の最適化、および価格と数量と市場時間の関係の把握を支援するためにどのように構築されているのかをご説明します。

価格最適化の図と説明

この図は、小売業向けOracle Data Platformを使用して価格の最適化をサポートし、小売業者が収益性を最大化しながら市場ポジションを維持できるように支援する方法を示しています。このプラットフォームは、以下の5つの柱を掲げています。

  1. 1 データソース、検出
  2. 2 取込み、変換
  3. 3 永続化、キュレーション、構築
  4. 4 分析、学習、予測
  5. 5 測定、実行

Data Sources、Discoveryの柱には、3つのカテゴリーのデータが含まれます。

  1. 1. ビジネス・レコード(ファーストパーティ)データは、販売取引、顧客、サプライヤ、在庫、POSシステム、収益、マージンデータから構成されます。
  2. 2. アプリケーション・データは、ERP、SCM、CX、WMS、Fusion SaaS、NetSuite、Oracle E-Business Suite、PeopleSoft、JD Edwards、SAP、Salesforce、Workdayアプリケーションから得られます。
  3. 3. サードパーティ・データには、競合他社のデータ、Oracle Advertisingからのデータ、経済データ、ソーシャル・データが含まれます。

取込み、変換の柱は、3つの機能で構成されます。

  1. 1. バッチ取り込みには、OCI Data Integration、Oracle Data Integrator、DBツールなどを使用します。
  2. 2. 一括転送には、OCI FastConnect、OCI Data Transfer、MFT、OCI CLIを使用します。
  3. 3. 変更データ取得にはOCI GoldenGateを使用します。

3つの機能はすべて、永続化、キュレーション、構築の柱の中でのクラウド・ストレージやデータレイクに一方向で接続します。

永続化、キュレーション、構築の柱は、4つの機能で構成されます。

  1. 1. サービング・データストアには、Oracle Autonomous Data Warehouseを使用します。
  2. 2. クラウド・ストレージやデータレイクにはOCI Object Storageを使用します。
  3. 3. バッチ処理にはOCI Data Flowを使用します。
  4. 4. ガバナンスにはOCI Data Catalogを使用します。

こうした機能は、柱の中で接続されています。クラウド・ストレージやデータレイクはサービス・データストアに一方向に接続され、バッチ処理にも双方向に接続されます。

1つの機能が分析、学習、予測の柱にに接続します。サービング・データストアは、分析と可視化機能と機械学習機能の両方に接続されています。

分析、学習、予測の柱は、2つの機能で構成されます。

  1. 1. 分析、可視化は、Oracle Analytics Cloud、GraphStudio、およびISVを使用します。
  2. 2. 機械学習には、OCI Data Science、Oracle ML、Oracle Machine Learning Notebooksを使用します。

測定、行動の柱 は、ダッシュボードおよびレポート、アプリケーション、機械学習モデルの3つの利用方法で構成されます。

ダッシュボードとレポートは、売上、コスト・パフォーマンス、在庫水準、競合他社の価格から構成されます。

アプリケーションは、価格弾力性モデル、および価格設定ルールで構成されます。

機械学習モデルは、顧客行動パターン、市場固有の価格設定から構成されます。

3つの中心的な柱である、取り込み、変換と永続化、キュレーション、構築と分析、学習、予測は、インフラ、ネットワーク、セキュリティ、IAMでサポートされています。



小売業者が価格を最適化することを可能にするために、データをアーキテクチャに注入する方法は主に3つあります。

  • プロセスの始めに、在庫過多や在庫不足にならないよう、全体の在庫ポジションを把握する必要があります。このデータを使用して、在庫を移動させたり、在庫切れを回避するために価格を調整するかどうかを決めることができます。そのためには、OCI GoldenGateを使用して、すべての製品ラインまたはサブセットの運用データベースから、ほぼリアルタイムの倉庫在庫データを変更データ取得で取り込み可能にします。
  • これで、顧客(嗜好、行動、購買パターンなど)、コスト(製造コストや販売コストなど)、小売需要(POS情報など)に関連するデータセットを追加できるようになりました。顧客行動の変化を予測するためには、小売業者は市場の状況(需要と供給など)、経済動向、消費者心理も理解する必要があります。小売業者はまた、競争力を維持するために、競合他社の価格やプロモーションをモニターすることも必要です。これらのデータセットは、多くの場合、大量のオンプレミス・データから構成されており、ほとんどの場合、バッチ取り込みが最も効率的であることが一般的です。販売時点のデータについては、Oracle Data Integratorを使用して4時間サイクルでデータを取り込みます。
  • 一括取り込みは、最初のデータをロードするときや、オンプレミスのデータストアからデータを移行するときに使用できます。

データの永続化と処理は、3つのコンポーネントで構築されています。

  • 取り込まれた生データはクラウド・ストレージに保存されます。在庫水準、ジオ・マッピング・データ、および商品参照データといった現在永続化されているデータのバッチ処理には、OCI Data Flowを使用します。処理されたデータセットはクラウド・ストレージに戻され、永続化、キュレーション、分析が行われ、最終的には最適化された形でデータ・ストアにロードされます。
  • これで、Oracle Autonomous Data Warehouse が提供するサービング・データストアに、キュレーションとクエリ・パフォーマンスのために最適化されたリレーショナル・データ形式で保存される準備が整った処理済みデータセットが作成されました。これにより、価格、需要プロファイル、在庫水準、場所によって商品を特定し、返品することが可能になります。

分析、学習、予測機能は、2つのテクノロジーで構築されています。

  • 分析および可視化サービスは、次の機能を提供します。
    • 記述分析では、(ヒストグラムやチャートで現在の傾向を説明して)あらかじめ定義されたルールを使用して、販売パフォーマンス、在庫水準、競合他社の価格設定などの特定の基準に基づいて価格を調整する、ルールベースの価格設定アルゴリズムの開発をサポートします。例えば、小売業者は、在庫期間が30日以上ある商品の価格を10%下げるというルールを設定することができます。
    • 予測分析(将来の出来事を予測し、傾向を特定し、不確実な結果の確率を決定する)は、価格と需要の相関関係を特定するために過去の販売データを使用します。小売業者はこの分析を利用して、価格の変化が需要にどのような影響を与えるかを予測し、それに応じて価格を調整することができます。さらに予測分析は、統計モデルを使用して、価格の変化に対する需要の感度を測定する価格弾力性モデルを提供することができます。小売業者はこの分析を利用して、売上と収益性を最大化するための最適な価格帯を特定することができます。
    • 処方的分析(最適な意思決定をサポートするために適切なアクションを提案)は、動的価格設定に活用できます。このアルゴリズムは、在庫水準、競合他社の価格設定、顧客行動などのリアルタイムのデータを使用して、リアルタイムで価格を調整します。小売業者はこれを利用して、市場の変化に迅速に対応し、価格を最適化して最大の利益を上げることができます。
  • 高度な分析と同時に、機械学習モデルの開発、トレーニング、導入が行われます。これらのモデルは、人工知能を使用して大量のデータを分析し、価格を最適化するために使用できるパターンと傾向を特定します。小売業者は、機械学習アルゴリズムを使用して、顧客行動を予測し、価格設定の機会を特定し、複数の商品と市場にわたって価格を最適化することができます。
  • オラクルのキュレーション済み、テスト済み、かつ高品質なデータおよびモデルは、お客様のガバナンスルールやポリシーを適用し、データメッシュ・アーキテクチャ内の「データ製品」(API)として公開し、小売業者の組織全体に配布することが可能です。

小売データ・プラットフォームで収益性を向上

適切な価格戦略は、売上、収益性、市場シェア、顧客満足度を向上させますが、それを策定するためには、小売業者は在庫レベル、注文、需要、現在の価格設定やプロモーション、360度の顧客ビューにリアルタイムでアクセスする必要があります。複数のソースからのデータを統合し、高度な分析をサポートするデータ・プラットフォームを使用することで、小売業者は、すべての販売チャネルで価格を企業目標やカテゴリ目標に合わせながら、価格戦略を商品レベルで簡単に調整することができます。この柔軟性により、小売業者は目標マージン、競合価格との整合性、または異なる市場間での好ましい価格設定関係に基づいて通常価格を提案し、プロモーションや値引き戦略の価値を最大化することが可能になると同時に、個々の消費者があらゆるタッチポイントで価格設定の一貫性を体験できるようにすることで、優れたオムニチャネル・カスタマージャーニーを提供することができます。

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