医療業界における人事の重要性

Margaret Lindquist |医療コンテンツ・ストラテジスト| 2023年3月23日

あらゆる医療機関の基盤は、患者の転帰や満足度を直接左右する介護士やサポート・スタッフといった人材です。医療業界の人事チームは、そうした人材の採用とオンボーディング、ポジティブで思いやりのある職場文化の醸成、従業員のキャリアアップの支援、組織と従業員が安全、プライバシー、トレーニング、その他のポリシーや規制を遵守することへの責任を担っています。深刻な人手不足、従業員の燃え尽き症候群の蔓延、人件費の高騰といった難題に立ち向かうため、医療業界の人事チームは、慎重かつ革新的なプログラムやポリシーを策定する必要があります。

ヘルスケア業界における人事とは

医療機関の人事グループは、募集、採用、優秀な人材を引き付け維持するために必要な給与や福利厚生に関する上級経営幹部へのアドバイスなど、典型的な人事機能を担っています。医療業界の人事チームも、業界特有の特に難しい課題に直面しています。認証、安全、プライバシーなどに関する連邦政府や州政府のさまざまな規制を伝え、追跡する役割を担っています。彼らは、人材獲得競争が特に激しく、候補者が他の選択肢を数多く持つ業界で採用活動を行っています。日々ストレスの多い状況に直面し、物理的な安全対策や精神的なサポートが必要な人員を監督しています。IT部門と連携して、患者や従業員の記録のプライバシーを保護します。また、マネージャーと協力して、スタッフのスケジュール管理プロセスを調整し、燃え尽き症候群を軽減するためのプログラムを開発したり、パフォーマンスの向上や患者の転帰に応じた報酬やボーナス制度を設計するなど、患者の満足度を向上させ、良好な転帰をもたらすプログラムを策定します。

主なポイント

  • 医療業界の人事チームは、法的要件を満たすためだけでなく、COVID-19の流行により看護師や医師などの医療専門家が深刻な不足に陥る中、活気ある労働力を構築するために、従業員のトレーニングおよび開発プログラムを開発、追跡、実施することが必要とされます。
  • ポジティブな職場文化の構築と維持は、新しい人材を引き付け、既存の従業員を魅了し、イノベーションを促進する鍵です。労働力文化に満足し評価されていると感じている従業員は、患者のケアを優先する傾向にあるため、これは患者の転帰や満足度の向上にもつながる可能性があります。
  • 人事には、徹底したオンボーディングと従業員育成プロセスの一環として、トレーニング・プログラムを作成し、参加を義務付けるという任務があります。従業員のトレーニングが十分であるかどうかの違いは、患者の生死を左右することもあります。

医療業界の人事について

医療業界の人事マネージャーは、他の業界と同じ責任に加え、医療に特化した多くの責任を負っています。例えば、離職率の高い従業員の管理、従業員の心身の健康へのサポート、認証コンプライアンスの監視、(組織の財務パフォーマンスではなく)患者の転帰や満足度に基づく成果の測定などが挙げられます。

医療業界の人事チームは、最も優秀な人材を確保するための採用活動を展開し、競争の激しい労働市場において、上級経営幹部と協力して魅力的な報酬やインセンティブ・プログラムを設定します。また、従業員が法的に義務付けられた資格を取得していることを確認します。従業員が必要とする人事ツールやシステムを確保するために、テクノロジー・トレンドに常にアンテナを張っています。おそらく最も重要なことは、従業員同士が協力し合い、経営陣に安心して悩みを打ち明け、自分が遂行した重要な業務が評価されていると感じることができる、ポジティブな職場文化を醸成することです。これは、従業員の離職率を下げ、患者に最高のケアを提供するために理想的な環境です。

医療業界における人事の重要性

従業員の採用、維持、育成が非常に困難になりがちな業界において、人事部門の重要性は計り知れません。医療業界の人事チームは、政府による複雑な規制や労働組合との契約、そして右肩上がりの人件費に対処しなければなりません。また、物理的な安全性、仕事のストレス、人員不足に関連する独自の課題にも直面しています。これらのチームは、組織がこれらの課題を解決するために、以下の主要な4項目に重点を置いて支援することが非常に重要です。

従業員に対する支援

人事部は、アンケートやフォーカス・グループ、トレーニング・プログラムなどから収集した膨大な量の従業員の意見をもとに、報酬からスケジュール、ウェルネスに至るまで、従業員を支援することができる特別な立場にいます。そのため、従業員の要望やニーズを経営幹部に伝えるだけでなく、通常よりも高い離職率や組合活動など、従業員の行動に対してシニアリーダーが不意打ちを食らうことがないようにします。

離職者数の低減

医療機関の離職率を下げるためのベストな方法は一つではありませんが、すべての組織が取るべき最初の一歩があります。 それは、離職した人たち、特にパフォーマンスの高い人たちに目を向け、彼らを引き留めるにはどうすればよかったかを考えることです。フレックスタイム制、手厚い研修と昇進の機会、仕事の煩雑な部分を自動化するテクノロジー、より良い報酬など、ベストプラクティスのチェックリストに照らして、これらの行動を評価します。従業員がワークライフ・バランスを保ち、重要で厳しい仕事をこなしていることに感謝されていると感じられるようにすることを目的として、退職面談データの分析に加え、現従業員を対象に組織の良い点、改善点を調査します。アメリカ国立生物工学情報センターの研究によると、ポジティブな職場文化は従業員エンゲージメントを高め、欠勤を減らし、患者と医師との関係にプラスの影響を与えます。

コンプライアンスの維持

医療業界の人事チームは、業界を統制するさまざまな法律を組織が遵守していることを保証する責任を負っています。米国では、医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA、患者のデータを保護)、救急医療と労働に関する法律(EMTALA、支払い能力に関係なく救急病院に到着した人を治療することを病院に義務付ける)、患者の安全と質の向上に関する法律(PSQIA、医療ミスや危険な状態を報告する医療従事者を保護)、経済的および臨床保健に関する医療情報技術法(HITECH、医療の質、安全、効率を改善するためにテクノロジーを使うことを促進)などの法律が挙げられます。また、特定のタイプの医師に適用される規制も無数に存在します。例えば、マサチューセッツ州では、呼吸療法士は2年に1度、15時間継続の教育を受ける必要があります。人事には、さまざまなポジションの要件を追跡し、社員が常に最新の情報を入手できるようにする責任があります。また、組織の法務チームと密接に連携し、さまざまな法律を遵守し、訴訟の可能性を最小限に抑える方法について従業員を教育するプログラムを開発および実施します。

医療業界の人事の10つのベストプラクティス

医療業界の人事には、人の雇用や解雇、福利厚生や給与の管理だけでなく、さまざまな業務があります。医療業界は、政府の規制強化、従業員離職の多発、テクノロジーを駆使した新たなケア提供およびモニタリング手法など、大きな変革期を迎えています。これに対し、人事マネージャーは新たな戦略、プログラム、ポリシーを策定する必要があります。10のベストプラクティスをご覧ください。

1. 学習と前進の機会を提供

新規従業員に対するトレーニングや既存従業員に対するトレーニングの継続は、医療業界の必須事項です。従業員のトレーニングが十分かどうかの差は、生死にかかわる問題です。人事には、徹底したオンボーディングと従業員育成プロセスの一環として、トレーニング・プログラムを作成し、参加を義務付ける責任があります。そのメリットは、基本的な法令遵守から、従業員の定着率の向上、患者ケアの改善まで多岐にわたります。トレーニングの更新期限を通知し、その進捗を追跡するソフトウェアの使用は不可欠です。

2. 柔軟な働き方の選択肢を提供

「Future Health Index 2022」レポートによると、医療業界で働く人々の要望の第1位は、働き方の柔軟性を向上させることです。雇用主は、役割に応じたリモート勤務の選択肢を提供したり、従業員が労働時間をより自由にコントロールできるようにしたり、スケジュール管理ソフトウェアを使用して、従業員がモバイル・デバイスのアプリを通じてシフトを入れ替えられるようにするなど、さまざまな方法で実現することができます。最新のHuman Capital Management (HCM) スケジューリング・アプリケーションは、個々の労働者の資格や経験に基づいて、利用可能なシフトをフィルタすることもできます。

3. サイニング・ボーナスを検討

業界全体の人手不足の中、病院の3分の2は、優秀な臨床医や看護師などの人材を採用するためにサイニング・ボーナスを利用していることが、人材紹介会社Avant Healthcare Professionalsの調査でわかりました。これは、パンデミック前は40%以下だったこのボーナスの利用が、大幅に増加したことを意味します。看護師求人情報サイトの掲載内容の分析に基づく、看護師のサイニング・ボーナスの平均額は約15,000USドルです。このボーナスは、2つの異なる医療業界からのオファーの間で揺れ動く候補者を確保するための最も有効な手段です。例えば、転居費用でオファーを受けることが難しい場合など、サイサイニング・ンボーナスが候補者の獲得に不可欠なケースもあります。

4. 市場をリードする報酬パッケージを構築

市場をリードする報酬パッケージは、給与やボーナスの枠を超えたものです。従業員は、医療保険、歯科保険、生命保険、有給休暇、退職金制度などの基本的な福利厚生を期待しています。しかし、その他の報酬手段としては、ジムの会員権、トレーニングの払い戻し、資金計画のリソース、育児補助金、通勤手当などがあります。賢明な医療業界のリーダーが最初に行うべきことは、従業員と話し合い、優先順位を理解することです。驚くようなことが分かるかもしれません。

5. 文化を重視

ポジティブな職場文化の構築と維持は、求職者を引き付け、既存の従業員を維持し、イノベーションを促進する鍵です。一方、労働力文化に満足し、評価されていると感じている従業員は、患者のケアを優先する傾向にあります。実際、英国国民保健サービスの調査から、組織文化が機能不全に陥った結果、患者の死亡率が増加したことが明らかになっています。医療機関が職場文化を改善するためにできることには、包括的で魅力的な従業員オリエンテーション・プロセスの構築、メンターシップ・プログラムの導入、従業員の功績(大小問わず)の認識と報酬、アンケートやライブでのチーム構築および戦略会議による上級経営幹部とのオープンな対話の促進などがあります。

6. テクノロジーと自動化を活用

多くのテクノロジーが医療を変革し、コスト削減や臨床医の満足度、患者のエクスペリエンス、健康状態の改善をもたらす可能性があります。遠隔医療、ウェアラブル・デバイス、モバイル・ヘルス・アプリケーションなどの新しいテクノロジーの中には、臨床医と患者を直接つなぐものもあり、モバイル・スケジューリングや人材管理アプリケーションは管理業務を自動化し、スタッフによるパーソナライズされたキャリアパスの形成を可能にします。IT部門と緊密に連携して、社員がこれらの新しいツールを使うために必要なトレーニングを受けられるようにすることも人事の仕事です。

7. 燃え尽き症候群の防止を重視

Washington Post/Kaiser Family Foundationの調査によると、医療従事者の燃え尽き症候群は史上最高となっています。医療従事者の55%が燃え尽き症候群(慢性的な職場ストレスによる精神的・肉体的疲労と定義)の症状を訴え、中でも18歳から29歳の労働者の割合が69%と最も高いことがわかりました。労働者のストレスを軽減するために、医療機関の雇用主は、従業員が自分のスケジュールをオンデマンドで閲覧できるようにし、ワークライフ・バランスの管理を支援しています。例えば、長時間のシフト(12時間以上)の制限、2〜3時間ごとの休憩、仮眠室の設置など、疲労した従業員に対応する戦略やサポート体制を整備しています。病院によっては、疲労の兆候を監視し合う「疲労バディ」を導入しているところさえあります。医療関機関では、従業員がシフトを分けたり、ダイナミックなシフト変更をしやすくする工夫もしています。従業員が個人的にアクセスできるメンタルヘルス・リソースを紹介している組織もあります。そうした組織はまた、管理職に共感型リーダーシップのトレーニングを行い、場当たり的なチェックインではなく、定期的に従業員と関わるように促しています。

8. ジョブ・セキュリティを提供

最新のU.S. News & World Report Best Jobsランキングによると、最も安全な仕事20のうち11が医療関係で、呼吸療法士、心臓血管技術者、疫学者が上位にランクインしています。つまり、最高レベルの専門職の人たちにとって、雇用の維持は大した懸念点ではありません。しかし、非臨床医療職の労働者は雇用の安定性が低いため、人事が学習および開発プログラムを提供し、異なる部門のニーズの変化に応じて組織内のキャリア移動性を促進する機会を創出しています。

9. チームを自己管理

自己管理型のチームでは、従業員が責任を共有し、ほとんどあるいは全く監督されることなく、特定の目標を達成するために仕事を計画し実行します。このモデルでは、チーム・メンバーが互いにコミットし、そのコミットメントが仕事の原動力となります。自主管理型チームには上司はいないものの、上下関係や説明責任はあります。特定のスキルを持つ労働者が、関連する業務のリーダー的役割を担います。自己管理型チームの利点は、 従業員エンゲージメントの向上とコスト削減です。また、Journal of Health Organization and Managementによると、自己管理型チームはリソース配分がより効果的であるため、タスクや状況への取り組み方がより柔軟であるとされています。

10. 法律やコンプライアンスに関する最新情報を入手

医療業界の人事チームは、患者データのプライバシーを保護する前述のHIPAA、支払い能力がない場合でも救急外来患者の治療を義務付けるEMTALA、安全でない職場環境を報告する医療従事者を保護するPSQIAなど、業界固有の法律や規制を常に把握および遵守するために、組織の法務部門と密接に連携することが求められます。これらの連邦法に加え、州によって異なる法律やポジションごとのライセンス要件が多数存在します。コンプライアンス違反に対する罰則は、高額な訴訟や罰金などがあります。

Oracle Cloud HCMで医療スタッフのエンゲージメントを維持し、離職率を低減

優秀な人材の獲得競争、給与の上昇、ワークライフ・バランスに対する従業員の要求の高まりなどは、医療機関の人事担当者が日々直面する課題のほんの一部に過ぎません。医療機関は、Oracle Fusion Cloud Human Capital Managementに組み込まれた 専門業界機能使用して、雇用の自動化と改善、スタッフのスケジュール管理の簡素化、スタッフに必要なトレーニングを提供、従業員同士や管理者との連携を支援し、これらはすべて、より良い患者のケアという最終目標の達成に寄与します。また、これらのHCMサービスはクラウドで提供されるため、スタッフはデスク、フロア、自宅、外出先など、どこからでもアクセスすることができます。

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医療業界における人事の重要性に関するFAQ

医療業界における人事の例
採用、福利厚生管理、解雇など、人事担当者なら誰もが経験するようなプロセスに加え、医療業界の人事担当者は、進化する政府規制や認証要件、労働安全上の不安、組織のあらゆるレベルで蔓延する従業員の燃え尽き症候群にも対応しなければなりません。

病院における人事の役割
病院の人事チームは、募集や採用、給与や福利厚生に関する上級経営幹部へのアドバイスなど、一般的な人事業務を行います。病院の人事にとっては、政府の研修、安全、プライバシーなどの規制を追跡して実施すること、ITと協力して患者の健康に関する記録を保護すること、従業員が不適切な行為に対して責任を負い、紛争が公正に解決されるように懲戒プロセスを開発することも責任範囲に含まれます。

医療業界の人事が現在抱えている課題とは
医療業界における最大の人事課題は、業界全体の人手不足の中で、優秀な人材、特に専門医や看護師を募集および維持することです。また、上昇する給与水準の管理、スタッフの燃え尽き症候群の緩和などの課題もあります。

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