Mark Jackley|コンテンツ・ストラテジスト| 2023年2月
ファッション小売業の成功は、適切な販売チャネルを通じてシーズンごとに適切なスタイルを提供できるかどうかにかかっています。この目標を達成するために、小売業者は品揃え計画を活用しています。この複雑なプロセスは、いくつかのベストプラクティスに従うことで容易になります。予算と、計画決定の指針となる関連データがあれば、どのような小売業者でも、購入者の求めるファッションの品揃えを構築することができます。
品揃え計画とは、ファッション小売業者がシーズンごとのスタイルの品揃えを計画し、各店舗やその他の販売チャネルに割り当てる方法です。つまり、適切なスタイルを、適切なサイズと色で、適切なチャネルを通じて提供することです。品揃え計画は、より高いレベルでのリテール・プランニングと結びついていますが、戦術的で、地域の市場状況や需要の突然の変化に対応するものです。
主なポイント
品揃え計画は複雑です。しかし、より大きな視点で、特にもうひとつのプランニング・アクティビティである商品企画の文脈から見ると、理解しやすくなります。
小売業者は、あらゆるチャネルの品揃えの合計である季節商品の予算を設定するために、商品計画を作成します。商品計画は、商品そのものを掘り下げることなく、例えばレディスのトップスなど、商品カテゴリのレベルで機能します。
しかし、ファッション小売業者はカテゴリを売るのではなく、商品やスタイルを売るのです。そして、それこそがスマートな小売業者が競争力を獲得できる分野です。予算とデータ分析(主に現在と過去の売上情報)に留意しながら、各店舗とチャネルのファッション商品の品揃えを計画します。
ファッション・チェーンは、卸売市場を探し回り、女性用トップスなどのカテゴリに最適な商品スタイルを見つけ出します。長袖ブラウスは、ボタンダウン、スクープネック、プルオーバーといったスタイルで展開する商品構成になることが確実です。シーズン開幕の少し前、小売業者は各店舗に対し、さまざまなサイズや色のブラウスやその他の商品の割り当てを送ります。当然、パフォーマンスの高い店舗ほど品揃えが豊富です。
すべてのファッション小売業者が同じプロセスを踏んでいるわけではありませんが、成功を収めている小売業者の多くは、品揃え計画の指針となる商品計画から着手しています。品揃えはより高いレベルの計画が、配送トラックや店の棚、そして膨らんだ買い物袋などで実現される場です。
多くの場合、品揃え計画はシーズンに入る少なくとも6ヶ月前に行われます。計画担当者は、豊富なデータ、特に過去の販売取引データを活用し、各店舗、Webサイト、カタログなど、すべてのチャネルに対応するスタイルの品揃えを作成します。シーズンが始まると、チャネルや店舗の長期的なパフォーマンス、スペースの制限、地理的な位置などを考慮して、各チャネルにスタイルが割り当てられます。
例えば、計画担当者が秋の品揃えにスリーシーズン・ジャケットを取り入れることがあります。ただし、ミネソタ州はノースカロライナ州よりも秋の始まりが早いため、北部にある店舗ではより早く、より大量にジャケットが納品されることが考えられます。ミネソタ州セントポールの店舗で、フリース・ジャケットがなかなか売れないというデータがあれば、計画担当者はその店舗に、色とサイズの限られた1~2種類のスタイルしか割り当てないことがあります。市場のトレンドがフリース・ジャケットの強い可能性を示していても、現場の需要が決定を左右します。特定のフリースが売れなければ、計画担当者は再入荷の注文をキャンセルする可能性もあります。
これらのことから、品揃え計画が戦術的になる傾向がある理由がわかります。シーズン前の計画は、サッカーチームがシーズンで勝利を収めるための準備に相当します。シーズンが到来すると、小売業者は現在の需要、日々の販売結果、変動する在庫をモニターし、必要な調整を行います。計画全体をシーズン中に変更することはありませんが、例えば、ブラック・ジーンズが飛ぶように売れている場合は、追加注文をするなど、ほとんどの小売業者は柔軟に修正できる体制を整えています。
品揃え計画が重要なのは、各店舗のスペースに適合し、店舗の強みを発揮し、顧客の嗜好や購買習慣に対応し、売上を促進する品揃えを的確に決定するためです。ほとんどの小売業者に、画一的なアプローチは通用しません。店舗の規模、販売見込み、顧客層はさまざまです。各店舗が適切なスタイルを適切な量だけ提供することで、売上が伸び、計画立案と在庫管理をより適切に行えるようになり、店内の商品棚が散らかったり空になる事態を回避しやすくなります。最終的に品揃え計画が重要な理由は、それがうまく実行されれば、売上、キャッシュフロー、収益性が向上するからです。
この質問に対する回答は、計画そのものに含まれるものと、計画策定プロセスで使用されるツールや手法の2つの部分から構成されます。
まず、最終計画の主要部分から始めましょう。
次に、便利なプランニング・ツールや方法をご紹介します。
品揃え計画モデルは型にはまったものではありません。ただし、計画をカスタマイズするファッション小売業者でさえ、以下のモデルのいずれかからプロセスを開始する傾向があります。
小売業者は戦略的に品揃え計画を用い、シーズンに最適なファッション・スタイルの品揃えを提供することで、財務目標を達成します。
小売業者は品揃え計画を戦術的に実施し、小規模店舗の販売見込みとスペースの制約に合わせたスタイルの品揃えで売上を向上させるなど、一般的な課題に取り組んでいます。
品揃え計画は継続的に実施するのが最適ですが、特定のシナリオにおいては特に重要です。
品揃え計画は、各商品カテゴリの予算を設定する上位計画である商品計画を見直すことから始まります。商品計画は、各店舗やチャネル向けのファッション品揃えに含めるべき季節商品のスタイルを決定する指針となります。
商品計画を実行する際、品揃え計画担当者はデータから着手します。包括的で正確なデータをきめ細かく提供することが、成功する計画を立てるための重要な要素です。過去数年間でよく売れた商品は何でしょうか。あるドレスが飛ぶように売れたということを把握しているだけでは不十分です。それはシャツドレスだったのでしょうか。シフトでしょうか。人気の高かったサイズや色はどれでしょうか。また、最も多く売り上げたのはどの店舗でしょうか。数年前にさかのぼるシーズンごとの売上データは、計画担当者に今シーズン売れそうなファッションについてのインサイトを提供します。
現実世界では、ファッション小売業者は品揃え計画で結果を出しています。
南アフリカのレディース、メンズ、キッズのファッション小売業者であるMr Priceは、パンデミックの間、品揃え計画を使ってシーズン半ばに調整を行いました。数ヶ月間休業していた店舗の再開時、用心深い購入者は、混雑したモール内の店舗よりも地元の店舗を好みました。小規模店舗の方が需要が高いことを受け、Mr Priceは、小規模店舗に以前より多くの商品を割り当て、大規模モールの店舗への数量を減らすという戦術変更を行いました。そうすることで、Mr Priceは売上を回復させ、売れ残り在庫を削減し、収益を守ることができたのです。
化粧品、フレグランス、ヘアケア製品、スキンケア製品などを販売する全国チェーンのUlta Beautyは、1,300以上の店舗で品揃え計画を活用しています。商品の品揃えをより入念に計画することで、適切な数量の商品を仕入れることができ、商品陳列の改善につながりました。また、何百ものサプライヤーからの注文の調整にも役立っています。
女性向けファスト・ファッションの小売業者であるForever 21は、品揃え計画を用いて、売れるスタイルを絞り込んでいます。何百もの店舗からのデータを分析し、色、サイズ、生地、ネックラインのレベルまで、計画を立てます。
小売業者が以下のヒントを活用すれば、競合他社に差をつける強力な品揃えでファッション・シーズンを迎えることができます。
この上位計画では、季節商品の予算を設定します。支出限度額を把握することは、品揃え計画担当者が提供する商品スタイルを決定する上で役立ちます。
品揃えを計画する際、小売業者は2~3年以上前からの季節ごとの売れ行きを分析します。どのスタイルが売れたのか、売れなかったのか、どのような顧客が購入したのか、どの店舗やeコマース・サイトが最も多く売れたのかを確認する必要があります。
顧客セグメントと人口統計を調査し、どのスタイルを誰に、どこで仕入れるかについて、十分な情報に基づいた意思決定を行います。
商品計画に合った品揃え計画モデルを使用することにより、財務目標の達成を支援します。ワイド計画モデルにはより多くの商品スタイル、ディープ・モデルにはより多くのサイズと色があります。
店舗の規模や販売量など、ビジネスにとって重要な属性ごとに複数の店舗をクラスターとして分類します。すべての店舗ではなく、より少数のクラスタを対象にする方が品揃え計画の作成が容易です。
ほとんどのファッション小売業者は、長年売れ続けているベストセラーと、有望な新しいスタイルの間で品揃えのバランスをとっています。レディースのVネック・セーターが長年愛用されているのであれば、小売業者が楽しい色や柄のロールネック・セーターを加えることもあるでしょう。
購入者は、地元の職人やメーカーをサポートすることを望みます。ファッション小売業者は、近隣で生産された衣料品やアクセサリーを品揃えに加えることがよくあります。
シーズンごとの品揃えに補完的な商品を追加します。新学期の時期に子供用のスニーカーを販売する小売業者は、スウェットパンツを仕入れ、店舗で一緒に陳列することがあります。過去のPOSデータから、同じ買い物でどの商品を購入したかがわかります。
魅力的なスタイルで品揃え計画を完成させます。例えば、エンドキャップやレジの近くに低価格なイヤリングを陳列すことにより、売上が伸びる可能性があります。
ファッション小売業者は、Oracle Retailのプラニング・アプリケーションを使用して、品揃えの計画、品揃え戦略の改善、およびシーズン中のトレンドの予測を簡単に行うことができます。高度に視覚化されたワークフローは、ローカル市場やマイクロサイトの品揃えを定義および実行し、トラフィックの売上と利益率向上へのコンバージョンを改善し、顧客満足度を向上させるために役立ちます。このアプリケーション・スイートでは、販売履歴、1回限りの購入履歴、小売店舗全体にわたるスタイルや色の好みなどのデータを簡単に取り込むことができます。高度なロジックにより、小売業者は品揃えを迅速かつ効果的に完成させることができ、小売計画担当者は店舗とオンライン上の来店者数を増加させるためのイノベーションに取り組む余裕を得ることができます。品揃え計画プロセスの標準化とデータの一元化により、小売業者は在庫管理を改善し、投資を最大化することができます。
品揃え計画が重要な理由
品揃え計画が重要なのは、ファッション小売業者が適切なチャネルで適切な商品を適切なタイミングで提供するために役立つからです。
品揃え計画における2つの重要な要素とは
品揃え計画には、商品カテゴリ内のバラエティと、各商品のバリエーション(スタイル、サイズ、カラー)がどちらも重要ですクラシックなスタイルとトレンドのスタイルをバランスよく取り揃えることが重要だと考えるエキスパートもいます。
小売業における品揃え計画の立案方法とは
品揃え計画を立てる際、小売業者は商品計画、財務目標、予算を確認し、意思決定の指針となる大量のデータを分析します。
AIと機械学習機能を組み込んだオラクルのソリューションが、ファッション小売業者による効率的なショッピング・エクスペリエンスの提供を支援する仕組みをご覧ください。>