スマート・オペレーションとは

今後5年間で、世界中の製造施設に前例のない変化が起こるでしょう。競争の激化や労働力不足に直面する中、メーカーは業務のさらなる自動化を進め、まったく新しい製品ラインや販売アプローチを開発していくでしょう。この進歩のカギを握るのは、メーカーの次の能力です。

• リアルタイムの業務データとビジネスデータの連携
• AIベースのデータ分析を適用してインサイトを引き出し、推奨事項を提供
• サプライチェーンと製造工程全体の自動化を推進
• 従業員にリアルタイムのインサイトを提供し、賢明かつタイムリーな実行決定を促進

未来の工場では、接続された機器、従業員、サプライチェーンからのデータを組み合わせ、リアルタイムの推奨事項を提供し、人間の介入なしに生産を調整し、より価値の高い業務に人材を振り向けることができます。

スマートオペレーションの世界へようこそ。

スマート・オペレーションとは

スマートオペレーションとは、メーカーの情報技術（IT）と運用技術（OT）を人工知能（AI）と組み合わせ、業務改善に役立つ継続的なフィードバックループを構築するものです。

工場の生産ライン、専用機器、モノのインターネット（IoT）センサーから得られるOTデータは、製造実行システム（MES）、エンタープライズ資産管理（EAM）システム、財務、人事、販売、マーケティング、サプライチェーン管理アプリケーションから得られるITデータと統合されます。統合されたデータはAIで分析され、そこから得られたインサイトがシステムにフィードバックされ、システムが自動的に調整を行います。この継続的なフィードバックループにより、生産プロセスに自動化が導入され、効率が向上し、継続的な改善が可能になります。

主なポイント

• スマートオペレーションは、メーカーの工場や生産ラインを稼働させるOTシステムと、それ以外の業務を管理するITシステムとの隔たりを解消します。
• 全社にわたるデータを統合し、AI ベースの分析ツールで分析します。
• スマートオペレーションは、修理作業の要約といった低レベルなタスクを自動化することもでき、従業員はより価値の高い業務に専念できるようになります。
• このような高度な自動化オペレーションは、統合されたデータにAIベースの分析を適用することで初めて実現可能となります。

スマートオペレーションの概要

ほとんどのメーカーでは、ITとOTは互いに切り離されています。ITは通常、財務、調達、営業、マーケティング、人事、MES、サプライチェーンなどの業務を実行し、データを保護するために使用されるソフトウェアとハードウェアで構成されています。その一方、OTは通常、工場や生産ラインを稼働させるシステムや機械で構成されています。たとえば、監視制御およびデータ収集（SCADA）システム、プログラマブル・ロジック・コントローラ（PLC）、ロボット、デジタルツイン、センサー、IoTシステムなどがこれにあたります。

スマートオペレーションは、ITとOTの橋渡しをします。機械、部品、生産ライン、原材料、完成品に関するデータが、財務、調達、サプライチェーン、その他のビジネスシステムからのデータと統合されることで、メーカー企業は生産上のボトルネックを特定・軽減し、機械の故障の可能性を管理者に警告し、センサーデータを利用して部品や完成品の性能を向上させることができます。例えば、自動車メーカーに部品を供給する企業は、自社の製品からセンサーデータを収集し、実際の使用環境における製品のパフォーマンスを把握することができます。

スマートオペレーションの仕組み

スマートオペレーションは、デジタルツインの作成から始まります。デジタルツインとは、ワークステーションのモニターやモバイルデバイスに表示される、工場の製造ラインを仮想的に再現したものです。デジタルツインを作成するには、製品を組み立てる際に使用する工場設備（例えば、製粉機、溶接ステーション、旋盤、ロボットアーム）にセンサーを取り付ける必要があります。また、完成品や製品の製造に使用される部品にもセンサーを取り付ける場合があります。デジタルツインはこれらのセンサーから情報を収集し、毎分の回転数、温度、処理能力、機械の安定性などのデータを「ビジュアル・エクスプローラー」に表示します。ビジュアル・エクスプローラーにより、従業員や監督者は、工場フロアの全体像を把握できるようになります。ビジュアル・エクスプローラーは、旋盤のぐらつきや設定パラメータの範囲外を動くロボットアームなど、機械的な問題が発生した場合に従業員に警告を発します。

これらのコンセプトは、スマートマニュファクチャリングやスマートファクトリーなど、インダストリー4.0のプラクティスを採用している企業には馴染み深いものですが、スマートオペレーションはこれらのさらに一歩先をいきます。

スマートオペレーションでは、AIがスマートファクトリー内のOTシステムから情報を取得し、分析した上で、ビジネスを管理するITシステムにアラートを送信します。これらのアラートは、AIなしでは人手を介さなければならないような、より複雑なタスクを自動的に起動させることができます。例えば、自律的な生産調整や、技術者やオペレーターが割り当てられた作業を行うのに必要な適切な資格を持っていることを確認するといった人事タスクなどが挙げられます。

スマートオペレーションは、「感知、対応、決定、実行」という自律的なフィードバックループを作り出し、製造を無人化へと導きます。複雑なタスクを実行するために、運用データを収集、統合、解釈することは、統合されたクラウド・プラットフォーム上のAIベースの分析力によってのみ可能となります。

スマートオペレーションの特徴

スマートオペレーションでは、作業者が業務を行うために必要なすべての機能が1つのユーザー・インターフェースに集約されています。従来の製造実行システムは、他の企業システムと統合されていないポイントソリューションである場合が多いですが、スマートオペレーションは、そのようなシステムに取って代わることができます。

スマートオペレーションには、4つの重要な特徴があります。

• 接続性: 設計から工場フロアまで、スマートオペレーションでは、製造製品のライフサイクルにおけるさまざまな環境や段階のデータを結びつける単一の「デジタルスレッド」が必要です。この接続性により、従業員やマネージャーは、現実世界で起こっている製造オペレーションを可視化することができます。
• 統合: スマートオペレーションでは、製造タスク（作業指示など）のデータは、それを生成したビジネス取引（顧客からの注文など）とリンクされます。スマートオペレーションでは、ビジネスデータと生産データを統合するためにシングル・データ・モデルを使用しており、これにより、顧客の需要を満たす適切な仕様の注文が確実に作成されます。
• インテリジェント: スマートオペレーションでは、AI ベースのデータ分析を活用し、品質保証や管理、生産ラインのパフォーマンス、最終製品のパフォーマンス、現場資産（リース機や通信タワーなど）の利用状況など、これまでにないインサイトを提供します。
• 自動化: スマートオペレーションにより、上流工程で発生した変更（注文の優先順位や生産スケジュールの変更など）を工場フロアに迅速に反映させることができます。逆に、故障や不具合が発生した設備をすばやく特定し、上流工程のビジネスプロセス（計画やメンテナンスなど）に反映することで、生産性を向上させ、従業員のより賢明な意思決定を導くことができます。

スマートオペレーションがもたらすビジネス上のメリット

メーカーは、従業員に適切なデータとインサイトを適切なタイミングで提供することで、競争上の優位性を獲得することができます。スマートオペレーションにより、従業員はモチベーションを高め、ビジネスにより大きな価値をもたらす改善に専念できるようになります。スマートオペレーションがもたらすメリットには、次のようなものがあります。

• 業務全体のパフォーマンスの向上。スマートオペレーションの継続的なモニタリングとフィードバックループにより、メーカーは生産性の向上、品質の向上、生産の見える化、工場生産の改善を実現できます。
• 従業員の採用と定着率の向上。ほとんどの人は、自分が変化をもたらすことができる企業に入社し、その企業で働きたいと思っています。スマートオペレーションにより単純な作業が自動化されることで、従業員はより重要な業務に時間を割くことができ、業務への意欲が高まります。
• より回復力のあるサプライチェーン。OTおよびITデータにAIベースの分析を適用することで、サプライチェーン・マネージャーは作業停止の可能生がある場合に自動アラートを受け取り、計画、サプライヤー、物流を迅速に調整することができます。
• リスクとコストの削減。多くのメーカーにとって、需要と供給のシグナルに基づいて生産を調整することは依然として難しい課題です。同時に、原材料、人件費、間接費の高騰により、利益率を維持することが難しくなっています。スマートオペレーションにより、サプライチェーン・マネージャーは潜在的なリスクをいち早く察知し、代替案を迅速に準備できるため、需要リスクを軽減することができます。また、スマートオペレーションは、より高度な自動化によりコストを削減し、利益率を向上させます。
• 成長の促進。スマートオペレーションは、生産能力を最大限に活用し、需要の増大に合わせてより多くの製品を迅速に生産できるようにします。例えば、メーカーが既存の製品にカスタマイズサービスを追加するなど、新しいビジネスモデルをサポートしたい場合、スマートオペレーションは必要な自動化を提供することで、カスタマイズ注文のより迅速かつ正確な生産と、製品メンテナンスの時期の予測などを可能にします。
• サステナビリティへの対応。スマートオペレーションの継続的なフィードバックループは、企業がサステナビリティ目標を達成し、目標達成が危ぶまれる場合に迅速に是正措置を講じるのに役立ちます。メーカーのサステナビリティ目標には、エネルギーや天然資源の消費削減、製品が環境に与える悪影響の低減、従業員と製品の安全性の向上などが含まれます。

スマートオペレーションの課題

スマートオペレーションの最大の課題は、メーカーのIT部門とOT部門が別々に管理され、それぞれが独自の優先事項を持っていることです。これらの部門は、独立したネットワークや調達、予算編成プロセスを運用している場合もあります。その他の課題としては、以下が挙げられます。

• 通常、オンプレミスで稼働しているレガシー・アプリケーションは、高度にカスタマイズされているものの、今や時代遅れとなり、基盤となるコードの変更が必要となっています。こうした変更を行うには技術的な作業が必要となり、イノベーションの進捗を遅らせています。
• メーカーが、前述のデジタルスレッドに自社のMESを接続しようと苦心しているケースもあります。多くの場合、組織内のさまざまなグループが独自に選んだポイントソリューションに依存しています。このようなシステムの乱立は、複雑性を増し、業務の合理化と自動化を困難にします。
• 互いに連携していないソリューションが問題となっている場合もあります。例えば、製品の設計や開発の大半が行われる製品ライフサイクル管理が、MESと十分に連携していないと、最終製品の改善が遅れてしまいます。
• メンテナンスがオペレーションとは独立して行われるため、スケジュール効率が悪くなり、顧客に販売またはリースされる資産（建設機械など）の稼働率が低下します。
• ユーザーニーズに応えるというよりも、システムに情報を入力するための複雑な、一貫性のないユーザー・インターフェースを使用するITおよびOTシステムが足かせとなることもあります。これらのシステムは、従業員の仕事を支援するどころか、むしろ妨げとなってしまいます。

スマートオペレーションの未来

スマートオペレーションの概念は、製造業以外の分野にも応用できます。たとえば、製造と密接に関連するメンテナンスの分野でも、機械の故障を予測し、それを防ぐために修理チームを派遣するといった同様の機能を活用できます。また、携帯電話の電波塔やジェットエンジンなど、現場の資産から収集した情報を活用することで、そのパフォーマンスと稼働率を改善できます。

その他の製品中心の業界でも、そのサプライチェーンにスマートオペレーションの概念を適用することができます。例えば、医療分野では、医療用品にRFIDタグを取り付け、自動補充やロボットピッキングを活用することで、大幅な人件費とコストの削減を実現しながら、患者の治療アウトカムの向上にも貢献できます。また、電力会社はデジタルツインを使用して、故障した変圧器内のすべての部品を分解図で表示し、どの部品に不具合が発生しているかを正確に把握し、修理チームを派遣し、さらには交換部品の注文書を作成することができます。

オラクルとともに、よりスマートな未来を

オラクルは、クラウドベースの製造アプリケーションの統合スイートを提供しています。Oracle Smart Operationsは、Oracle Cloud Supply Chain & Manufacturingに組み込まれた新しい機能セットです。この新機能により、業務パフォーマンスが向上し、従業員による迅速かつ的確な意思決定が可能になります。リアルタイムの業務データとビジネス・データ、高度な分析結果を組み合わせることで、サプライチェーンや製造工程全体にわたる推奨事項の提供、プロセスの簡素化、自動化の促進を実現します。

オラクルのクラウド・アプリケーション・スイートは、単一のデータモデルを使用し、ITとOTを接続するために必要な統合アーキテクチャを提供します。また、オラクルは、生成AI機能をクラウド・アプリケーションのポートフォリオに追加しています。産業用機器製造向けのオラクルのソリューションは、オラクルのデータ分析ソリューションと組み合わせて使用することで、メーカーに深いインサイト、自動アラート、高度なプロセス自動化、そして作業者の仕事を容易にする直感的なユーザー・インターフェースを提供します。

スマートオペレーションに関するよくある質問

スマートオペレーションとは何ですか？
スマートオペレーションは、業務データやビジネスデータを幅広く活用し、従業員の注意を要する状況について警告を発したり、従来は人手を介していた作業を自動化したりすることができます。これが、感知、対応、決定、実行という自律的なフィードバックループを実現します。

インテリジェント・オペレーションの5つの基本要素とは何ですか？
インテリジェント・オペレーションの5つの基本要素とは、IT（情報技術）とOT（運用技術）をつなぐデジタルスレッド、潜在的な問題を従業員に警告し改善策を提案するオペレーター用ワークステーション、従業員が直感的に使えるユーザー・インターフェース、単一のデータモデルに基づく統合されたクラウド・テクノロジー、そして、ITとOTの接続データを活用したAIベースの分析です。

スマートオペレーション管理とは何ですか？
スマートオペレーション管理とは、スマートオペレーションの管理と改善を行うもので、従来は人手が必要だった複雑なタスクの自動化を目標としています。これは、自律的な「無人」製造オペレーションに向けた取り組みとも言えます。

スマート・マニュファクチャリングの例を教えてください。
スマート・マニュファクチャリングの例としては、最終製品の製造に使用される機器、機械、部品に取り付けられたセンサーを使用する生産ラインがあります。これらのセンサーは、生産ライン作業員にデータをフィードバックします。例えば、ライン上の潜在的な問題（故障しそうな機械など）を警告します。

インダストリー4.0はスマート・マニュファクチャリングと同じですか？
いいえ。スマート・マニュファクチャリングは、インダストリー4.0を構成する要素の1つです。その他の要素には、スマートメンテナンス、インテリジェント・サプライチェーン・マネジメント、コネクテッド・ロジスティクス、ドローン、ロボット工学、サイバーセキュリティなどがあります。