医療従事者の定着率を向上させるための7つの戦略

Rob Preston | コンテンツ・ディレクター | 2023年3月17日

医療機関は、あらゆる専門レベルの従業員の維持に苦労しています。中でも、正看護師、認定看護助手、患者ケア技術者、ホームヘルパーなどの離職率が最も高くなっています。医師、医師助手、セラピストなど第一線で働く人々の離職率が高い主な理由は、パンデミックによる燃え尽き症候群、従業員の高齢化、そして業界全体の人手不足の中、優秀な人材を獲得するための激しい競争などが挙げられます。

医療機関は、この競争の激しい労働市場で人材を確保するために、より思慮深く、創造的な戦略を導入しなければなりません。そうしなければ、深刻な事態を招きかねません。特に遠隔地の病院では、有能な医療スタッフの不足により、診療科全体の閉鎖を余儀なくされ、廃業に追い込まれた例もあります。

しかし、希望はあります。医療機関は、ここで取り上げた7つの戦略を実施または拡大することで、従業員定着率を改善することができます。

従業員定着率とは

離職率の反対語である「従業員定着率」は、ざっくりと言えば、組織が従業員を維持する能力を意味します。通常、雇用主は毎年、勤続1年以上の従業員数を年初の従業員総数で割り、その数に100を乗じて定着率を算出します。その年に採用された従業員は考慮されません。

組織は、さまざまな方法で人材を維持しようと努めています。他社より魅力的な給与や福利厚生を提供することは不可欠ですが、それは出発点にすぎません。その他の重要な維持戦略としては、友好的かつ協力的な職場文化の醸成、トレーニングや個別のキャリア指導の提供、フィードバックの奨励、従業員の懸念やニーズへの対応、柔軟なワークスケジュールや条件の提供、適切な人材の採用、また、従業員に感謝の気持ちを伝えることなどがあります。

主なポイント

  • 看護師、医師、その他の医療従事者の離職率が高いのは、業界全体の医療従事者不足に原因があります。
  • 医師や看護師などの医療従事者の不足は、過労やストレス、燃え尽き症候群を引き起こし、離職の原因となり、さらには人手不足を深刻化させます。
  • 医療機関は、この競争の激しい労働市場で人材を維持するために、よりクリエイティブな戦略を導入する必要があります。また、これらの戦略に、従業員の採用、オンボーディング、スケジュール管理、エンゲージメント、報酬の改善、燃え尽き症候群を助長しがちな管理負担の軽減などを含めることが重要です。

医療従事者の定着率が問題となっている理由

医療従事者の定着率が悪い原因は、医療従事者やサポートスタッフの数が少なすぎて、医療従事者や患者の、既存および予想されるニーズを満たすことができないということにあります。この人手不足は、新型コロナウイルスのパンデミック以前から存在しており、人口の増加や、人口統計および疾病パターンの変化、優れた医学教育プログラムやトレーニング施設へのアクセスがしにくいこと、また医師の離職率が高く人事チームによる補充が間に合わないことなど、多くの要因に起因しています。

世界保健機関(WHO)(PDF)は、2030年までに医師や看護師など第一線の医療従事者が世界で1800万人不足すると予測しています。この予測は、パンデミックが起こる前のものです。パンデミックでさらなる医療従事者が過労や燃え尽き症候群で離職したことにより、この不足はさらに深刻化しています。ヘルスケア・コマーシャル・インテリジェンス・プラットフォームのDefinitive Healthcareの調査によると、2021年には約34万人の米国の医療従事者が離職したとのことです。また、2020年以降、医療従事者の5人に1人が仕事を辞めたとも推定されています。同調査によると、医療従事者の約半数が2025年までに離職を予定しているとのことです。

データによると、医療従事者の離職率問題は悪化しているようです。2021年、米国の224の病院を対象に行ったAdvisory Boardの調査によると、フルタイムおよびパートタイムスタッフの離職率が16年間のベンチマークで最も高く、離職率の中央値が2020年の15.5%から2021年には18.8%に上昇したことがわかりました。また、米国の272の病院を対象とした調査である2022 NSI National Healthcare Retention & RN Staffing Report(PDF)によると、これらの病院における2021年の従業員の平均離職率は25.9%で、前年より6.4%上昇しています。

医療従事者の定着率を向上させるための7つの方法

最新テクノロジーを活用する医療機関では、さまざまなプログラム、ポリシー、プロセスを導入し、従業員が評価および感謝されていると感じられる職場環境と文化を構築するために、幅広い取り組みを行っています。ここでは、ポジティブな変化をもたらすための、7つの維持戦略をご紹介します。

1. 適切な人材の採用

人材の維持は、まず採用から始まります。そのため、組織の文化に適合しそうなスキルや才能のある人材を見極める能力が重要となります。職種にもよりますが、医療機関が欠員を補充するには、3,000~7,000米ドルの費用と数か月から1年近い時間がかかります。そしてこの費用には、補充ができるまで一時的に対応する既存スタッフへの負担は考慮されていません。このような理由から、生産性が高く、長期にわたり働いてくれる人材を見つけるのが得策です。AIベースの人事システムは、組織がそのような人材を特定できるよう支援します。

2. 目的を持ったオンボーディング

あらゆる業界で、新入社員の3分の1近くが最初の6か月以内に離職しています。その主な理由は、従業員が、無視された、圧倒された、過小評価された、などと感じることです。雇用主は、計画的なオンボーディング・プログラムを用いて、新入社員が最初から自信を持てるようにすることで、このような問題を解決できます。

少なくとも、新入社員が、簡単にフォームに記入したり、システムやポリシー、および手順についてのトレーニングを受けたりできるようにする必要があります。これは規制が厳しいヘルスケア業界では特に重要です。最新の人材管理(HCM)システムの対話型デジタル・アシスタントは、新入社員が基本的な知識を習得するのに役立ちます。

一方、医療機関側は、新入社員との末永い関係を迅速に築けるよう、やりとりをパーソナライズする必要があります。例えば、新入社員には早い段階でメンターをつけ、初日には社内ツアーとチームランチを企画したり、同僚やシニアリーダーに新入社員を紹介したりします。また、組織全体の電子メールで新入社員を正式に紹介して、興味深いバックグラウンド情報をシェアしたり、初期の課題に関するフィードバックを定期的に尋ねたり、成功を讃えたりします。

3. スケジューリングに柔軟性を持たせる

十分な人手がない中、医療従事者に長時間労働を強いることは、医療従事者を疲弊させ、競合他社や他の職種に流出させる元凶となります。医師、看護師、サポートスタッフの中には、固定された予測可能なスケジュールを好む人もいますが、その一方、いつ、どこで働くかについて、多少の柔軟性と多様性を好む人もいます。誰もが健康的なワークライフ・バランスを望んでいるのは間違いありません。

医療機関グループの中には、医師やサポートスタッフの不足を補うために、時差出勤やシフトの重複など、従来とは異なるスケジュールを用意しているところもあります。また、従業員自身がスケジュールを設定できる医療機関もあります。これは、若い世代や、家庭を持つ人、超過勤務手当を稼ぎたい人などにとっては魅力的なオプションとなっています。

また、グループ内に人材派遣会社を設立し、拠点間で医療従事者をシェアしているところもあります。例えば、Novant Healthでは、「フロートプール」内の数百人の看護師が、カロライナ州にあるシステム内の15の病院と360の診療所を巡回しています。インドの大手病院グループは、放射線科や研究室などの専門医のためにはリモート勤務を、その他の専門医のためにはハイブリッドモデルを採用しており、若い医師や家庭を持つ人にとって魅力的な勤務形態となっています。

ここでも、テクノロジーは重要な役割を果たしています。Zoomをはじめとするビデオ会議ソフトウェアの普及により、医師や患者は、病状について簡単にバーチャルで話し合えるようになりました。また、病院や診療所にとっては費用対効果が高く、介護者や患者にとっては伝染病対策の観点から安全性が高いものとなっています。

病院システムの中には、リモートのスタッフが患入院患者の受け入れ業務を担当できるようにするため、「バーチャル看護」の実用化を検討しているところもあります。このモデルでは、現場の看護師が患者の身体検査を行い、リモート看護師がアレルギー、薬、病歴などのデータを更新することができます。また、患者の退院時には、リモートの看護師がオーダーやドキュメントを確認し、患者を教育し、薬局側の情報が正しいかどうかをチェックすることができます。

一方、AIベースの人材計画アプリケーションは、マネージャーが患者の需要の急増を予測し、それに応じて医師のスケジュールを設定するのに役立ちます。新型コロナウイルスのパンデミック時、ニューヨーク州の大規模医療システムの1つであるNorthwell Healthは、クラウドHCMシステムのダッシュボードを使用して、看護主任が患者の流入やスタッフの募集、リソース要件について常に把握できるようにしました。

4. 専門家のエンゲージメントの向上

人事担当者が従業員エンゲージメントの向上について語るとき、一般的には、従業員とより個人的なレベルでつながり、彼らのロイヤルティを育むために雇用主が取るべき措置について語ることが多くあります。また、従業員エクスペリエンスの向上について語ることもあります。

雇用主と従業員のつながりを育み、管理するための戦略として、医療従事者やサポートスタッフに対して、それぞれのバックグラウンドや状況に基づいた個別のキャリアガイダンスを提供することが挙げられます。また、医療機関の雇用主は、定期的に従業員アンケートを実施し、組織を改善する方法についてフィードバックを促しています。また、燃え尽き症候群を防ぐために、介護士にメンタルヘルス・サービスを提供したり、同業者のコミュニティでアドバイスやサポートを受けられるようにもしています。目標は、従業員が仲間や経営陣と定期的にエンゲージメントし、感謝の気持ちや帰属意識を高められるような文化を作ることです。

5. 給与やその他の報酬について常に最新の情報を得る

多くの人は、医療従事者と聞くと崇高な仕事だと思うかもしれません。しかし、現場の厳しさや競争が激しい市場を考えると、誰もが自分の価値に見合った報酬を得たいと思うものです。医療機関の人事担当者は、外部のベンチマークデータを利用して、医療スタッフおよび契約社員に対する報酬プランを定期的に調整する必要があります。

ヘルスケア業界では、システム、消耗品、医療保険、暖房、電気など、あらゆるコストが上昇し続け、さらに人手不足が給与や賃金の上昇に圧力をかけいることが、問題をさらに複雑化しています。例えば、出張看護師サービスの価格はパンデミック時に3倍になり、現在も比較的高いままです。利用可能な資金には限りがあるため、医療機関は、従業員への報酬の支払い方法を工夫する必要があります。

金銭的なインセンティブとしては、競争力のある給与や福利厚生に加え、契約金や功労金、学費補助、保育手当、学生ローン返済プログラムなどがあります。また、医師の生産性やサービスの質に応じて報酬を支払う相対価値尺度(RVU)を用いたプランの人気も高まっています。

6. 十分な人数を雇う

医療従事者の不足は悪循環を生みます。医師や看護師などの医療従事者の数が足りないと、過労やストレス、燃え尽き症候群を引き起こし、その結果、医療従事者が職を離れ、人材不足がさらに深刻化します。残念ながら、簡単な解決策はありません。

病院や診療所レベルでは、雇用主が高校や大学、研修プログラムなどの機関とパートナーシップを結び、さまざまな専門レベルの人材を育成、採用する必要があります。

長期的には、十分な数の有能な専門家を教育し、訓練し、利用できるようにするために、官民協力による包括的な医療改革が必要です。米国病院協会は、米国の政策立案者に対し、メディケア資金によるレジデント(研修医)の上限撤廃、看護学校と教員への支援強化、高度な訓練を受けた外国人医療従事者へのビザの迅速化などの対策を求めています。

7. 医療従事者の事務処理の負担を軽減

医師や看護師が燃え尽き症候群により職業を離れるのは、過労だけが原因ではありません。彼らは日々の事務処理の多さにも不満を抱いているのです。Medscape Physician Compensation Reportを引用したMobius MDの記事によると、2021年には、医師は週平均15.6時間を事務作業やその他の管理業務に費やしていたと報告しています。この事務作業の負担は、近年、業界全体に広く浸透しています。2018年、70%の医師が、書類作成や管理業務に週10時間以上費やしていると答え、2017年の57%から上昇しました。2014年には、そうした作業に週10時間も費やしている医師は、全体の3分の1しかいませんでした。

考えられる問題の一つとして、ほとんどのEHRやその他の管理システムが、互いに連携していないことがあります。医療機関は可能な限りシステムを単一プロバイダーのプラットフォームに統合し、異なるベンダーから購入したシステム間の相互運用性を確保する必要があります。一方、AIベースの自然言語音声認識ソフトウェアを活用することで、医師は、書類作成やその他の事務処理に費やす時間を最小限に抑えることができます。Oracle Healthのマスター・プリンシパル・サイエンティストであるRebecca Laborde氏は、「日々のタスクの完了や情報へのアクセスのために、臨床ワークフロー内外の異種プラットフォーム間を行き来しなければならないことは、摩擦を生み、医療従事者のエクスペリエンスに悪影響を及ぼします」と指摘しています。

Oracle MEによる医療従事者の定着率の向上

医療機関の人事組織は、従業員の離職率を最小限に抑え、人材への投資に対するリターンを最大化するために、適切なテクノロジーを必要としています。その戦略の中心は、全体的な従業員エクスペリエンスを向上させることです。

Oracle Fusion Cloud Human Capital Managementの一部であるOracle MEは、医療従事者やその他の専門家が同僚や上司と関係を築き、定期的に課題を確認して回答を求め、パーソナライズされたガイダンスを通じてキャリアアップし、最終的に自分の役割において成功できるように設計された、唯一かつエンドツーエンドの従業員エクスペリエンス・プラットフォームです。

Oracle Cloud HCMは、組織が最新のAIベースの機能を適用して、採用担当者が適切な人材を最初から見つけられるようにします。これらの機能により、人事は、応募者や候補者のスキル、資格、職歴、興味などに関するデータを分析し、それらのデータを職務要件や組織文化、さらには最近採用した類似するプロフィールを持つ従業員の成果などと比較することができます。この作業は、内定を辞退する可能性の高い候補者の選別だけでなく、優秀な候補者と面識のある既存の従業員の特定にも役立つため、候補者が内定を受けるよう、彼らに促してもらうこともできます。

Oracle MEクラウド・プラットフォームを利用して、人材を惹きつけ、育て、エンゲージメントさせる職場文化を構築する方法についてご覧ください。.

医療従事者の定着率に関するFAQ

医療機関は、どのようにして従業員の定着率を向上させることができるでしょうか。
もちろん、簡単な解決策はありませんが、従業員を効果的に維持するには、従業員の採用、オンボーディング、スケジューリング、エンゲージメント、報酬のために雇用主が利用するプロセスを改善し、同時に従業員の管理業務の負担を軽減して、患者ケアにより集中できるようにする必要があります。

医療従事者の平均的な年間離職率はどのくらいでしょうか。
調査によって数値は異なります。2021年は、医療従事者の離職率は19%から26%の範囲で、全雇用者の平均よりも高い数値を示していました。離職率は、正看護師、認定看護助手、患者ケア技術者、ホームヘルパーが特に高くなっています。

医療従事者の定着率とは何でしょうか。
医療従業員の定着率とは、病院、診療所、クリニック、ホスピス、その他のケアプロバイダーが、高いスキルや才能を持ち、生産性の高い医師や、看護師、その他の専門家、およびサポートスタッフを維持する能力のことを指します。

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