コントロール・センター間通信プロトコル(ICCP。IEC 60870/TASE.2とも呼ぶ)は、電力部門でのコントロール・センター通信の世界的なデファクト・スタンダードとなっています。電力会社のシステム内のデータ交換だけでなく、電力会社と電源プール、地域送電組織(RTO)、独立システム事業者(ISO)、非電気事業者の間でデータ交換が可能です。ICCP(TASE.2プロトコル)では、ステータス、測定値、スケジューリング・データ、オペレータ・コマンドなど、リアルタイムおよび履歴データを交換できます。ICCPプロトコルは製造メッセージ仕様(MMS。ISO 9506とも呼ぶ)に基づいており、クライアントとサーバーの両方の役割に対応できます。ICCPとMMSにより、クライアントとサーバーのどちらの役割かにかかわらず、インバウンド/アウトバウンド/双方向のTCP/IP接続が可能になります。
セキュアICCPは、Transport Layer Security(TLS)によってトンネリングされるICCPです。つまり証明書ベースであり、プロトコル・メッセージへの追加署名があります。セキュアICCPは、IEC TS 62351-4技術仕様によって定義されています。
今日の多くの人にとって、通信とデータがリアルタイムでやり取りされることは当然に思えますが、1990年代より前は違いました。ICCPは、電力会社、データ交換プロトコルのサポート・グループ(WSCC、IDEC、およびELCOM)、EPRI、コンサルタント、およびSCADA/EMSベンダーにより、電力会社業界でのリアルタイム・データの交換用に完全にISOに準拠したグローバル・スタンダードを開発する取り組みとして、1991年に開始しました。
ICCPより前、電力会社は自社が開発または所有する、ISO標準に準拠しないプロトコル(WEIC、ELCOM、IDECなど)を使ってリアルタイム・データを交換していました。この年に、プロトコル仕様の開発、プロトタイプ実装の開発、仕様のテスト、標準化のための仕様の提出、開発ベンダー間の相互運用性テストを行うため、ユーティリティ通信仕様(UCS)ワーキング・グループが設立されました。
ICCPの歴史が始まった1991年5月、IEC Technical Committee 57 Working Group 07(TC57 WG07)は、WSCC Communications Task Forceに国際標準化に向けたWSCCガイドラインの作成を依頼しました。このグループは、4つの競合する標準(WSCC、IDEC、ELCOM、およびMMS)をまとめて完全にISOに準拠した標準を作るのが良いと考えました。
1991年9月、ユーティリティ通信仕様(UCS)の最初の会合が開かれました。包括的な標準の開発に取り組んでいるすべての電力会社、ベンダー、および組織の参加が歓迎されました。この会合には2つの大きな成果がありました。出席者は、1)通信標準の作成で協力することに複数の利点があることを認識し、2)標準の作成作業を完了するタスク・フォースが結成されました。
1991年、ユーティリティ通信仕様(UCS)は、電力会社業界用の通信標準を協力して作成することに複数の利点があると判断しました。その中には次の利点が含まれます。
その後の数か月にわたり、タスク・フォースは内部会合に加え、国際電気標準会議(IEC)のワーキング・グループ、電気電子技術者協会(IEEE)、国立標準技術研究所(NIST)などの業界標準組織との会合を行いました。このような会合を通じて、タスク・フォースは、WSCCおよびIDECプロトコルを相互に通信可能にするという選択肢と、新しいプロトコルの要件を定義するという選択肢を比較検討しました。その結果、新しいプロトコルを作成するほうが生産的と判断し、MMSの実現可能性を調査しました。
MMSがICCPの周期的なブロック化メッセージを実行する際のオーバーヘッドを判断するため、UCSワーキング・グループはMMSのベンチマークを実施しました。その暫定的な結果は、ICCPメッセージング・サービスにMMSを使用すると、プレゼンテーション・レイヤーをバイパスするカスタムのアプローチと比べ、送信されるビット/メッセージが6%~10%増加することを示しました。これにより、ネットワーク・メディアに関する経常コストが大幅に増加することはありません。ベンチマークの結果に基づき、UCSワーキング・グループはUCS/ICCPにMMSを使うことを承認しました。
実現可能性の調査により、MMSがカスタム・ソフトウェアの代わりに実行可能な上位レイヤーであることが示された後、ワーキング・グループは次の3つの分野に取り組みました。1)MMSを使用する新しいプロトコルの技術仕様の開発、2)プロトコルのデモンストレーションを行う方法の決定、および3)標準としての導入を目的とした提出先の決定です。
UCSはICCPを、IEC Technical Committee(TC)57 Working Group(WG)07にプロトコル標準の提案として提出しました。WG-07はこのとき、ELCOM(ELectricity utilities COMmunications)-90 over ROSEベースの標準についても検討しており、TC-57が選択したアプローチは、2つのプロトコルを使用するというものでした。これにより、1992年の欧州共通市場要件を満たす実装と、より包括的なプロトコルの長期的な開発が可能になりました。TC-57は、ELCOM-90ベースのプロトコルをTASE.1(Tele-control Application Service Element-1)として指定し、ICCPベースのプロトコルをMMS TASE.2として指定しました。
EPRIのIntegrated Utility Communicationsプロジェクトのもと、一連のデモンストレーションと関連セミナーが実施されました。1つのデモンストレーションは、Western Area Power Administration's(WAPA)Loveland Area OfficeとOhio Edison Companyでプロトコルを実装してテストし、ベンダーに配置した3つ目のノードによってルーティングおよびネットワーキング機能をデモンストレーションする、というものでした。
コロラド州ラブランドにあるWAPAコントロール・センターとオハイオ州ワッズワースにあるOhio Edisonのコントロール・センターの間のライブ・データが、2つのコントロール・センター間の通信ネットワークとフロリダのベンダーに配置されたノードにより、新しいICCPを使って伝送されました。データはMMS/OSIベースのプロトコルによる制御のもと、電力会社間で直接流れるか、ベンダーのノードを経由して流れました。
1994の終わりに完了したこのデモンストレーションは、コントロール・センター・オブジェクトとリモート・オペレーター通信の交換を含む、ICCPの主な機能ブロックに基づいていました。ICCP標準は時間とともに改良されましたが、今でもコントロール・センターでよく使われる標準となっています。
2020年9月、連邦エネルギー規制委員会(FERC)は最終ルールOrder 2222(PDF)を承認しました。このルールにより、分散型エネルギー源(DER)アグリゲータは、地域で組織されたすべての卸電力市場で競争することができます。この行動の意図は、新しいテクノロジー事業者が公平な競争に参入することで競争とイノベーションが促進され、消費者のエネルギー・コストを削減することです。
DERは、配電システム、配電サブシステム、または顧客メーターに配置されています。蓄電や断続的な発電から、分散型の発電、需要応答、エネルギー効率、蓄熱、電気自動車とその充電装置まで、多様な種類があります。
この最終ルールにより、DERは従来型の事業者とともに、地域で組織された電力、エネルギーおよび補助的なサービスの卸市場に参加できます。規模とパフォーマンスに関する最小要件を単独で満たせない場合は、複数のDERが集約することで対応できます。これは、エネルギー市場に参加するDERが各ISO/RTOのデータ要件と制御要件ごとに集約することで、ICCP接続の需要が大きくなることも意味します。
ICCPを使用すると、電力システムの監視と制御に関するリアルタイム・データと履歴データを交換できます。これには、測定値、スケジューリング・データ、エネルギー会計データ、およびオペレータ・メッセージが含まれます。複数のコントロール・センターのEMSシステム間、EMSと発電所DCSシステムの間、EMSと配電SCADAシステムの間、EMSと他の電力システムの間、EMS/SCADAとサブステーションの間で、データ交換を行えます。